町田そのこのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
前巻のテーマを引き継ぎながら描かれるシリーズ4作目。両親の過干渉により大好きな夫と別れて新しい生活を始めた女性はテンダネスに迷い込み、店内で開かれているバーで思わぬ出会いを得る。
境遇の違う女性同士の出会いは3巻のテーマを受け継いでいるのかな。あちらのふたりのその後も気になるところ。
後半は新キャラクター・アルカパッションくんをめぐる「本気でヒーローになりたかった男」とウクレレくんの過去を巡るお話。
不器用な生き方しかできなくても、本当の夢には届かなくても、思いを持ち続ければ、形は違っていてもいつの間にか目指していた場所には届くことが出来るし、自分の努力や愛情に気づいてくれる人はいる。勇気と優しさとちょっとした行動によって人生を変えた人たちの姿が胸に響く一冊。
ミツ店長の除霊騒動は前後でさらっと触れられるのみでしたが、めちゃくちゃな志波きょうだいたちに「おまえら一体なんなんだよ」と呆れながらツッコミを入れる廣瀬くんがおかしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最近町田そのこさんばっかり読んでいる自身ですが、これまた今回も胸が苦しく、けれど結局何もかも許すしかなく…救いのない人生をどうにか藻掻いて生きている人、けれど最後は最高に丸く収まる、一人の男を軸に様々な登場人物が絡み合いつつ関係性を描いている群像劇でした。
町田さん、老若男女を描くのがとにかくうまいと思います。まるで自分と違う立場の人物であっても感情移入できてしまう「ああ、あるよね」という人間の泥臭さ。あまりの感情の幅広さに感嘆してしまいます。
今回の物語は、血縁を下敷きに、人の人生を書いた作品だったと思いました。
変えられない生育環境、タイミング、後悔、選択……それでも人ってそう簡単に死ねるものでもなく、生きているかぎり生きてかないとだめなんだよなあという諦めを突き付けられたような気がします。
何十何万人、たくさんの「人間」がいる世の中で、皆「幸せ」で「思い通りの人生」を歩んでいるはずがなく…それでも生まれもった自分の味を携えて生きていくしかなくて、その中で出会った人と色々ありながらも進むしかないよな…と、考えさせられました。
なんとなく、悦子と平の関係は予測できたけれど、ラストに向けて繋がっていく感覚が病みつきになる。安珠と奏斗のこれからが気になるな -
Posted by ブクログ
夫婦、家族、思春期の少年少女の悩みときて、3巻目はモラトリアムな20代の悩みに焦点が当たる。
光莉の推しは自分らしさに、単身九州に引っ越してきた主婦はホームシックに、過去の恋愛を精算したばかりの「平凡な自分」に甘んじていた廣瀬くんは嵐のような突然の出会いに。そして今回出番が少なめのフェロ店長はいつもの親切が仇となっての悪霊に取り憑かれてしまった!?
SNSのTLを行き交うような軽妙な文体で描かれる悩みはごく身近に感じるものばかり。いくら思っていてもなかなかな言えないことをスパスパと切り込んでくれるところ、人の経験や人生からしか出てこない親身な寄り添いの答えをくれるところはAIには出来ない心の籠った温度感のある文体だなぁ。
あまりにも時事によりすぎでは? とも思えど、現代の文化を切り取るのも小説の役割なんだよな、きっと。
思いがけない出会いが人を動かす/他者に偶像を押し付けられるのは苦しい という共通テーマを繋ぎながら、物語は飄々と見えるツギの過去の苦い恋愛経験を巡る内面へ。
心からの優しさと、若さゆえの真っ直ぐな危うさを持っていたツギだからこそ、いまのどこか達観した仙人のような彼になったんだね。過去は過去、と割り切って前を向く優しさと、そんなツギと華に感化されたようすの廣瀬くんの今後はどうするどうなる?
除霊の旅に出ていたために留守だった店長はまだ霊に取り憑かれたまま次巻へと。これはまたもやピピエンヌ号の出番ですか?
-
Posted by ブクログ
絶世の美少女の妹、樹恵琉の登場により、ミツ店長の家族の秘密が少しだけ暴かれるシリーズ2冊目。1冊目の登場人物のその後も少し描かれ、人生を覗き見したような気分。夫婦の在り方から学生時代特有の悩みまで、想定読者層は大人だろうけれど、幅広い年代の悩みや不安に寄り添ってくれる物語ばかり。1冊目よりもボリュームは減ったけれど、テンポよくすっと世界に入っていける。
タイプは違えどミツとツギは人を惹きつける才能の持ち主で、全方位に愛を振り撒くミツの接客に冷ややかな廣瀬くんが内心ではミツをとても敬愛し、ざっくばらんなツギの人柄に惹かれていく様がとてもよかった。
廣瀬くんはいい男になるよ。
エピローグはドラマで予習済みのドロドロの過去の因縁。これ、リアタイで読んでた人はさぞかしハラハラしたよね、小説ではどう描かれるのか楽しみ。 -
Posted by ブクログ
深夜のコンビニで出会う、一番リアルな優しさ。町田そのこさんの『コンビニ兄弟』を読み終えた後、まるで深夜に温かいホットコーヒーを飲んだかのように、心がポカポカと温まりました。
物語の舞台は、九州・門司港にあるローカルコンビニ「テンダネス」。ここには世界を救うスーパーヒーローはいません。いるのは、無自覚にフェロモンを撒き散らして老若男女を魅了するイケメン店長・志波三彦と、個性豊かなごく普通の客たちだけ。ガラスのドアを押し開けてこの店に入る人々は皆、失恋の痛みや職場の疲労、未来への迷いなど、何かしらの重荷を背負っています。しかし、鍋から出したばかりのほかほかのおでんや、香りの良いコーヒー、あるいは何気ない優しい言葉によって、その沈んだ心はそっとすくい上げられ、ゆっくりと癒されていくのです。
著者である町田そのこさんは、持ち前の繊細な筆致で、日常の中にある小さくても確かな感動を描き出しています。この本が最も心に響くのは、「どんなに生活に疲れ果てていても、世界にはあなたのその疲れを受け入れてくれる、温かい明かりが灯る場所が必ずある」と優しく教えてくれるところです。
「今日は本当に疲れた、もう頑張れない」と思った時に、ぜひページをめくってほしい一冊です。まるで24時間営業の心の避難所のように、いつでも最高の癒やしの物語とともに「今日も一日、お疲れ様でした!」とあなたに語りかけてくれます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ不穏な終わり方をしていた上巻の更に上をいく漆黒シリアス展開であり、終盤までエスタの行方が知れず……というミステリー色が強めのストーリーだった。
ミステリーの観点から言うと、サブタイトル「神々の食前酒」の真実がエスタ誘拐に関わるものであり、終盤でようやく明らかになるエスタの決意が悲壮で涙なしには読めない。
個人的な推しである男装女子リルが最後まで活躍してくれて嬉しかった!
レルファンに対して抱く気持ちの変化が尊すぎる。
上巻では恋心として描かれていた気持ちが、下巻のエスタ救出作戦前ではかなり昇華されて「好いた人の幸せのために戦えるのが自分の幸せ」と思っている。その手前の市場に出かけるシーンでも、途中でエスタに繋がる手がかりを見つけてせっかくのお出かけが台無しになっても文句一つ言わず従者としての責を果たしてくれている。
上巻での健気で献身的なキャラクターに磨きがかかっており、恋愛感情を抱きながらも覚悟を決めて行動で忠誠を示してくれる聖人っぷり。読者が好きにならない訳がない。
エスタが死の直前にレルファンと言葉を交わし、愛を認め合いつつ息を引き取るシーンが泣ける。
ラストはレルファンとリルで世界を巡る旅に出たのだと思うが、想像が膨らむラストで印象深かった。
世間にはレルファンとエスタの恋愛話が囁かれている一方で、レルファンとリルは単なる主従関係を超えた信頼関係で結ばれている。レルファンはリルに対して約束した「人としての幸せ」を与えつつも、エスタの忘れ形見として何らかの情を持つようになってもおかしくはないと感じた(読者によっては、エスタへの愛を生涯貫いたとみる人もいるだろうけど)。 -
購入済み
『愛を注ぎ注がれるような、たったひとりの魂の番のようなひとときっと出会える』と期待し諦めながら誰にも聞こえない声で歌う52ヘルツのクジラ達の物語に涙し、最後には温かい余韻に心包まれました。