辻堂ゆめのレビュー一覧
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ネタバレ新川帆立さんの『先祖探偵』の後書き対談に登場した辻堂ゆめさんがこの本について言及していたのがきっかけで知った。
無戸籍という同じワードを使っているけど前者は柔らかい人間ドラマに対してこの本はかなりドス黒いと言うかジメジメしていると言うか、人が嫌だなあと感じる擬音が全部入っていそうな話だった。
あらすじの通り、主人公里穂子刑事は無戸籍の殺人未遂の被疑者ハナを通してユートピアと言う名の無戸籍コミュニティの存在を知り、捜査を進める上で彼女達の住処を壊してしまうのではという不安と自分が刑事を目指す理由となった鳥籠事件の被害児童と似た境遇のハナ達への好奇心との葛藤がめちゃおもしろい。
まず知らない事 -
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読み終わりに近づくにつれ、涙腺が緩む感覚があり泣けてきました。突然現れた、10歳の女の子ちぃ子との温かくて楽しい一か月は、読んでいて堪らなく愛おしくて、物語の展開上、いつかこの可愛いちぃ子がいなくなってしまうんだと思うと、寂しさが湧いてきました。そして、最後の伏線回収。ある程度予想はついたので驚きはそんなになかったですが、愛する人と共に過ごす時間の大切さを想うと温かい涙がでました。それから、妻との最期の会話。胸がいっぱいになりました。私は、主人公の譲と同じ年齢の男性なので、余計に感情移入出来たのかもしれませんが、とても温かくて泣ける小説でした。
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ネタバレ物語のあちこちに伏線があり、読みながらページを遡っていくのが楽しかった。譲は過去からきた紗友里(ちぃ子)に出会い、自殺をやめて生きていく勇気を取り戻した。妻が自分のことを10歳の頃から愛してくれていたことに気づき、自分の優しさも認められた。紗友里は10歳の頃に大人になった譲に出会ったことで、大切な友人を亡くしたあとも、心を壊さずに生きてこられた。こうやって過去と未来の中でお互いを救いあえているのが素敵。もしも、私が自分の生んだ子どもが10歳で亡くなってしまうことを出産時に知ったら、亡くなる未来を変えることに必死になり、与えられた時間を精一杯大切に生きていくことはできないと思う。紗友里は優しくて
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この世に無戸籍者がいることは是枝裕和監督の映画「誰も知らない」を観て知った。
実際に起きた事件をモデルとしており、私が知らないだけで今現在も無戸籍者は社会問題となっているのかもしれない。
本著に登場する無戸籍者が隠れ住むコミュニティ「ユートピア」は現実にも存在しているのかもしれない。
無戸籍者が起こした殺人未遂事件により、過去起きた未解決事件の鳥籠事件が浮上し、そのふたつの事件が絡み合う伏線の数々が最後に導く結末が思いもよらぬものだった。
無戸籍により社会では透明な人間となってしまっているが、存在する人権のある人間であること。
社会に守られる権利があること。
人として生まれた以上、生まれたル -
Posted by ブクログ
夏っぽい作品が読みたいと思い表紙買い。辻堂ゆめさん多分初読みの作家さん。
表紙の可愛らしいイラストからライト的な物と思い軽く読めるかなと思っていたら、何で今まで読んでなかったんだろうと思うくらい揺さぶられた。
タイムトラベル物で一夏の疑似親子体験。楽しい日々が続くが終わりの迫る切ない時間だ。夏の終わりで、ちぃ子は消えてしまうんだろうな、悲しい結末を予想していたんだが。
後半、次々と衝撃がくる。鳥肌がたった。脳がバグる。今まで一体どんな気持ちで、あの人はいたんだろう。想像すると苦しくなった。
ちぃ子の正体が分かるとまた始めから読み直したくなった。
読み終わり改めて表紙をみてアフターストーリー