辻堂ゆめのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
読書備忘録1022号。
★★★★★。
プロローグとエピローグにこの短編集を世に送り出した作者のメッセージが集約されていると感じましたわ。
ちょっとした空き時間に何気に見るネットニュース。
毎日毎日、何気なく起きている事件や事故。
表面的に「ああ、やっちゃったのね。あれ系だわな。なんでそんなことするかなぁ・・・」みたいな。すなわち、先入観で読んでる!バイアスです!
人間って、自分が思ってる通りが一番気持ちよくて精神が安定する。
実はそれ、完璧に間違ってまっせ!という短編集。
それぞれ事件を追っていきましょう!
【夕焼け空と三輪車】
事件発生!
「住宅で血を流して倒れている高齢男性を妻が発見!死亡が確認された!警察はその場にいた40歳の息子を現行犯逮捕!息子はずっと無職で長年両親と暮らしていたが、最近は県内で一人暮らしをしていた模様!」
~シンタロー先入観・バイアス~
中年の引きこもり息子と、息子の暴力におびえる高齢両親か。息子に何か意見したんやろな。そろそろ働いてみたらどうや・・・、とか。それで激した息子に殺されたか。
違ったね。ぜんっぜん!違ったね!
長年引きこもりの正之は辛かったんだろう。だけど父に褒められたかったんやな。
頑張ったのにな。
蓋を開けてみたら、恐ろしい両親と妹や!
キーワードは偽装だった。
【そびえる塔と街明かり】
事件発生!
「高層マンションで7歳の女児が14階から転落!敷地内の駐車場に倒れている女児を発見!搬送先の病院で死亡が確認された!警察は女児の母親の交際相手の男を緊急逮捕した!女児の体には多数のあざがあり、以前から暴行を受けていた疑いがあるとして捜査を進めている!」
~シンタロー先入観・バイアス~
あかんてっ!クズ男は連れ子を虐待する生物やねん!なんで母親はこんな男と付き合ったんや!あほやなぁ。
違ったね。ぜんっぜん!違ったわ!
男のマンションに転がり込んできた母娘。
男に懐く娘。可愛い!
さあ!夏休みの自由研究をお兄ちゃんと一緒にやろう!
自由研究はこれがいい!慎ちゃん(男の名前)!
ビニールパラシュート!
涙しかないわ・・・。
【ジャングルジムとチューリップ】
事件発生!
「乳児遺体を公園の花壇に遺棄したとして23歳の母親を逮捕!自宅で産んですぐに首を絞めて遺棄したと認めた。近隣の住民は事件の前夜、室内で男女が激しく言い争う声が聞こえたと証言している!」
~シンタロー先入観・バイアス~
あかんてっ!覚悟の無い若い男女やんか!結婚もせんと!ちゃんと避妊せえや!クズ男は最後逃げんねんって!全部このパターンや!
違ったね。ぜんっぜん!違ったわ!
若い二人。彩絵と拓也はいわゆる勝ち組やんか。
二人はエリート。そして完全男女平等主義。
別姓でいきたいから事実婚。
これはちょっとおもろかったわ。
キーワードは少年犯罪からの立ち直りと成功。そして行き過ぎた選民主義。
他人事としての結論は彩絵がクズ過ぎたわ。
【まだ見ぬ海と青い山】
事件発生!
「男子中学生がはねられ死亡!運転していた75歳の高齢女性を過失運転致死容疑で現行犯逮捕!女性は容疑を認め、膝が言うことをきかずアクセルを強く踏んでしまった、と捜査員に話したという。家族には免許返納を勧められていたという。」
~シンタロー先入観・バイアス~
だからぁ!高齢者はマニュアル車一択やで。半クラ操作で発進出来なくなったら免許返納やで。自分はまだ大丈夫とか思ってたんやろな。アホや。
違ったね。もとい!違ってなかったわ。
ただそんな単純な話ではなかったわ。
高齢女性和子さん。通学路の横断歩道を子供たちが安心して渡れるようにボランティアに勤しむオーライおばさん。いい人やねん。
で、いつも虐められているひ弱な中学生がおって、放っておけなかったんやろな。
まんまと嵌められたなおばあちゃん。
【四角い窓と室外機】
事件発生!
「高齢夫婦が寝室のベッドで倒れているのが見つかった。通報で駆け付けた警察署員が死亡を確認。エアコンが作動しておらず熱中症の疑いがあるとみて死因を調べている。当日の最高気温は36.2度。6日連続で猛暑日を観測していた。」
~シンタロー先入観・バイアス~
高齢者は暑さに鈍感になんねん!気を付けないとあかんねん!年金暮らしの節約とかも相まってエアコン使ってなかったんやろな。不幸な事件や。
違ったね。ぜんっぜん!違ったね!
利夫と美代子の高齢夫婦。ちゃんとエアコン使ってるやん。
しかも義理の娘の幸恵が同居しているからいわゆる高齢世帯ではない。
息子の英樹はどうやら自殺でお亡くなりに・・・。
なんとこの物語は非常に練られており、英樹と幸恵の物語であり、利夫と美代子のエゴの物語であり、贖罪の物語であったか。
もっとネットニュースの裏側の物語にも想像力を働かせて分析しないと(楽しまないと)いけないと思ったとさ。
そして「十の輪をくぐる」で俊逸なストーリーを組む作家さんだな、と感心しましたが短編でも腕前を見せつけられましたわ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ今住んでいる蒲田が舞台ということもあり、近くの本屋で平積みされていたのを何となく購入
結果大当たりだった
10ヶ月の子供もいるので余計にささる
■戸籍
子供が産まれてからの手続きや、引っ越した際の住民票、転職する際の保険などなど、、、
面倒な手続きではあるけど、制度としてはしっかりしてるんだよなぁ
抜け道や甘いところがあるのはどうにかしろよと思うけど、大前提として戸籍という制度自体はすごいと思う
ただユートピアの住人達のように自分達に非がない人間が、国に認められないのは。
法の網から取りこぼされてしまった人間は。
現実世界に園村のような議員がいるとはとても思えない、、、
■当たり前に受けている恩恵
子供が産まれてから何度も打つワクチン
当たり前のように受けているが、過去に沢山の子供達が亡くなり、沢山の医療関係者が研究し、全ての子供が無料で受けられるようになっている
戸籍が無いことでミライは生命の危険にさらされる
何か事が起こらないと気付かないが、国に生命を守られているということを痛感
勿論政治に色々不満もあるが、日本に産まれた時点で恵まれていることは多分にあると思う
■鳥籠事件
真相があまりにも胸糞すぎる
最後の事件の真相が次々明かされていくのは良いが、解決後が長く感じた
ユートピア崩壊後の皆の行く末は気になるけどさすがに長い
ただ、全体としては読む手が止まらず後半は一気に駆け抜けた!面白かった! -
Posted by ブクログ
思っていた話とは少し違ってたが、主な問題は無戸籍の人達の話。
事件が起き、その犯人が無戸籍という展開だったが、過剰に事件と無戸籍が絡みついていなく、無戸籍ということへの偏見や感情を抜きにして、事件も解決していく展開が、問題提起として無理に訴えてこないところが良かった。
これは個人的な感想だが、必要以上に森垣さんのお子さんの話が出てこないのが印象的だった。
こういう女主人公の話は、否応なしに母性に訴えてくる傾向が多いが、この作品は仕事と家庭をすっぱり分けて読ませてくれるので、変に構えなくても良かった。
最後のシーンはなんだかグッとくるものがあった。
時代に伴って、法律やらサービスやら色んなものが変わっていくのに、変わっていけないのは我々で、それなのに昔喜ばれたものを与え続けていたら、それで満足を与えているように思ってしまう気持ちはとてもよくわかった。
「悪く」はなかったが、「良く」はなかったんだと思う。
問題提起といえば陳腐だが、この件に関してではなくても、自分も常にアンテナを張ってアップデートしていかないといけないと思った。 -
Posted by ブクログ
このミステリーは凄いとしか言いようがない。
予想を遥かに超えた真実に最後は何度も読み返したほど。
14年前に起きた産院放火殺人事件の加害者の息子が、被害者遺族3名を誘拐する。
加害者家族として生きてきた過酷さが故の恨みなのか…と思っていたが、それだけでは終わらなかった。
取り調べ中に再び被害者宅が…。
誰が…。
共犯者がいるのか…。
思いもよらぬ方向に進んでいき、まさかの加害者が被害者だったのか?で終わりになるはずもなく、さらに追い打ちをかけるかのような真相が、警視庁の羽山と高尾署の森垣によって伝えられる。
不都合な真実であるが、伝えなければならなかったこと。
まさかの結末に唸るしかなかった。
-
Posted by ブクログ
子供は親のおもちゃではない。
親の気分次第で罵声を浴びせ 暴力を与えて
恐怖を植え付けて服従させてはならない
子供の心や夢 愛を踏みにじり
親の虚栄心のために
親の夢見た生き方を
子供に強いてはならない
子供には子供の生き方があるのだから
両親の虚栄心のために「東大に入れと」
罵声や暴力を振るわれながらも
それを虐待だと気づくことなく
勉強に打ち込み続ける 染野 高志
家事も働くこともしない母に対して
自分が母親の役になり、家事をし
働いて得たお金を全部母親にとられ
家と母のためだけに生きる 星 愛璃嘉
二人は互いを写し出す鏡であり
真実に気づき本当の自分を取り戻すために
本当の幸せを掴むためになくてはならない
大切な存在になった。
高志の姉にはそんな存在がいなかった。
姉は一人で親の期待を背負い長年にわたり
繰り返された虐待によって潰された被害者だ。
高志は姉のことについて考えるたび
後悔の気持ちを何度も語っているが
高志本人が潰されるかどうかの瀬戸際の時に
姉まではとても救えなかったように思えて
しかたがない。
染野と星二人が考えた復讐は
親のように暴力的なものではなく
けれども自分達を苦しめ続けた親に
決定的な打撃を与えた。
それは親との縁を完全に断ち切り
自分自身を取り戻す生き方を選択し
実行することだった。
子供の頃から受けた傷が
完全に癒えるのかどうかはわからないけれど
自分の力で生き方を探し
生きる喜びと
幸せを噛み締めながら
これからの人生を歩んでいってほしい
そっと枝から離れながらも
けして地面に落ちず
暖かい風に吹かれ
空高く舞いあがる
サクラチル 花びらのように