船戸与一のレビュー一覧

  • 非合法員

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    加瀬邦彦が自死したというのに驚いているところ、船戸与一までもが身罷ったというので、茫然自失というか気が抜けてしまって、朝も昼も食事しないでいたらフラフラになってしまったのです。

    高校生になってすぐ、なにげなく何の予備知識もないまま手にとったこの本の単行本(1979年版)を読んだ時の衝撃は、そう、体中が震え興奮に沸きあがる体験は、今も鮮明すぎるほど鮮やかに覚えています。

    『満州国演義』全9巻をきっちり完成させて逝ってしまうなんて、全巻にサインしてもらったのが良かったのかどうか、まだ第1巻から読み始めたばかり、よーし お弔いだ、怒涛のごとく読むぞ!

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    2016年11月01日
  • 猛き箱舟 上

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    久しぶりにアクション小説に手をつけました。上巻では冒頭の件がハッキリしないまま(何となく察しはつきますが…)です。下巻に向けてまだ一波乱ある事を期待します。

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    2012年10月28日
  • 虹の谷の五月 下

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    直木賞を受賞した本作。ゲリラの闘争の中に次第に巻き込まれていく主人公の少年の行方が手に汗握る。最後は爽やかな読後感。日本の小説家が描く外国を舞台にした小説は、成功するとその場に居合わせたかのような妙な臨場感がある。素晴らしい小説だった。

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    2012年08月28日
  • 午後の行商人

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    メキシコの大学に留学している若者があることをきっかけに“タランチュラ”と呼ばれる年老いた行商人の旅について行く物語。
    最後の論告の章で主人公が言う科白「タランチュラとの旅は血腥い旅だった。ぼく自身も人間を殺した。しかしあれほどじぶんが生きているんだという実感を持ったこともなかった。わかりますか?生きて物語に参加しているんだというときめき。それを経験したんです。だから、何の後悔もない。どのような刑を宣告されようとそのまま受け入れます。控訴する気は全くありません。」がすごい印象に残ってる。
    普段はこうは思わないけど数少ない映画化されたものを見てみたいと思った作品。そこそこ長い本だったけどこういう本で超長編の終わりのない物語を読んでみたい。

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    2012年08月24日
  • 山猫の夏 【新装版】

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    南米ブラジルの呪われた町エクルウに現れた「山猫」と名乗る男と、エクルウの酒場で働く日本人「おれ」の真夏の冒険を描いた傑作です。

    山猫がとにかく渋くてかっこいいです。
    舟戸作品の主人公の中でもピカイチではないでしょうか。

    物語自体は正直特筆すべき点はありませんが、ハードボイルド小説にある渋い主人公にわくわくする、あの感覚を味わうにはとても良い作品だと思います。

    お勧め。

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    2011年10月10日
  • 虹の谷の五月 上

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    船戸与一作品にしては若い子が主人公の珍しいもの。他にも船戸作品の主人公になり得るような魅力的な登場人物が出てきます。滅びの美学だけじゃない美しさがあるのでおすすめです。綺麗なフィリピンの風景が浮かぶようでした。

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    2011年07月16日
  • 国家と犯罪

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    いまさら説明の必要もない、今をときめく冒険小説の旗手、というか今や大御所と言っていい存在の船戸与一。

    すでに2000年に『虹の谷の五月』で直木三十五賞も得ている我が愛しの四天王のうちのひとりですが、デビュー作は1979年の『非合法員』でした。(私の四天王と名づけて、溺愛して全著作を読み込んでいる小説家は、逢坂剛・佐々木譲・高橋克彦、それにこの船戸与一の4人です)

    それに先立つこと4年前に、別名の豊浦志朗名義で『硬派と宿命・・はぐれ狼たちの伝説』、そして2年前に『叛アメリカ史』という2冊の渾身のルポルタージュを上梓していることは、彼のファンなら今さら目新しい情報でも何でもない周知の事実ですが、ところが問題の本書は、すでに20冊を超える著書を出して押しも押されぬ作家としての地位を確立しているさなかの20年後の1997年に、まさに船戸与一名義で出されたものなのです。

    何故そんなふうに、


    ・・・・・書きかけ・・・・・

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    2011年09月14日
  • 猛き箱舟 下

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    1970~80年代、積極的に海外へ進出する日本企業。
    南米、東南アジア、アフリカといった途上国へ進出するとなれば、
    ゲリラ、誘拐、政情不安といった「カントリーリスク」がつきものなわけで。
    その種のリスクに対処する「日本企業の守護神」隠岐。
    その隠岐に憧れ、
    一目置かれる男になることを夢見た男・香坂が、
    いかにして、高級官僚らを殺し、大井川源流の雪山に死ぬことになったか。
    きっかけは、グ・エンザ。
    真実はマグレブの容赦ない太陽だけが知っている。
    日本の当時の新帝国主義というべき悪辣な海外進出への批判、
    他人の痛みを省みない日本人の虚無のフラッシュアウト、
    いろいろな意味をもって本書を読むことも可能だと思います。
    特にボリサリオ解放戦線公開法廷でのやりとりなど・・・

    たった数ヶ月の経験がチンピラ風情の男をここまで返させる過程をじっくり堪能してください。

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    2009年11月27日
  • 猛き箱舟 上

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    あの「灰色熊」のような男になりたい。
    香坂正次は胸に野心を秘め、
    海外進出日本企業の非合法活動を担うその男に近づいて行った。
    彼に認められた正次の前には、血と暴力の支配するアフリカの大地が開けた。
    その仕事は、砂漠の小さな鉱山を、敵の攻撃から守ることだった―
    人の世の地獄、野望と絶望を謳いあげた大ロマン。

    船戸与一氏の作品には魂を揺さぶられます。
    人間模様がいくつも重なり、壮大な物語へ昇華されていく過程がダイナミックに展開し上下各700pを超える作品を一機読みさせてくれます。

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    2009年11月27日
  • 虹の谷の五月 下

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     フィリピン・セブ島のガルソボンガ地区で育つ、少年トシオ・マナハンの成長譚である。父親は日本人だが、フィリピン人の母親を孕ませた後、姿を消してしまった。母親はトシオを育てる為、娼婦となり、エイズで死んでしまう。そんな逆境にも負けず、ジャピーノ(日本人との混血)と呼ばれても気にせず、逞しく生きていく。そんな少年の13歳(1998年)から15歳(2000年)の5月にスポットをあてた作品である。

     虹の谷とはガルソボンガの奥地にある谷で、空を見上げると、まん丸の虹が出るという地。ホセ・マンガハスという元新人民軍のゲリラが住みついている。毎年5月に、この虹の谷へ行こうとすると、なぜか事件が起こってしまう。自分の失敗でホセを窮地に陥れてしまったりするのだが、それらの事件を通してトシオは少年から青年へと成長していく。最初は、「おいら」で始まる語り口調に若干の抵抗を覚えたが、慣れてくると気にならなくなった。そのうち、本書が成長譚であるなら、一人称も「おれ」に変わるのではないかと思っていたら、やはり、15歳のトシオは「おれ」に成長していた。また、ホセが少年への呼びかけを「ぼうず」から「トシオ」へ変えたのも印象深かった。
    物語を読み進めていて気になったのが、父親の忘れ形見であるセイコーの時計。至るところでトシオが時間を確かめるのだが、それがまるで、自分自身の成長を刻んでいくかのように感じた。もう一つ象徴的なのが「人喰い花」 正式にはタイタンアルムというらしいが、35年間種子として地中に眠り、発芽して1ヶ月で強烈な臭いを発する花を咲かせ、2週間後に萎れて枯れる。ホセはこの花を「暗示的な植物だな」とゲリラに見たてている。「ゲリラも地下に潜って耐えているときはいい。しかし、表にひきずり出されて強い陽差しを浴びると、たいていがイヤな臭いを放ち始める」と。

     ラストは爽やかである。悲しい死の一方で、明るい性を描き、「性」が「生」に通じていく。猿喰い鷲という鳥に名づけられた、アサム(希望)とダガン(誇り)。本書は、悲しくも誇り高き、希望に満ち溢れた作品である。


     

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    2009年10月04日
  • 虹の谷の五月 上

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     みんなはおいらのことをジャピーノと呼ぶ。ほんとの名前はトシオ・マナハン。父親は日本人だけどどんな人間なのかは知らない。母はエイズで死んだ。今はセブ島のガルソボンガ地区でじいちゃんとふたり、闘鶏用の軍鶏を育てながら暮らしてる。いまだに山奥に潜んでいる反政府ゲリラたちの活動はやまないし、地区の大物たちは賄賂で動いてる。新しくやってきた牧師はどうも女より男に興味があるらしい。みんな楽な暮らしをしている訳じゃない。でもそれなりに、みんななんとかうまくやって来ていた。あの日までは…。

     その日、地区のみんなから白い目で見られたまま、日本人の老画家の妻となって日本に渡ったシルビアがガルソボンガ地区に何年かぶりに戻ってきた。メルセデスとか言うぴかぴかの車に、大きな犬を乗せ、いろんな電化製品をいっしょに持って、おべんちゃらを言い回る取り巻きたちから"クイーン"と呼ばれながら。そしてそのクイーンは、おいらに虹の谷への案内を言いつける。おいらだけが行く道を知っている虹の谷、そこにはかつての反政府ゲリラたちの英雄だったホセがひっそりと隠れ住んでいる。だけどもクイーンはなんでそんなところに行きたがるって言うんだろう。ふだんならそんなこと言われたって、おいら言うことを聞いたりしない。でも大事に育てていた軍鶏が誰かの手で殺されてしまった今、おいらもじいちゃんも金が必要なんだ。仕方なしにクイーンを虹の谷に案内することにしたおいら。それがすべての始まりだった…。

    血が出てこなければ宮崎作品にもなるようなストーリーでした。

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    2009年10月04日
  • 山猫の夏 【新装版】

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    正直、女として読むのが辛い場面もあった。
    最後も救いはない。
    それでこそ『生』かなと。
    山猫の生き様に惚れました。

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    2011年03月30日
  • 猛き箱舟 上

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    日本を代表する冒険小説家、船戸与一氏の油の乗り切った頃の一冊。
    ちょっととっぴょうしのない描写もあるが、最初から最後まで手に汗握らせる展開はさすが!日本のエンターティメント小説の中で10指には入ると思う。

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    2009年10月04日
  • 山猫の夏 【新装版】

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    俺の船戸遍歴スタート地点。
    「辞書並みに分厚い」と揶揄されるページ数は読者からすれば大歓迎。
    何回も読み返した。

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    2009年10月04日
  • 山猫の夏 【新装版】

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    1982年ブラジルの片田舎を舞台に通称山猫といわれている、弓削一徳とともに、ロミオとジュリエットのような、反目する2家の恋人同士を救うため敵と戦う日本人男性の話。
    ブラジルの歴史を研究し、しっかりした裏付けがあり、ほとんどドキュメンタリーのように感じられる壮大な物語で読み応えがあり、引き込まれました。

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    2009年10月04日
  • 猛き箱舟 上

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    熱量、情念量、流血量、どれをとっても船戸最高作。厚い、暑い、熱い、篤い!上下巻1200ページ、寝床で読み始め、止まらずに12時間かけて一気読みしたけど、興奮の余りそれから12時間寝られなかった。国益のために自衛隊が派兵されている今、下巻のラスト前の灰色熊の独白は、我々日本人にとってとてつもなく重い。

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    2009年10月04日
  • 砂のクロニクル 下

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    この小説に描かれている時間は、決して長くはない。中心となるのはおよそ10年ほどの出来事である。しかしその短い時間の中に、裏切りと懐疑、そして殺戮が絶え間なく繰り返され、関わる者は誰もが最終的に敗者となっていく。

    第七の奏では、イスラム革命後のイランにおけるゾロアスター教徒の怨念が描かれ、宗教による排除の現実が提示される。
    第八の奏では舞台がコーカサスへ移り、アゼリ人とアルメニア人の対立、そしてソヴィエトの統治の歪みが浮かび上がる。
    第九の奏では、革命防衛隊内部の乱れが露呈し、体制そのものの不安定さが示される。
    第十の奏では武器商人が裏切りによって命を落とし、暴力が流通として機能している現実が露骨に現れる。
    第十一の奏ではクルド人ゲリラの決起前夜が描かれ、宗教的にも状況的にも許されない関係が、やがて決別へと至る。
    第十二の奏では駒井が武器商人としてカスピ海沿岸を奔走し、もはや傍観者ではいられない地点へと踏み込む。
    第十三の奏では、革命防衛隊・人民戦線・クルド勢力が交錯し、混沌が頂点に達する。

    そして終の奏。時間は1991年へと進み、物語は再びシーリーンとの邂逅へと回帰する。

    この作品は、歴史小説ではなく そこに関わる組織の断片を並べることで時代の全体像を浮かび上がらせてる。各「奏」は独立しながらも、確実に同じ時代の流れに接続している。そのため読者は、物語を追うというよりも、歴史の断面を次々と目撃していく感覚に近い。

    なぜ本作がミステリーとして挙げられるのかは、やや掴みにくいと思う。謎解きや事件の収束はない。ただし、時間や視点が断片化された構成そのものが、一種の「読み解き」となるかと。


    今回特に印象に残ったのは暦の扱いである。グレゴリオ暦、ジャラリ暦、ヒジュラ暦が混在し、時間の基準そのものが揺らいでいる。このズレは単なる表記以上に、統一されない世界のあり方を象徴しているように思う。

    そして最後に残るのは、日本人である駒井と「ハジ」と呼ばれる存在である。彼らは第三者であろうとしながら、結局は歴史の内部に取り込まれていく。その姿は、外部から眺めているつもりでありながら無関係ではいられない、現在の日本の立ち位置をもどこか示唆しているように思えた。

    タイムリーな一作を読めて良かったです。

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    2026年04月12日
  • 砂のクロニクル 上

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    1992年第10回日本冒険小説協会大賞
    1992年第5回山本周五郎賞
    1992年第5回このミステリーがすごい!第一位
    と、華々しい受賞歴の本作。
    super8さんのお勧めの一作でもあります。

    今年3月、(常にそうであるとも言えますが)この小説の舞台となるイラン周辺は、あらためて緊張の続く地域であることを意識させられました。

    本作は物語の前に、「飾り棚のうえの暦に関する舌足らずな注釈」と題された、現在の世界の暦に関する短い考察から始まります。わずか5ページほどですが、暦の歴史の全体像を大きな流れとして捉えさせる、印象的な導入でした。

    現在、世界標準として用いられているのはグレゴリオ暦であり、一方で中東イスラム圏では宗教暦としてヒジュラ暦が併用されています。そうした暦の重層性を踏まえつつ、本作は時間のあり方そのものにも視線を向けていきます。

    日本では明治5年、それまでの太陽太陰暦からグレゴリオ暦へと制度的に移行しました。その際、暦に付随していた吉凶判断などは公的制度からは外されましたが、六曜は、民間習俗として残されました。これは特定の宗教教義と強く結びつかなかったため、制度改編の影響を受けにくかったと言われています。そして、宗教色を排除された堅実な移行だったと思います。

    序の奏 ペルシア密売人・狂おしく粉雪が
    1980年11月9日
    まず、ひとり目のハジ。

    第一の奏 夜の扉が開かれた
    1989年2月10日
    駒井という、日本人のハジ。

    第二の奏 暁の移動命令・陽光の眩しさ
    ジャラリ暦(イラン暦)1367年エスファンド月12日(1989年3月頃)
    イラン革命防衛隊上層部の腐敗。

    第三の奏 グルジアからの女誑し
    1989年3月5日
    駒井というハジがモスクワでグルジア人と交渉する。

    第四の奏 月影、密かに揺れて
    ヒジュラ暦1366年シャーバーン月四日
    イランのクルド人ゲリラの活動。

    第五の奏 聖地に雨が降る
    ジャラリ暦1367年エスファンド月25日
    マハバードに赴任したサミル。革命防衛隊の現状。

    第六の奏 山間のゲリラ基地・ひとり草の宴で
    ヒジュラ暦1368年シャーバーン月八日
    山間部に生きるクルド人ゲリラの一団。

    以上、6奏からなる上巻。

    タイトルは詩的で、宗教的・中東的な言語感覚を思わせる響きを持つ。

    中東の複雑な民族や宗教の対立を、大きな歴史の流れとして俯瞰するのではなく、各組織の末端に属する人間たちの行動、裏切り、愛憎として描いている。むしろ、巨大な歴史が、そうした個々の人間関係の中に具体的な形をとって現れてくる。

    出来事は直線的には進まず、各組織、部族、宗教が折り重なるように配置されていく。
      
                    下巻へ


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    2026年04月12日
  • 蝕みの果実

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    船戸与一の本はブクロクを始める前に多く読んできた。
    「山猫の夏」
    「虹の谷の五月」
    など挙げたらキリがない。
    しかし短編集は初めてである。
    この7篇からなる作品はアメリカ、スポーツ、日本人が関わる物語りであり、船戸与一の世界観が存分に発揮されて楽しめる作品であった。
    暫く読んでいなかった船戸与一の作品を再び読む気になってきたが、惜しい事に彼はもう鬼籍に入ってしまって新作は拝められないのが残念で仕方がない。

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    2025年12月28日
  • 炎の回廊―満州国演義四―(新潮文庫)

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    満州を舞台とする長編の4冊目。
    建国直後から、満族、漢族、蒙古族、朝鮮族それぞれの抗日運動が組織され、前途多難な満州国。
    日本では陸軍将校によるクーデター未遂である二二六事件が発生。いよいよ昭和のきな臭さが濃くなる時代の話。

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    2025年12月20日