南杏子のレビュー一覧
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診療科目は「老年内科」。
老人の悩み事をいろいろ診てくれるクリニック。
「エンディングノート」と聞くと、いかにも老人の問題と思うもの。でも意外とそうでもない。若くても突然亡くなってしまったら、キャッシュカードの暗証番号は? 葬儀の希望は? お墓はどうしてほしかった? と故人の遺志を聞きたくても聞けないなる。いざというときのために書き残しておいてもいいことは山ほどある。
「白内障」も”若年性”のもあるというからほっとけない。
「免許返納」は死活問題な人もいるから簡単にはいかない。
老年になってもつきない悩み、老人だからこそ出てくる症状や悩み事をそっと覗いてみた気になる。まだ遠い先の話ではない。わが身もあれこれ考えておいたほうがいいのかもという気になった。 -
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ネタバレいのちのシリーズ。
まさかの仙川先生が。。とは、思っておらず、麻世同様に驚いてしまった。
ICDの件は、知らなかったな。
死に至るまでに、それが作動してしまうということ、そして、それがかなりの苦痛を伴うこと。
だとしたら、やはり、穏やかに見送りたいので、効力をなくした方が良い気がしたが、家族のこととなると難しい気持ちもわかる。
延命治療をやめてもらう。
それは、自分の手で、自分の意思で大切な家族を送るということだから。
認知症に関しても、知識はあったが、死に至る病であることに驚きだった。
言われてみれば。。と思ったところから、おそらく私は、死に至る病であることを肯定したくなかったんだろうな。と思った。
これを読んで、能登の強さ、能登の人々の温かさ、能登の自然の豊かさ。
それを学んだ気がする。
最後のシーンで、野呂先生が仙川先生の受け売りと言いながら言った言葉。
『〜。人間は自然の力には逆らえないけれど、自然とともに生きることはできるんだよな。』
この言葉がとても印象的で、言葉が書かれる前に書いてあった能登の人々の復興の道のりが、この言葉に通じてるなーと思った。
一人暮らしだった伯母が、緩和ケア病棟で息を引き取ったので、緩和ケア病棟の話は、リアリティ溢れすぎるくらいに想像できる。
読むたびに、ああ、伯母はあんなだったなー。伯母もそうだったなー。などと叔母を思い出しながら読んでいた。
人間が人間らしく、自分が自分らしく、苦痛を最大限に抑えつつ、静かにそのときに至る。
それが緩和ケア病棟。
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○本のタイトル『サイレント・ブレス 看取りのカルテ』
○著者名 南 杏子(みなみ きょうこ)
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○魅力
訪問クリニックで奮闘する、37歳の医師、水戸 倫子(みと りんこ)の物語。
この連作短編では、彼女が終末期医療の大切さを伝えてくれる感動的なエピソードが描かれている。
倫子は新宿の大学病院での忙しい日々を経て、訪問クリニックに異動。
そこで、余命わずかな患者たちと向き合いながら、彼らの人生の最期の瞬間を尊重し、心を込めて寄り添う。
6人の患者さんそれぞれの性格や病気、彼らがどのように受け止めているか、また支えてくれる家族や周りの人々の気持ちが、とてもリアルに描かれている。
この作品を読んでいると、いつか自分も迎える死について考えさせられる。
そして、倫子がこの訪問クリニックを任された理由や、大切な人との別れについても深く掘り下げられていて、何が正解か迷いながらも人間らしい姿が描かれている。
読み進めることで、自分や身近な人との関係を考え直すことができると思う。
私はその内容に胸が痛くなったが…
少し重い内容だが、だからこそ読む価値がある作品。
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○ひとこと
先のことは誰にもわかりません。
自分で考え判断できるうちに、周りの人に、少しでもどうしたいのかを伝えておくと良いかもしれない。
今からでも、自分の思いを言葉にしておけば、周りの人もいざというときに迷わずに済むかもしれないですし。
まずは自分の頭の中を整理整頓してみようと思います。 -
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『いのちの停車場』の続編。自分の感想を読み直して、微かに思い出せる。
続編の方は、当時、アルバイトであった野呂が医師の試験に合格して、金沢のまほろば診療所に戻ってきたもの。野呂自身が祖母の介護で医師試験に2度落ちたことこともあり、介護をする立場側の内容が多い。ヤングケアラーや老老介護など。
病人側も介護する側も、それが当たり前すぎて、外部に助けを求める発想にならないことが悲劇を呼ぶ。
この中では5つの権利が提唱されている。
・介護を受ける権利
・介護を行う権利
・介護を行う権利
・介護を受けるのを強制されない権利
・介護を行うのを強制されない権利
・介護を休む権利
介護保険では病人の食事や病人の諸々のお手伝いはできるが、家族の分はやってはいけないとか。知らなかったが、良く考えれば正しいのだろうが、何か杓子定規なような気がする。母子家庭では母が病気の場合、母の食事は作るが子供は自分で用意するそう。ヤングケアラーの過酷さを改めて知った。
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数年前ニュースになった医大の合格者の男女比の不公正さ。医学の世界で女性が医師になり、続けていくことはいまも難しいのだろうか。
解剖学実習で同じ班になった4人の医学生。そして全員女性だけの班編成に反対する上司の声に屈せず彼女らを指導した女性教授。5人の女性たちが進んだ医学界での紆余曲折の物語。
30代、40代と経験を重ねていく中で、女性には避けて通れない妊娠・出産のタイミングは、どうしても1回休み的な悩みの種になる。うまく腹をくくれたとしても、その先のキャリアをどう積み重ねていくか。
女医に限らず、働く女性の誰もが彼女たちの人生の転機越えを自分の身に重ねてみそう。 -
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「老人のお困りごとは老坂クリニック」
診療所の案内が書かれたカードには、まるで便利屋のようなコピー。
深刻な病気ではなくても気軽に足を運んでくださいねという気持ちを伝えたいのだろう。
しかし、そのクリニックは坂を上り切った上に建っている、というのは老人には少々厳しいかもしれない。
いや、どれくらいで息が上がるか、どのあたりまで足腰が持つかで、日頃の運動不足を測ってくださいということなのか、と細かいところをつっこんでしまった。
「老坂クリニック」の院長は、老坂小町(おいさか こまち)先生、68歳。第二診療室で診る。
30年ほど前に一緒にクリニックを開いた夫の老坂隆(おいさか たかし)先生は、三年前に脳出血で倒れていまだに入院中。その後ずっと空いていた第一診察室には、このたび大学病院から来た、医師になって六年めの・山里羊司(やまさと ようじ)先生、31歳が入った。眼鏡でちょっとメタボ。しかし、礼儀正しくイケボである。白内障で視力が落ちている老女は、すごいイケメンに違いないと思い込んでいる。
3篇ともだいたい、山里先生視点のパート、患者さんのメインのパート、短歌教室へ通う小町先生のパート、という3部構成である。
山里羊司は、西新橋にあるJ医科大学附属病院の老年内科に入局したが、珍しい病気の研究や論文に没頭する同僚たちに違和感を覚え、自分は普通の老人の老化に伴う病気や生活に向き合いたいと思った。主任教授の若宮(わかみや)先生が送り出してくれた「老坂クリニック」はとても自分に合っていると思う。(・・・しかし、大学で何かあったようだ)
患者さんのパートは、老人対、家族対、先生たちの会話と、老人本人のモノローグがテンポよく面白い。
小町先生は一件落着すると、短歌を詠んで短冊に書き付け、処方箋よと言って患者さんに渡す。
しかし、明るく元気にユーモラスに患者さんや山里医師に接している小町先生が短歌教室に通うときは、いまだ意識が戻らない夫のことを切々と考える時間である。最近やっと、夫のことを言葉にできるようになったという小町先生が詠む歌は切ない。
【第一話 私のトリセツ最終章】ーー嘉門晃(75歳) エンディングノート
息子夫婦と同居している、嘉門晃(かもん あきら)は、息子の嫁から渡されたエンディングノートを書きあぐねている。急に決められないことばかり。考えると血圧が上がる。嫁は自分に何を求めているのか?
【第二話 もう一つの眼差し】ーー片倉順子(68歳)白内障手術
片倉順子(かたくら じゅんこ)は夫が定年退職後ボランティアで海外へ行ってしまったため、事実上のひとり暮らし。ある日眼科で検診をしたところ白内障と診断され、「今なら」今月中に手術できますと言われ、うっかり予約してしまった。しかし、手術室に入ってからドタキャン!忙しい仕事をやっと抜けてきた娘は呆れ、そして激怒した。
【第三話 キーを置いたその先に】ーー鈴鹿朔太郎(82歳)運転免許返納
半年前に念願のベンツ(ただし中古)を手に入れた、鈴鹿朔太郎(すずか さくたろう)は、車の運転が生きがい。しかし、妻の典代は、最近夫の運転が下手になった、と小町先生に訴えた。
老人の引き起こす交通事故が大きな問題になっている今日この頃だが、(朔太郎は、わざと大きく取り上げて、老人から車を奪おうとしていると主張)どうやって免許を返納してもらうか、その後の「足」の確保はどうするのか、という点は、住んでいる地域によっても解決法が異なると思う。
家族の笑顔が第一、と思って免許を返納してもらえるのが一番だが、そこまでの道のりはなかなか険しいようである。 -
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ネタバレ在宅医療の難しさ、そして大切さを知りました。両親よりも自分の死を覚悟していた6歳の萌ちゃん、海を見に行きたい願いを叶えてあげられて、本当によかった。いくら辛くても延命するのか、選択的安楽死を良しとするのか、患者本人と家族の気持ちのすれ違い、感覚の違いを埋めるには、間にケアしてくれる医療従事者が必要と感じました。介護する家族側も、だんだんと普通が何かが分からなくなっていたり、疲弊したり、そちら側に知識を与えることや、フォローすることもとても大事と感じました。
一人一人のストーリーがもっと濃くても良かったかなと思ったのと、最後に安楽死させようとした主人公が警察に行かなくてもいいんじゃないかと思ったので星一つ減らしましたけど、良い作品でした。 -
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副題が『4人の女性医師』だ。
ちなみに『ブラックウェル』とは、『もし社会が女性の自由な成長を認めないのなら、社会の方が変わるべき』という言葉を残し、世界ではじめて医師として認められた人。女性医師の未来を切り拓いた人物とのことだ。
日本の医学部入試における男女差別は、2018年に東京医科大学をはじめとする複数の大学で発覚し、女性受験生を一律に不利に扱う得点操作などが問題視された。
この物語は、ある医大の不正入試問題を受けて、女性医師の現実と問題を、複数の女性から紐解いていくもの。実際に起こった入試時の男女差別があったから、やたらリアルだ。
2章から5章は同期の女性医師のそれぞれの物語。大学病院でバリバリ働くが空いたポストは男性に取られてしまう人、父親の介護しながらフリーランスで健康診断医になった人、医療センターの新生児科の副部長になった人…女性であるだけで理不尽な目に遭い、全員が現場で偏見と戦っている。しかし絶望しながらも医療技術の向上を目指す。
医師の世界にある常識は、世の中の非常識であり、実際に女性医師として活躍している人は、この世界を生き抜くだけの術を身につけた人なのかな。
実は僕のかかりつけ大病院の担当医は若手の女性。めちゃくちゃ優秀で頼りになる先生だが、女性というだけで理不尽な思いに苛まれながら、キャリアを積んできたのかもしれないな。次の検査の時にでも『ブラックウェルさんってご存知ですか?』と聞いてみようかな。
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現在、父親が末期癌で既に胃ろうをしており、今後は緩和ケアに移ると言われて、改めて本小説を読み返した。数年前の祖父母が死ぬ間際にも読んでいたらしい。
改めて読み返してみると、その描写や心情が実感を持って読み直すことができる。私個人は、サイレントブレスという、終末期患者を穏やかに最後を看取っていく考えに同意している。
父が亡くなっていくことに悲しい気持ちはあるものの、それ以上に望まない延命治療によって、本人を苦しめる方が悲しい。余命の短い父とあとどれだけ後悔なく過ごせるかをきちんと考えないとなと。
余談ではあるものの、生老病死は誰しも避けられず、この世は一切皆苦であることを受け入れる仏教の世界がスッと入ってくるのは、死を間近で見てくるからなんだろうなと思ったりした。