酒井昭伸のレビュー一覧
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映画を観て、マイ生涯Bestの一冊「指輪物語」に似ていると思い、2年前の12月に(上)を読み終えた。私の2つの合格基準の1つである「物語の最初から既に物語世界は完璧に出来上がっている」という事は確認した。そして、世界が作者によって作り込まれているからこそ、本来ならば答え切ることが難しい種類の「問いかけ」がなされても、作者はこのファンタジー世界の中でなら、明確にその答えを出すことができるのである。その事がもう一つの合格基準なのであるが、(中)を読んだ限りでは、その「問いかけ」とは「世界の平和」ということになるのだろうか?未だわからない。
西暦102世紀の宇宙の彼方、既にAIは捨て去られ、その作業の多くは演算能力者(メンタート)という国に1人いるかいないかの人間に託されているようだ。ラスボスらしき(?)ハルコンネン男爵は、自国のメンタートを失ったあと、敵国のメンタートを巧妙な嘘で取り込む事を画策する。とりあえず(中)に於いては、主人公ポールの父・レト公爵を謀殺し、アラキス(砂の惑星)の統治権を得た男爵の、綱上を渡るが如き政治が描かれた。一方、惑星住民フレメンと合流したポールとジェシカ母子は、フレメン世界の思いの外の広がりと豊かさと伝統を目にし、尚且つ母子には、その持つ特異な能力が花開きつつある。というのが簡単過ぎる概略ではある。
途中何度も後世の史書であるプリンセス・イルーランの著書の一節が挿入される。これがこの物語の大きな特徴である。「銀河英雄伝説」における「後世の歴史家」の位置付けだろうか。〈未来から物語る過去〉という構造は、多くのファンタジーが採る「仕掛け」だ。ただし、イルーランはムアッディップ(ポール)の伝記やこぼれ話、談話などを著していたので、てっきり主人公ポールの娘だとばかり思っていたのだが、今回違っていたことが判明した。未だ登場していない、「あの人」の娘だったのである。これは驚きだった。だとすると、ポールの運命が突然不安定に見えてくる。ポールの未来には、プリンセスはいないのか?
(上)に於いて、この物語は、レト公爵の息子たるポールが、砂の惑星の救世主となり(そういう伝説がフレメンにも伝わっている)安寧をもたらす物語だと思っていた。しかし、イルーラン問題然り、(中)途中で、何度も予知能力を持つポールが、「予知は完全ではない」と呟くように、単なる救世主物語ではない可能性も大きくなった。
だとすると、「平和」の話ではなく、「運命」の話なのかもしれない。来年公開の映画「デューン砂の惑星パート2」の為に24年3月までには(下)を読んでおきたい。 -
Posted by ブクログ
中編「鏖戦」「凍月」の二作収録。
どちらも共通しているのは独特な世界観で造語が説明無く飛び交うところ。
「鏖戦」
はるか未来、人類が異星人と戦っているようだけど人類は人体改造してるし文化も戦争に特化した物になっているようでまるで異星人同士の戦争のよう。
でも異星人の方が更に訳分からない価値観だからまだ人類の方が感情移入できるな、という感じで。
その表現が古語というか当て字や文体などで行われている所が面白い。あと途中からある事情(だと思ったけど読み違い?)で文体が変わって行くのも面白かったです。
大変難解でしたが、その奥にある幻想的な風景が良かったです。
「凍月」
未来の月に住む科学者がある経緯で四百数十人分の冷凍頭部を手に入れる事から始まる物語。
こちらは月に入植した家族が世代を経るうちに大型化し、「家系」と呼ばれるまとまり同士で軽い政治闘争が起きている中、新興宗教を母体とした集団が権力を持ち始め、その集団が主人公たち所属「家系」にちょっかい出してきたけど何で?というのが軸になってます。
こちらはミステリー的な要素もあれば政治に関わる人の哲学と成長と変容をも描いていて、硬軟取り混ぜて描ける人なのだなと感服しました。
どちらもP.K.ディック作品の様な題材なのに人が違うとこういった味付けになるんや…みたいな感じです。そういう風味が好きな方にお勧めします。 -
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ポールの成長と覚醒が凄まじい。
そしてこの上中下でストーリーは終わらない(知らなかった)。
しかし、原作が書かれた当時、この想像力は圧巻。
附録が凄い。
ストーリーの中での世の中のバックグラウンドが
ワード解説とともに語られている。
解説と翻訳者によるあとがきもおもしろい。
ハリウッドのストの煽りを受け、
DUNE: PART TWOの公開が来年になりそう…で、
読むモチベとスピードがダダ下がり。
ミッションインポシブルを観に行った時映画館で、
フル IMAXのDUNE2の予告編を観て読む気を取り戻す。
映画はどう・どこまで描かれるのか、楽しみすぎる。
続編『砂漠の救世主 上下』は恵比寿有隣堂に取り寄せ依頼。 -
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この中巻の半分ちょっとくらいまでが、
2021年の映画で描かれていた分だった。
SF不慣れの為、読むのに若干時間がかかるが、
面白いから読み進んじゃう。
映画を観たおかげで、登場人物と演者が見た目で直結、
頭の中で整理+映像化しやすいのも一因。
疑いを持ったままの親子や家臣との人間関係、
フェイド=ラウサとハルコンネン男爵の今後、
アトレイデス家とフレメンとの関係性、
フレメンの内部の今後、
ポールとチェイニーの関係、ポール自身の今後、
プリンセス・イルーラン(まだ出てきてない)との絡み、
ジハードとは…続きが気になりすぎる。
そして、早く映画観たい!!
↑ストライキが映画公開に影響しない事を祈るのみ。
オースティン・バトラーとフローレンス・ピューが、
フェイド=ラウサとプリンセス・イルーランをどう演じるか、想像しながら読み進むめられるのが楽しい。 -
Posted by ブクログ
ドゥニ・ヴィルヌーヴとティモシー・シャラメの映画『Dune』が好きすぎて、11月の『Dune: Part Two』公開前に原作を読もうと、思いつきで読み始める。
同じ段落を何度も読んだり、
数ページ遡って読み返したり、
スラスラと読み進めはしないけど(基本SF苦手だし)、
映画で観たお陰で、あの上質な映像が頭の中に甦り、
内容を理解する一助になっている。
読んでいて原作に比較的忠実に映画化されてた事に驚く。
流石に原作は人物の内面/心象の描写が濃い。
特にポール。自分に対して、父に対して、母に対して。
上巻の最後半での母に対する想いの描写は複雑で、
これからどう変わるのか、変わらないのか気になる。
『理解するの難しい!!』と思いながら読むのにも慣れ、
今ではこの難しさが楽しくも感じ始めている。面白い。
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今から中巻を読み始めます。
上中下と文庫本3冊続く物語を読むのも久しぶり。
北方水滸伝以来か??何年前よ!! -
Posted by ブクログ
『宇宙〈そら〉へ』の続編。火星有人ミッションに選ばれた宇宙飛行士のエルマは、家族や仲間との間で煩悶する。
史実では1969年にアポロ11号が有人月面着陸に成功したのち、アポロ17号で計画は終了し、以来50年を経てもいまだに火星まで宇宙飛行士が行くという話は聞かない。その後のスペースシャトル計画を経て、2022年始動のアルテミス計画でようやく再び月には行くことになったらしいが、火星への夢はまだ遠い。詳しくは知らないが、宇宙開発があまり進んでいるように見えないのは、お金がかかりすぎるのが大きいのだろうか?
本作では1962年に第一次火星探検隊が火星へ旅立つという設定になっており、もし早い時期から宇宙開発にもっと多くのリソースを割いていたらどうなっていたか、一つの思考実験として非常に興味深い歴史改変SFだと思う。
エルマは前作で獲得した女性宇宙飛行士としての華々しいポジションを演じる一方、依然として女性蔑視、黒人の人権問題は大きなファクターをしめていて、パーカーやデビエルといった象徴的なライバルとの軋轢がドラマを盛り上げる。
さらに3年は会えなくなる家族との関係やキャリアプランの問題で深く悩みつつも、あきらめられない宇宙飛行への想いが彼女を突き動かす。
このあたりの女性らしい心の流れが鮮明に描かれていることと、宇宙飛行にまつわるディティールが本作の魅力。また、結婚して12年も経っているのにラブラブすぎるヨーク夫妻の絆の深まりを追っていくのも読みどころのひとつだ。火星への旅で何が起こるか、下巻が楽しみ。 -
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1952年、巨大隕石の落下により絶滅の危機が迫る人類は、宇宙開発に希望をつなげるが……。歴史改変SF。
落下してくるものを阻止しようというアルマゲドンやディープ・インパクトとは逆で、最初に隕石が落ちてしまってからの顛末。1952年の設定で、実在の人物も登場するが、歴史は現実とは大きく異なるものとなっていく。
隕石落下の影響で、人類の存続が危ぶまれるのだが……。
あれ?序盤のパニック的な危機感はどこへやら。宇宙開発のさなかで、女性の社会進出問題や黒人とかユダヤ人の人権問題、人間関係のあれこれや自身の弱点との戦いで物語は進んでいく。なんだか、肩すかしをくらったような感じを抱きながらも、主人公の心理描写がうまく、複合的な問題が逆に「宇宙飛行士」という目標に収束していく展開に、感情移入してしまう魅力がある。才知も欠点もある女性が奮闘する物語にどこか共感を覚えつつ、多様な要素を含むディティールに感嘆。 -
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ネタバレ映画(前編)を見た後に読み始めた下巻。
下巻は上中巻に比べて展開がダイナミックで読みスピードも自然と早まった。大きく期待を裏切られるような結末ではないが、細かく描かれた世界観にひたってストーリーを追うことや、生態系や権力闘争や宗教に想いを馳せるのを楽しむような作品だなと思った。
上中巻で登場するもあまり正体が明らかにされていなかった人物たちを知っていくのが面白いし、散り散りになったアトレイデス家に属する人々の今も知れて、特にモヤっとする点が残るようなことはなかった。最後の付録も、ストーリーの中では盛り込めなかったであろう背景や用語を説明していて、読みがいがある。
ようやくポールと皇帝が同じ地に立っている場面を見れた(読めた)のは嬉しいポイントだった。
また優生学的な要素(おそらくわざと描いたんだろうが)や女性たちへの認識、帝国の統治など21世紀では良くないとされてることもこの中では当たり前なこととして進んでいくが、それもある意味、異世界にひたれる要素のひとつであるし、ふっと離れて見た時に考えさせられる。
アラキスの生態系については、おぉ〜〜!とワクワクすることが多く、文明はすごいという浅はかな感想しか言えないくらいには、フィクションに科学を取り込んでいて、とても面白かった。
世界観は本当によく作られている…と思う。
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Posted by ブクログ
アメリカ主要SF3賞受賞作。1950年代のアメリカが舞台。恐竜を絶滅させたのと似た規模の隕石衝突があり、近い将来居住不可能になる地球から脱出すべく宇宙開発を進めなくてはならないという歴史のifを考えるSF。主要なテーマは宇宙開発そのものよりも、女性差別や人種差別、そして宇宙飛行士を目指す女性主人公がパニック障害の性質も持っているという形で、差別や多様性が軸となっており非常に現代的。「地球の限界」を社会や私たちが一律に一丸となっては受け止めないのではという点は現代への風刺とも取れるし、緊迫した場面の描写もうまく、コンピュータの発展前なので計算者などの改変歴史ならではの職業による味付けが程良いことや、差別という理不尽に向き合う精神的なハードさを主人公とパートナーの関係性や会話が中和してくれるので楽しく読み進められる。エンタメとして3賞受賞も納得の仕上がり。続編『火星へ』も楽しみ。