町田そのこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「溺れるスイミー」と「海になる」が特に好きだった。登場人物たちが、この先どこかで、自分のままでいられる場所を見つけて、幸せになれる未来があるといいなと思ったりする。登場人物同士の関わり一つひとつに美しさを感じた。
「お団子を食べて前歯が抜ける」という、これから私が生きていても絶対に遭遇できないだろうと思う出来事から始まる。その強烈な一文に心をつかまれたまま、文章にすーっと最後まで連れていかれた感覚があった。主人公はそれぞれ違うけれど、どこかでつながっていて、一人の人生の向こう側に、また別の人生が見えてくる。その構成も含めて、美しかった。
自分はおそらく出会わないだろうと思う人物の、人生の一瞬を描いているのに、そこにある感情は全て本物だと思った。そのありえなさとリアルさの塩梅が絶妙だった。嫌な思いも、苦しい出来事も、きれいごとにせず描きながら、最後まで作品を濁らせない透明度の高さが、すごく好きだった。
誰にでも、自分が息をできる場所や存在があるのだと思う。親友とか恋人とか夫婦とか親子とか、関係の名前に必ずしも当てはまるものではないのかもしれない。その人の存在によって少しだけ息ができるということの、温かさや尊さ、虚しさ。でも、ある種の報いのようなものを感じた。
私にとって「美しい」という感覚は、とても透明度の高いものなのだと思った。嫌な思いをしても、辛い思いをしても、そこで濁らず、深い深い海の底まで見える透明度を、最後には残してくれている。わかってはいたけれど、人生は一辺倒ではないのだと改めて感じた。一個人が出会う出来事や、それを含めた長い長い人生が美しいものであることを、信じさせてくれる作品だった。 -
Posted by ブクログ
涙が溢れて溢れて泣きまくった。
私はこれまで生きてきて、お葬式やお通夜といったものには一度しか出たことがなく、幸か不幸か、死と向き合ったことがほとんどない。
身近な大切な人を亡くした方々は、どう立ち直っているのか、故人への後悔やこれからの未来とどう向き合っているのか、この物語を自分ごとに置き換えることで、少しだけ理解できたと思う。
大切な友人や家族が亡くなってしまった時、あの時こうしていれば良かったと後悔の念に押し潰されないよう、笑顔の思い出をたくさん思い返せるよう、大切に生きていきたいと思った。
コロナ禍当時の、感染して入院先で亡くなった方々のお見送りについては初めて知った。感染のリスクがあるとはいえ、遺族は最期のお別れもお見送りもできず、次に故人と会う時は火葬を終えたお骨だけだなんて…想像を絶する。
不慮の事故か、事件か、急な発病か、闘病の末か、人はいつ死ぬか分からない。大切な人が明日も変わらず元気に生きている保証はどこにも無いのだからこそ、感謝は伝えられる時にすぐに伝えたい。カッとなって酷いことを言ってしまったら、すぐに謝りたい。
後悔のない生き方をしよう。そう思えた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ短編集。
どれも面白い。全部元カレの名前が書いてあって話が進んでいく。
どの話も好きだけど、町田その子さんのすべてはカーテンの中と山内マリコさんの2つ年上がよかった。
すべてはカーテンの中は浜崎あゆみのappearsの歌詞みたいなことを話しているところが印象に残った。どんなにオープンなカップルでもそういうカーテンをしてるだけっていう表現。たしかにそう。結局付き合ってる者同士にしかわからんことばかりだもんね。
2つ年上は恋愛の話なんだけど無職の私に刺さった。失敗なんてしたくない、最短ルートで進みたい。これって恋愛だけじゃなく人生の全てに通じるから。でも、無理なんだよね。最短ルートでは進めない。だから完璧を目指さない。ちょっと失敗しても気にしない。 -
Posted by ブクログ
まず初めに記しておきたい。泣いた。笑ってしまうほど泣いた。
母と娘という関係を中心に展開される本作には、複雑な背景が絡み合いながらも少しづつ光を探ってゆくような暗い部分も多くあった。正直その場面でも涙ぐみそうになるが、ゆっくりと見えてくる光が感動の涙を呼んだ。
町田そのこさんの美しい文体で滑らかに読むことはできるものの、前半や途中に挟まる辛い描写には目を背けたくなるものがあった。前半にのめり込んで読むと、千鶴の他責にこちらまで縛られてしまいそうになるが、まとめて叱りつけて、縛り付けてくる重いものを取り払ってくれるような登場人物たちが本当に良かった。
やはり、母と娘という女親子だからこその苦悩や形容しがたい強い結び付きがあると思う。確かに親は子を育てなくてはならないけれど、育てられた子の不幸までをも親が責任を負う必要はないだろう。
けれども子は親のせいにしてしまいたくなるし、全て自分で背負い込むにはあまりに重い。
「わたしの人生はわたしのものだ」
当たり前のことのようで、強く意識できないこの言葉が深く刺さった。
母との付き合い方。どこまで甘えてどこまで背負うのかというのは非常に難しい。 -
Posted by ブクログ
冒頭な「朱鷺が暴れてた」とあったので、鳥を飼ってるのかと思っていたが、人の名前だとわかったあとは、なんだか朱鷺に夢中になった。
朱鷺がどんどん成長していく様も、時間がかかっても気持ちさえあれば前を向ける感じがして良かった。
芝子さんの話と、最後の話はボロボロ泣いた。
葬儀屋の話が出てくるので、どうしても自分や周りの「死」について考えさせられるが、父が亡くなってすぐの時は、この作品内の人達みたいにしっかりした思考回路にならなかったことを思い出した。
父親が亡くなる前後の時は、こういう本すら読めなかったが、自分の中でも何かしらの気持ちが落ち着いたんだなと思った。