辻堂ゆめのレビュー一覧
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女子高生探偵の日常の謎ですね。
追掛日菜子は女子高生。彼氏なし。
「推し」一筋なのだが、ストーカー並み。
その「推し」が何故か事件に巻き込まれて、日菜子が解決するというストーリー。
大学生の兄が引きずり込まれてワトソンの如く、事件解決に奔走する。
めちゃくちゃユーモアたっぷりの本格探偵小説になっているのが、辻堂さんの力業ですね。
推理が際立っています。パソコンとスマホを駆使して推論を組み立てる熱意は凄まじいほど。
行動力もホームズもびっくりするくらいの無茶をする。
何故か、解決すると「推し」が覚めてしまいう。
次々と「推し」が変わって、五話の短編連作ですね。
辻堂さんの文章はスピードがあり、楽しい。 -
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ネタバレ「その爪先を彩る赤」は、多重人格を装う必要性がよくわからなかった。さらにはあまりに露骨なヒントでねらいが読めなかったなぁ。総じてキャラ設定の意味を十分に活かせていない気がする。長編だと違うんかな?
「東雲高校文芸部の崩壊と殺人」は、妙に淡々としていたがトリックはよかった。というか、淡々としていたからトリックの良さが際立ったのかもしれない。高校という世界をどのように色づけるかは、世界観だけではなく、トリックの受け取り方まで変えるんだなと改めて思った。
「黒塗り楽譜と転校生」は、転校生って必要?って感じの扱いになっちゃった気がする。タイトルにつけて一定の役割を期待したのだとは思うけど、作品全体としてはむしろマイナス方向ではなかろうか。今回の謎の本質をよりプラスにさせるためのテクニックだったと仮置きしても、それでもなお悲しい存在になっちゃってるなぁと思う。3枚目にもなりきれない的な。
「願わくば海の底で」という作品は、海の底で、もしくは海の底に何を願うのかという、タイトルをどう受け取るかで事件との距離感を変えてしまう難しい作品かもしれないと思った。それがまだまだ誰の記憶にも新しい震災だからということではなく、人の生き死にには、特に残された人にとっては当人にしかわからないことがあるという大前提をミステリーの伏線にしたところだろうと思う。ミステリーは誰にとってもフェアでなければならない。イレギュラーな形で人を失う辛さを、誰しもがもつ感情や意図で隠さなければならない状況を持ち込むことでそのフェアさを担保したという。短編だから表現できたのかもしれないね。長いと震災のイメージがデカくなりすぎるかもしれない。
「あるいは紙の」は、高校というおそらく10代のそれなりに濃密な時期が、こうした日常の謎で彩られていたかもしれないというある種の夢をリアリティをもって見せてくれた(つまりは自分の高校時代は多分もっと平凡だった)。新聞部の矜持とかいうことではなく、おそらくただの若気の至りなんだろうけども、何をするかより、誰とするかみたいなところで主人公の彼は、裏染と向坂にアテられたんだろうな。
ただ、タイトルの意味がわからなかった。向坂が無理をしてる理由もよくわからないままな気がする。今回の事件の前の2つの殺人事件を経て、もしかしたら向坂は裏染の立ち位置が広がってることになんかちょっと焦ったのかもしれないね。 -
ネタバレ
美しすぎるミステリー
この小説を読んで、ミステリーなのにこんなに美しいという感想で終わるものがあるんだと初めて思い知らされました。
彼女がついた多くの嘘も全て意味があり伏線があり、読んでいて、これもあれも繋がっているのかと感心させられるばかりでした。
ただ、ページ数が少ない分2人の会えなかった時間が割とあっという間で少しあっさりしすぎているような気もしてしまいました。
音楽が題材となっているだけあってピアノの描写が何度も出てきますが、実際に聴こえないピアノの音が聞こえてきそうなほど描写が細かく、感情が高まるかのごとく緻密に表現されていて、本当に素晴らしかったです。 -
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乗っている電車が人身事故を起こした直後から、明晰夢を見るようになった井瀬。女子高生の紗世によるとそれは現実になるものであり、それによると井瀬も紗世も電車に轢かれて死ぬことが決定しているのだという。その運命は変えようとしても事態が悪化するだけであり、そのまま座して死を受け入れるしかないのか。さらに井瀬の明晰夢の中で起こる不可解な事態は何を示しているのか。スリリングな読み心地のミステリです。
少年院から出所して更生の道を歩み始めたところで、逃れえぬ運命を知ってしまった井瀬がどのように行動するのか。前科持ちで学歴もない井瀬だけれど、しかし彼はとんでもなく冷静だし強い人物であると感じます。だからこそ彼を取り巻く不審な状況にハラハラさせられどおしでした。立身出世した不良仲間の五味渕と、小学生時代の綺麗な思い出だけを共有した粕谷、対照的とも思える二人の友人のどちらが味方となり得るのか。そしてまた七年後に死ぬことを予知した紗世がどのように生きるのか。リミットが迫っていくのがもうつらくて、だけれど先が気になって仕方ありません。
真相は予測がついたところもあり、まったく予想外だったところもあり。ああ、そういう結末になるのかあ……だけど流れ的にはこれしかないんですよね。 -
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前作から、10年ぶりの復活となる本書は、創元推理文庫から2020年に発売された、「書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー」の第二弾で、全て1990年代生まれの作家が書かれているのが特徴ですが、どちらかというと、その若さはあまり気にならず、バラエティに富んだ多種多様な作風を、一冊で体感できた喜びが強かったです。
武田綾乃 「その爪先を彩る赤」
演劇部の失くなった靴を捜索する話で、犯人や動機は分かりやすいものの、その後の探偵に絡む、謎解きの細やかな伏線が見事だと思いましたし、そこに潜んでいたのは、探偵と「僕」との間における、稀少な価値観の共有で、こうした自分を認めてくれるような喜びは、学園生活では、やはり大切ですよね。
斜線堂有紀 「東雲高校文芸部の崩壊と殺人」
武田さんの、明るい雰囲気の話の後だけに、余計に衝撃的に思われて、犯人探しや事件の謎以上に、後味の悪さが凄まじく、おそらく、大人の全く介入しない状況もそうさせたのかもと思うと、学生たちの持つ視野の狭さに、思考能力の限界や恐ろしさを感じさせられて、もはや狂気的ですらある。問題作。
辻堂ゆめ 「黒塗り楽譜と転校生」
ミステリの要素に、やや専門性を感じられたが、合唱コンクールを絡めた清々しい物語には、これぞ青春といった気持ちの高まりを覚え、最初まとまらなかったけど、やるときはやるといった、かつての私の中学のクラスの雰囲気を思い出しましたし、謎の答えについても、同様の青春が滲み出ていて、この時しか体験出来ないことの素晴らしさを、実感いたしました。
額賀澪 「願わくば海の底で」
まさか、こうしたアンソロジーで、東日本大震災を題材にしたことに驚き、その筆致も、当時の哀しみだけでは表せないような、複雑で繊細な哀しみを、こと細かく表現しており、『その《潮時》を無理矢理踏み越えてきた』等に感じ入るものもありましたが、ミステリ要素も、最後の最後にどんでん返し的に入っており、しかも、それが見事というのが適切なのかどうか分かりませんが、皮肉にも、震災と絡んでいるからこそ成立するような、叙情感や喪失感に、諦観めいた悲しみ、そして、人として、どうあるべきだったのか? そんな事を考えさせてくれました。
青崎有吾 「あるいは紙の」
最近フォローしている人達の間で盛り上がっているのを、私は素知らぬ振りをしつつ、秘かに気になっていた方で、まずは短編をと、お試し感覚で読んでみたら「裏染天馬」シリーズで、しまったと思ったが、どうやら番外編的な感じでもありそうで、主役は「クラーク・ケント」の彼だったが、「向坂香織」とのやり取りに青春のもどかしい切なさがあったり、天馬とのやり取りの素朴さ等、まず物語としての面白さがあっての、最後の謎解きは渋いながらも効果的だったし、それは、向坂自身の思いの詰まった、彼女自身の存在意義を証明したようでもあって、彼の為したことの大きさを実感させられた終わり方は、とても素敵で、このシリーズにより興味を持ちました。それにしても、青崎さんは時代もの好きなのかな。
以上、五つの短編を読みまして、いくつかの作品で印象的だったのが、この年代特有の、本音を素直に言えなかったり、自分の想定以上の意地を張ってしまうといった、そのもどかしい感情に苦しむ姿であり、これこそ青春に付きものなのかもしれませんが、おそらく実際にどうすれば良いのか、本人自身、分からないのでしょうね。
しかし、そこを試行錯誤して乗り越えていくことが、大人へと成長していく、一つの要素なのかもしれないと思うと、これらの物語には、そうした成長への願いが込められているようにも感じられて、私の中のどこかで、アンソロジーには単行本に掲載しないような実験的なものや、ちょっとした小品を書いているといった、そんなイメージを払拭してくれた、素敵な作品集でした。 -
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サラリーマンの光弘と専業主婦の咲奈は、だれもが羨む幸せな夫婦。だがある日、気づいてしまった。光弘は咲奈の不貞に、咲奈は光弘の裏切りに。
その日から、彼らは良い夫婦の仮面をかぶったまま、互いの殺害を計画し始める。
『今からあなたを脅迫します』シリーズなどが代表作の藤石波矢さんと、『いなくなった私へ』などの辻堂ゆめさんの共著で、夫パートが藤石さん、妻パートを辻堂さんが書いています。
共著の小説というと、著者が変わる際に違和感を覚えて没入感が覚めてしまうことがよくあるのですが、この本はそういったこともなく、自然な文章で楽しめました。
あとがきを読むに、自分の書くパートで相手を殺すトリックを仕掛けてパス。バトンを渡された方がそのトリックを回避し、別のトリックを仕掛け返して返す……という方法で書かれたようです。相手のトリックをひっくり返し、相手パートに書かれた文章なども逆手にとって返す、という共著ならではの面白さがあり良かったです。
正に紹介文にもある通り"殺し愛"。こんな殺し合いに発展はしますし、エキセントリックで似た者同士ですが良い夫婦の二人です。
ミステリっぽいタイトルですが、ミステリというよりはドタバタしたコメディ・エンタメ小説。最後まで読むとむしろラブコメかもしれません。
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共著の小説ならこれも好きです。
『注文の多い注文書』(ちくま文庫)/小川洋子、クラフト・エヴィング商會