船戸与一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
コロンビアとベネズエラの国境地帯にある土地の争奪戦。
その土地にレアアースが埋蔵金されていることがわかったため全ての利権を手に入れようと親族も含め全ての邪魔者を排除しようとする土地の所有者側の視点と、神のお告げによりその土地で独自の共同体を設立しようとする新興宗教もどきのコロンビアからの難民たちの視点と交互に語られる。
難民側が正義のように見えるが、個人的には他人の土地で勝手に生活して立ち退かないというのはどう考えても不法占拠。所有者側の情け容赦のない排除ぶりもアレだが、自己責任でやっていることなので彼らの方が理にかなっている。
という若干腹落ちしないところも気にならないぐらい、登場人物の活かし方がうまいし、綿密な取材によって書かれているので、1000ページという大作ながらも中だるみせずに一気に読める。 -
Posted by ブクログ
もうお腹いっぱいです。
文庫上・下巻で合わせて1210ページの大部。
本書は1991年に毎日新聞社から単行本として刊行されました。
25年も前の作品ですから、割と古い作品といえましょう。
ただ、決して色あせないのは、本書の内容と同様、今もなお宗教、民族、その他の問題で、世界中でおびただしい量の血が流れているから。
しかも、かつてのような国家間の戦争・紛争というよりは、テロという形で世界中に脅威が拡散しており、より困難な時代に直面しているといえましょう。
さて、本書はイスラム革命後のイランが舞台。
世界中に2500万人という人口がいながら、迫害されてきたクルド人が、聖地マハバードで独立国家樹立を目指して武器の調達を目論みます。
そのクルド人ゲリラの指揮官が、清廉潔白なハッサン・ヘルムートという男。
武器調達を請け負ったのは、目的のためなら殺人もいとわない冷酷な日本人武器密輸商人で、「ハジ」と呼ばれる駒井克人です。
イスラム革命後に腐敗した革命防衛隊を正すため、実力行使に打って出るのが、若き革命防衛隊小隊主任のサミル・セイフ。
そして、かつては非スターリン主義的マルクス主義組織フェダイン・ハルクに所属し、ある事情によって隻脚となった、これもまた「ハジ」と呼ばれる日本人の男。
物語はこれらの登場人物の視点で多元的に展開し、マハバードであいまみえて壮絶なラストを迎えます。
読み終えた後は、歴史に翻弄された者たちの哀しみがひしひしと胸に迫ってくるでしょう。
余計な感傷を極力排し、乾いた筆致で感動を呼び起こす作者の力量にも感服する次第。
日本人にとっては複雑な中東情勢の一端を理解するための一助にもなりましょう。
おススメです。 -
Posted by ブクログ
もうお腹いっぱいです。
文庫上・下巻で合わせて1210ページの大部。
本書は1991年に毎日新聞社から単行本として刊行されました。
25年も前の作品ですから、割と古い作品といえましょう。
ただ、決して色あせないのは、本書の内容と同様、今もなお宗教、民族、その他の問題で、世界中でおびただしい量の血が流れているから。
しかも、かつてのような国家間の戦争・紛争というよりは、テロという形で世界中に脅威が拡散しており、より困難な時代に直面しているといえましょう。
さて、本書はイスラム革命後のイランが舞台。
世界中に2500万人という人口がいながら、迫害されてきたクルド人が、聖地マハバードで独立国家樹立を目指して武器の調達を目論みます。
そのクルド人ゲリラの指揮官が、清廉潔白なハッサン・ヘルムートという男。
武器調達を請け負ったのは、目的のためなら殺人もいとわない冷酷な日本人武器密輸商人で、「ハジ」と呼ばれる駒井克人です。
イスラム革命後に腐敗した革命防衛隊を正すため、実力行使に打って出るのが、若き革命防衛隊小隊主任のサミル・セイフ。
そして、かつては非スターリン主義的マルクス主義組織フェダイン・ハルクに所属し、ある事情によって隻脚となった、これもまた「ハジ」と呼ばれる日本人の男。
物語はこれらの登場人物の視点で多元的に展開し、マハバードであいまみえて壮絶なラストを迎えます。
読み終えた後は、歴史に翻弄された者たちの哀しみがひしひしと胸に迫ってくるでしょう。
余計な感傷を極力排し、乾いた筆致で感動を呼び起こす作者の力量にも感服する次第。
日本人にとっては複雑な中東情勢の一端を理解するための一助にもなりましょう。
おススメです。 -
Posted by ブクログ
船戸与一さんの遺作となってしまった「満州国演義」シリーズ第一作です。
外交官、満州の馬賊の頭領、関東軍、左翼思想に共鳴する学生、異なる道を歩む敷島四兄弟を主人公に、激動の時代を描ききった全九巻に及ぶ超大作。
文庫本になるのを待ってました(^^)
第一作は主な登場人物が出揃い、徐々に戦争へと向かう日本と満州で、その流れに巻き込まれていきます。
まだほんの入り口という感じですが、これぞ船戸与一作品!という雰囲気なので、次巻以降に期待が膨らみます。
この作品は2007年に初版が出たんですが、戦争へと大きく一つ舵を切った今の時代にこそ読まれるべき作品だと思います。さすが船戸与一。
癌との闘病の中で書き上げた執念の大作、じっくり味わって読み進めたいと思います。 -
Posted by ブクログ
冒険小説の雄、船戸与一のデビュー作。
こういうのを読んでしまうと、うまい人はやっぱり最初から面白いもの書くんだなあとしみじみ痛感してしまう。
まあそれはともかく。
現代の国際政治の裏側を舞台とし、そこに生きる人々を描き続けている船戸与一。必然的に登場人物は一癖も二癖もある人物ばかり。また、他ではなかなか描かれない、中南米や中央アジア、東南アジアなどの国の人を登場人物としてみることができるのが、船戸作品の特徴か。
それは、現代政治がそれら辺境地域を欧米諸国(時には日本も)しいたげ、搾取し、代理戦争を行うことで否応無しに進んできたからであろう。
だからなのか、作者の目は常に虐げられてきた人たちへ注がれている。
この作品でもそうだ。
主人公の神代恒彦は、日本人でありながらCIAの非合法員(イリーガル)として非合法な仕事を生業としている男だ。今回の仕事に選んだパートナーは、ナチの人体実験の落とし子であるドイツ人と、ベトナム戦争の英雄と呼ばれていたベトナム人。
いずれも、権力に翻弄されてきた男たちだ。
彼らの仕事は、メキシコの革命運動の指導者を暗殺すること。
三人はその仕事を無事に終えるが、ベトナム人に金を持ち逃げされてしまう。さらに、神代とドイツ人を誰かが狙撃してくる。
狙撃してきたのは、誰が、なんの目的でなのか。ベトナム人は何故金を持ち逃げしたのか。
ふたりはベトナム人・グエンを追ってカリフォルニアへ向かう――。
圧倒的なスピード感と、むせ返るような熱気が最初から最後まで、物語を支配している。
アメリカを舞台に、アメリカに支配されてきた男、女が繰り広げる戦いの物語となっている。
当時の国際情勢がわからなくても読める、ある種悲しい物語。
いかにも船戸与一のデビュー作といった感のある、船戸与一エッセンスが凝縮された作品だ。 -
Posted by ブクログ
これが書かれたのは1985年。冷戦真っ只中の、中南米が舞台。登場人物は破壊工作員。潜入先はとある民族革命運動のゲリラ組織。依頼内容は、その革命運動のリーダーを殺害すること。
船戸与一の得意ジャンルであるだけあって、中南米の暑苦しさ、虐げられているインディオたちのむごい実態、その上に君臨する白人たちの優越感、山岳地帯の息苦しさとある種の清涼感、それら全てが生き生きと描かれている。
破壊工作員である登場人物たちが、何故破壊工作員になったのか。彼らの中にある破壊衝動や殺人衝動はどこからくるのか。そんなものが数人の登場人物を通して語られる。
いつも読む船戸与一と少し違う印象があったのは、革命運動を行い、米国帝国主義(こんな単語、もういまや死語なんだろうなあ……)に対抗する立場の人間を主人公にすえることが多かったのに対し、この作品はアメリカの某大企業に雇われた男が主人公だからか。
ストーリー展開もいつもの船戸節、というのはご愛嬌だが、20世紀という時代を知る上で、読んでみてもいい小説なのかもしれない。