船戸与一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
冒険小説の雄、船戸与一のデビュー作。
こういうのを読んでしまうと、うまい人はやっぱり最初から面白いもの書くんだなあとしみじみ痛感してしまう。
まあそれはともかく。
現代の国際政治の裏側を舞台とし、そこに生きる人々を描き続けている船戸与一。必然的に登場人物は一癖も二癖もある人物ばかり。また、他ではなかなか描かれない、中南米や中央アジア、東南アジアなどの国の人を登場人物としてみることができるのが、船戸作品の特徴か。
それは、現代政治がそれら辺境地域を欧米諸国(時には日本も)しいたげ、搾取し、代理戦争を行うことで否応無しに進んできたからであろう。
だからなのか、作者の目は常に虐げられてきた人た -
Posted by ブクログ
これが書かれたのは1985年。冷戦真っ只中の、中南米が舞台。登場人物は破壊工作員。潜入先はとある民族革命運動のゲリラ組織。依頼内容は、その革命運動のリーダーを殺害すること。
船戸与一の得意ジャンルであるだけあって、中南米の暑苦しさ、虐げられているインディオたちのむごい実態、その上に君臨する白人たちの優越感、山岳地帯の息苦しさとある種の清涼感、それら全てが生き生きと描かれている。
破壊工作員である登場人物たちが、何故破壊工作員になったのか。彼らの中にある破壊衝動や殺人衝動はどこからくるのか。そんなものが数人の登場人物を通して語られる。
いつも読む船戸与一と少し違う印象があったのは、革命運動 -
Posted by ブクログ
昨日は風がうるさかったりで寝付けなかったんで、半分くらい読んでた船戸与一の「伝説なき地」読みきっちゃった。
船戸与一版七人の侍なお話で、こんなに分厚さ(1000ページ超え)必要あるのかってプロットなんだけど、各登場人をしっかり描くことで、運命の衝突地点へと向かう過程が非常にスリリングで引きこまれましたわ。
まぁ肝心の戦闘シーンがなんか微妙なのと、結果はわかってはいたものの閉じ方がちょっと雑じゃないのという気はしますが、勢いはある作品でございました。
南米三部作の三作目になるそうな。
続き物じゃないので、どれから読んでもいいんだけど、最初はやはり「山猫の夏」がええで~~
カイピリンガ(カイピ -
Posted by ブクログ
ネタバレ船戸与一の初読み。
硬派、ハードボイルド、歴史の弱者……。
独特の語り口と老人の圧倒的に強い意思とに魅せられて……どう考えても悲劇の結末しか待っていなさそうな長編を、とりつかれたかのように読み進めてしまった。
大変面白い作品ではあるが……途中から十分に分かってはいたはずだが……やはり結末が“悲劇”であると不満が残ってしまう、コドモな自分(苦笑)。
というわけで、★4つ、8ポイント。
2013.04.11.了。
……死人のはずの“タランチュラ”と行動を共にしたとは、どういうことか?
……エピローグで描かれた行商人が名乗った“タランチュラ”とは?
…………何を暗喩しての描写か、読み -
Posted by ブクログ
3巻におよぶ長編であるが故と、作者特有の相変わらずの乾いた描写で陰惨な戦争がこれでもかと描かれ、少々、辟易としながら、最後までぐいぐいと引っ張られるように読み終えることができた。また、結末は会津藩の降伏という約束された結末ではあるものの、教科書などでは戊辰戦役も五稜郭も十羽ひとからげに扱われているが故に歴史としての知識もなく、ここまで詳細な降伏に至るまでの状況を知らなかっので、戦国時代とは違う日本最大の内戦としての歴史を知るという意味においての読後感は消して悪くない。3人の主人公たちが見る雨月の幻に関する解釈は一切ないまま、また、あっけないほど歴史の片隅に消えていく様は、これも作者特有の執着の