ジェフリー・ディーヴァーのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『フリーの殺し屋だ。棺の前で踊る男と呼ばれている』
ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズ第2作。
四肢麻痺の天才科学捜査官リンカーン・ライムと、
その代わりとなって現場に赴くアメリア・サックス。
この名コンビが挑むのは、「棺の前で踊る男」と呼ばれる殺し屋。
FBIの重要証人が一人殺された。
残る二人の証人を、大陪審まで守りきらなければならない。
残り時間は45時間。
『月曜の午前7時までに、私たちがダンサーを捕まえているか、証人が二人ともダンサーに殺されているか、そのどちらかがかならず起きる。それ以外の可能性はない』
ライムとダンサーの先の読み合いが凄まじいです。
どちらが相手の一歩先を行けるか。
読み誤ることが許されない駆け引きが続きます。
そして、ライムとサックスの関係にも変化が・・・ -
Posted by ブクログ
ネタバレいよいよ夏本番。食欲が無くなり、そうめんのような口当たりのよいものばかり食べがちになる。でも、それじゃあよけい夏バテしそう。栄養バランスのとれた食事と、適度な運動、睡眠、それが必要。
読書もそう。このところ、軽くてさっぱりした作品ばかり読んでいる。重厚でエネルギッシュで、心躍る話を読まないと。
最近、そんな時には迷わず、ジェフリー・ディーヴァー作品を選ぶ。残念ながら、人気シリーズは全部読んでしまったが、本書『獣たちの庭園』が大切にとってあった。
本書はディーヴァーが初めて挑んだ歴史サスペンス小説だ。下準備に2年の歳月を費やしたそうだ。
1936年夏、アドルフ・ヒトラーがドイツ帝国の国威発揚に利用した、第11回オリンピック開催直前のベルリンが舞台。主人公は、ドイツ語に堪能な、ニューヨークの殺し屋・ポール・シューマン。彼は米国海軍情報部の罠にはまり、これまでの罪に服して刑務所に入るか、それとも国家的任務を果たして罪を帳消しにしてもらうか、という選択を迫られる。やむを得ず任務を引き受けるが、その任務とは、ヒトラーの意を受け再軍備を主導するラインハルト・エルンスト大佐の暗殺だった。シューマンは、五輪に参加するアメリカ選手団とともに大西洋を渡り、ドイツに潜入する。
面白い。やはりディーヴァーは裏切らないと、嬉しくなりながら読み始めた。正統派のサスペンス小説の趣き。ディーヴァー得意の"Twisted"は本書では抑制が効いていて自然だ。いつしか、虚実の境を忘れて小説世界を彷徨っていた。まるで映画のように、次々に脳裏に浮かび上がる映像が、わくわく感を煽ってくれた。
出だしの、二者択一の強迫シーンは映画「ニキータ」のよう。要人暗殺ということでは『ジャッカルの日』が浮かんだ。そして、抑圧された国民生活の様子は、先日読んだばかりの『チャイルド44』が思い出された。この作品は、たくさんの上質な小説や映画のおいしいところだけをギュッと詰め込んだような、手に汗握るエンターテインメントに仕上げられていた。
暗殺は成功するのか? 友情や愛情、そして生きることの意味に目を向けはじめた主人公・シューマンが、最後にとった行動とは……。
皮肉にも、ガツンとくるディーヴァー渾身の1冊に、貴重な睡眠時間を奪われた。 -
Posted by ブクログ
筆跡鑑定の専門家、キンケイドが無差別殺人犯に立ち向かうミステリー。子供達を愛し、妻と親権を巡って係争中だがその専門知識を駆使して一つずつ犯人を追いつめていく姿に夢中になって読んでしまった。途中ライムがゲスト出演するのも読者にとっては嬉しいサプライズだ。ディーヴァーも何冊か読んでくると、大体パターンがつかめてくるので、大どんでん返しがいつ来るか、あと何回くるかと予測しながら楽しめるようになってきた。残りページ数で見当がつくのだよ(笑)これはまさしく名作というに相応しい読み応えのある作品だった。このキンケイドはまたどこかで登場してくれるのかな??
-
Posted by ブクログ
ネタバレ読み終わって、しばらく目を閉じ、その余韻にうっとりと酔いしれた。
凄惨な事件が描かれた作品だというのに、あと味がよく、希望を感じた。最高のエンターテインメント作品だ。
昨年は<リンカーン・ライム・シリーズ>に翻弄された。脳細胞を懸命に働かさなければならない読書は、貴重な体験となった。今年は、その最高のお気に入り作家となったジェフリー・ディーヴァー作品を、遡って読んでみようと思っている。
そこで、今回はこの『悪魔の涙』を手にした。世紀末の大晦日午前9時、ワシントンの地下鉄駅で乱射事件が発生する。正午までに2000万ドルを払わなければ、午後4時、8時、そして深夜0時に再び無差別殺人を行なうという脅迫状が、市長宛に届く。犯人、動機ともに不明。手掛りは手書きの脅迫状だけだ。そこで、元FBI文書検査士のパーカー・キンケイドに、FBIから出動要請がくる。証拠物件は「文書」。紙、筆記具の特定、筆跡、綴りのミス、文法の組み立てなどから、ありとあらゆる情報を導き出し、犯人に迫る。ここが本書のおいしいところ。本書では読者を、「文書鑑定」という新たな領域に誘い込む。
犯人とFBIの攻防に息を呑んで、読み進めた。緻密なプロット構成と魅力的な人物造形、そして現代社会の闇。それらをギュッと詰め込んだ、読者を手玉に取る物語の完成度には、度肝を抜かれる。読み応えがありながらも軽快。意表を突く、ひねりの効いたストーリー展開に唸らずにいられない。ストーリー・テリングの巧さに舌を巻かない人などいるのだろうか。ライム・シリーズに比肩する面白さだ。
途中、嬉しい再会があった。そのリンカーン・ライムの登場だ。キンケイドが電話で、微細証拠物件の分析をライムに依頼したのだ。ライムの分析結果から、犯人のアジトを突き止める展開は、もうお馴染みのことながらもワクワクしてしまった。
「さぁ犯人よ、大人しくしていろよ」ってな具合である。まあ、大人しくしているような犯人のわけはないのだが。
パーカー・キンケイドと、今回の事件を担当した、FBI女性捜査官のマーガレット・ルーカス。2人とも悩みを抱えている。事件捜査と併行して、2人のプライベート生活をつぶさに描写することにより、人物像がより鮮明に浮かび上がってくる。人物の裏表を丁寧に描き込む、ディーヴァーの小説作法にはいつもながら頭が下がる。主人公たちに愛着を抱かずにいられなくなるからだ。2人の恋の行方も気になる。
シリーズ化すると嬉しいのだが、どうだろう。
ちなみに、タイトルの「悪魔の涙」とは、アルファベットの小文字の「i」の、上に打たれた点のこと。人それぞれの癖が出るところだそうだ。 -
Posted by ブクログ
ああおもしろかったー。本当にどんでん返しにつぐどんでん返しで、ハラハラした。でも、ああそれだけはやめてーとかああまさかそんなーと思って一瞬暗い気分になるんだけれど、結果よいほうに転じてほっとするというのが多くて、読後がさわやかでよかった。脇役についてもきちんと書かれているところが好き。愛情を感じる。サックスについてはもちろん、今回はカーラも、男社会でキャリアを積むことの難しさとか、女性の立場が書かれているところも好き。カーラがコーヒー中毒だとか、余分な細かい話も多いと思うんだけどそういうのも好き。ライムシリーズって、四肢麻痺の科学捜査員とか、殺人鬼とか、どんでん返しとかのキーワードから、どうも重々しい陰気なイメージを持っていたんだけれど、そうじゃなくてむしろすごく温かい感じがする。シリーズが進んでおなじみの登場人物たちに愛着がわいてきたっていうのもあるんだけれど。あと、四肢麻痺のライムが普通の人にはなんでもないことをたくさんあきらめて、ときどきシニカルになりながらも、前向きに生きているところが実はけっこう励みになったり。「悪魔の涙」の筆跡鑑定人がちょこっと出てきてうれしかった。大好きだったんだけど、これもシリーズになればいいのに。