あらすじ
イランを舞台に描く壮大な一大叙事詩。
舞台は、イラン、イラク、旧ソビエト、そしてヨーロッパ・・・。壮大なスケールで描く超大作。ペルシアの地を目指した、2人の日本人が、苛烈な運命に翻弄されながらも強く生きる。
イスラム革命が成功したイラン。王の時代は終わりを告げ、念願のイスラム教を軸とする国家へと移りゆく。イスラムの教えを強く信じ、革命を成し遂げた革命防衛隊だったが、権力を手にしたとたん、内部からじわじわと腐敗がすすみゆく。革命の成功が、理想の国家を作り上げると信じていた革命防衛隊員サミル・セイフは、その現実を目の当たりにし、もう一度イスラム革命の理念を取り戻すべく戦う。
一方、イラク、イラン、トルコなど、カスピ海沿岸に国を持たずさまようクルド人。自らの国家を樹立するため、武装蜂起を計画。その意思を受けクルド人の武器を調達する日本人武器密輸商人ハジ。そして、イラン革命をつぶさに見てきた隻脚の日本人ハジ。2人の日本人の生き様を通じて、中東の置かれた現実や人々の思いを見事に描ききる。
長きに渡り、読み継がれてきた船戸与一最高傑作。小学館文庫にて刊行するにあたり、イランの地図と登場人物紹介を付記したものを電子化した。
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Posted by ブクログ
想像以上の作品だった。文句なしの星5ツ。
私がまだ若い頃、パーレビ国王、ホメイニ氏、イランイラク戦争などなどの単語はテレビのニュースでよく耳にしていた。でもそれだけだった。
中東情勢については全く不勉強だったし、興味もなかった。
この作品を読んで全てが繋がり全体像が見えた。
昔から気になっていた作品であったが、読み始めは難しく失敗だったかも。。。と思った。
ところが少し先に進むともう止まらない!先が読みたくて仕方ない!おもしろすぎる!
パーレビ体制からホメイニ氏を指導者とするイスラム革命後のイラン現代史の中での物語
Posted by ブクログ
1992年第10回日本冒険小説協会大賞
1992年第5回山本周五郎賞
1992年第5回このミステリーがすごい!第一位
と、華々しい受賞歴の本作。
super8さんのお勧めの一作でもあります。
今年3月、(常にそうであるとも言えますが)この小説の舞台となるイラン周辺は、あらためて緊張の続く地域であることを意識させられました。
本作は物語の前に、「飾り棚のうえの暦に関する舌足らずな注釈」と題された、現在の世界の暦に関する短い考察から始まります。わずか5ページほどですが、暦の歴史の全体像を大きな流れとして捉えさせる、印象的な導入でした。
現在、世界標準として用いられているのはグレゴリオ暦であり、一方で中東イスラム圏では宗教暦としてヒジュラ暦が併用されています。そうした暦の重層性を踏まえつつ、本作は時間のあり方そのものにも視線を向けていきます。
日本では明治5年、それまでの太陽太陰暦からグレゴリオ暦へと制度的に移行しました。その際、暦に付随していた吉凶判断などは公的制度からは外されましたが、六曜は、民間習俗として残されました。これは特定の宗教教義と強く結びつかなかったため、制度改編の影響を受けにくかったと言われています。そして、宗教色を排除された堅実な移行だったと思います。
序の奏 ペルシア密売人・狂おしく粉雪が
1980年11月9日
まず、ひとり目のハジ。
第一の奏 夜の扉が開かれた
1989年2月10日
駒井という、日本人のハジ。
第二の奏 暁の移動命令・陽光の眩しさ
ジャラリ暦(イラン暦)1367年エスファンド月12日(1989年3月頃)
イラン革命防衛隊上層部の腐敗。
第三の奏 グルジアからの女誑し
1989年3月5日
駒井というハジがモスクワでグルジア人と交渉する。
第四の奏 月影、密かに揺れて
ヒジュラ暦1366年シャーバーン月四日
イランのクルド人ゲリラの活動。
第五の奏 聖地に雨が降る
ジャラリ暦1367年エスファンド月25日
マハバードに赴任したサミル。革命防衛隊の現状。
第六の奏 山間のゲリラ基地・ひとり草の宴で
ヒジュラ暦1368年シャーバーン月八日
山間部に生きるクルド人ゲリラの一団。
以上、6奏からなる上巻。
タイトルは詩的で、宗教的・中東的な言語感覚を思わせる響きを持つ。
中東の複雑な民族や宗教の対立を、大きな歴史の流れとして俯瞰するのではなく、各組織の末端に属する人間たちの行動、裏切り、愛憎として描いている。むしろ、巨大な歴史が、そうした個々の人間関係の中に具体的な形をとって現れてくる。
出来事は直線的には進まず、各組織、部族、宗教が折り重なるように配置されていく。
下巻へ
Posted by ブクログ
壮大なスケール。
イラン革命やクルド人の武装蜂起といったイスラム圏の物語の中に2人の日本人がいるという不思議な設定にワクワクする。
この設定の発想が堪らなくいいのとそれに見合った構成力が素晴らしい。
日本人だけでなくイラン革命防衛軍やクルド人ゲリラの視点でも描かれ、どっちが敵でどっちが味方ではなく、それぞれが信念に基づいて行動しそれが大量の殺戮の歴史を繰り広げている哀しさも感じる。
後半に期待。
Posted by ブクログ
もうお腹いっぱいです。
文庫上・下巻で合わせて1210ページの大部。
本書は1991年に毎日新聞社から単行本として刊行されました。
25年も前の作品ですから、割と古い作品といえましょう。
ただ、決して色あせないのは、本書の内容と同様、今もなお宗教、民族、その他の問題で、世界中でおびただしい量の血が流れているから。
しかも、かつてのような国家間の戦争・紛争というよりは、テロという形で世界中に脅威が拡散しており、より困難な時代に直面しているといえましょう。
さて、本書はイスラム革命後のイランが舞台。
世界中に2500万人という人口がいながら、迫害されてきたクルド人が、聖地マハバードで独立国家樹立を目指して武器の調達を目論みます。
そのクルド人ゲリラの指揮官が、清廉潔白なハッサン・ヘルムートという男。
武器調達を請け負ったのは、目的のためなら殺人もいとわない冷酷な日本人武器密輸商人で、「ハジ」と呼ばれる駒井克人です。
イスラム革命後に腐敗した革命防衛隊を正すため、実力行使に打って出るのが、若き革命防衛隊小隊主任のサミル・セイフ。
そして、かつては非スターリン主義的マルクス主義組織フェダイン・ハルクに所属し、ある事情によって隻脚となった、これもまた「ハジ」と呼ばれる日本人の男。
物語はこれらの登場人物の視点で多元的に展開し、マハバードであいまみえて壮絶なラストを迎えます。
読み終えた後は、歴史に翻弄された者たちの哀しみがひしひしと胸に迫ってくるでしょう。
余計な感傷を極力排し、乾いた筆致で感動を呼び起こす作者の力量にも感服する次第。
日本人にとっては複雑な中東情勢の一端を理解するための一助にもなりましょう。
おススメです。
Posted by ブクログ
イランという国は、石油関連の事業を中心に意外と日本との関係が深い。しかし、革命後のイランとなると殆ど国の行ききがなくなり情報もアメリカとの軋轢に終始したものになってしまった。それ故に本作品の躍動あるストーリーは、目新しくまた、