辻堂ゆめのレビュー一覧
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私の場合「なぜこの本のタイトルはこれなんだろう?」と思いながら読み進めることがあります。
辻堂ゆめさんの「今日未明」も、そんな一冊でした。
「未明」とは、おおむね午前0時から3時頃までの時間帯を指すそうです。そしてニュースで「今日未明、何々が…」と報じられるとき、それは事件が起きたことを伝える速報でもあります。
私たちは、そんな速報を見たり聞いたりすると、限られた情報だけで「きっとこういうことなのだろう」と、無意識のうちに先入観や固定観念にとらわれ、自分なりのストーリーを勝手に描いてしまいます。
本作は、そんなニュースの「その後」ではなく、「その裏側」にある真実を描いた5つの短編で構成されています。
どの短編も冒頭は速報的なニュース記事から始まり、そこから事件の背景を描く物語へと展開していきます。最初の記事を読んだときには「そういう事件なのだろう」と思っていたものが、読み進めるにつれて少しずつ違和感が広がり、やがて最初に思い描いていたものとはまったく違う真実に気付かされます。
そして読み終えてみると、「今日未明」というタイトルにも納得しました。
SNS全盛の今、私たちは速報だけを見て、知らず知らずのうちに誰かを決めつけたり、思い込みから誤った情報を発信したりしてしまう危うさを抱えています。
「今日未明」は、ニュースの向こう側には、私たちが知らない事情や物語があることを改めて考えさせてくれる一冊でした。 -
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第24回大藪春彦賞受賞作
日本で生まれ落ちた時から戸籍を持たない人々
理由はいろいろあるが親が何らかの理由で出生届を出さない、出せない
その親もまた戸籍を持っていなかったり
離婚後の300日問題など
まず就学の連絡がこない
予防接種が受けられない
健康保険を使用できない
各種免許がとれない
自治体のサービスが受けられない
家を買ったり、借りたりできない
就職ができない
この頃は法律も少しずつ変わってきているらしいが、役所で掛け合っても係の人により、法律を把握していなくて門前払いもあるらしい
そんな無戸籍者が事件を起こしたところから物語は始まる
大多数の国民は普通に生活している
いろいろな苦労があっても、国民のひとりとして認められて生きていけるのは、とてつもなく大切で幸せな事なのですね! -
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ネタバレ主人公はとある会社員の男性(63歳)で妻がいて(その妻は専業主婦、58歳)長男、長女の4人家族で、舞台は神奈川県の主人公の持ち家で、至って「ふつう」の家族です。設定の日は台風で大荒れの天気でとても外に行ける状態ではないです。
そんな「ふつうの家族」の家に身元が分からない男性がずぶ濡れ状態で転がり込んできます。この男がきっかけで、「ふつうの家族」の裏がだんだん見えてくるという回想ミステリーでした。「ふつうの家族」とはいえども一人一人隠しごとや嘘というものを持っているんだと思いました。
そして最後らへんになると、転がり込んで来た男と家族一人一人との繋がりが明らかになり、隠しごとというものも徐々に裏で繋がっていくというミステリーでした。
自分はこの作家の作品を何冊か読んできましたけど、ほとんどがイヤミス小説でしたが、今回は事件という事件はなくてイヤミスって感じでもなくわりとスッキリした終わり方だったと思います。
ストーリーの中盤は群像劇のような感じでした。家族一人一人の目線からストーリーを書いてました。
今までの小説とは1個2個箍を外した感じのミステリーで面白かったです。 -
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ネタバレ台風の夜、ある一家の家に見知らぬ男が現れる。招き入れたのは誰なのか。
そんなあらすじを読んでサスペンスかと思ったら違った。会社員の父、専業主婦の母、鉄道会社に勤める息子、大学生の娘。100年に一度と言われる大型台風の接近により家を出た子供たちも実家に戻ってきたその日、突然家の玄関に若い男が現れる。鍵も閉めていたのにどうやって家の中に入ったのか。家族の誰かが招き入れたのか。そもそもなぜこの桜石家にやってきたのか。
台風の夜を過ごす中で、一見ふつうの家族に見えるそれぞれが抱える葛藤や悩みと向き合っていく。
以下感想。
家族4人の抱える悩みがどれもわかるなーって。父親はまさに昭和の男という感じで昔は今でいうパワハラ上司だったが、大学時代の友人がパワハラにより自殺したことにより、それからは厳しい指導ができなくなっていた。
母親は本当は仕事をずっと続けたかったために、幼い頃から付き合ってきた恋人との結婚を諦めた。しかし子供の世話のため、結局は仕事を諦めて専業主婦となった。結局仕事を諦めるのであれば幼馴染と結婚することもできたはず。そんな中、同窓会でその幼馴染と再開。
息子は鉄道会社に就職したものの、仕事のつらさにより退職。どの仕事も長続きせず現在無職。
娘はルームメイトの友達からの執拗なアピールにどう対応して良いか悩んでいた。
そして、台風の夜に現れた若者は、なんと桜石家と関わりのある人物だった。父親にとっては自殺した友人の息子で、過去に偶然北海道旅行に向かうフェリーの中で一緒に楽しい時間を過ごした子でもあった。
サスペンスだと思っていたので、予想外のストーリーにびっくりしたものの、人との繋がりって素敵だなと思える本でした。
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ネタバレプルーフ読み。
著者作は『トリカゴ』『今日未明』『あの日の交換日記』『二重らせんのスイッチ』『死ぬならば、死にたいときに』に続き6作目。
14年前に起きた放火殺人事件。加害者家族の独白から始まる『残火』は、『トリカゴ』より読み応えのある佳作。
物語は成人男性4人の監禁事件に発展し、捜査本部と監禁場所の2拠点で語られる。1章の終わりでさらに、起きてはいけない事件が──。
主人公の里穂子には、前作で感じた「作者の言いたいことを言わされている」ような印象が今回も残った。また、謎解きが解ける瞬間の描写が心もとなくつまらない。が、ミステリの骨組みの意外さは上々。最終コーナーを回った後で、さらにひっくり返るサービスもある。ただ、このせいでメインの謎解きの余韻は薄れたかも。
とはいえ締めの一文もよく、満足度の高い1冊だった。これまでに読んだ著者作の中では一番よかった。
本屋大賞ノミネートもありかもしれない。 -
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タケシっていったい誰?幼馴染同士の記憶の違いから展開していくミステリー。思い込んでいることを否定していく話の展開は驚きと気づきの連続、信じていることをひっくり返しながら次々起こってくる疑問を解き明かしていく展開はなかなか面白かった。心理学には全く無知でも謎解きのキーは理解し易く、わかるなあと思わせるところも良い。
出来すぎ無理やりという意見もあり、この作家の作品としてはそれほど評価は高くないようだが、スリリングな展開、切ない気持ちをうまく恋愛ミステリーを仕立て上げていて、読み終わった後も登場人物の気持ちにしみじみと感じ入ることができる傑作だと思った。
読後感がいいと思える小説のポイントの一つは、登場人物のその後はどうなるんだろうと気になるところだと思うが、淳之介、優希、京香、それぞれに塗り替えられた記憶とそれまで持っていた思い出とともとにその先の人生を進んでいつまで欲しいなって思ったりした。でも一番気になるのは晴川先生かな。
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ネタバレ家族だからこそ言えない気持ち、言えないことがあるということ。
両親と子どもたちそれぞれの悩みは余りにも「よくあるもの」だからこそ、すごく感情移入してしまいどんどん読み進めてしまいました。
月並みな表現ですが、人との出会いは偶然で必然なんだなあと思わされる小説です。
最後は余りにも綺麗に終わるので現実はそんな上手くいかないよと思いつつ、なんだか希望のようなものが自分にも湧いてくるような気がする不思議な力がある一冊でした。
当たり前だけど人はみんなそれぞれ色んな人生を色んなことを諦めながら選択して生きている。その人生に心から満足している人の方が少ないのではないかと思う。後悔したりこんなはずじゃなかったのにと思ったり、何が正解なのかわからなくなったり。
でもそれで良いのだと、なんとなく思わせてくれるような、そんな小説でした。このお話そのものがミナトさんの占いのように誰かの気持ちをそっと後押しするような、そんな小説でした。
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Posted by ブクログ
読み応えがある作品だった。ショッキングな事件を下敷きにしたストーリーになっていて、ところどころ涙なしには読めなかった。「無国籍者」について話としては知っているけれど、どこか遠くの世界の話くらいにしか捉えられていなかったので、この本を読んだことで少しだけ知ることができた。トリカゴやユートピアというワードから狭くてクローズした世界感を彷彿させるが、本人のそこから脱却したいという気持ちと行動だけではなんとかならない現実に打ちひしがれる描写と絶望のあまり自らクローズした世界に閉じこもろうとする描写は胸に迫るものがあった。ミステリーとしても興味深く読みすすめられて割とオススメ◎