船戸与一のレビュー一覧

  • 灰塵の暦―満州国演義五―(新潮文庫)

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    高まるソ連の脅威に対抗するために、モンゴルに第二の満州国を作ろうとする動きは結局うまくいかず。

    徐々に高まる国民党政府との緊張。頻発する関東軍と国民党軍及び抗日ゲリラ達との衝突。犬猿の中だった共産党軍と国民党は合流。

    昭和12年には通州事件が発生。多くの日本人が凄惨に惨殺される。

    国民党政府(1912年成立の中華民国)の首都である南京への進軍には兵站は伴わなかった。兵士による現地調達すなわち掠奪と強姦を取締る憲兵は少人数しか配置されず。

    そして南京陥落後の関東軍による国民党軍掃討に多くのページを割いている。現代の中国が主張する20万人という数字が非現実的であるために、虐殺自体がなかったことと主張する意見も存在するが、この本は日本兵による国民軍兵士たち(市民ではなく)への処刑(市内ではなく紫市外にて)の様子を詳述。銃剣を用いた凸殺の描写はおぞましい。市民もふくめて市内で20万人が虐殺されたという現代中国の発表よりは大幅に少ないが、それでも夥しい殺人が行われたという話の流れ。真意のほどは不明だが、主人公の1人、憲兵の敷島三郎がこのような動きをなんとか止めさせようと試みるのは救いだが。

    関東軍による阿片生産の取り組みや、三井物産による阿片輸入についても触れている。これは多くの公文書により記録が残る闇歴史。

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    2026年10月11日
  • 午後の行商人

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    国境や信念、善悪を軽々と踏み越えるような登場人物たちの濃さに圧倒されながらも、どこか乾いた哀しみが滲む一冊です。
    中南米を舞台にした旅商人の物語は、ハードボイルドというよりも、むしろ人生そのものの混沌と矛盾に触れてくる感覚でした。
    乾いたメキシコの風景や民衆のエネルギーが濃密に描かれていて、読みながら旅をしているような没入感がありましたし、タランチュラの存在感も絶妙で、物語に深みを出しています。
    語り口や描写は相変わらず骨太で読ませて、船戸作品ならではの地に足のついた重厚感があり、読み終えたあとにじわじわ効いてくる作品でした。

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    2026年07月21日
  • 夢は荒れ地を

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    カンボジアの闇をテーマに書かれている小説です。
    日本人としての常識など全く通用せず、現地の民族争いの遺恨を残す中で、汚職の塊の政府や警察、日本大使館からの圧力、人身売買の元締、身近にありすぎる「死」、色々な事柄と闘いながら、識字普及のための学校と、人身売買で売られていく少女たちを匿うシェルターを作るために奮闘する日本人と現地のカンボジア人の話です。
    ただ、小説とはいえ、リアリティがあるカンボジア情勢には深く考えさせられました。

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    2026年01月16日
  • 砂のクロニクル 下

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    壮大な物語だった。船戸与一の書く小説は、どれもこれもかっこいい(って全部読んだ訳ではないが)。いまのクルドヘイトについて考えるときに、もしかしたら一助になるかもしれない。

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    2025年09月18日
  • 風の払暁―満州国演義一―(新潮文庫)

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    舩戸与一の遺作の長編小説。本巻は1928年/昭和3年の満州事変直前の奉天(現在の瀋陽)と上海が舞台。霊南坂の名家、敷島家の4兄弟を軸に話が始まる。日露戦争以降の日本軍部が満州領有を目指して暴走し始める状況。支那/中国も政権は一枚岩ではなく、さまざまな軍閥が跋扈し、国民党政府が必ずしも支配勢力ではなく、ソ連も領土拡張を目指している時代。80年前の東アジアが地政学的にキナ臭い場所であったことがビビッドに理解できる。

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    2025年06月11日
  • 猛き箱舟 上

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    「何なんだこれは!」という衝撃が読後の感想。この本を読まずに今まで生きてきたとは、なんたることか。文庫で上下巻 1,200ページほどだが、文字通り息も付かずに一気読み。解説の佐々木譲は「読むと体重が2キロ減る」と評し、逢坂剛は「ハードボイルド+冒険小説+ビルディングスロマン」と称した。個人的には、こういうたくさん人が死ぬ小説は嫌いなのだが、そういう卑近な好き嫌いを言う余裕もなく、ガツガツと打ちのめされ続けるだけなのだ。

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    2025年06月06日
  • 虹の谷の五月 下

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    トシオはメグはどんな大人になっただろう。
    ガルソボンガ地区は今は。
    主人公は私より5歳若いセブ島の山あいの町に住むトシオ。

    1998年から2000年にかけてのフィリピン・セブ島の山間の田舎を舞台に13歳から15歳に成長していくトシオ。日本の当時と比べ物にならないくらい過酷。
    日本人の父に逃げられ、母はエイズで若くして亡くなり、かつて抗日ゲリラだったガブリエル爺と闘鶏を生業に細々と暮らす。
    トシオは丸い虹が架かる谷に住む元反政府ゲリラのホセを尊敬している。
    腐敗した自治と警察、共通価値はお金だけ。かろうじて保たれていた均衡がクィーンの帰国を機に崩れていく。彼女は年上の日本人画家と結婚し遺産を相続して地元に邸宅を建てる。
    一人称で語られるトシオの心の成長が言葉使いと思考から伝わり、子供の成長を喜ぶような気持ちで読める。それはこの話の数少ない救いである。
    突破口が見つかりそうになりながら、次の瞬間に見失う展開の繰り返しは重く悲しく、ゆえに美しさと残酷さが心に残る。
    冒険小説であり、ガブリエル、トシオ、クイーンを生み出した日本の責任がのしかかってくる歴史ドラマでもある。

    日本がフィリピンにしたことが尾を引いていることを忘れさせない。ひとつの楽園でセブ島を終わらせてはいけない理由がわかった。

    参考文献も5冊掲載。周到な調査を背景にした小説が投げかけるものは大きい。

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    2023年05月27日
  • 山猫の夏

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    肌を焼くような灼熱の大地と、間断なく汗が吹き出る暑く乾いた灼熱のブラジルが舞台というだけで気分を高ぶらせる。 町を分断する因縁を持つ2家の駆け落ち劇に端を発し、雇われた1人の男の出現で両家の戦いが町を巻き込んで死体の山を築いていく。 緻密な計算とグイグイと周りを引き釣りこむ主人公の強い個性に魅了され読む手が止まらない。 再読本に入れる。(^_^)v

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    2023年04月29日
  • 砂のクロニクル 上

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    小説の舞台の全容が見えてきて、登場人物も一箇所に収束してきたみたい・・・。 物語は、いよいよ核心に突入するのだろう。下巻が楽しみ

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    2023年04月29日
  • 砂のクロニクル 下

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    イスラム支配から独立を目指すクルド族の武装蜂起が主軸の物語。 個人的に、中東と聞くと殺伐とした大地とタリバンやISISに代表されるテロや残虐行為がイメージとして浮かび、それだけで否応なく血生臭さが漂いハードボイルド感が掻き立てられる。 戦争や暴力を好むわけじゃないけれど、骨太のストーリーと目に浮かぶようなリアルな描写に気が付くと物語にどっぷりハマっていた。 とっても重厚感のある作品で、この本も再読本に入れる。(。^ ^。)v

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    2023年04月29日
  • 砂のクロニクル 下

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    日本人にとって馴染みにくい中東が舞台。

    複数の登場人物がオムニバス形式で主役をとり、引き寄せられるかのように聖地マハバートに赴いていく。それぞれがそれぞれの理想をかかげ、正義や大義、はたまた欲望のために。多様な生き方の結晶がこの物語には詰まっているのだが、、、

    あまりに悲しい終盤。

    大きな歴史という軋轢に踏み潰され、なかったことにされる真実。どの国や時代でもそうなのだろう。むしろその真実にこそリアリティやドラマがある。これは決して遠い国や時代の物語ではない。新たな視点をくれる宝物のような大作でした。生きる日々の重さが増せます。

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    2022年12月13日
  • 風の払暁―満州国演義一―(新潮文庫)

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    膨大な資料をよくぞここまで調べ上げたと感服しています。
    歴史の本筋を見通す力がすごい、戦後最大の歴史小説だと思います。

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    2022年12月07日
  • 新・雨月 上 戊辰戦役朧夜話

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    世に明治維新と褒めそやさるが実際にはそんなたいそうなものではなく、
    単なる権力闘争に過ぎないことがこの本でも示されている。
    薩摩、長州の田舎侍が江戸では、否、全国では馬鹿にされるため、
    幼い天皇を担ぎ出し、この錦の御旗をもとに東日本の幕府勢力を潰しにかかった。
    それが証拠には西軍(筆者は官軍とは呼んでいない)が天下をとると、
    慌てふためいて政治とはどうすべきものか欧州に勉強に行った。
    それまでは政治に対するビジョンなんてものは無く、
    ただ自分たちが天下をとることのみ専念した。
    しかし、この成功、自信が後に薩長独裁政権へと移行し、
    天皇を頂点とした軍事国家が出来上がったのである。
    そのあたりを船戸与一は『満州国演義』で端的に示している。
    江戸幕府そして戦前の軍国主義国家においては
    農民や市民は単なる納税者で一兵卒でしかなかった。
    いわんや全人口の半分を占める女性の参政権など目にもくれなかった。

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    2019年12月17日
  • 虹の谷の五月 上

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    ネタバレ

    人喰い花、白い女霊、丸い虹。
    フィリピン社会で健気に生きる少年ジャピーノ、締めくくりは最高!!
    だけど、メグはその答えで納得したのか??
    ホセと同じ轍を踏まないのか??

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    2018年08月05日
  • 非合法員

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    どこで教えられたか忘れたが、船戸与一のデビュー作と知らずに読んだ。この本が、出版時には全然売れなかったというのが信じられない。
    情報組織に関する情報源がなく、フォーサイスの作品から類推するか噂を受け入れるしかなかった、という話に納得する。

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    2017年06月02日
  • 残夢の骸―満州国演義九―(新潮文庫)

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    ついに帝国は崩壊の日を迎える。敷島四兄弟もまた、歴史に翻弄されながら抗えない運命にその身を窶し、この「満州国演義」から一人、また一人と退場していく。それら全てが夢の跡、朽ち果てた夏のようにただ茫漠と過ぎ去っていくこの寂寥感。間垣徳蔵は最後に矜恃を見せた。歴史の激流に只々圧倒された全9巻。船戸先生、安らかに。

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    2017年05月18日
  • 南冥の雫―満州国演義八―(新潮文庫)

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    かつて満州の大地を蹴り疾駆した浪漫は、遥か南冥の地で覇道の夢の果てに、静かに骸を晒した。
    哀しい。
    いよいよ最終巻が楽しみだ。

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    2017年05月13日
  • 蝦夷地別件 上

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    アイヌにも目を向けよう、ということで会社の先輩からオススメの一冊…まだまだ序盤でも、ストーリー展開に胸熱です。

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    2016年12月03日
  • 砂のクロニクル 上

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    想像以上の作品だった。文句なしの星5ツ。

    私がまだ若い頃、パーレビ国王、ホメイニ氏、イランイラク戦争などなどの単語はテレビのニュースでよく耳にしていた。でもそれだけだった。
    中東情勢については全く不勉強だったし、興味もなかった。
    この作品を読んで全てが繋がり全体像が見えた。

    昔から気になっていた作品であったが、読み始めは難しく失敗だったかも。。。と思った。
    ところが少し先に進むともう止まらない!先が読みたくて仕方ない!おもしろすぎる!

    パーレビ体制からホメイニ氏を指導者とするイスラム革命後のイラン現代史の中での物語

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    2015年11月28日
  • 群狼の舞―満州国演義三―(新潮文庫)

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     満州国演技3巻目にして、船戸節ついにさく裂。
    満州国建国と敷島4兄弟の運命が複雑にからむ
    おもしろい、4巻目が楽しみ

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    2015年10月17日