辻堂ゆめのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
やっぱりどういった書き方がされているかが気になって考えながら読んでいた。で、王道というか、保守派というか、そういったふうな書き手の印象を受けたのだけれど、そういった書き方でシンプルに実力をつけていこうとした時期に書いたのかな、とも思いながら読み進めていった。やがて気づいたのは、この書き方は書き手による「エンタメ的親切」なのだということ。
横に流れていくスピードが速く、ページはどんどん消化されていく。わかりやすい言葉を用いて、簡便な文章で語られるミステリ。どういった人たちが本書を手に取るかというターゲット層がしっかり把握されていて、そこに作家の力が凝集されているふうだった。
淡々とした筆致でも、クライマックスではぐっと心をつかまれ、ほろほろとさせられるところもあった。描かれているキャラクターたちの、人間としての熱さ、枠いっぱいまで広がった気持ち、そこに読み手の心理が繋がるからなのかもしれない。感動は、文章術の所産でもあるけれど、その文章が意味しているところの中身にもっと注目するべきなのだ。キャラクターたちに、しっかりと「人間」を感じたとき、感動が生まれている。紙の上の文字から「人間」を感じさせるには、言語化力や文章術がもちろん必要なのだけれども、それ以前、言語化の根源にあるまだ言葉を与えられず分節化されていなくて深いところに漂っているようなものをどのくらい心の眼で視認できているかが大切なのかもしれない。そういってふだん、意識化できるかできないかみたいな気持ちを紙の上の文字を読むという客観的な体験を読者にしてもらうことで、読者は「あっ!」と良い意味で不意を突かれ、揺さぶられるのだろう。
主人公黒川と、荻生田、澪、あやねとの即席でできた4人の仲間たちの謎解き青春は楽しかった。また、黒川を助ける新米教師・伊藤のキャラクターは、最後まで読んでみると、なかなかの微笑ましいタイプの人物で好きになった。
どこまでリアリティを小説に持ち込むか、という点を僕は考えがちだ。本作はところどころ、フィクション性が強いというか、文字ならではと感じられるセリフ回しがあった。それはそれで、「いっとき、世間や社会から離れていられる読書体験」としての効果のある技巧であるとも考えることができる。わずらわしい日常から離れられる時間は貴重だ。小難しくなく、作品世界に没入することでリフレッシュすることを小説作品を選ぶ意味として上位に置く人には相性が良さそうだと思った。またそのうち、辻堂ゆめさんの作品を手に取ってみよう。 -
Posted by ブクログ
驚異の執筆スピードの裏側に、3児の母の日常あり。
私が追いかけている作家さんの中でも、群を抜いて刊行ペースが早い辻堂ゆめさん。その裏側を覗いてみれば、なんと3人のお子さんを育てながらの執筆というから驚愕の一言です!
「えっ、そのペースで出し続けていて、いつ育児してるの!?」という疑問への答えがここに。
子育てを経験した人なら「あるある!」と膝を打つ懐かしさがあり、これからの方には「作家業と育児の両立」というリアルな戦記として参考になるはず。
■引用
子育てに限らず、人は簡単に、過去の出来事を忘れていく。エピソードとしては覚えていても、感触や匂い、温度、痛み、音、大きさ、色――そうした感覚はいつの間にか失われ、記憶から抜け落ちている。旅行先の海辺で風に吹かれているとき。展望台から息を呑むような景色を眺めているとき。”今しか感じられないもの"を感じている瞬間というのは、とても贅沢だ。 -
Posted by ブクログ
本選びに悩む10代に送るアンソロジーということで、ターゲット的には若年層向けっぽいけど、誰が読んでも楽しむことができると思った。
今回は四作品が収録されていて、どの作家さんも割と有名。まあだからこそ買ったわけだけど、内容も良かったです。
特によかったのが織守きょうやさんの「彼と彼女の穴」という作品。織守さんといえばホラーのイメージがあって、今作も恋愛といいつつもミステリー&ホラーテイストでなかなかいい味が出ていた。
物語のあらすじとしては、主人公はたびたび不思議な夢をみるようになる。夢の中ではひとつの穴があって、その傍に誰かが立っている。そんななか、主人公は一人の少女に出会って付き合うことになる。
穴、というちょっと不気味な連想と、恋愛というハッピーな雰囲気のギャップが面白い。
普通に読んでいくと、まあまあなバッドエンドを予想してしまうわけだけど、ラストは、、という展開もよかった。
文量はやや少なめで、かつ内容的にもとても読みやすい。読書初心者の人でも気負わずに読み切れるいい作品だと思った。というわけで⭐︎三つ。