あらすじ
長い雨の切れ間に女の子を拾った。「ここ、どこ?」ちぃ子と名乗るその少女はどうやら1980年代からタイムスリップしてきたらしい。ちぃ子はなぜ僕の前に現れたのか、はたして元の時代に戻れるのか、封印された記憶に隠された真相は。娘を亡くした父親と、両親のいない少女の、奇妙な「夏休み」がはじまる。すべての伏線が繋がったとき、時空を超えた愛の物語が浮かび上がる号泣必至ミステリー。(解説・大森望)
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Posted by ブクログ
作品紹介・あらすじ
長い雨の切れ間に女の子を拾った。「ここ、どこ?」ちぃ子と名乗るその少女はどうやら1980年代からタイムスリップしてきたらしい。ちぃ子はなぜ僕の前に現れたのか、はたして元の時代に戻れるのか、封印された記憶に隠された真相は。娘を亡くした父親と、両親のいない少女の、奇妙な「夏休み」がはじまる。すべての伏線が繋がったとき、時空を超えた愛の物語が浮かび上がる号泣必至ミステリー。
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タイムスリップとミステリーが合体したような内容。ただSFっぽさは皆無。
全部で第7章+アフターストーリーからなる長篇。
第5章までは少し否定的な印象を受けていたのだけれど、第6章を読んでがらりと印象が変わった。
それはそれとして……ちょっとだけ徒然なるままに。
2021年、娘を病気で亡くし離婚したばかりの男性の前に、1984年からタイムスリップしてきたちい子と名乗る女の子が出現する。
2021年はコロナ禍の時代、1984年はバブル直前の時代。本作の中には、この二つの時代を比べる描写が出てくるのだが、それがなかなか面白い。ささやかな文明批判みたいな意図も込められているように思える。
地の文がちょっとくどい、というか説明過多な印象を受ける。もう少し簡素にまとめてもよかったように思う。
そしてこれが一番気になった部分なのだけれど、ちい子という10歳の女の子の言動。なんかあざとい。作者として可愛さを「表現」するのではなく、言葉で「説明」してしまっているように受け取れてしまう。しかもそれをちい子本人の口からセリフとして語らせてしまっている。これがとても気になった。
ところが……。
第6章を読んでその印象が180度ひっくり返ってしまった。この章は伏線回収に当てられている。ネタバレになる恐れがあるので詳しくは書けないのだけれど、「ああ、そうだったのか。ちい子は演技をしていたのかもしれない」と思った。作者の意図とは全く関係ないかもしれないけれど、僕の中では「全てを理解していないけれど、ある程度理解しているちい子は、無意識なりに演技をしていた」と受け取れた。そうなると「なんかあざとくていやらしいな」と思えたちい子の言動が「なんていじらしくて切ないのだろう」とまさにコペルニクス的転換をしてしまった。それが証拠にこの章を読み終えた後、前に戻っていくつかの場面を読み返したのだけれど、全ての場面が「あざとい」から「いじらしい」に変わった。もしかしたら僕の誤読がそんな結果を導いたかもしれない。他の人はそんな読み方をしていないかもしれない。でも読書ってそんな「勘違い」の積み重ねなのかもしれない、と自分に言い聞かせて納得。
伏線回収は第7章へも続いている。この連続した伏線回収が読んでいて心地よかった。なんか意図していなかった「おまけ」をもらったみたいで得した気分。文庫版にのみ収録された「アフターストーリー」もいい感じに本編の余韻を助長してくれているようで好感が持てた。
それにしても……。
僕が辻堂ゆめさんの作品を読むのは2冊目。初めて彼女の本を読んだのは「今日未明」という短編集。僕はこの作品をきちんと読むことが出来なかった。5編のうち最初の2編はなんとか読んだのだけれど、あまりにも読後感が不快だったので、残りは読むことなくほっぽってしまった。時間を割いてまで不愉快な気持ちになりたくなかったから。
そんな作品を書いた人が、この「君といた日の続き」というとても素敵な作品を書いていたとは……。「今日未明」での僕の辻堂ゆめさんの印象は「最悪」だったのに、この「君といた日の続き」を読んだ後は「もっと他のも読んでみたい興味深い作家」に変わっていた。これもまたコペルニクス的転換。
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心が救われる作品。
タイムスリップ小説としての面白さでグイグイ引っ張られる。その中にいくつもの謎が散りばめられていて、いつのまにかその謎に魅了されている。その頃にはミステリー小説として読み進めることになり、散りばめられていた伏線に、そういうことか、と声を出して叫び出したくなる。
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心温まる物語
今の自分自身と重ね合わせながら、親子の時間、夫婦の時間は本当にかけがえのないものだと感じた
終わりは分からないけれど、ふとした瞬間も大切にしながら家族と過ごしていきたいと思う
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読み終わりに近づくにつれ、涙腺が緩む感覚があり泣けてきました。突然現れた、10歳の女の子ちぃ子との温かくて楽しい一か月は、読んでいて堪らなく愛おしくて、物語の展開上、いつかこの可愛いちぃ子がいなくなってしまうんだと思うと、寂しさが湧いてきました。そして、最後の伏線回収。ある程度予想はついたので驚きはそんなになかったですが、愛する人と共に過ごす時間の大切さを想うと温かい涙がでました。それから、妻との最期の会話。胸がいっぱいになりました。私は、主人公の譲と同じ年齢の男性なので、余計に感情移入出来たのかもしれませんが、とても温かくて泣ける小説でした。
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物語のあちこちに伏線があり、読みながらページを遡っていくのが楽しかった。譲は過去からきた紗友里(ちぃ子)に出会い、自殺をやめて生きていく勇気を取り戻した。妻が自分のことを10歳の頃から愛してくれていたことに気づき、自分の優しさも認められた。紗友里は10歳の頃に大人になった譲に出会ったことで、大切な友人を亡くしたあとも、心を壊さずに生きてこられた。こうやって過去と未来の中でお互いを救いあえているのが素敵。もしも、私が自分の生んだ子どもが10歳で亡くなってしまうことを出産時に知ったら、亡くなる未来を変えることに必死になり、与えられた時間を精一杯大切に生きていくことはできないと思う。紗友里は優しくて強い。そんな妻の想いに譲がちゃんと気付けて良かった。過去も未来も変えることは出来なかったけど、過去や未来に抱えていた想いを変えることができてよかった。
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夏っぽい作品が読みたいと思い表紙買い。辻堂ゆめさん多分初読みの作家さん。
表紙の可愛らしいイラストからライト的な物と思い軽く読めるかなと思っていたら、何で今まで読んでなかったんだろうと思うくらい揺さぶられた。
タイムトラベル物で一夏の疑似親子体験。楽しい日々が続くが終わりの迫る切ない時間だ。夏の終わりで、ちぃ子は消えてしまうんだろうな、悲しい結末を予想していたんだが。
後半、次々と衝撃がくる。鳥肌がたった。脳がバグる。今まで一体どんな気持ちで、あの人はいたんだろう。想像すると苦しくなった。
ちぃ子の正体が分かるとまた始めから読み直したくなった。
読み終わり改めて表紙をみてアフターストーリーと一致してまた泣きそうになった。いや泣いてた。
人生悲しいだけじゃない。同じアラフィフとして沢山の元気をもらえた気がする。まだこれから。
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父親と母親、そして幼く命を亡くした少女。泣けるミステリーと帯には書かれているが、ミステリー性はそんなにない気がしました。それより感動でした。自分も状況は全く違いますが、似たような境遇が今現在進行形で進んでいて余計いろいろと考えさせられました。こうゆうの弱いな〜、すぐ泣いてしまいます。
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ある日男性が出会ったのは、1980年代から来たという小さな女の子。
ふたりの不思議な時間の中で、少しずつ心がほどけていく様子に、じんわりと温かい気持ちになりました。
物語にはたくさんの小さなヒントが散りばめられていて、最後には全てがつながっていく。
その伏線の回収が本当に見事で、読み終わったあとに「そういうことだったんだ!」って感動しました。
切なさと優しさが静かに重なっていて、タイトルの意味がふわっと心に届く、優しい物語。
大切な人との記憶や過去への想い、そして希望を感じられる、とても素敵な一冊でした。
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ひとめぼれ。
こんなひとめぼれなら、されてみたい。
途中、ストーリーが平坦で冗長に感じる部分もあった。
しかしながら、最後はよく考えられた伏線回収だった。
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心があたたまるファンタジーだった
父にお勧めされた本。今まで10冊以上父にお勧めされた本があったが初めて読み終えることができた笑
運命は本当にあるんだなと思える内容の本で、読み終わったらポカポカした
私の家族は離れて暮らしているため、誰かがもし辛くて潰れそうな気持ちを抱えていてもすぐに気づいてあげることができない。
今の自分にできることはマメに連絡を取りたい家族を気にかけることを忘れないことだなと思った。
やはり血が繋がった家族というのはどこか不思議なもので、考えていることがわかるというような薄っぺらいものではなく神秘的な何かを感じるときもある。
世界の中の私たち4人だけのこの不思議な関係を、限りある時間かもしれないと思い大切にしていきたいと思えた本だった。
Posted by ブクログ
話の展開や情報開示のタイミングはとてもよかったが、設定がイマイチかなと思った。
特に、成年が未成年と認識している子どもを自宅に招き入れるという点に少し嫌悪感を覚えました。
ニュースなどでもこのような行為は犯罪として扱われていて、実際逮捕者を目にすることも少なくないので敏感になっているのでしょうか。。
(もちろん物語の流れ上、この設定は必要不可欠なのかなとも思うし、そんな事言ってたら物語なんて作れなくなっちゃうとは思うのですが…)
あとは、自分ができなかったことを変わりの誰かを通してやった気になって満足している主人公だと感じたので、その点も話にあんまり共感ができなかったポイントかも。
Posted by ブクログ
雨、ときどき、女の子/似ているようで/父と娘と/ちぃ子、君は/ささやかな時の/だから、ここに/明日へ
雨、ときどき、晴れ
傷心のおじさんが少女を拾う??
タイムスリップみたい……?
この子はいったい誰??
少しずつ傷が癒されていく感じがする
あぁ そうだったのか
と優しい気持ちになれる ふふ
Posted by ブクログ
娘を病気で失い、妻とすれ違いで離婚して孤独に生きる男性がある雨の降る日に1980年代から来たと言う少女と出会い、不思議な一夏を共に過ごすことになる。
全てを失った主人公が突如現れた少女と過ごす温かいひと時と過去からやってきたという少女の謎がうまくマッチングしてとても読み応えのある内容になっていたと思います。
失った娘の喪失感を浄化していく少女との尊い夏休みの中に少女の正体について様々な伏線が張り巡らされ、最後の伏線回収で一気に感動へと集約されていく展開はお見事。
読み終わった後の物寂しいような晴れ晴れしたような感覚がめちゃくちゃいいですね。
夏の感動物語としてもミステリーとしてもとても面白い作品でした。
Posted by ブクログ
たぶんデビュー作以来の辻堂作品。
テンポ良くて、一気に読めた。「ちぃこ」の正体や散りばめられた伏線にはなんとなく気づいたので、その答え合わせをしたくて一気にっていうのもあったかな。
それにしても、辻堂さん平成生まれ?80年代の描写が素晴らしくて、それこそ、ちぃこの言動でタイムスリップした気分になった。
Posted by ブクログ
タイムスリップしてきたという少女と
娘を亡くして絶望の中で生きていた中年男性が出会う
色々と伏線があり回収されていくが
ある程度は予測がつくのではないだろうか
泣けると言うほどではないが
心が温まる安心して読める良作でした
Posted by ブクログ
ある日突然、タイムスリップしてきた女の子が現れた。なぜその子はタイムスリップしてきたのか、一緒に過ごす事で少しずつが明らかになっていくお話。
因みに帯に泣けるミステリーと書いてありましたが、泣けはしません。(※個人の感想です。)
家族や人との繋がりを通して、心が暖かくなっていくお話です。
Posted by ブクログ
愛娘を病気で亡くした譲の前に、1984年からタイムスリップしてきた、愛娘と同じ歳くらいの少女と過ごすうちに、変わっていく想い……。もしかして?と予想はついたとしても、他の伏線や展開に胸が熱くなる。目の前の事だけ、自分の気持ちだけ考えてはいけなかったとしても、人は弱い生き物だからな。でも、もし朧げにでもわかっていたなら変えられなかったかなぁ、うう2人にこれから幸せになってほしいよぉって願ってしまう。