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西軍、薩摩は西郷吉之助が戦略を立て、伊地知正治に戦術を任せた。長州は大村益次郎が戦略を立て、山県狂介に実戦を指揮させた。一方の奥羽越列藩同盟、会津の佐川官兵衛は戦場では猛将だが、戦況を変える力はない。そして土方歳三は局地戦には強い、戦略なき戦術家だった。…冒険小説を牽引してきた船戸与一が独自の史観で日本近世史に真っ向から取り組んだ渾身の巨篇。
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Posted by ブクログ
3巻におよぶ長編であるが故と、作者特有の相変わらずの乾いた描写で陰惨な戦争がこれでもかと描かれ、少々、辟易としながら、最後までぐいぐいと引っ張られるように読み終えることができた。また、結末は会津藩の降伏という約束された結末ではあるものの、教科書などでは戊辰戦役も五稜郭も十羽ひとからげに扱われているが...続きを読む故に歴史としての知識もなく、ここまで詳細な降伏に至るまでの状況を知らなかっので、戦国時代とは違う日本最大の内戦としての歴史を知るという意味においての読後感は消して悪くない。3人の主人公たちが見る雨月の幻に関する解釈は一切ないまま、また、あっけないほど歴史の片隅に消えていく様は、これも作者特有の執着の無さで相変わらずのハードさである。最後に唯一生き残る長州の間者たるものが語る歴史観は余りにも客観的で現代解釈的ではあるが、正鵠を得ているであろう。今のこのタイミングでの発刊は3.11にささげるという意味かと思ったが、その前であったことであったり、某大河ドラマの主人公となっている女砲術師が鮮烈な活躍をするなど、結果として時代の先をいったものになっているのも興味深い。
船戸与一が描いた戊辰戦争はあくまでも西軍を悪と扱っているようだ。しかし、この物語の主人公は西軍の間諜・物部春介とモモだ。西軍と列藩同盟の間を泳ぎ、西軍を助けながらも物部の醒めた目は世の善悪を公平に語っている。歴史小説にあっても冒険小説の香りを残し、極めて渇いた堅い語り口の物語は船戸与一らしい。
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