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Posted by ブクログ
船戸与一の遺作となった歴史冒険小説の第八巻。自らの死期を知りながらも、命を削りながら綴った圧巻の大作。船戸与一が歴史冒険小説を書いたというより、船戸与一が自ら歴史を創ったと言っても良いくらいの濃厚な作品である。
まるで間垣徳蔵に誘われるかのように、敗戦濃厚な戦争の渦に巻き込まれていく、敷島四兄弟。船戸作品に薔薇色の結末を期待してはいけないのだが、この巻で敷島四兄弟が破滅への道を突き進む姿がより明確になった。
役人の太郎は自らが撒いた種で危機を迎え、大陸浪人の次郎は期せずして囚人部隊を率いてインパール作戦に加わる。陸軍少佐の三郎にもソ連の脅威が迫り、四郎までもが関東軍に召集される。
残すは最終巻。まさか…結末を考えるだけで暗澹たる気持ちになるが、読まずには居れない。
Posted by ブクログ
船戸与一の畢生の大作「満州国演義」シリーズを初めて手にしたのはたしか7、8年前。新潮文庫版の刊行が始まった頃だ。書店の平棚に積まれた「満州国演義一 風の払暁」の表紙と帯の文面に心を動かされ、ペラペラとページを繰ったのがきっかけ。文庫本刊行に合わせて第四巻「炎の回廊」の途中まで読み進めたものの、雑事に紛れそこで中断。その後の展開はどうなるのかな?時々脳裏によぎるものの時間だけが過ぎていった。
昨春、本の整理をし始めた時に再会した。本の整理は家人から言われ続けていることだが、自由時間が増えたことだし、のんびりやろうと覚悟を固めて、第一巻から再読し始めた次第。そして先日、「満州国演義八 南冥の雫」を読み終えた。再会できて本当に良かったと思う作品だ。本の整理は進んでいない。
本作「満州国演義八 南冥の雫」は、1942年(昭和17年)4月から1944年(昭和19年)6月に至る時代を描く。太平洋戦争開戦後の日本軍の快進撃が一転、破滅への道を突き進む悲劇の時代だ。巻を重ねるごとに広範囲になる口絵地図。本巻では、太平洋を俯瞰し、東はハワイ諸島、西はインドを見渡す広大な地図だ。
「小説」という方法を駆使して「歴史」の真実を抉り出そうとする「満州国演義」シリーズ。第二巻「事変の夜」著者後記に「小説は歴史の奴隷ではないが、歴史もまた小説の玩具ではない。これが本稿執筆の筆者の基本姿勢であり、小説のダイナミズムをもとめるために歴史的事実を無視したり歪めたりしたことは避けて来たつもりである」とある。今でも記憶に残る言葉だ。著者のこうした姿勢が本作「南冥の雫」にも貫かれている。
表題「南冥の雫」の響きはずしりと重い。辞書を検索すると「南冥」とは「南方の大海」とある。ミッドウェー海戦、ソロモン海海戦、アッツ島玉砕・・・各地で繰り広げられた戦争で「雫」のように消えていった多くの命を象徴しているようだ。
こうした時代に、敷島四兄弟はそれぞれ、激動の歴史現場に立ち合う。長兄太郎は満州国の首都新京で国内外の転変するる情勢に翻弄されつつ、自ら招いた悲劇に慄く。四郎はフィリピンで戦争の悲惨な状況を目撃、関東軍特殊情報課に所属することに。三郎は南方戦線や大陸打通作戦の現場を目撃、ソ満国境機動部隊の中隊長に。読み進めるうちに、まるで自分が80年前の歴史の現場に立ち合っているように感じてしまう。引き込まれる作品だ。
次郎は蘭印スマトラ、ジャワ島、ビルマ・・・南方方面を転々と。そして運命の糸に引き寄せられるように囚人部隊を率いインパールの地に。虫葬、蛍飯・・・終章に描かれるインパール作戦の情景はあまりにも悲惨だ。精神論に終始し兵站を軽視し過ぎた「成吉思汗作戦」。ほんの79年前、今頃の時季に行われた作戦だ。私たちは決して忘れてはならない。常に問い直すべき現実だ。本作を読み改めてそう感じた。
いよいよ最終巻へ。「満州国演義九 残夢の骸」に進むとしよう。どんな結末が待ち受けているのだろうか。
Posted by ブクログ
次郎、南方の山林に散る・・・・・・。
満州国もついに、全9巻中の8巻目まで読んでしまった。あと1冊でこの壮大な船戸ワールドを読み終えてしまうのかと思うと、寂しくてならない。
辻政信
牟田口廉也
東條英機・・・・・・
無能作戦立案、実行、強硬により数万・数十万の死傷者を出した男たち。その屍を尻目に終戦まで生き延びた者たち。
ある者は、戦犯として挙げられつつも裁かれるのを嫌い自決。(なんと卑怯な。死に逃げず、自らの判断が国をどんな運命に導いたのかを見届ける義務のある人間だろうに)
ある者は、平和を取り戻した戦後日本で代議士にまで上り詰める。(そもそも、そんな男になぜ票が集まったのかが疑問)
ある者は、インパール作戦の責任逃れに終始する。
(あげく、部下の無能さが作戦失敗の要因だと吹聴)
・・・・・・・一体なんだったんだろう、そんな一握りの馬鹿たれの出世欲や権勢欲のために生命を散らせていった日本人たちが、浮かばれない。
★4つ、9ポイント半。
2018.10.19.古。
※あと1冊で完結ということで、読むのが勿体なさすぎる「満州国演義」、でも、8巻でこんな引き方をされたら・・・・、続きが気になりすぎる。
すぐにでも9巻目を買いたくなってしまったが、なんとか我慢してもうしばらくは寝かせておこう。
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