あらすじ
昭和六年九月十八日、満州事変勃発。満蒙領有方針に共鳴する敷島三郎憲兵中尉と、外交官としての本分を守ろうとする敷島太郎参事官が対立する。阿片中毒を癒しつつ四郎は中国人街に身を沈めており、次郎は特務機関に協力することとなった。朝鮮人の一斉蜂起。帝都で燻(くすぶ)るクーデター計画。そして、上海では海軍陸戦隊と十九路軍が激突する。大陸各地で弾ける戦火を描く、第二巻。(解説・志水辰夫)
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全九巻から成る歴史冒険小説大作の第二巻。満州事変を中心に昭和五年から七年までが描かれる。
昭和初期を描いた歴史小説の中に、図らずも満州事変に関わっていく敷島四兄弟の運命に翻弄される姿に物語の面白さがある。
外交官の太郎と対立する憲兵中尉の三郎、馬賊の頭目の次郎と三郎の偶然の再開など、敷島四兄弟の距離が近付くのだが、そこには必ず間宮徳蔵の影が見える。間宮徳蔵の正体が、この壮大な物語の鍵を握りそうだ。
常に日本の外の世界を見事に描き、比類なき熱い冒険小説を上梓し続けた船戸与一であるが、遺憾な事に本作が遺作となってしまった。残り七巻は心して読みたい。
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本書の舞台は昭和5年(1930年)から翌々年まで。関東軍•帝国陸軍による満蒙領有の声が大きくなるなか、軍部の暴走する形で満州事変が発生、さらには関東軍は上海事変で国民政府と衝突する。この当時は「中国」ではなく、大陸の呼称は「支那」。清朝が倒れたあとの統一政府はなく、国民政府とは別にソ連の支援を受けた毛沢東が共産党政府を立ち上げたころ。
この時代の多くの支那人たちにとっては、民族意識はまだ育っていない。本作中の登場人物である新聞記者の香月信彦の言葉では「支那の未来は支那人の民族意識を国民党と共産党のどっちが吸収するかに懸かっている」のであり、約100年前に現在の中国情勢の緊張の原因があり、中国と台湾の対立には日本の大陸進出と満州建国が深く関与していることを改めて認識した。
物語の進行は敷島4兄弟の視点を通じて進行。太郎は領事館/外務省の関東軍/陸軍に対する発言権の低下に悩む。次郎は手下をすべて殺され鬱屈とした日々。三郎は関東軍の憲兵隊に配属されて鼻息荒くなる。四郎は義母との淫らな生活から脱するために上海に行くと阿片にはまりベトナム人のバーのママを殺害し、特務機関員の手先となる。
次の巻はいよいよ満州国建国。
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1928年~1945年の17年間の満州の歴史。登場人物4兄弟の視点で語られる。満州事変から第二次世界大戦終結までの流のなかで、南京事件、張鼓峰事件、ノモンハン事件、葛根廟事件、通化事件と有名な事件が次々と起こり、4兄弟それぞれの立場で事件と向き合う様子が描かれる。満州の歴史を詳しく知らなかったので、勉強になった。何が正しくてなにが正しくないのかなんてだれにもわからないと感じた。
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昭和6年の満州事変勃発。そして中国大陸に戦火が広がる。
謀略と武力で突き進む関東軍。
中国に集められた敷島4兄弟は、周りの状況に抗しきれず戸惑いながら、それぞれの道を行く。これから、4兄弟はどうなっていくのだろう?
理念と行動
満州進出から第二次世界大戦にいたるまでの日本政府、帝国軍にも、理念と行動はあった。
そして、理念の実現のため、状況を有利にするため、謀略や力業をよしとする当時の雰囲気。
翻って、現在はどうか?政府・国会、ネット。。。
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シリーズ2巻目。1巻目の勢いある面白さからちょっとパワーダウンした感じがする。四兄弟それぞれを描く部分が減って、史実に沿った戦いっぽいシーンが多かったからかな。馬賊として颯爽としていた次郎がうらぶれてしまったのを筆頭に、三郎は思考停止で融通が利かないし、四郎も頼りないなりに危なっかしさでいろんな目に遭ってた前巻に比べると締まらない感じ。8巻目までたどり着けるだろうか。
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2作/9作。
満州事変、上海事変。
中学校社会科教科書じゃあ、ほんの2~3行の記述に過ぎない歴史が、重厚に語られる。
「歴史は小説の玩具ではない」と謳った筆者の執筆姿勢に依るならば、ここで語られる歴史は概ね史実に準じてるのだろう・・・と考えると、なんともやりきれないものが残る。
あの時、あれが無かったら……
あの時、ああされていたなら……と後付けで語るのも虚しい程に、様々な立場、信条からなる大きな流れに抗いようもなく日本は、歴史が刻んだ悲劇の刻へ向かって突き進んでいる・・・。
★3つ、7ポイント半。
2016.12.20.新。
※兵卒たちが血で血を洗う激戦を繰り広げている最中、将兵たちは昼の戦闘が終れば旅館に帰り膳飯を食して酒を飲み、政治を語らう……
当然のように営業を続ける宿泊施設や飲食店。。。
戦時の“獣性”を正当化するかのように市街地の婦女子を襲う……
部下が銃撃を交わしている真横で煙草を吸い…“陣中見舞”とばかりに箱ごと置き去る・・・。
非日常の極みたる“戦争”のすぐ隣に描かれる一部の人々の“日常”が、当時の悲惨を逆にリアルに浮き上がらせているのが、印象に残る。