辻堂ゆめのレビュー一覧
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ネタバレ14年前の産院放火事件。
この事件の犯人、大森千彦の息子が犯す復讐劇や過去のエピソードを通して、加害者家族の苦しみを描き出す社会派ミステリ。
被害者家族の救済措置や支援団体はたくさん存在するのに、加害者家族は半ば連帯責任のように世間から責められ続け、誰も救いの手を差し伸べてはくれない。
最後の最後で、被害者家族の三人が実は放火犯だと露呈。
大森はスケープゴートであり、冤罪であることがわかった。
この、産院放火事件に関しては。
ではなぜ、大森は放火という罪を被ったのか。
大森の息子、湊川は、火遊びが好きだった自分が放火犯だと父親が思い込み、自分の罪をかわりに背負うためだったんだろうと予想していた。
しかし真相は違っていた。
大森はある風俗嬢を妊娠させ、かっとした末に撲殺。
その日が放火の日と同日であった。
風俗嬢を妊娠させた末に殺した罪か、放火か。
天秤に賭けた結果、大森は放火犯になることを選んだまでだった。
大抵の真実は、美しくなんかない
なんども繰り返されるどんでん返しに、加害者家族の涙に。
ミステリとしても社会問題提起としても考えさせられる小説だった。
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Posted by ブクログ
14年前の産院放火殺人事件の被害者遺族3人が連れ去られた。彼らを誘拐したのは加害者の息子だった。そしてまた、新たな事件が。彼の目的は?
「トリカゴ」でタッグを組んだ森垣と羽山のコンビが事件の真相に迫る。
被害者遺族と加害者家族は対立軸のように扱われるが、実は加害者家族もある意味被害者であるということを訴える社会派ミステリ。
家族が犯罪者になった時、家族が味わう圧倒的な孤独と地獄の日々。子供が罪を犯したらたとえその子が何歳でも親は育てた責任を断罪され、親が罪を犯したら犯罪者の子もまた犯罪予備軍であるかのように疎まれる。家族は犯罪を犯したわけでもないのに、寄り添うものはおらずただ生き地獄を味わう。
彼らに鞭打つ人たちは、自分たちは絶対にそちら側にはならないとどうして思えるのだろう。
「殺人事件の加害者家族と被害者遺族――
一つ選べと言われたら、あなたはどちらになりたいですか?」
どちらも選べないよね。少なくとも、今の社会構造なら、加害者家族になる方が過酷な人生を送ることになるだろうし。だからって、大切な人を失うことも怖い。
そんな問題提起の重さとは別に、ミステリとしても二転三転の面白さを兼ね備えた作品。
神奈川の未解決事件のこととか伏線がうまく回収されすぎの感はあるけど。あと、闇バイトの運転手があそこで真相にたどり着くとは、どれほどの切れ者?まあ現実には無理よね。
個人的には森垣刑事があまり好きじゃないからこれがシリーズになるのか〜という感想だけど、羽山刑事とのコンビがどう変化していくのかちょっと見てみたいかも。
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Posted by ブクログ
被害者遺族と加害者遺族の対立。
加害者側の残された家族は自分の罪ではないのに一生責められる人生となる理解し難い悲しい事実に胸が痛い。
取り調べ室で犯人が嘲笑いながら新たな事件が起こり刑事たちが翻弄される場面は、『爆弾』を想起させるシチュエーションだったな。
安野はあの場でそんな推理できるもんかねって出来過ぎ感あったし、共犯者ももしかして?と勘繰ることもできてミステリー慣れしてきたぞ〜と思った矢先。
真実が暴かれるにつれてそもそもの悪が反転したり序盤の関係のない話が繋がって二転三転。
犯罪はやはり救いようのない罪なのだ。
綺麗な罪なんてない。
そして真実よりプライドを守る人が多すぎてこんな悲惨な結果になってしまう。
刑事ものって難しい言葉や人物も多くて読むのに時間かかるからあまり読まないけど、前作の『トリカゴ』に出てくる刑事と同じらしいじゃないか。
記憶が薄れる前に読みたいぞ。
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Posted by ブクログ
ネタバレ辻堂ゆめのダークサイド、イヤミス短編5編収録。社会面にちょいちょい出てきそうな死亡事件記事ような冒頭があって、その実は…って展開の5話。ミステリートリックは辻堂印なんで問題なし。それ以外に内包するテーマが味わい処でもあるのだが、そういう意味では特に印象的だったのは2話の「そびえる塔と月明り」と5話の「四角い窓と室外機」
どちらも違う雰囲気で切なさがたまらない。2話では叫びたくなるような、5話では布団に潜り込みたくなるような。
すっかり国力も落ちて、景気が良くても生活が苦しい、後進国への道をひた走る日本。それでも戦争はないし、インフラはそれなりに整備されているし、人材不足と言われるくらいに仕事はあるし、へいわな国と言えばそうなのだが、この本に書かれているような不幸や貧困は、今やどこにでもありふれて転がっている国になってしまってんなぁ。それを選んできたのは俺たち国民でもあるんだけど、切ないなぁ -
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『私は何気なく、ネットニュースのトップページを開く。今日も大したニュースはない。どこかで見たことのあるような記事ばかりだ。「つくづく平和だよなぁ」-プロローグ-』
短めのニュース記事から始まり、あらかじめ結末を知った状態で読み進めていくちょっと変わったミステリー。手に負えないひきこもりの息子とか、再婚相手と連れ子の相性とか…良いイメージのないものがいつの間にか形成された偏見であったことに気づかされます。事件に至るまでを辿っていくと、思ったほど悪くない関係性があったことも見えてくる。それでも悲劇的な結果が変わらないという事実が重くて、イヤミスならではの不快感と切なさが残りました。以前にコロナ禍を描いた「答えは市役所3階に・2020心の相談室」で、辻堂ゆめさんの作品に初めて触れました。「今日未明」は、それとはまた違った魅力を味わえる1冊だと思います。著者には鮮やかに振り回されましたΣ(・∀・;)。
2026.10 -
Posted by ブクログ
『今日未明、――――』ニュースでよく聞くフレーズの短編集。
実際には『未明』=午前0時〜3時頃のことなので、未明の事件の話はなかったかな。
ラインナップは以下の通り
1.住宅で血を流した男性死亡 別居の息子を逮捕
2.マンション女児転落死 母親の交際相手を緊急逮捕
3.乳児遺体を公園の花壇に遺棄 二十三歳母親を逮捕
4.男子中学生がはねられ死亡 運転の七十五歳女性を逮捕
5.高齢夫婦が熱中症で死亡か エアコンつけず
…確かにどれも、『どこかで聞いたようなニュース』なんだよな。
ニュース番組でも概要をアナウンサーが読み上げるだけの、特に大きく取り上げられなかったりする感じ。
概要を知った人々は、きっとこんな感じだろうと事件の背景を勝手に推理して断罪する。
そんな光景がありありと浮かび、絶妙だなと感じた。
実際の事件の背景は、想像とは少し違うかもしれない。
事件を起こした人(あるいは巻き込まれた人)は、どんな人だったのか。
全体的に物悲しい感じだったけど、とても面白かった。
辻堂ゆめさん、面白い作品を書く人だな。