船戸与一のレビュー一覧

  • 砂のクロニクル 下

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    壮大な物語だった。船戸与一の書く小説は、どれもこれもかっこいい(って全部読んだ訳ではないが)。いまのクルドヘイトについて考えるときに、もしかしたら一助になるかもしれない。

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    2025年09月18日
  • 風の払暁―満州国演義一―(新潮文庫)

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    舩戸与一の遺作の長編小説。本巻は1928年/昭和3年の満州事変直前の奉天(現在の瀋陽)と上海が舞台。霊南坂の名家、敷島家の4兄弟を軸に話が始まる。日露戦争以降の日本軍部が満州領有を目指して暴走し始める状況。支那/中国も政権は一枚岩ではなく、さまざまな軍閥が跋扈し、国民党政府が必ずしも支配勢力ではなく、ソ連も領土拡張を目指している時代。80年前の東アジアが地政学的にキナ臭い場所であったことがビビッドに理解できる。

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    2025年06月11日
  • 猛き箱舟 上

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    「何なんだこれは!」という衝撃が読後の感想。この本を読まずに今まで生きてきたとは、なんたることか。文庫で上下巻 1,200ページほどだが、文字通り息も付かずに一気読み。解説の佐々木譲は「読むと体重が2キロ減る」と評し、逢坂剛は「ハードボイルド+冒険小説+ビルディングスロマン」と称した。個人的には、こういうたくさん人が死ぬ小説は嫌いなのだが、そういう卑近な好き嫌いを言う余裕もなく、ガツガツと打ちのめされ続けるだけなのだ。

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    2025年06月06日
  • 虹の谷の五月 下

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    トシオはメグはどんな大人になっただろう。
    ガルソボンガ地区は今は。
    主人公は私より5歳若いセブ島の山あいの町に住むトシオ。

    1998年から2000年にかけてのフィリピン・セブ島の山間の田舎を舞台に13歳から15歳に成長していくトシオ。日本の当時と比べ物にならないくらい過酷。
    日本人の父に逃げられ、母はエイズで若くして亡くなり、かつて抗日ゲリラだったガブリエル爺と闘鶏を生業に細々と暮らす。
    トシオは丸い虹が架かる谷に住む元反政府ゲリラのホセを尊敬している。
    腐敗した自治と警察、共通価値はお金だけ。かろうじて保たれていた均衡がクィーンの帰国を機に崩れていく。彼女は年上の日本人画家と結婚し遺産を相

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    2023年05月27日
  • 山猫の夏

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    肌を焼くような灼熱の大地と、間断なく汗が吹き出る暑く乾いた灼熱のブラジルが舞台というだけで気分を高ぶらせる。 町を分断する因縁を持つ2家の駆け落ち劇に端を発し、雇われた1人の男の出現で両家の戦いが町を巻き込んで死体の山を築いていく。 緻密な計算とグイグイと周りを引き釣りこむ主人公の強い個性に魅了され読む手が止まらない。 再読本に入れる。(^_^)v

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    2023年04月29日
  • 砂のクロニクル 上

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    小説の舞台の全容が見えてきて、登場人物も一箇所に収束してきたみたい・・・。 物語は、いよいよ核心に突入するのだろう。下巻が楽しみ

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    2023年04月29日
  • 砂のクロニクル 下

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    イスラム支配から独立を目指すクルド族の武装蜂起が主軸の物語。 個人的に、中東と聞くと殺伐とした大地とタリバンやISISに代表されるテロや残虐行為がイメージとして浮かび、それだけで否応なく血生臭さが漂いハードボイルド感が掻き立てられる。 戦争や暴力を好むわけじゃないけれど、骨太のストーリーと目に浮かぶようなリアルな描写に気が付くと物語にどっぷりハマっていた。 とっても重厚感のある作品で、この本も再読本に入れる。(。^ ^。)v

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    2023年04月29日
  • 砂のクロニクル 下

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    日本人にとって馴染みにくい中東が舞台。

    複数の登場人物がオムニバス形式で主役をとり、引き寄せられるかのように聖地マハバートに赴いていく。それぞれがそれぞれの理想をかかげ、正義や大義、はたまた欲望のために。多様な生き方の結晶がこの物語には詰まっているのだが、、、

    あまりに悲しい終盤。

    大きな歴史という軋轢に踏み潰され、なかったことにされる真実。どの国や時代でもそうなのだろう。むしろその真実にこそリアリティやドラマがある。これは決して遠い国や時代の物語ではない。新たな視点をくれる宝物のような大作でした。生きる日々の重さが増せます。

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    2022年12月13日
  • 風の払暁―満州国演義一―(新潮文庫)

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    膨大な資料をよくぞここまで調べ上げたと感服しています。
    歴史の本筋を見通す力がすごい、戦後最大の歴史小説だと思います。

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    2022年12月07日
  • 新・雨月 上 戊辰戦役朧夜話

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    世に明治維新と褒めそやさるが実際にはそんなたいそうなものではなく、
    単なる権力闘争に過ぎないことがこの本でも示されている。
    薩摩、長州の田舎侍が江戸では、否、全国では馬鹿にされるため、
    幼い天皇を担ぎ出し、この錦の御旗をもとに東日本の幕府勢力を潰しにかかった。
    それが証拠には西軍(筆者は官軍とは呼んでいない)が天下をとると、
    慌てふためいて政治とはどうすべきものか欧州に勉強に行った。
    それまでは政治に対するビジョンなんてものは無く、
    ただ自分たちが天下をとることのみ専念した。
    しかし、この成功、自信が後に薩長独裁政権へと移行し、
    天皇を頂点とした軍事国家が出来上がったのである。
    そのあたりを船

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    2019年12月17日
  • 虹の谷の五月 上

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    ネタバレ

    人喰い花、白い女霊、丸い虹。
    フィリピン社会で健気に生きる少年ジャピーノ、締めくくりは最高!!
    だけど、メグはその答えで納得したのか??
    ホセと同じ轍を踏まないのか??

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    2018年08月05日
  • ゴルゴ13ノベルズIII おろしや間諜伝説

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    船戸与一『おろしや間諜伝説 ゴルゴ13ノベルズ3』小学館文庫 。

    船戸与一が作家デビュー前に外浦吾朗の筆名で脚本に携わった作品群から3作をセレクトし、小説に仕立て上げた全3巻のシリーズの最終巻。船戸与一の作品も、これが読み納めとなるのは何とも寂しい限りだ。

    ゴルゴ13の出生の秘密に迫る作品の一つ。ストーリーの巧みさには驚かされた。同様の作品に『日本人・東研作』『芹沢家殺人事件』『蒼狼漂う果て』『毛沢東の遺言』『河豚の季節』『すべて人民のもの』『禿鷲伝説』『亜細亜の遺産』があるが、その中でも一番面白いストーリーになっていると思う。

    ストーリーの面白さの要因は日本政府がゴルゴ13と専属契約を

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    2017年07月07日
  • 非合法員

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    どこで教えられたか忘れたが、船戸与一のデビュー作と知らずに読んだ。この本が、出版時には全然売れなかったというのが信じられない。
    情報組織に関する情報源がなく、フォーサイスの作品から類推するか噂を受け入れるしかなかった、という話に納得する。

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    2017年06月02日
  • 残夢の骸―満州国演義九―(新潮文庫)

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    ついに帝国は崩壊の日を迎える。敷島四兄弟もまた、歴史に翻弄されながら抗えない運命にその身を窶し、この「満州国演義」から一人、また一人と退場していく。それら全てが夢の跡、朽ち果てた夏のようにただ茫漠と過ぎ去っていくこの寂寥感。間垣徳蔵は最後に矜恃を見せた。歴史の激流に只々圧倒された全9巻。船戸先生、安らかに。

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    2017年05月18日
  • 南冥の雫―満州国演義八―(新潮文庫)

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    かつて満州の大地を蹴り疾駆した浪漫は、遥か南冥の地で覇道の夢の果てに、静かに骸を晒した。
    哀しい。
    いよいよ最終巻が楽しみだ。

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    2017年05月13日
  • ゴルゴ13ノベルズI 落日の死影

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    船戸与一『落日の死影 ゴルゴ13ノベルズ1』小学館文庫。

    船戸与一が作家デビュー前に外浦吾朗の筆名で脚本に携わった作品群から3作をセレクトし、小説に仕立て上げた全3巻のシリーズが3ヶ月連続でついに文庫化。船戸与一の作品で読んでいないのは、このシリーズだけなので文庫化を非常に楽しみにしていた。

    面白い。非常に面白い。ゴルゴ13をビジュアルで理解しているだけに、描かれている文章が全て映像に変わるのだ。そして、読んでみるば、やはり船戸節なのだということを実感する。

    米国大統領がオバマに代わったことを契機に、一計を案じた一部の上院議員たちが米ソの冷戦時代に共同開発していた負の遺産である毒物兵器を

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    2017年05月10日
  • 蝦夷地別件 上

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    アイヌにも目を向けよう、ということで会社の先輩からオススメの一冊…まだまだ序盤でも、ストーリー展開に胸熱です。

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    2016年12月03日
  • 残夢の骸―満州国演義九―(新潮文庫)

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    船戸与一が自らの死期を覚りながらも、残された命を削りながら最後に遺した長編歴史冒険小説の最終巻。

    全巻を通じて唯一ホッとする、本西照夫が祖父と再開する最終章は、船戸与一が現代の日本人に残した希望とメッセージなのかも知れない。

    敗戦の道を一気に突き進む日本。特攻隊に象徴される軍部の迷走と混乱が始まり、満州国と敷島四兄弟にも破滅の時が迫る。この破滅の構図は巻を重ねる度に明確になり、まるで船戸与一の自らの身に迫る最期の刻を暗示しているかのようにも感じられる。

    物語の主人公であり、日本人のステロタイプのように描かれる敷島四兄弟。満州国の崩壊と敗戦という事実に兄弟たちがは狂乱の渦の中で、次第にその

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    2016年07月31日
  • 南冥の雫―満州国演義八―(新潮文庫)

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    船戸与一の遺作となった歴史冒険小説の第八巻。自らの死期を知りながらも、命を削りながら綴った圧巻の大作。船戸与一が歴史冒険小説を書いたというより、船戸与一が自ら歴史を創ったと言っても良いくらいの濃厚な作品である。

    まるで間垣徳蔵に誘われるかのように、敗戦濃厚な戦争の渦に巻き込まれていく、敷島四兄弟。船戸作品に薔薇色の結末を期待してはいけないのだが、この巻で敷島四兄弟が破滅への道を突き進む姿がより明確になった。

    役人の太郎は自らが撒いた種で危機を迎え、大陸浪人の次郎は期せずして囚人部隊を率いてインパール作戦に加わる。陸軍少佐の三郎にもソ連の脅威が迫り、四郎までもが関東軍に召集される。

    残すは

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    2016年06月30日
  • 雷の波濤―満州国演義七―(新潮文庫)

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    圧巻の歴史冒険小説の第七巻。

    世界は戦争という狂気の渦に巻き込まれ、ついに太平洋戦争が開戦し、帝国陸軍は南進する。

    敷島四兄弟もまるでメフィストフェレスのように付きまとう間垣徳蔵により、次第に狂気の渦に引きずり込まれていく。一体、間垣徳蔵は何故に敷島四兄弟に付きまとうのだろうか…

    前巻まで読んだ限りでは、物語の結末は敷島四兄弟が顔を揃え、幾ばくかのハッピーエンドで終わるのではないかと予想していたのだが、この巻を読むと、それは儚い願いであったことに気付く。

    壮大な物語も残すところ後、二巻。心して読まねば。

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    2016年06月02日