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蒲田署刑事課強行犯捜査係の森垣里穂子は、殺人未遂事件の捜査中に無戸籍者が隠れ住むコミュニティ“ユートピア”を発見する。容疑者のハナはコミュニティのリーダーであるリョウの妹だった。捜査によって彼らが唯一安心して暮らせる場所を壊してしまうのではないか──里穂子は苦悩しながら調べを進めるうち、かつて日本中を震撼させた未解決の“鳥籠事件”との共通点に気づく。特命捜査対策室で同事件を担当する専従捜査員・羽山圭司とともに執念の捜査の果てに辿りついた衝撃の真実とは。社会問題への真摯なまなざしとミステリの企みが見事に融合した、第24回大藪春彦賞受賞作。/解説=千街晶之
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聞いたことはあったけどいまいちよく理解していなかった無戸籍という言葉。本当にそんな人が今の時代にいるのか思わずネットで調べて見た。現在の推定無戸籍者は800人程。色んな理由で戸籍を取得できない人がいることを知った。
私がこの作品を最後まで読んだのは作品としての面白さはもちろんだけれど、少なからず好奇心や、野次馬精神のようなものもあったと思う。これは鳥籠事件の記事を面白く書いた週刊誌や事件の感想を興味津々に語っていた里穂子の両親と同じようなものかもしれない。
でも読み終わった今、私は心の底から無戸籍で、この世に存在していることを誰にも知られていない人、当たり前の生活を送れず苦しんでる人が1人でもいなくなることを心から望んでいる。もちろん私にはあのユートピアから15人を救い出してくれた園村さんのようなことはできないけれど、里穂子のように寄り添うことはできるかもしれない。
怖いのは無知であることというのを改めて思い知らされた気がした。
Posted by ブクログ
思っていた話とは少し違ってたが、主な問題は無戸籍の人達の話。
事件が起き、その犯人が無戸籍という展開だったが、過剰に事件と無戸籍が絡みついていなく、無戸籍ということへの偏見や感情を抜きにして、事件も解決していく展開が、問題提起として無理に訴えてこないところが良かった。
これは個人的な感想だが、必要以上に森垣さんのお子さんの話が出てこないのが印象的だった。
こういう女主人公の話は、否応なしに母性に訴えてくる傾向が多いが、この作品は仕事と家庭をすっぱり分けて読ませてくれるので、変に構えなくても良かった。
最後のシーンはなんだかグッとくるものがあった。
時代に伴って、法律やらサービスやら色んなものが変わっていくのに、変わっていけないのは我々で、それなのに昔喜ばれたものを与え続けていたら、それで満足を与えているように思ってしまう気持ちはとてもよくわかった。
「悪く」はなかったが、「良く」はなかったんだと思う。
問題提起といえば陳腐だが、この件に関してではなくても、自分も常にアンテナを張ってアップデートしていかないといけないと思った。
Posted by ブクログ
一言でいえば、「無戸籍」という現代社会の盲点に光を当てた、極めて濃密な社会派ミステリです。
しかし、重いテーマとは裏腹に、その読後感は驚くほど澄み渡っています。
物語の軸となるのは、二十数年前に起きた凄惨なネグレクト――通称「鳥籠事件」です。
過去の悲劇と現在の事件が交錯し、孤立や偏見や差別といった重苦しく、深刻なテーマが読者に突きつけられます。
しかし、著者の筆致は驚くほど優しく、柔らかく、端正で読みやすいのです。
だからこそ、そのギャップが、物語の切実さをより際立たせているようにも感じます。
兄妹の正体、鳥籠事件の真相、刺傷事件の犯人……など、散りばめられた謎が解き明かされていく、ミステリとしての面白さや完成度はとても秀逸ですが、何よりも胸を打つのは「家族以上の絆」で結ばれた人々の姿。
何もかもが制限されたコミュニティで、当たり前の権利からも見放された「何者でもない」無戸籍者達。
それでも、彼らは境遇を受け入れ、協力し合い、懸命に生きているのです。
血縁を超えた「同志」の絆、そして刑事たちのバディ像を通して描かれる「仕事への情熱」、犠牲と甘えに委ねる「家族の在り方」など、峻烈な現実の中にも温かな慈愛が満ちています。
そういった社会派のヒューマンドラマとしても、ミステリ以上に充実した物語かもしれません。
Posted by ブクログ
日本の『無戸籍者』は相談・発見した人が約3000人。実際は倍以上いる可能性がある。
初めての、辻堂ゆめさん。
日本人として『当たり前』の戸籍が、やむを得ない事情で戸籍ない人が存在し、日常の中にひっそりと溶け込んでいるかもしれない…と知った。
元カレを刺した女性が無戸籍者のハナ。彼女が住んでる場所が実は『無戸籍者』が集う『ユートピア』にいる。そこで出会った兄のリョウと1996年に起きた『鳥籠事件』の被害者だったのでは…と時代を超えた事件がつながり始めようとする物語でした。
(法則やルールは最低限守るとして)絶対あるべき姿を目指すのではなく、各々の価値観に向き合い、自分たちにとって最適な生き方をする。各々が持つ『ユートピア』はそれで十分だと思うのです。
だから登場人物が『縛られているルールや常識に囲まれて過ごしている』ことを、鳥籠にちなんでいるのかなと思った。
無戸籍者は何らかの事情で放棄され法律や常識を知らないまま生きる。
知らないことは無垢でもあるが裏を返せば無知になる。それが本人たちにとって『ユートピア』であり果たして最適な生き方なんだろうか…という疑問。
日常に過ごす私たちは、様々な法律があり価値観やルールと隣り合わせ。それが自分たちにとって『ユートピア』になるのだろうか…という疑問。
また事件や事故で取り出される報道の在り方、容疑者たちの犯行理由にも様々な疑問。
そんな疑問がふつふつと湧き出ている中で気づく「価値観や先入観に縛られている」ことだったのではないかと思う。
『鳥籠事件』は時代を超え令和の時代で終止符を打つ。無戸籍だからといって利用するなんて起こってはいけない事件。
無戸籍者が登録したくてもできない法律やルールを、一人ひとりが生活しやすい環境作りを社会全体が変えていけるよう、切に願ってます。
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