【感想・ネタバレ】いなくなった私へのレビュー

あらすじ

人気絶頂のシンガーソングライター・上条梨乃はある朝、渋谷のゴミ捨て場で目を覚ます。昨夜からの記憶がなく、素顔をさらしているのに誰からも上条梨乃と認識されない状況に戸惑う。さらに街頭ビジョンには、上条梨乃が自殺したというニュースが流れており……。梨乃は自分を上条梨乃と認識できる青年・優斗らの力を借り、自らの死について調べだす。『このミス』大賞優秀賞受賞作!

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

辻堂さんの作品は2作目だが、1作目と同様にオカルトじみてくる。最初は死んだ人間が誰にも分からずに復活するのが不思議だったが、途中で挟まれるインドの「輪廻の泉」の話しと次第にリンクしてくる。オカルト宗教も登場し、怒涛の謎解きの終盤へ。
死亡から復活した人間が次々現れ、現実的には戸籍の問題もあり生きて行くのは難しいと思うが、新しい未来を感じるエンディングでホッとさせられた。

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2025年08月16日

Posted by ブクログ

シンプルに目頭が熱くなってツーーと
泣いてしまった本作『いなくなった私へ』

はじめて小説で泣きました。

泣ける要因としては、本書さいだいの
魅力でもある500ページにわたる濃密で豊かな
その『物語』にあります。

500ページもあるの?と
思うかもしれませんが秒で溶けます。

人気絶頂の歌手 梨乃がある日 目を覚ますとそこは、渋谷のゴミ捨て場。起き上がりニュースに耳を傾けるとそこには自分が死んでいるニュースが報道されていた。さらに周囲の人間は自分のことを国民的歌手 梨乃とも認識しておらず行き場もない。とある青年と小学生だけが自分のことを梨乃と理解でき、3人は梨乃の自殺の理由と、その背景にある大きな事件へと関与していく…。というお話。

本書も最後の最後にとんでもない
どんでん返しがありますが、それよりなにより
ストーリーが重厚すぎるのよ。まじで。

映画よりも濃厚で絵が浮かぶ小説には
これまで出会ったことがありませんでした。

泣けるミステリー、初体験でした。
本当におすすめできる最高の1冊です。ぜひ。





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2024年12月31日

Posted by ブクログ

ちょっぴりファンダジーみたいで面白かったです!
 ある日、目を覚ました有名な歌手、上条梨乃は自分が自殺したというニュースを見る。しかも、誰も、自分を上条梨乃だと認識してくれない。梨乃は日本で知らない人がいないぐらい売れていて有名でした。しかも、自殺をした記憶がないんです。自殺なんてするわけないんです。そんな時、自分を上条梨乃だと認識できる青年と出会って…というストーリーです。
 何気なく手に取った本。現実的なところもあるし、ファンタジーっぽいところもあって面白いです!少し長めの本なので読み始めるには勇気が必要だと思うのですが、読んでみたらページ数なんて関係ありません!どんどんページをめくる手が止まらなくなります!!

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2024年10月23日

Posted by ブクログ

あなたは、”自分自身”が『自殺をした』というニュースを目にしたとしたらどう思うでしょうか?

 (*˙ᵕ˙*)え?

2023年度の自殺者数は21,837人と、前年よりは減少したものの以前高い数値が続いていることが明らかになりました。『自殺』という選択をされた方にはそれぞれに理由があったはずです。そして、そんな背景事情を詳述するニュースを目にすることも多々あります。

しかし、『自殺』を選んだ人がその決断をした本当の事情はどこまでいっても本人しか知ることができないはずです。周囲はあくまで残された背景事情からその理由を推し量るしかありません。そして、そんな中には、本当は『自殺』ではななかったにも関わらず、『自殺』したと記録されてしまっている場合もありえます。死者に口無しと言われる通り、そこには永遠に突き止めることのできない真実が隠されてもいるかもしれません。

さてここに、『私、どうして自殺しちゃったんだろう』と”自分自身”の『自殺』に隠された真実を追い求める一人の女性が主人公となる物語があります。周囲から本人と認識してもらえなくなった女性の悩み苦しみを描くこの作品。そこに隠されたまさかの謎にすっかり酔わされるこの作品。そしてそれは、東京大学法学部に在学中だった辻堂ゆめさんが紡ぎあげるミステリーな物語です。

『意識が戻ったとき』、『どこか硬い地面の上に倒れていた』と、『頭は重く、ぼんやりと』しながら『遠くから通りを行く人の声』を聞くのは主人公の上条梨乃(かみじょう りの)。そこが『ゴミ捨て場』だと気づいた梨乃は身を起こし、後方からの足音に振り向くと『若い酔っ払い集団と目が合』います。『ニヤリと気持ちの悪い笑み』を見た時、『自分がサングラスをかけていなければ帽子もかぶっていないことに気がついた』梨乃は『自分の身体を見下ろし』『自身の私物』ではあるものの『着替えた記憶』のない『白いワンピース』を着ているのにも気づきます。そんな時、『すみませーん、今から俺たちと一杯付き合ってくれたりしませんかぁ?』と言われて焦る梨乃。『ちょっと待てよ?お前 ー』という言葉に自身の『正体に気づいたに違いな』いと思う梨乃。『すげえ綺麗な顔してんじゃんか』、『木原ゆずかに似てね?』、『え、どっちかっていうと国定美波っぽくね?』、『上条梨乃にも少し似てる気がする』と言う会話に『肩をぴくりと震わせ』る梨乃。しかし、『いや、そんなに似てなくね?』、『そうかなあ』と続く会話に梨乃は『酔っ払いすぎていて、私の顔をきちんと認識できないのかもしれない』と思います。『上条梨乃のこと、知ってるだろ。ほら、昨日の』、『よりによって、どうしてあんなことを…なあ?』と言われた梨乃は『あの、すみません。いま急いでいるので』と言うと『一目散に駆け出し』ました。そして、『危険な通りから脱出した』梨乃ですが『混乱した状態のまま突っ立って』しまいます。そんな時、『不意に後ろから若い女性の喋り声が聞こえ』ます。『あっ、ねえ見て、上条梨乃のニュースやってる!』という言葉に振り向いた梨乃は『ビルの側面にある巨大液晶画面』に流れる『金色のテロップ』を目します。『上条梨乃さん 昨夜自殺』という文字を見て立ちすくむ梨乃は、『あのっ、私が誰だか分かりませんか』と大学生らしき集団に駆け寄ります。『どうしたんですか。自分が誰だか分からないとか?』と聞かれる一方で、『記憶喪失?という言葉がささやかれる』のを聞く梨乃は『ねえどうして。私に気づいて。私に気づいて』と思います。今度は『OLらしき二人組へと近寄』った梨乃は『鏡を貸してくれませんか』と言うも『すたすたと遠ざか』られます。そんな中、『これで良かったら、どうぞ』と『人の好さそうな中年女性』が貸してくれた鏡を『すがるような思いで』覗き込む梨乃は、そこに『梨乃自身の顔』があるのを見て安堵しました。女性にお礼を言って再び歩き出した梨乃は『上条梨乃さん 昨夜自殺』というニュースを思い出し『昨夜…昨夜?私…何をしてた…?』と思い出そうとします。そんな時、『トン、と肩に手が置かれ』振り向くと『黒い大きなケースを背負った気弱そうな若者が隣にかが』み、『まっすぐに梨乃を見つめて』います。『この若者はさっきの大学生』のうちの一人だと思い出した梨乃。『もし間違ってたらごめんなさい。あの…』と語り出した男子大学生は『上条梨乃、さん。ですよね』と訊きます。『目を見開き、何度も頷』く梨乃に、『男子大学生はほっとしたように笑みを浮かべ』ました。そして、佐伯優斗(さえき ゆうと)と名乗る男子大学生と、『交差点近くの喫茶店』へとやってきた梨乃。そんな梨乃に『それにしても驚きました。上条梨乃が生きていたなんて。だって、あんなに大々的に自殺のニュースが流れてるのに』と言う優斗に『私、本当に生きてるんでしょうか。突然だれも私の顔を認識してくれなくなったんです』と語る梨乃。そんな梨乃が『身体は生きたまま存在が死んだ、ということなのかな』という思いの中、『上条梨乃さん 昨夜自殺』の真実を突き止めていくミステリーな物語が描かれていきます。

“人気絶頂のシンガーソングライター・上条梨乃はある朝、渋谷のゴミ捨て場で目を覚ます。昨夜からの記憶がなく、素顔をさらしているのに誰からも上条梨乃と認識されない状況に戸惑う。さらに街頭ビジョンには、上条梨乃が自殺したというニュースが流れており…。梨乃は自分を上条梨乃と認識できる青年・優斗らの力を借り、自らの死について調べだす”と内容紹介にうたわれるこの作品。2014年、東京大学法学部に在学されていた作者の辻堂さんは「夢のトビラは泉の中に」という作品で第13回”このミステリーがすごい!”大賞優秀賞を受賞されました。翌2015年に同作を「いなくなった私へ」と改題して刊行、それがこの作品となります。

そんなこの作品は以下の四部と〈エピローグ〉から構成されています。

 ・〈第一部 出会い〉

 ・〈第二部 泉の謎〉

 ・〈第三部 生と死〉

 ・〈第四部 二度目〉

読後、三文字にこだわってつけられた章題を読み返した私は、あれ?という思いに囚われました。レビュー冒頭に記した作品冒頭の概要の他、それぞれの章に紡がれていた物語の内容とどこか異なっているからです。一方で、なるほどと思ったのが、各章の冒頭に一見意味不明に記される不思議な文章の存在です。上記で上条梨乃が意識を取り戻した場面から始まる作品冒頭をご紹介しましたが、実はこの作品の冒頭には全く異なる場面を描く物語が序章のようにつけられているのです。それこそが、『手記』という小見出しの先に記されていくこんな文章です。

 『この国のマットレスは硬い。どうにも慣れないが、病魔に侵されている今となっては、ありがたく臥せっている他はない』。

全くもって意味不明な文章ですが、そんな『手記』は以下のようなことを記していきます。

 ・『数ヶ月前まで滞在していた、南アジアのとある異国』『で経験した、悲しく不思議な物語』を『書き残しておく』と語る『私』

 ・『登り続けて五時間』、『森の出口』で『小さな泉』に行き着いた『私』は『その泉には近づいたらいけない』と語る『幼い少年』と出会う

 ・『少年に手招きされ』、『集落』へと訪れた『私』は、『部族の中で絶対的な権威を持つ』『村長』に村への滞在を認められる

この『手記』は、〈第一部〉だけでなく、各章の冒頭に記されていきます。

 『あの泉には、不思議な魔力があるんだよ』

そんな先に『手記』自体が物語として構成されていることが分かります。そう、この内容こそが上記した章題に相当するものなのです。さらには、この作品の元々の書名である「夢のトビラは泉の中に」自体が、この『手記』を想定したものであることが分かります。一体、この『手記』はなんなのか?どうして各章冒頭にこんなものが置かれているのか?物語を読み進むに連れ、読者はその意味を理解することになりますが、大学在学中に執筆されたまさかのデビュー作がこんな凝った構成を取ること自体凄いことだと思います。辻堂さんというと「あの日の交換日記」や「十の輪をくぐる」、そして「今、死ぬ夢を見ましたか」などでも非常に凝った構成で魅せてくださる方です。これから読まれる方には是非この練りに練られた辻堂さんの構成の妙にご期待いただければと思います。

そんな物語は、主人公の上条梨乃が『ゴミ捨て場』で意識を取り戻す場面からスタートします。『どの世代からも超人気』の『正真正銘の国民的歌手』だった梨乃は、どうしてこんな見知らぬ場所に倒れていたのかという疑問だけでなく、そもそも自らを誰にも上条梨乃であると認識してもらえないことに疑問を抱きます。そんな中に目にしたのがニューステロップのこんな見出しです。

 『上条梨乃さん 昨夜自殺』

『マンションの十九階』にある自室ベランダから『飛び降り自殺』したという内容に絶句する梨乃は状況が全く飲み込めません。そんな戸惑いの中にいる梨乃に声をかけたのが男子大学生の佐伯優斗でした。

 『僕以外に上条さんが上条さんだと分からない中、やっぱりひとりにはできませんしね』

そんな言葉の先に、二つ上という姉の なつみのことを紹介、しばらくの間一緒に同居できるよう手配してくれた優斗。そんな中にもう一人の人物が合流します。梨乃の『飛び降り自殺』に絡んで交通事故死を遂げたとされる十歳の立川樹(たちかわ いつき)です。梨乃同様に他の人から認識されなくなってしまったという樹は優斗としばらく暮らすことになります。一方の梨乃は自身が所属していた『ヨコミゾエンターテインメント』でアルバイトとして働き始めます。物語はそんな中に幾つもの謎を読者の前に突きつけていきます。

 ・『私、どうして自殺しちゃったんだろう。自殺する直前、何にそこまで悩んでいたんだろう』by 梨乃

 ・『死んだはずの僕たちがどうして生きているのか、あとどうして誰も僕たちを僕たちだと分かってくれないのか』by 樹

 ・『どうして僕と優斗さんだけは梨乃さんが上条梨乃だって分かったの?』by 樹

 ・『死んでいるのに、どうしていま生きているのかな』、『私の身体も、いっくんの身体も、きちんと埋葬されているはずなのに。私たちの身体は、こんなところにあるはずがないのに』by 梨乃

まさしく”このミステリーがすごい!”大賞優秀賞受賞作らしく、ミステリーの醍醐味の中に読者をどっぷりと浸らせてくれる物語が展開していきます。しかし、この作品はそれだけに止まりません。それこそが当時現役の大学生だった辻堂さんらしく大学生の日常を自然に物語の中に描いていくところです。『五人編成』のバンドに『ギターと、コーラス』で参加することになった梨乃。そもそもそこで演奏するのは”生前に”自らが作った楽曲群であるというところがなんとも言えない感情を読者に抱かせます。そんな物語は、全ての謎が丁寧に解き明かされていく〈第四部 二度目〉へと向かって駆け抜けていきます。この作品は文庫本で約500ページという圧倒的な物量の中に展開していきますが、上記した通り、各章の前段に置かれた『手記』の摩訶不思議な内容と本編のミステリーの深みが読む手を止められない読書を提供してくれます。そして、迎えるまさかの結末。謎でしかなかった『手記』と本編が見事な結びつきを見せ、数多張られてきた伏線が一気に解き明かされていく鮮やかな結末。そこには、「いなくなった私」と改題された書名の意味に深く感じ入る極めて前向きな清々しいまでの物語が描かれていました。

 『生きてるのか死んでるのか、私にも分からないの』

そんな思いの中に理解できない立場に置かれてしまった主人公の上条梨乃。この作品では、そんな梨乃が自らの死の真相を探求する先にまさかの真実に辿り着くミステリーな物語が描かれていました。周囲の人に『認識されな』くなるという摩訶不思議な状況を上手く描いていくこの作品。並行して記される『手記』が物語に独特な雰囲気感を付与してもいくこの作品。

読む手を止めることのできない見事な物語構成の妙に、今に続く辻堂ゆめさんの原点を見た素晴らしい作品でした。

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2024年10月09日

Posted by ブクログ

すごいストーリー。生まれ変わるって。自分がいなくなっているって、、、どんな気持ちかなぁ。ラストで号泣。

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2024年05月10日

Posted by ブクログ

小学生が賢すぎるが、子供らしさもあり魅力的でした。カルト教団のデタラメさと泉の幻想的な部分のバランスが少し頭にすっと入らないところだけが、読み進めるのに苦労しました。一部の温かい伏線が心地よかったです。

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2024年02月14日

Posted by ブクログ

本書は、著者のデビュー作ですが、何冊目かでようやく読みました。
結論から言うと、とても面白いです。
そして著者の他の作品にもあるように、温かい優しいものがベースにあります。
一から楽しんでももらいたいので、内容には触れませんが、ミステリー好き以外にも優しい物語が好きな方には是非読んでもらいたい傑作だと思います。

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2023年12月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最近嵌まっている辻堂作品、今回は最初から特殊設定。主人公・上条梨乃は超人気歌手。彼女はある日、目が覚めると裏通りのゴミ捨て場で目を覚ます。電光掲示板で自分が飛び降り自殺で死んだとのニュースが。梨乃のことを上条梨乃だということを理解する人はいない。街で出会った佐伯優斗だけは梨乃を認識する。さらに梨乃の飛び降りの際に小5年の樹は同じ時間に自動車でひき殺されるが、彼も生きている?この3人の不思議な関係、さらに梨乃を巡る憎悪がリアル~家族、友人に認識されない寂しさとそれを乗り越える3人の健気な姿に胸打たれた。⑤

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2023年08月05日

Posted by ブクログ

人気タレントが自殺、しかし現世界に戻ってきたのか、いわゆるゴースト、幽霊ものといった感じで話は始まるが、南アジアの国の森の中での不思議な現象の話と平行して語られる。
ファンタジー、SF、ミステリー小説としての面白さを活かせるギリギリのところでの設定が上手く取られていて、展開をどんどん追いながら主人公たち若者たちの心理や葛藤、不安などがいろいろ混ざっていく感じが楽しめる青春小説かな。
輪廻転生がキーワードになるが、そちらをメインにすると話が重くなりすぎだったか、でもそこへの追求がちょっと物足りない感じもした。登場人物たちと一緒に謎解きに突き進んでいかされた感じで、作者の作戦勝ちになりました。

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2025年07月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【あらすじ】
1918年、ある英国人はインド北部の近代文明とは無縁の集落近くで直径2mほどで深さのある泉を見つける。現世において輪廻転生を繰り返させる泉。リーフィーと呼んで親しくしていた少年(泉に落ちて死んでしまうが別人になって生き返る→周囲に信じてもらえず自殺)が触れてしまった泉の魔力を解明するために、その水を持ち出した英国人はスペイン風邪にかかり日本で命をおとす。

~現代~
その「輪廻の泉」を信仰しているカルト集団が日本にある。1度死んでも魔力のある水に触れると記憶もそのままに現世に生き返ってしまう。しかし誰にも自分だと分かってもらえない。その魔力を教団は知らないが、信者達はガラス玉に水を入れ幸運を呼ぶアクセサリーとして使用していた。

人気絶頂のシンガーソングライター上条梨乃が目を覚ますと昨日からの記憶がなく、周りに認識されない状況に戸惑う。ニュースでは上条梨乃が自殺したと報道されているが、同じ事務所の先輩で輪廻の泉の信者である国定美波にマンションから突き落とされたのだった。大学生の佐伯優斗と10歳の少年立川樹にだけ上条梨乃だと認識される。それはみな同じ教団に殺されていて輪廻で現世を生きている仲間だったから。ピアニストとして幼い頃から有名だった佐伯優斗はライバルの父親(信者)から妬まれ指を砕かれ殺されてしまう。上条梨乃の亡くなった現場に居合わせた立川樹は信者にひき逃げされてしまう。
ロックバンド『エヴァーロード』のボーカル十文字智仁は上条梨乃にも田代実加(上条梨乃の生まれ変わり)にも告白するが、十文字を好きな国定美波が嫉妬から梨乃を殺してしまうのだった。実加として殺されかけるも間一髪
優斗が自分が殺された場所を思いだし、警察に連絡し助かる。
優斗が生まれ変わったことに家族が気づかなかったのは、父親が全盲で母親が若年性アルツハイマー、姉のなつみは働くために早くに家を出て7年間弟の優斗に会っていなかったから。
田代実加は上条梨乃がいた芸能事務所の事務として働きながら、優斗と同じバンドサークルでギターとコーラスを担当していた。事件後、文化祭でメンバー達と数曲演奏するが、最後にボーカル皐月の計らいで上条梨乃の『夢のトビラ』を優斗のキーボード演奏をバックに田代実加が歌うことになった。優斗の家族、樹、梨乃の両親に見守られながら。

【感想】
引き込まれる文章力とありえなくもない話にどんどん読み進めてしまい、悲しい事件ながらも家族愛や仲間愛に泣けました。
輪廻はあると思うし興味深いテーマ。
やっぱり一番怖いのは欲深い人間。

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2025年06月01日

Posted by ブクログ

トリカゴを読んでいたく感動したので、デビュー作を読んでみた。
面白い。話の中に引き込まれていく。最後はほろりとさせられた。話の展開で無理がある場面(病院で診察を受ける)はあるものの、それを差し引いてもグッとくること間違いなし。
この作家の作品を潰していきたい。

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2025年05月16日

Posted by ブクログ

読みやすい文章でスラスラと読めました。
真相は想像通りだったのでミステリーとしては物足りなさがありますが、感動ファンタジーとしては満足できるお話でした。

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2024年12月07日

Posted by ブクログ

 人気シンガーソングライターの上条梨乃が主人公、彼女はある朝渋谷のゴミ捨て場で目を覚ます。なぜ自分がここにいるのかわからない、さらに周囲の人々も誰も彼女に気づかないばかりか、上条梨乃の自殺を報じるニュースが流れる…。困難の中、彼女が上条梨乃であることに気づいた大学生の佐伯優斗に救われる。また自殺したとされているマンションに行くと、上条梨乃が上から落ちた現場を目の当たりにした後に車に轢かれて亡くなったはずの小学生の立川樹が、上条梨乃と同じ状況下で混乱しており、彼も上条梨乃であることを認識してくれたのだった…。上条梨乃、立川樹…2人は生きているのか?死んでしまったのか??なぜ死んだのか???なぜ、ふたりの存在に佐伯優斗は気づけたのか…?

 びっくりしました…。この作品が辻堂ゆめさんのデビュー作なんですね!最初っからありえない設定なのに、引き込まれました。カルト集団「輪廻の泉」とのつながり…ちょっと怖いと思いました。そして、上条梨乃と立川樹の二人の戸籍は今後どうなるのか…そこ、やっぱ心配になりました。でも、エンディングはよかったなぁ~なんか、じ~んとさせられました。

 やっぱ、辻堂ゆめさんの作品、好きですね!!まだ、読めていない作品もあるけれど、「しれっと、辻堂ゆめさん、並べてみました!」は、一旦ここでひと区切りとします。他にも沢山レビュー作りたいし、読みたい作家さんの作品もあるので…。

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2024年11月05日

Posted by ブクログ

辻堂ゆめさんの小説は短編を数本かじった程度であまり読んだことがなかったので購入。

あらすじも読まずに買ったわけだけど、いわゆる「本格ミステリー」ではないのがよかった。というも自分はごちゃごちゃ説明される本格系が苦手なので笑

本作の主人公は超売れっ子ミュージシャンの女性で、ある日目を覚ますと主人公は路地裏で倒れていた。
戸惑いながら街を歩いていると、なんと自分は自殺したことになっている。しかも周りの人間は有名人である主人公のことをまったく認知していない。これ、どういう状況?というのが本作の「謎」。

合間に挿入される「とある旅人の手記」によって少しずつ「謎」が明かされている感じがとてもいい。とても丁寧に書かれているなという印象だった。デビュー作とのことだけど完成度は高い。
というわけで☆4つ。

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2024年03月14日

Posted by ブクログ

不思議な話でどんどん引き込まれた。
読んでいくうちに点と点が線になっていく感じが面白かった。
ハッピーエンドとういのだろうか?ちょっと切ない。

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2023年11月05日

Posted by ブクログ

ゴミ山で目を覚ましたら芸能人である自分は自殺したと報道されており、自分の顔を見ても誰も認識してくれないーー。という話なんやけど、先が全く読めず、どうなんの?と読む手が早まる。これからの未来がこの子達にとって幸せでありますように。

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2023年08月13日

Posted by ブクログ

面白かったです 最後の2人の音楽に救われる気持ちになりましたが、カルト教団怖い〜と、こんな生れ変りキツイ〜と思いました

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

ファンタジー強め、ミステリー、推理、宗教が少しづつ
突っ込みは所が満載だが小説だと割り切って現実的な事を気にしなければ問題ない・・
読みやすいが少々ダラダラ長いイメージだが
死んだ人が幽霊じゃないく登場してるとは珍しい・・どうなるのかな!?と気になって読み進めた
最後は親の立場になって泣いてしまった

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2025年11月02日

Posted by ブクログ

辻堂さんのデビュー作ということで読んでみました。2015年…いまから10年前の作品。
学生時代に書いていたとあり、少しあら削り感や突っ込みたい点は様々あるけど、お話としては楽しめました。

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●あらすじ
主人公(上条梨乃)は有名なシンガーソングライター。ある朝、知らないごみ捨て場で目覚め、誰にも自分を自分と認識して貰えなくなっていた。

世間では自分は自殺したと報道されており、一人の少年だけが主人公に気づく。
自分が存在しているのに、死んだことになっているのは何故か?…を探っていくミステリー。

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●設定はSFミステリーっぽい。
ただ結論から言うと、天才が他人から妬みをかい、恋愛絡みの人間っぽい短絡的理由。

『輪廻の泉』が分かるまでが一番のポイントだと思った。この設定が考えついただけでも面白い。

ただ、実際問題生きていく過程で、鬼籍の状態の人間がどう存在していけるのかを追及できていないので、ファンタジー寄りになってるかな?

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2025年10月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「このミステリーがすごい」大賞というので読んでみれば、ミステリーではなくファンタジーでした。
ミステリーと思うと物足りない感じですが、とても面白い内容でした。
特に優斗が実は梨乃と同じく死んでしまっていたということが明かされた時は、そういうことか!と驚かされました。
最後はハッピーエンド的な感じですが、実際問題として梨乃やいっくんは戸籍が無くてどうやって生きていくのだろうかと疑問が残る終わり方でした。
物語だから、そこまで心配しなくてもいいのか。

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2025年10月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

このミス大賞作品ということで、ミステリーだと思って読み始めたのもあり、始まりが既に、ん?という印象で。
迷信とかカルトとか、芸能人とか、なんだか訳が分からない展開に、ん?ん?となりながら。

三分の二くらい読み進めると、ある程度の展開の予想がつき始める感じでした。

輪廻転生が主軸になっているので、ミステリーよりはファンタジー寄りだと私も思います。

正直、納得いくような、いかないような読後感ではありますが、3人が新しい人生を歩き始められることにはホッとしました。
優人と実加、2人だけの演奏になんだか救われる気分になりました。

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2025年04月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ミステリーというかファンタジー的な要素が強かった。真相も予想はしやすい。
けど、難しい用語とかはなく、すらすらハイペースで読むことはできた。音楽小説でもあるが文章だけでは十分伝わらず映像でも見たい気がした。

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2024年11月10日

Posted by ブクログ

現実味を帯びたファンタジーに始まり、ファンタジーで終わる。
1度読んだだけでは分からなかった。
でも何年経っても忘れられない不思議な話。

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2024年08月18日

Posted by ブクログ

う、うーん。。面白くなくはないけど私には合わないかも。
ある日起きたら誰も自分を自分だと認識してくれない、そして本来の自分は自殺しているっていう物語の大枠の設定はとてもいいんだけど…日本中の誰もに愛されるシンガーソングライターっていうのはちょっと夢を詰め込みすぎた感じがする。多分、大学内では大人気だった学生バンドのボーカル程度で全然進められる話だったところを無理矢理夢を詰め込んで日本一のシンガーソングライターだったり売れっ子タレントだったりカリスマバンドマンだったりの設定にしちゃったから、SFでただでさえ現実味が薄いのにさらにもっと現実離れしていく感じ。
最後とかも、いいシーンではあるんだけど、これから戸籍どうするの〜とかいっくんなんで学校どうするの〜どうやって生きていくの〜みたいな現実的な詳細を少しだけでいいから書いてくれたらもうちょっと受け入れられたかな。
犯人も途中から丸わかりだし、若干?かなり?無理矢理感あるし、ミステリー要素はほぼ皆無。ミステリー要素と現実味を全く求めずSFファンタジーとして楽しむのがオススメ。

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2024年07月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

辻堂ゆめののデビュー作品。辻堂ミステリーという思い込みがハードルとなってしまったので、星が少々辛めだが、デビュー作でここまで書けるというのはさすがだと思う。

インドかどこかの探検家回想録的な序章が終わると物語が始まる。アイドル系シンガーソングライター上条梨乃はある日、都会のごみだまりで意識を取り戻すが、誰も彼女を上条だと認識してくれない…。

その後2人だけ自分を認識してくれる人と出会い、彼らとともに上条に何があったのか?を探っていく物語。伏線とその回収、謎解き3段飛びの構成などは見事。

ただファンタジー要素とミステリー要素の乖離がザラついていて残念。戸籍の無い人間がこんなに簡単に生きて行けるか?救急車で担ぎ込まれるシーンも当然警察も関与するだろう。子供が見舞いに来たら事情聴取もされるだろう、その時氏素性を調べられるだろうし…とか。

ラストのライブシーン、ドラマにすれば盛り上がるんだろうけど、ここもっと淡白でもいいから、細部のツメをもう少しきめ細やかにしてくれたら…ってのが正直な感想。

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2024年06月18日

Posted by ブクログ

自分をまわりの人から認識してもらえなくなった世界。その世界で自分を認識してくれる人の存在は大きいですね。

まわりの人から認識されなくなり、名前を変えて生きていくことは辛いけど、それでも前を向いて生きていこうとする主人公が素敵でした。

途中日常的な感じの描写が長く、読み飽きそうになりましたが、なんとか読み終えました。

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2024年01月15日

Posted by ブクログ

死んでも幽霊になってこの世にいるみたいなお話はよくあるけど死んで別人になってるという設定が面白かった。優斗の正体が読んでるうちにきっとだろうなと思ったりラスト感動っぽいお話になっていってミステリー的には物足り無さを感じました。

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2023年12月14日

Posted by ブクログ

2014年に『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞した、著者のデビュー作。当時、東大在学中の学生だったそうです。

ぼんやりとした意識と記憶のなかゴミ捨て場で目覚めた主人公・梨乃は、それまで国民的シンガーソングライターとして忙しい日々を送っていた。梨乃は目覚めてまもなく、自分の自殺による死亡報道を目にします。不思議なことに、彼女を見る誰ひとり梨乃だと気づくことはなく、自分はいったいどうしてしまったのかまったくわからなくなります。自分はどうして死んでしまったのか。少しずつ明らかになっていくその謎が大きな見どころでした。そして、死亡報道以後の、梨乃のあらたな生活の情景の温度感も、この小説を読ませる力として大きかったのではないかな、と思いました。

独特の「輪廻」の仕方のアイデアが優れていて、この物語を大回転させたなあ、という印象です。芸能界が大きな舞台としてあり、そういった煌びやかな世界の裏側という引きつけも、本作品を読ませる力として働いているでしょう。また、ライブや練習風景の場面描写もしっかりしていました。著者にはバンド経験があるそうです。

文体の第一印象は、きっと推敲や直しに励んで、この読みやすくて整理された端正な文章に変えていったのではないかなあ、というもの。それでいて、光る表現もちゃんとあるエンタメ作品。アマチュアとしての賞への応募作品ですが、隅々まで力を使い切って完成させた、立派な「プロの仕事」という感があります。

それぞれのシーケンスをきっちり書かれていますし、構築している世界は狭くないですし、こういった「構成」と「構築」のどちらからも力を感じられるのが、やっぱり賞の関門を突破する人ゆえだなあと感じ入ったのでした。ストーリーテリングとは <「構成」と「構築」> とも言えるのかもしれない。まあ、斬新なアイデアを忘れてはいけないですが。読み進めていくごとに奥行きが深まっていきます。それはたとえば、新しい友人ができて、時間とともにその人をより詳しく知っていく過程と似ているのかもしれない、なんて気がする自然な深まり方です。

分析めいたことをこうやって書いてますけど、物語のほうにだって没入して楽しんでいます。書くようになってからは読み手視点と書き手視点の「二重読み」の度合いが強くなりました。ただ、物語の魅力に負けがちになります。佳境を迎えると、書き手視点がどっかいってしまう。今回も終盤は楽しむのみ、みたいなふうに。

その終盤、悪党が正体を表し、悪を為す場面があります。がらっとそれまでのトーンが変わる、読ませどころなのですが、そんな「悪」を扱う場面であっても身じろぎしていない書きっぷり。肝が据わっています。自分の書くものから目を逸らしていない。そういう根性というか精神力というか度胸というか、、そういったものがあると思いました。これは、宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』を読んだときに著者に感じたものと似ていました。才能を下支えする度胸みたいなものがあるなあ、と。

さて、序盤にもしかすると瑕疵がありました。主人公は北海道出身で親は札幌にいるのに、居候をする理由が、他の大学でのサークル活動について親とうまくいかなくなって家に帰れないから、というところです(もしかすると、僕の読み違い・読み足りなさかもしれない)。読み違いならほんとうに申し訳ないのですが、僕はここもなんらかの伏線なのかな、と頭にひっかかっていたのでした。どうなんでしょう、また読み直すと僕の勘違いだとわかるような部類のものかもしれないですが、そうでもないような気もして。

文章は読みやすいですし、しっかり内容は考えられていますし、おもしろかったです。今後はもっと難しいものを扱ってみよう、みたいな感じで創作活動を促されるような作品でもあったかもしれませんが、500ページ弱の分量をきっちり書き尽くすあたり、力を持ってらっしゃいますね。最後までゆるめず、やりきるといった姿勢はほんと、その通りなんだよなあ、とリスペクトでした。

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2023年10月02日

Posted by ブクログ

2015年・第13回『このミステリーがすごい! 』大賞・優秀賞受賞作、文庫化です!

人気シンガーソングライターの上条梨乃は、ある朝、渋谷のゴミ捨て場で目を覚ました。
誰も彼女の正体に気づく様子はなく、さらに街頭に流れる梨乃の自殺を報じたニュースに、梨乃は呆然とした。
自分は本当に死んだのか? それなら、ここにいる自分は何者なのか?
そんな中、大学生の優斗だけが梨乃の正体に気づいて声をかけてきた。
梨乃は優斗と行動を共にするようになり、やがてもう一人、梨乃を梨乃だと認識できる少年・樹に出会う……。
自殺の意思などなかった梨乃が、死に至った経緯。
そして生きている梨乃の顔を見ても、わずかな者を除いて、誰も彼女だと気づかないという奇妙な現象を、梨乃と優斗、樹の三人が追う。

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2023年08月01日

Posted by ブクログ

 辻堂ゆめさんのデビュー作となるオカルトミステリー。
 「このミステリーがすごい!」大賞応募作品。選には漏れたが大幅に改編し、隠し玉として出版。

      * * * * *

 「輪廻転生」をモチーフにした作品は少なくありませんが、死亡時と同じ時期・場所で同年齢の別人に転生するという発想が斬新で面白かった。作者のチャレンジ精神には敬意を表したいと思います。

 けれど新機軸には課題がつきまとう。作者はそこに蓋をしているため、拭いがたい違和感が残りました。

 例えば転生した梨乃や樹は死亡が確定した人間であり、社会的には存在しないことになっています。おまけに転生した新たな身には生家はおろか親さえ存在しません。人間の肉体でありながらこの世のものならぬ身ということです。

 つまり戸籍の問題をクリアしない限り、彼らは裏社会で生きていくしかないということなのです。

 普通ならばすぐに気づいて不安に駆られるはずですが、慎重派の優斗や社会人のなつみが全く気にもかけませんし、梨乃本人に至っては考えもしていません。これには首をかしげざるを得ません。

 だから、エピローグの希望溢れるのみの描写。何かウソくさく感じてしまいます。

 また、「輪廻の泉」の水の効能についても曖昧なままです。
 伝説からすると、転生の能力を得るためには水に触れる必要があるはずです。
 ということは、「水」の入ったガラス玉ブレスレットを身につけたカルト信者に殺害されただけで転生能力を持てるのなら、信者たち全員 ( どころか、皐月でさえ ) 転生できることになるでしょう。

 このような心理描写の浅さや設定段階での甘さは、ハードな展開のサスペンスにはそぐわないのではないでしょうか。

 勢いのある文章で読みやすいけれど、上ばかり見て足下を見ていないような危うさや物足りなさを感じてしまいました。
 また、文章に散見する舌っ足らずな点も気になりましたが、新進気鋭の作家さんなので今後に期待して☆3つにします。

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2022年04月28日

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