船戸与一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
高まるソ連の脅威に対抗するために、モンゴルに第二の満州国を作ろうとする動きは結局うまくいかず。
徐々に高まる国民党政府との緊張。頻発する関東軍と国民党軍及び抗日ゲリラ達との衝突。犬猿の中だった共産党軍と国民党は合流。
昭和12年には通州事件が発生。多くの日本人が凄惨に惨殺される。
国民党政府(1912年成立の中華民国)の首都である南京への進軍には兵站は伴わなかった。兵士による現地調達すなわち掠奪と強姦を取締る憲兵は少人数しか配置されず。
そして南京陥落後の関東軍による国民党軍掃討に多くのページを割いている。現代の中国が主張する20万人という数字が非現実的であるために、虐殺自体がなかったことと主張する意見も存在するが、この本は日本兵による国民軍兵士たち(市民ではなく)への処刑(市内ではなく紫市外にて)の様子を詳述。銃剣を用いた凸殺の描写はおぞましい。市民もふくめて市内で20万人が虐殺されたという現代中国の発表よりは大幅に少ないが、それでも夥しい殺人が行われたという話の流れ。真意のほどは不明だが、主人公の1人、憲兵の敷島三郎がこのような動きをなんとか止めさせようと試みるのは救いだが。
関東軍による阿片生産の取り組みや、三井物産による阿片輸入についても触れている。これは多くの公文書により記録が残る闇歴史。 -
Posted by ブクログ
トシオはメグはどんな大人になっただろう。
ガルソボンガ地区は今は。
主人公は私より5歳若いセブ島の山あいの町に住むトシオ。
1998年から2000年にかけてのフィリピン・セブ島の山間の田舎を舞台に13歳から15歳に成長していくトシオ。日本の当時と比べ物にならないくらい過酷。
日本人の父に逃げられ、母はエイズで若くして亡くなり、かつて抗日ゲリラだったガブリエル爺と闘鶏を生業に細々と暮らす。
トシオは丸い虹が架かる谷に住む元反政府ゲリラのホセを尊敬している。
腐敗した自治と警察、共通価値はお金だけ。かろうじて保たれていた均衡がクィーンの帰国を機に崩れていく。彼女は年上の日本人画家と結婚し遺産を相続して地元に邸宅を建てる。
一人称で語られるトシオの心の成長が言葉使いと思考から伝わり、子供の成長を喜ぶような気持ちで読める。それはこの話の数少ない救いである。
突破口が見つかりそうになりながら、次の瞬間に見失う展開の繰り返しは重く悲しく、ゆえに美しさと残酷さが心に残る。
冒険小説であり、ガブリエル、トシオ、クイーンを生み出した日本の責任がのしかかってくる歴史ドラマでもある。
日本がフィリピンにしたことが尾を引いていることを忘れさせない。ひとつの楽園でセブ島を終わらせてはいけない理由がわかった。
参考文献も5冊掲載。周到な調査を背景にした小説が投げかけるものは大きい。 -
Posted by ブクログ
世に明治維新と褒めそやさるが実際にはそんなたいそうなものではなく、
単なる権力闘争に過ぎないことがこの本でも示されている。
薩摩、長州の田舎侍が江戸では、否、全国では馬鹿にされるため、
幼い天皇を担ぎ出し、この錦の御旗をもとに東日本の幕府勢力を潰しにかかった。
それが証拠には西軍(筆者は官軍とは呼んでいない)が天下をとると、
慌てふためいて政治とはどうすべきものか欧州に勉強に行った。
それまでは政治に対するビジョンなんてものは無く、
ただ自分たちが天下をとることのみ専念した。
しかし、この成功、自信が後に薩長独裁政権へと移行し、
天皇を頂点とした軍事国家が出来上がったのである。
そのあたりを船戸与一は『満州国演義』で端的に示している。
江戸幕府そして戦前の軍国主義国家においては
農民や市民は単なる納税者で一兵卒でしかなかった。
いわんや全人口の半分を占める女性の参政権など目にもくれなかった。