あらすじ
現役医師による医療現場エンタメ長編!
女優・貫地谷しほりさんも絶賛!
「人は、人に傷つき、人に苦しみ、でも、人に救われるのだと改めて感じさせられました」
映画「いのちの停車場」やNHK連続ドラマ「ディア・ペイシェント」など、数々の話題作を送り出してきた、現役医師でもある著者が描く医療現場のリアル。終末期の患者が多く入院する病棟で働く女性看護師が数々の試練と向かい合う。決して他人事ではないからこそ目が離せない、医療エンタメ長編!!
患者さんには、最期まで笑顔でいてほしいから――。
二子玉川グレース病院で看護師として働く堤素野子は、31歳になり今後のキャリアについても悩みながら忙しい日々を過ごしていた。患者に感謝されるより罵られることの方が多い職場で、休日も気が休まらない過酷なシフトをこなすが、整形外科医である恋人・翔平と束の間の時間を分かち合うことでどうにかやり過ごしていた。
あるとき素野子は休憩室のPCで、看護師と思われる「天使ダカラ」という名のツイッターアカウントを見つける。そこにはプロとして決して口にしてはならないはずの、看護師たちの本音が赤裸々に投稿されていて……。心身ともに追い詰められていく看護師たちが、行き着いた果ての景色とは。
※この作品は単行本版『ヴァイタル・サイン』として配信されていた作品の文庫本版です。
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Posted by ブクログ
とても面白かったです。
主人公の看護師さんが倒れてしまわないか心配になってしまいました。
やる気の搾取、やる気を踏みにじる人達ばかりで。
残念ながらまだ主人公の看護婦さんみたいな人には出会えた事は無いのですが、出会えてないという事は今は入院せずに済んでいるからでもありますが、こんな人に担当になってもらえたら幸せだなという思いとなるべくなら世話をかけないようにしないとと思ったり。
幸せになってお仕事頑張って下さい!と伝えたくなる主人公でした。
Posted by ブクログ
『仕事は山積みだ。こなしても、こなしても、いつになっても終わらない』。
このレビューを読んでくださっている方の属性はマチマチだと思います。学生さんもいらっしゃるでしょうし、ご定年された後の第二の人生を過ごされている方もいらっしゃるでしょう。しかし、恐らくは何らかの”お仕事”をされていらっしゃる方が多いのではないかと思います。
この世には数多の仕事があります。もちろん仕事に貴賎はありませんし、忙しさのも具合もそれぞれでしょう。一方で、働き方改革が進み統計上も日本人の労働時間は減る傾向にあります。しかし、必ずしもその状況が改善されているとは言い難い”お仕事”もあるようです。その一つが私たちが病院でお世話になる看護師のみなさんの”お仕事”です。交代制の勤務であること、高い専門性が要求されること、その一方で『白衣の天使』の姿を要求されること。なかなかにその”お仕事”は大変です。
さてここに、そんな看護師の日常を描く物語があります。勤続10年という31歳の看護師に光を当てるこの作品。時間に追われるということの本当の意味を知るこの作品。そしてそれは、『白衣の天使』という言葉の裏に患者さんのために日々奔走する看護師の”お仕事”のリアルを見る物語です。
『ご退院おめでとうございます』と『病院の正面玄関で』『バラの花束を差し出した』看護師長に『いやあ、お世話になりましたな』と『車椅子に乗った白髪の男性』は『ゆっくりと花を近づけて、大きく息を吸』います。そんな次の瞬間、『春の息吹がいっぱいに感じられる』『玄関脇の植え込み』に体を傾けた男性は『植栽から脇へ伸びる一本の茎を手折』ります。そして、『これは一番お世話になった看護師さんへ、心ばかりのお礼です』と言うと『玄関に並ぶ何人もの看護スタッフを見渡し』、『師長の前を通り過ぎ、堤素野子(つつみ そのこ)にその一輪を差しのべ』ます。『堤さん、長い間ありがとうございました』と『鮮やかな黄色い花の、たんぽぽ』を受け取り『ご退院、本当におめでとうございます』と返す素野子は『二十一歳で看護師となり、十年がたつ』中で初めての経験だと感じます。『東急田園都市線と大井町線が乗り入れる二子玉川駅の西方』にある『医療法人社団賢生会・二子玉川グレース病院』に務める素野子は『この仕事が好きだ』と思います。
場面は変わり、『堤さん、かなり目立ってましたよ。やばくないすか?師長の顔、こわばってましたよ』と、四歳若い『同僚の大原桃香が』『耳元でささや』きます。『名門の中央医科大学出身、いわゆる大卒ナース』である桃香に対して、素野子は『都立の看護専門学校卒』。『コンプレックスを感じる必要はないと思っている』ものの『上から目線の皮肉な言い回しにはしばしば違和感を覚えた』という素野子。『死亡退院の比率が約七割と高い』『後期高齢者が集中する療養病棟』で働く素野子は『今朝のように明るい気持ちで患者を見送ること』ができたことを喜びます。そんな時、『堤さん、ちょっといい?』と『看護師長の草柳美千代から声がかか』ります。師長席へと赴くと『資格取得のことだけど』と語り出した師長。素野子は『先月、認定看護師の資格を取らせてほしいとリクエストした件だ』と思います。『「ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を有する者」の証』という『認定看護師』を取得するには『約百万円の受講費用と半年以上におよぶ受講期間中の身分保証が必要』です。『…難しいわね』、『講習費を病院が負担する出張扱いでは無理よ』とにらむように素野子を見る師長でしたが、『だけど、自己啓発のための研修扱い、という形なら検討してもらえることになったの。それでも堤さん、がんばる気はある?』と表情を和らげます。『はい、お願いします』と『激しくうなず』く素野子に『勉強したいっていう意気込みはとってもいいと思う』と言う師長。『エールを送られたような気持ちにな』った素野子は『ありがとうございます!』とお礼を言います。そんな素野子に『もう一つ』と続ける師長。『来週から新しい看護助手が入職するから。大原桃香さんに加えて、そっちの教育係もよろしく』。それを聞いて『二人の教育係、ですか』と驚く素野子は、『一人と二人の指導では、業務負担が違ってくる』と、ようやく慣れてきた桃香のことを思います。『大原さんは仕事の辞め癖がついているから、扱いが難しいでしょ。でも、あなたが支えてくれて、ひとまずこの一年はもっている。そこを見込んで、なのよ』と言う師長は、『経験なしの男性。もともとサラリーマン…』と新しい看護助手の情報を伝えます。それに『分かりました』と答える素野子に『若い子を辞めさせないで、とにかく働き続けてもらうこと ー まずはそこ』と言う師長は、『あなた、うちに来てどれくらいだっけ?』と訊きます。『…十年です』と答える素野子に『なら、仕事が増えるのも当然ね。たんぽぽの花で浮かれてるヒマはないと覚悟して ー』と言う師長の言葉に、『皮肉の一打を受けて、冷や汗が吹き出す』素野子は、『やはり桃香の指摘した通り、目立ちすぎだったか』と思います。そんな素野子の看護師としての慌ただしい日常が描かれていきます。
“二子玉川グレース病院で看護師として働く堤素野子は、31歳になり今後のキャリアについても悩みながら忙しい日々を過ごしていた。患者に感謝されるより罵られることの方が多い職場で、休日も気が休まらない過酷なシフトをこなす…終末期の患者が多く入院する病棟で働く女性看護師の目を通して、医療現場の現実や限界をリアルに描いたエンタメ長編!”と内容紹介にうたわれるこの作品。現役の医師でもいらっしゃる南杏子さんが2021年8月に発表された長編作品です。私は南杏子さんの作品を今までに6冊読んで来ましたが「いのちの波止場」を除いて、他は医師が主人公となるリアルな医療現場を描かれたものばかりです。医師でもある南杏子さんが医療の現場を描く、この強い説得力が南杏子さんの作品を読む何よりもの魅力だと思います。
そんな南杏子さんがこの作品で描くのはなんと看護師を主人公とした物語です。医療現場を思い浮かべると、医師と看護師はワンセットで浮かび上がる存在だと思います。南杏子さんご自身も普段から接すること多々だと思われますが、働く場所が同じ医療現場であることもあって、他の作品同様の医療行為のリアルさに変わりがないこともこの作品の特徴です。一方で、医師と看護師では、やはり見えてくるもの、描かれていくものが違うことが分かります。この点が南杏子さんの作品として考えた場合にはとても新鮮に映ります。この作品では看護師の仕事がさまざまな側面から描かれていきます。間違いなく看護師の”お仕事小説”と言えると思いますが、大きな分量をもって記されていくのがその勤務の過酷さです。主人公である素野子の一週間、ある月一週目のスケジュールを見てみましょう!
● 療養病棟で働く看護師・堤素野子の一週間
・一日: 日勤(9:00〜17:00)
・二日: 深夜勤(1:00〜9:00)
・三日: 準夜勤(17:00〜1:00)
・四日: 休み
・五日: 日勤(9:00〜17:00)
・六日: 深夜勤(1:00〜9:00)
・七日: 休み
『師長がチームを組み、シフト表に落とし込む』ことによって『三交代制』の『勤務スケジュール』が組まれています。
『基本的に一日八時間勤務、週休二日で、一見したところ、それほど負担がないように思える』
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『実際に働いてみると、時間が不規則で常に寝不足に悩まされてきた』
※理由①:『第一日と第五日で終業と始業の間隔が非常に短く、疲労が回復しないまま次の勤務に入る』
※理由②:『毎日の入眠時刻がバラバラになるため、睡眠リズムを崩しやすい』
パッと見の印象に対して、このスケジュールで働く看護師には大きな負荷がかかってくることが分かります。また、その勤務体制の危うさも付き纏います。
『準夜勤と深夜勤は、看護師二人に助手一人の計三人で切り回すのが普通』
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『「普通」は、トラブルがないことを前提にしている。患者の急変が相次いだり、看護師に病欠者が出たりすれば、すぐさま人員不足でアウト』
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『素野子はこのところ毎月八回の深夜勤に入るのが当たり前で、ときには十二回を数えることもあった』
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『いつの間にか看護師は長時間の勤務に慣れ、看護師の家族は待つことに慣れてしまう』
看護師の勤務が長時間労働当たり前の悪循環に陥っていることが分かります。また、勤務時間には休憩時間は当然必要です。しかし、そこにも厳しい状況が襲いかかります。
『病院では勤務八時間につき一時間の休憩が認められている。食事を十分で済ませれば、五十分の仮眠ができる』
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『そんなのは嘘だった』
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『深夜勤では仮眠をするどころか、自由にトイレへ行くことすらできなかった』
素野子が勤務する病棟では『看護師二人と看護助手一人の合計三人が、各自一時間ずつ時間をずらしながら順番に休憩』をとることにはなっていますが、それが全くの机上の空論であることが切々と描かれていきます。
『夜は病棟の患者、約五十人の命を二人の看護師と一人の看護助手で守らなければならない』
この世には数多の仕事があり、楽な仕事と片付けられるものなどないと思います。しかし、看護師という仕事は『命』を預かっているというその責任の重さがまずあります。このような過酷な『勤務スケジュール』の中、今も『命』を守り続けてくださる看護師のみなさんには感謝の思いしかありません。
そんな物語には、他にも看護師の”お仕事”について多方面からさまざまなことが描かれていきます。その全てをこのレビューで網羅することは当然できませんが、私が気づけていなかった点について記されていましたのでご紹介したいと思います。
『患者の体のケアについていえば、医師の仕事は患者の死で終わる。しかし看護師の仕事は、患者の死後ケアや家族の対応と、患者が亡くなってからもしばらく続く』。
いかがでしょうか。この点を改めて言われると確かにという内容です。患者の死亡の確認はもちろん医師が行います。しかし、患者が亡くなった以上、医師が登場する必要はなくなります。そして、看護師も看護する対象が亡くなったわけですから本来はそこまでで終了という気もしますが、そうではなく、患者が亡くなった後も大切かつ大変な仕事が続くことがこの作品では描かれています。その一つが『エンゼルケア』です。『死後に行うご遺体の処置、保清、メイクなどすべての死後ケアのことで、逝去時ケアとも呼ばれる』その場面がリアルに描かれていきます。『すぐにかかりましょう。準備をしてください』と看護助手の貴士に指示する素野子という場面です。
・『まずはベッドに横たわる美土里に向かい、二人で深々と一礼をした。これからお体をきれいにさせていただきます、というあいさつだ』。
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・『肛門括約筋は弛緩していた。便はほぼ出きっているようだ』→『撥水性のある青梅綿と、吸水性のある脱脂綿』を『交互に膣と肛門に詰めていった』。
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・『綿詰めを終えた後、さらに新しいおむつでカバーする。これで万が一の場合でも茶色いシミが白装束に付くこともないし、臭いも最小限に抑えられる』。
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・『白装束を取ってください』→『体を右、そして左へと傾けつつ、着物を差し入れてゆく。最終的にご遺体が仰向けになり、下には白装束が広がる状態となった』。
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・『素野子は、着物の肩と肩山を合わせ、美土里の体をきれいに覆った。男性は少し足を開かせるが、女性はぴたりと閉じさせる』。
このような感じで、さらに『保冷剤』、『保湿にはベビーオイル』、そして『明るめの色のリキッドファンデーションを薄く塗り、粉おしろいをはたく。ナチュラルメイクが基本だ』とさまざまな処置を進めていきます。ポイントは『ご遺体の腐敗が早く進む可能性が高い』というところでしょうか?患者が亡くなるのは当然昼夜を問いません。夜勤の時間帯にはスタッフは最小限です。『ナースコール』がいつ鳴るかも分かりません。そんな中にあって『エンゼルケア』という患者が亡くなったあとの仕事が突然に入る可能性があるということにはとにかく驚きました。物語では、
・『今だけは死なないでほしい ー』
・『今は生きていてほしい ー』
・『死ぬなら今にしてほしい ー』
現場の仕事との兼ね合いによって、看護師の胸にそんな思いが去来することも語られます。
『身勝手な思いで患者さんの生死を考えるなど、看護師としてあってはならないことだ』。
そんな風に冷静に考える一方で、あまりの忙しさに『生死』のタイミングを思ってしまう切実な看護師の内面が描かれていきます。兎にも角にも看護師の”お仕事”がどれほど大変であるか、そして、あまりの忙しさは勤務を離れた後の日常生活全体にまで幅広く影響を与えているということがよくわかりました。この作品には南杏子さんと同じく医師であり作家の久坂部幸さんが〈解説〉を記していらっしゃいます。そこにこんな一言が書かれています。
“もしも今、患者さんのために一生懸命尽くして、人の役に立ちたいなどという気持ちで看護師を目指している人がいたなら、この小説を読んで、しっかり現実を知ったほうがいい。でないと、現場に出た途端に心が折れるだろうから”。
綺麗事だけでは通用しない看護師の”お仕事”、改めてその重要性を感じるとともに、このような現実を放置しておくことは私たちの未来にとって暗雲立ちこめるものでしかないと確信しました。看護師の”お仕事小説”では、看護師でもいらっしゃる藤岡陽子さんの作品が有名です。自らも看護師である以上、その内容はよりリアルなのだと思います。それに対して南杏子さんは、そんな看護師が日々大変な思いをしている姿を第三者的に見れる立場でもあります。この作品の壮絶さを極めるリアルさはその大変さをある意味で冷静に見れる医師の南杏子さんだからこそ描くことのできるものなのかもしれません。
そんなこの作品は元看護師の母親を持ち、『都立の看護専門学校』を卒業後、『二子玉川グレース病院』に勤務して10年という31歳の看護師・堤素野子が主人公となり、看護師として働く彼女の日常を描いていきます。短い〈プロローグ〉から始まる物語は〈第一章 日勤〉から〈終章〉までの八つの章から構成されています。勤続10年という中堅どころに育った素野子は、『大卒ナース』の大原桃香に加え、脱サラし、看護助手として働きはじめた小山田貴士の『教育係』を務めることになります。この設定によって看護師の基本的な業務を二人に教える中に一方で読者はその業務を理解していくことができます。医療世界に身を置かれる南杏子さんの作品だけあって専門用語が飛び交う医療シーンはとてもリアルです。それが、物語に強い説得力を生んでもいきます。そしてそこには、上記した看護師という”お仕事”の大変さが否が応でも浮かび上がります。
『「白衣の天使」なんて言葉は、好きではない。甘ったるい言葉の響きが、何というか自分の現実に合わない。医療と看護の現状や、勤務の実態にもそぐわないと思う。けれど、やりがいは感じる。「この仕事が好きだ」』
そんな風に看護師という仕事を思う素野子ですが、日々時間に追われる中、高圧的な家族への対応や、わがまま放題の患者、そしてそんな中に起こってしまうインシデントの数々、物語は読者に息つく暇を与えずダイナミックなまでに展開していきます。
『真面目に頑張っているのに、ミスしてしまう。誠実に向き合っても、責められることが多い。収入はあるのに、借金に追われている。休みはあるのに、いつも睡眠不足だ。何が間違っているのだろう』。
答えの出ない問いに心を病んでいく素野子。この作品は全編に渡って素野子視点で展開していきます。それもあって読者に素野子の思いがひしひしと伝わってきます。
『仕事は山積みだ。こなしても、こなしても、いつになっても終わらない』。
絶望感に打ちひしがれていく素野子の物語。しかし、『勤務スケジュール』の過密さ、過酷さは素野子が立ち止まって考える時間さえ与えてはくれません。そのあまりの凄まじさに目を伏せたくなる思いが込み上げます。そして、そんな物語は〈終章〉に至り少々慌ただしく幕引きがなされます。なるほど、と南杏子さんの上手さを感じる結末を見る一方で、看護師という”お仕事”に対する見方が自分の中で確実に変化するのを感じます。そう、一人でも多くの方にこの過酷な現実を知っていただきたい、そう強く思う渾身の物語がここには描かれていました。
『ストレスは確かにある。しかも、そこから逃げることはできない。ならばどうやって看護の重圧と鬱屈の中で生きていけばいいのか。桃香も、そして自分自身も。そこを解決せず、我慢し続けるだけでやっていけるものなのか』。
一人の看護師の公私に渡る日常を丁寧に描くことで、看護師という生き方を鮮やかに浮かび上がらせていくこの作品。そこには、そんな看護師を身近で第三者的に見れる医師だからこそ描けるリアルな”お仕事小説”の姿がありました。多岐にわたる看護師の”お仕事”に驚くこの作品。常に時間に追われ続ける看護師の日常に驚くこの作品。
それでも『患者さんに笑顔でいてほしいから、まずは私たちが笑顔でいなきゃね』と語る看護師のみなさんの姿に心強く打たれる素晴らしい作品でした。
Posted by ブクログ
いやぁ~看護師さんほんと大変。こんな仕事も生活も絶対無理。こんなことで医療現場は大丈夫なのかしら…?
働き方改革で医者の残業を減らすというニュースは聞くけれど看護師の働き方改革はできてるのかしら…?
私たちが一番身近にお世話になる看護師さんには、健康で元気に働いてほしい。
Posted by ブクログ
看護師の日常。
途中の素野子の失敗続きの箇所、読むのが辛すぎてしんどかった。
自分を追い詰めるまで頑張ってしまう真面目な看護師さん達に感謝。
最後の屋上シーンは涙を誘う。
Posted by ブクログ
看護師として働く女性の過酷な忙しい日々が綴られる。医療現場の現実や限界をリアルに描いた小説。
三交代制のシフトで体力が削られる上に、様々な患者への対応は待った無し。認知症の患者を入浴させるシーン、便が出ない患者を摘便させるシーン、患者から様々なハラスメント行為を受けても黙って業務を続けなきゃならないストレス…(患者への殺意が芽生えるシーンまで)小説の上でも僕には軽いカルチャーショックでした。おそらく実際に仕事をしてる方々にはこれが当たり前で、日常なのだろうな。
これから看護師を目指そうと思ってる方がこの本を読んで、それでも看護師になりたいという意思が変わらなければホンモノかなあ。小説とはいえ、それほど過酷な内容でした。
こんな一行が印象に残った。
医師の仕事は患者の死で終わる。しかし看護師の仕事は、患者の死後ケア(エンゼルケア)や家族への対応などがまだまだ続く…
医療もののドラマは好きでよく見るけど、この小説はスーパードクターが登場するわけでもなく、ナースたちのやり甲斐や素晴らしさが描かれているわけでも無い。こんなあまりにもリアルで過酷な現状がドラマ化、映画化されることはあるだろうか。そんなことを考えた。
Posted by ブクログ
さてさてさんのレビューで手にした本。
堤素野子は31歳の看護師。
一生懸命に仕事をしているのに問題ばかり。
真面目にがんばっているのにミスしてしまう。
誠実に向き合っても責められることが多い。
休みはあるのにいつも睡眠不足。
いつも看護師長と後輩ナースの板ばさみになり、いいたいことのほとんどを飲み込んでいる素野子は最終的には、自分がいたらないと自分を責めてしまう。
素野子さんの気持ちを思うと苦しくて泣いてしまった。過酷な現状…かわりがいないため、たおれるまで働かなくてはならない現実はつらすぎるよ。
私個人としては、患者とトラブルがあった時、看護師長には患者側ばかりではなく、素野子さんのことを理解し、中立の立場でいてほしかった。精神的、肉体的にきつい時でも、上司の理解と患者のねぎらいの言葉で、救われるし、頑張れると思うからだ。
看護師の仕事が、私の想像以上に大変だということを、この作品を通して知った。
日頃一番身近な存在の看護師に、強い感謝の気持ちがわき上がった。
看護師のみなさんに敬意を表するとともに、過酷な現実に衝撃を受けた作品だった。
Posted by ブクログ
療養病棟で働く看護師・素野子の日記のような小説。普通の医療小説ではあまり描かれない看護師の仕事が事細かく描写されている。
後半は素野子の境遇があまりに苦しくて読むのがしんどくなることも。医者も、師長も、主任も同僚も患者もその家族も、決して悪気があるわけではない。誰のせいにもできずに自分で抱え込んでしまう。
その苦しさからほんの少し抜け出せたであろう「2年後」の描写に救われた。
Posted by ブクログ
読んでいて辛くて辛くて苦しくなりました。
自分も仕事の悩みはたくさんあるけど、医療従事者の方々に比べたらなんて小さな悩みなんだろう 辛かったけど最後まで読んで良かった‥‥
Posted by ブクログ
看護師の労働状況が手に取るようにわかる。
業務量もさることながら、患者や患者家族からの口撃。
読んでいて、ヒリヒリしてくる。
医療現場ではない人にはわからないから仕方ない。ではない現状。
医師たちの態度にもイライラする。
同じ医療職なのに、なんなの?と。
あれだけの業務を抱えたら、心に余裕がなくなるのは当たり前だけれど、それを前面に出すことは許されず、まして、業務上のミスはもってのほか。
そんな中でずっと激務をこなしていたら、心が疲れるのは当然のように思えた。
その中で、望月さんのような人物は、とても支えになると思った。
望月さん、ステキです。
医療職のみなさま、ほんとうにいつもありがとうございます。
Posted by ブクログ
「感情労働」という言葉を知っていますか?
「楽しさ」や「うれしさ」といった感情を表に出すことを求められる、あるいは「怒り」や「悲しさ」といった感情を抑制する必要があるなど、適切または不適切な感情が定められている業務のことをいうそうです
そして看護の現場は出口の見えない典型的な感情労働の職場と作中にあります
数年前二週間程でしたが、入院していた時の事を思い出しました
お世話してくださる方達を観ていて、ストレスが消化しにくく、口では語りきれない大変な毎日を送っているのだと、色々な場面を見聞きし考えさせられました
本書は、真面目にがんばっているのに、誠実に患者に向き合っているのに、問題ばかり起こってしまう
私生活でも睡眠不足に悩まされ、時間もお金もなくて、精神的に追い込まれていってしまう看護師さんのお話です
人の命を預かるプレッシャー、理不尽なクレームをつける患者、またはその身内、人手不足から来る過酷なシフト、深夜勤などの不規則な勤務時間、
割に合わない賃金……
看護師さんがどんな仕事をしているのか知って感動したと言う方もいるかもしれません
しかし私には、自分もいずれかお世話になるかもしれないのに、どうすることもできないこの問題をただただ応援することしか出来ない訳で、読み終えても心が晴れません
医療に携わっている方には、感謝してもしきれません
Posted by ブクログ
私は医療従事者ではないが、現場の緊張感がリアルに伝わってきて、胸が苦しくなりながらも読むのをやめられなかった。こんなシフト、私だったらキツくて一巡たりとも耐えられない。
看護師が追い詰められる描写については、このような現実は実際にあちこちにあるのではないかと感じた。かつて入院した病棟は終末期病棟ではなかったが、それでも看護師さんたちは本当に忙しそうだったし、医師の働き方も尋常ではなかった。
志をもって医療の仕事に就かれた方々が、疲れ果てて現場から離れてしまうことは避けたい。多くの人が本書を読み、医療現場を知るきっかけになるとよいなと思う。
Posted by ブクログ
本だからとだけで片付けられない内容。
以前は、救急病院勤務だったので、サービス残業当たり前、希望休は出すものではない、育児休暇明けに子どもが肺炎になったときも、勤めている病院の小児科に入院し、昼間は母と義母にみてもらい、夜は勤務終わりに病室に行ってほぼ寝れないという(休みなんてくれない)状態でした。
患者も勝手に入院させて!って怒る人がいて、、、
いやいや、治療しなくていいなら、先生と話してから退院してよっていう人もいたし、、、
結局、退院してもらいましたけど。
入院に同意しなければいーやんと、、、
意味がわからない人がいます:(;゙゚'ω゚'):
それから激務を思い出しました、、、
もう戻りたくない。
だからといって、一線を越えてはいけない。
自分がその場から逃げるべきです。
Posted by ブクログ
本当は星4個つけたいけど...。
医療現場をかなりリアルに描いている。
あまりにもリアルすぎて、今までに自分が経験した理不尽なクレーム、辛かった出来事が思い出されて心が苦しくなった。
いい小説だけど、多分医療従事者が読むと、つらい。
Posted by ブクログ
みんな精一杯やっているのに追い詰められていく姿がつらい。
医療や介護に従事している人は、体力的にも精神的にも過酷なのだろうと思うと、待遇や環境ができる限りそれに見合っていくことが絶対的に必要。どうしたって頼りにしていくのだから、正義感や頑張りを搾取してはだめなのだ。
そうは思っていても、患者の家族だったら、自分の家族とその場面しか見えていないから責めたりしてしまうのではないかと怖い。
物語は救いがあるけど、そうでないこともあるのが現実なんだろと思う。どんなプロフェッショナルも何も変わらない人なんだということを忘れてはいけない。
Posted by ブクログ
看護師さんのリアルがわかる。31歳のナース素野子が主人公。使命感と誇りを持ち仕事をしていたけれど、あまりに過酷な現場とシフトに心身ともに追い詰められていく。
読んでいて本当にしんどかったです。看護師さんの働きには頭が下がります。でも看護師だって人間だもの。夜勤もあるシフトをこなすだけで体に負担がかかる上に人手不足でギリギリ。必死に対応して走り回って、一瞬たりとも休めない。それで患者さんやその家族や医者に罵られたりしたら本当にやってられない。これ以上は無理、どうしろと言うの?!という場面の連続です。自分なら絶対にできないなぁと思った。
医療現場の労働環境が少しでも改善するように願います。このままでは志高くこの職に就いた人も疲れ果てて現場から離れていってしまうだろうと思いました。