ジェフリー・ディーヴァーのレビュー一覧
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フリーの文書検査士、パーカー・キンケイドは幼い子供二人を育てながら自宅で仕事をしていた。一方、世紀末の大晦日午前9時、ワシントンの地下鉄駅構内で銃乱射事件が発生。その後、市長宛てに届いた脅迫状は、"身代金を支払わないと無差別殺人を続行する”という内容だった。事件現場には証拠がほとんど残らず目撃者もいない状況で、たったひとつの手掛かりは手書きの脅迫状のみ。捜査中のFBIは、筆跡鑑定のエキスパートで元FBI科学犯罪文書研究室捜査官のキンケイドに協力を強く要請。家庭の複雑な事情を抱えながらも非情な無差別殺人を食い止めるためキンケイドは再び捜査前線に戻ることになるのだが…。とっかかりは僅かな手がかりしかないが、文書検査士のキンケイドがパズラーとしての洞察力を発揮してFBIの捜査に一役も二役も買い、事件解決に近づいていく、ディーヴァーらしいノンストップミステリ。【以下ネタバレ含むため未読の方はご注意】正体不明の殺人者ティガーに犯行を指示していた男が、身代金を受け取る前に交通事故で偶然死亡してしまうことから、犯人側と交渉する手段がなくなりいきなり事件が複雑な状況になり、これからどうなるのだろうという不安感と期待感が高まる。脅迫者のアジト捜索中の罠、2度目の乱射事件現場の予測、FBIと相いれない市長サイドの思惑などが絡み、事件はクライマックスへ。そしてティガーの死、脅迫者の正体に目を見張りつつ、残りページ数を見て、(ディーヴァーのこと、まだ何かサプライズがあるに違いない)という期待感を裏切らないラストにも満足だ。とても楽しませてくれて全体的には大満足だが、脅迫状の文字の特徴である「悪魔の涙」が、とある人物のメモに見つかり犯人(黒幕の方)の正体がばれてしまった点はやや納得いかない。捜査本部内の目がある中でメモを書いたため極度に緊張してしまっていたとはいえ、あそこまで用意周到で用心深い狡猾な犯人らしからぬ凡ミスだと思った。物語の面白さを盛りたててくれるキャラ設定も充実。脅迫状の筆跡だけでなく文書そのものから様々なことを読みとる切れ者のキンケイドだが、家庭ではものすごく子煩悩な善き父親というギャップも見せる。子供たちの養育権を元妻と争っているため、危険な捜査に協力していることは公にできないという状況にもちょっとハラハラ。他の登場人物もなかなか魅力的。捜査の指揮をとる女性捜査官ルーカスの私生活の影や、元同僚のケイジの奇跡的な交渉術(?)などの味付けが個性的でおもしろい。しかしなんといっても嬉しいのは、脅迫状の紙の分析に協力してもらうため、最高の犯罪学者リンカーンライムがゲスト出演したこと!相変わらずの辛辣な毒舌ぶりに、トムやアメリアの様子も垣間見られ、シリーズのファンには嬉しい場面だ。ちなみに本書は『コフィンダンサー』と『エンプティチェア』の間の作品だから、時間軸も同じかな。さらには、キンケイドがこの後のリンカーン・ライムシリーズ作品にゲストとして登場することもお楽しみとして付け加えておく。(2010.1.25再読&感想更新)
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ディーヴァーが歴史ミステリに挑戦した異色作。
1936年、ベルリン・オリンピックが始まろうという時、アメリカからナチス高官の暗殺のために送り込まれた男ポール・シューマン。
記者として選手団に同行、情報部のバックアップを得て、成功した暁には前科を消してまっとうな生活に入ろうとしていました。
殺し屋なのだが、仕事には倦みかけていて、妙に正義漢なところもあり、どっちへ転ぶかわからない〜感情移入して良いのかどうか?
当時の制度をよく調べて、ナチス内部でしのぎを削る力関係を描き、ヒトラーはじめ有名な人物を間近で覗き込むような面白さがあります。
複数の殺人事件を調査するベルリンの警察官も重要な人物で、彼の視点からの追跡行も面白い。
こっちも応援したくなるんです。すぐ傍まで迫るのにいつも逃げられるが…?!
ふだんのディーヴァーのあざとさはなく渋めのタッチ。
どんでん返しも意外さはあるけど、それほど派手じゃない。
キャラ設定はリンカーン・ライムのシリーズと正反対。作者も読者も気分転換ってとこでしょうか。 -
Posted by ブクログ
最近のリンカーン・ライムシリーズより数段出来が良い。あらすじに『どんでん返し職人』とあるが、私は、ディーヴァーは稀代のストーリー・テラーだと位置づけている。そのファクターのひとつが「どんでん返し」であって、その部分だけでこの作者を評価したりはしない。「謎解き」とは違って本作品は「スパイもの」であるから、舞台設定とスリリングな展開が評価の対象になり得ると思う。その点では文句のつけようがない。ナチの支配下におけるドイツという、制約の多い材料を実に上手く料理してある。特異な時代設定に尻込みしたものの、主人公がベルリンに到着してからの展開は早かった。読んでる時は気づかなかったが、ラストへ来て初めて、読書中がいかに幸せだったかを思い知らされた。
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Posted by ブクログ
四肢麻痺の天才科学捜査官とニューヨーク市警の女性巡査が、高度な知能と異常な執念を持つ猟奇的殺人犯に挑む本格ミステリー小説。後々続く「リンカーン・ライム」シリーズの第一弾にして代表作。
難事件を前に、ニューヨーク市警はかつて「鑑識の神様」と謳われた元科学捜査部長リンカーン・ライムに捜査協力を要請。
だが現在のライムは捜査中の事故により動かせるのは頭部と左手の薬指のみ。生きる気力を完全に無くしていた。しかし事件の異常性に少なからず興味を持ったライムは、初動調査を行った女性巡査アメリア・サックスに鑑識としての才能を見いだし、現場鑑識官に指名、動けぬ自分の代わりに指示を出すという形で捜査に加わります。
サックスは凄惨な現場に行かされ、やったこともない鑑識をさせられ、そしてライムの冷徹な指示に苛立ちますが、彼の天才的な洞察、推理、分析を目の当たりにし、次第に良きバディとなっていくのです。
ライムたちは残忍な誘拐殺人事件から徐々に犯人像を明らかにしていきます。しかしそれを嘲笑うかのようにわざと現場に証拠を残す犯人。次の殺人までの限られた時間のなかで、ライムはその鑑識能力によって次の事件を未然に防ごうとするのです。