船戸与一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2003/08/16前半に関しては弛緩した印象を受けた。語り部たるフィリピンの辺境の農村の少年が幸せとは言えずとも凄く不幸とも言えないので、船戸与一の初期の南米3部作や「猛き箱舟」のような一種厭世的なピリピリした描写が感じられず牧歌的な印象を持った為だと思う。相変わらずの少年の成長譚であり、脇を彩る登場人物も、これまでの作品のキャラクターを踏襲したものばかりだ。しかし、そう思って読み続けていてもクライマックスの一連の展開と帰結には本当に参ってしまった。まるでサム・ペキンパーの映画のクライマックスで得られるカタルシスと詠嘆に等価なのである。やはり当代随一のアクション作家だと思った。
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Posted by ブクログ
大長編も7巻目となった。時代はとうとう1941年12月8日に至り終わりも近い。描かれるのは戦いの場面が多くなり、男女が入り乱れたりするシーンも減っていまいち面白くない。
解説(高野秀行)の船戸作品分析がなかなか秀逸。「(作者の船戸さんは)舞台をどこに定めても大枠の「現実」を勝手にいじらない。架空の政治家や政党、反政府ゲリラなどは一切登場させない。~中略~ 半面、実在の人物は直接書かない。それがイランのホメイニ師であれ、幕末の榎本武揚であれ、登場人物の会話や地の文にこそ垣間見えるが、彼らの内面が描かれることはない。内面どころか見た目の描写さえない。おそらく、見た目を描写すると内面も透けて見えてし -
Posted by ブクログ
#をつければ、ハードバイオレンス、マフィア、アフガン戦争
かつて船戸モノを読んだ経験からしてもかなりの展開、日本人が書いたとは思えない作品。
ロシア人名の長さと酷似から、どうしても覚えきれず、登場人物一覧を見ても、無理で情景、人間関係が描けなく、遅々とした読書だった。
偶然、見ているアマプラの「ロシア、20世紀、ブルガリア・ルーマニア、そしてコサックが絡むオカルトっぽい怪奇作品」と雰囲気が似ており、像を描くのに大いに助かった。
ロシアは世界一民族がまじりあっているるつぼ。文中、幾度となく、ロシア・タタール・パシキル・グルジア等々入れ混じる・・そして荒垣自体も日本人であることを秘して朝鮮系と -
Posted by ブクログ
シリーズ3作目。二・二六事件が起き満州国ができて関東軍の無手勝流が高まり、どんどん戻れない破滅に向かっていく感じがぷんぷん。しかも日本という国・国民自ら望んでそっちの方向へ向かっていく感じ。戦いの場面も多くなりいまいち興味がもてず流し読み。戦いや軍関係じゃない場面のほうが面白く読める。敷島四兄弟の継母で四郎と危険な仲になっていた真沙子の衝撃の死に方。
四兄弟のなかで唯一安定かつ堅実で誠実に生きていた感じの敷島太郎も満州国ができた頃を境に、国を興す男の夢らしきものにとらわれだし、その代償であるかのように本巻末で明日の満州への希望を込めて隣人に名づけられた長男・明満が夭折した。 -
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日本の歴史的恥部に身を背けるな
アイヌは日本の宝だが、歴史的に日本人によって虐げられてきた。この著作はこうした陰の歴史に脚光を浴びせる秀逸な書といえるかもしれないな。