辻堂ゆめのレビュー一覧
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ネタバレ最近、辻堂さんの小説にはまっています。
「昼のはなし」は、高校3年生の鈴木茜の視点。「夜のはなし」は、≪サキ≫という名の女性の視点で、同じ内容のストーリーを描いています。
そして、「夜のはなし」を読んだ後で、もう一度「昼のはなし」を読むと、最初とは、全く違う感情や印象を抱きました。
同じ日常を一緒に過ごしているとしても、その人自身の考えや感情というフィルターを通してみているので、やはり同じ景色ではないってこと。
「昼のはなし」の主人公である茜自身も、幼少の時のつらい経験からなかなか立ち直れず、それが日常に影を落としていたが、同じような経験を持ち、その影響から寝たきりになってしまった女性「咲子」に出会ったことから、私だったら彼女の力になれると、そしてそこに生きがいを感じていく。
「夜のはなし」の主人公である≪サキ≫もまた、咲子と出会って、彼女が10年以上にわたる寝たきりの生活の中で、介助してくれる人たちに、常に穏やかな性格で接しているが、それはその善意によってしか生きることが出来ない彼女の精いっぱいの対応だということを知る。ただその中にも、卑屈になっている自分もいて、いやな感情は常に湧いてくるということも。
実際には、ちょっとした体勢でさえ一人で変えられない。すべてにおいて人の介助が必要な現状、これから先も変わることのない生活、この辛さや孤独感、絶望感から解放されるのは死しかない、でもその死ぬことさえ自分で行動に移すこともできないという、この思いを≪サキ≫だったらきっとわかってくれると、自分の運命を託そうとする。
≪サキ≫という名の女性のことはここでは詳しく触れていません、小説をぜひ読んでくださいね。 -
Posted by ブクログ
3日後に控えた高校の卒業式、そんな時に、3年生の英語担当の女性教師が誘拐監禁され、その様子が動画配信された。72時間後に始末するというメッセージと共に。
そして犯人から選ばれた三年生4人の生徒たちへ、誘拐の謎を解けとの手紙が届く。
犯人から指定された彼らは、クラスが違ったり部活が違ったりと共通点がなく、首を傾げるが、先生を助けるために彼らは協力し、共に行動を起こしていく。
その中で、誘拐監禁された先生は、生徒たちには、その先生らしからぬ振る舞いや行動から人気はあったものの、教師仲間からは浮いている存在であったようだということを知る。
しかし、どうしてその英語教師が選ばれたのか、そしてその謎を解くためにどうして自分たちが選ばれたのか…
実は、彼らはそれぞれ学校に対して不満、それも教師という立場を利用して受けた理不尽な行為や態度で、とても悔しい思いをしたことがあったのだ。ただ、4人のうちの一人、主人公である黒川自身は、自分もそれにあてはまるのかるのか少し釈然としない部分もあった。しかし、そこをとっかかりに、犯人像に迫っていく。
そんな黒川も、冒頭の文章から、どうしようもない不良の印象を持ってしまうけど、単純な空っぽの人物ではないことが、わかってくる。
そして、犯人の正体がわかった時、自分がこの4人のうちの一人に選ばれた理由とそれにつながる黒川良樹の思いもしなかった過去もまた明かされる。
辻堂さんの作品は、まだ数冊しか読んでいないけれど、この作品も、予想を裏切らない、ちょっぴり切なくなりながらも面白い作品でした。この4人のその後も読んでみたいと思わせる作品でした。 -
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こちらの作品は、さてさてさんから、私の大好きなげみさんが表紙を手がけた作品ということで、教えてもらいました。さてさてさん、ありがとうございます。
主人公は実父を高校生の時に殺害し服役を終えて、友人の五味渕が立ち上げた奨学金支援を行うNPO法人に就職した井瀬巧…。通勤に利用する東海道線の車中で、五味渕とともにホームから突き落とさたり、小学生の同級生である粕谷拓実を刺してしまう夢をみることに…。そんな井瀬に話しかけてきた女子高生の片岡紗世…彼女もまた同じような夢をみたことがある…それは「明晰夢」でありどんなに抗おうとしても、見た夢は現実になってしまうのだと話す…。
刻一刻と時間が進んでいく中で、徐々に解明されていく真実にドキドキしました。運命は変えることはできなくとも、どこかすべてがわかった上でということなので、わからないままよりはずっといいのかと思いました。大事な人を守りたい思いが、ぎゅーっと詰まった作品でした。 -
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急性の脳腫瘍で入院している傍らで、「君の命を助ける。その代わりに、君の最も大切なものを一つ奪う」と悪魔と名乗る青年に言われる夕夏。
悪性だった腫瘍が良性に転じて命が助かるが、2年間の記憶がなくなってしまう。
ゆめさんお得意のインパクトの強い始まり。
不思議な青年は本当に悪魔なのか、本当に記憶と命を取引したのか、謎めいた話にぐいぐい引き込まれる。
2年間の記憶をなくしたことで、生活や仕事にマイナスになったことも確かだが、立場が変わることで今まで見えなかったことが見えてきて、自分と向き合い、家族や過去と向き合うことになる。
いろんなことが交錯して重なっているような物語で、後半一つ一つ謎が解けていく。
ただ、すべての謎が細かく説明されていくところが、私としては逆に興醒めかなと。
最後の家族のシーンもそこまでやるか、いらないんじゃないと思ってしまった。
読み手の想像で楽しむところを残していても良かったかな。
タイトルと表紙の絵からどうしても漫画ちっくに感じてしまってそこも残念。
でも面白かったので、星4。 -
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高校2年生の追掛日菜子が好きになる相手、いわゆる推しが、なぜか事件に巻き込まれてしまい、日菜子が抜群の推理で解決していく。
推しは、舞台俳優から、力士、天才子役、覆面漫画家、そして総理大臣まで幅広い。
日菜子はパソコンやSNSを駆使し、高校生らしい熱とパワー溢れた推理で、犯罪スレスレ、いやもうすでに犯罪の域に入ってしまってもお構いなしに突き進んでいく。
日菜子に巻き添えにされてしまう大学生の兄のツッコミも面白く、つい応援したくなる。
事件解決までの推理力とスピード感は見事で、読んでいる方も頭をひねってみるが全く追いつかない。
コミカルなのに本格ミステリーで、ゆめさんは初期の頃からすごいなと改めて思った。
特に第5話『総理大臣に恋をした。』は、奥が深くて涙してしまった。
こんな若くて人間的にも素晴らしい総理大臣、日本の政界に現れてほしいよなと思ってしまう。
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読みたいリストに辻堂ゆめさんのが幾つか入ってるけど、これが初読み。
主人公の井瀬巧が花火大会のあった茅ヶ崎駅で人身事故で電車が止まっているときに、自分が電車にひかれて死ぬ夢を見る。同じように死ぬ夢を見る片岡紗世に声をかけられ、それが運命であることを知るが、避けようとすると事態はさらに悪化する、ということも気づかされる。やりがいのある仕事に就けてありがたく思いつつ、他にも理不尽な夢を見ることの解釈を試みるが、なかなか進まない。死ぬ日まであと3日となって、事態は急展開し、すべての伏線が回収されていくが、運命は変えられないラストだが、もう少しハッピーエンドはなかったかな、と思ってしまう。 -
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ネタバレ「私は……東洋の魔女」なんて帯だったから、てっきり元日本代表の話なのかと思っていた。まさか自分を奮い立たせるためのお守りのような言葉だったとは……。
全体としては読んでいてイライラの止まらない泰介パートと、爽やかで軽やかでキラキラしている万津子パートが交互に表れる構成で、最初は早く万津子パートにならないかなと思って読んでいたが、次第に万津子パートが読み進めるには辛すぎる展開になると、自分探し中の泰介パートに早く戻らないかなと思った。この逆転現象は単純にすごいと思う。辛くてしんどくて涙が止まらないけど、ページを捲る手が止まらない、そんな中毒性のある本だった。
奇しくも丁度パリ五輪開催中に読み始めて読み終わったのも、何かしらの相乗効果になったかもしれない。今このタイミングで読めて良かった。 -
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1964年と2020年の東京オリンピックの時代を生きる、親子の姿を三代に渡って描かれる物語。
現代パートでは息子・泰介、過去パートでは母・万津子目線で描かれています。
息子・泰介のパートは正直、最初はイライラしながら読みました。会社や家庭での言動や行動があまりにひどく、なんて困ったおじさん…と思っていましたが、後半にある事実が明らかとなると泰介への思いに変化が訪れます。
母・万津子のパートは、結婚してからが波瀾万丈で、読み進めるのも辛く感じました。それでも、東京オリンピックで東洋の魔女を見たことで、生きる希望を見つけた万津子の母親としての思いがひしひしと伝わり、母の強さを感じました。
それぞれの思いが交錯し、2020年の東京オリンピックに向けて、泰介の娘・萌子に思いが託されるラストはとても良かったです。