南杏子のレビュー一覧

  • ブラックウェルに憧れて~四人の女性医師(仮)~

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    ネタバレ

    勤める女性に読んでほしい本。でも男性がこの本を読んでどう感じるのかも気になるところ。
    女子学生や多浪生を一律減点し不利にする医学部の不正入試問題をベースに、5人の女性医師が社会や家庭との関わりの中で、悩み闘う日々を描くストーリー。企業や業界によって差はあるにせよ、勤める女性にとって決して人ごとではない話題なんじゃないかと思う。周囲からの差別が無いにせよ、妊娠出産はもちろん、あいかわらず男女どちらにもある「家のことは女性がするもの」という意識が、女性が外で働くことをじわじわと苦難を伴うものにする…。

    最後の4人の決断は、何度でも宙返りして、自分にとってベストな働き方を模索し続ければいいんだと思わせてくれる。働くことに困難が伴うのは女性だけではない。だって男女の脳に差はないんだから。

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    2025年03月02日
  • いのちの波止場

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    シリーズ最終話。

    能登さとうみ病院の緩和ケア科に実習として赴いた
    看護師の星野麻世。
    様々な患者とその家族に関わることで学んでいく。

    痛みをどのように対処するか。
    医師と看護師は葛藤しながら最善を探す。

    北川医師の言葉
    P251
    〈死ぬための医療〉
    〈より苦痛なく死を全うできるよう、
    患者さんを支えるために緩和ケアがあるのです〉

    少し怖い感じの北川先生だが
    患者第一の考えに、この先生なら間違いない。
    と、思ってしまう。
    P262
    〈いのちの旅路に寄り添うこと〉

    麻世は、最後まで寄り添うことができたのだろう。
    最終話ということだけれど
    形は変わっても、その後を読みたい。

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    2025年02月21日
  • いのちの波止場

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    物語の舞台は能登にある緩和ケア病棟。
    人生の最後をここで迎える患者たちに、最大限苦痛を取り省き最期まで安らかでいられるように懸命に働く医師や看護師たち。
    命が終わる瞬間までの様子が、とてもリアルで読み応えがありました。
    病気を治すことを目的としない医療には
    患者さんの人生と同じ数だけの正解があって、医療者も家族も最期まで迷っている。
    自分はどう生きるのかと同じように、どう死んでいきたいのかも考えておかなくてはと思った。

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    2025年02月05日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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    医師でありながら小説家でもある9人の短編小説が詰まった作品でした。あんなに忙しそうなのに、いつ小説書いてるんだろうって不思議に思う凄い方々。

    医師であるからこそのリアルな感じが伝わってきて、とても面白かったです。

    特に空中テントは、認知症の家族を介護したことある人なら誰しも共感出来る部分がたくさんあると思いました。施設の入所は、家族を見捨てることではなく、プロがみてくれる安全な場所にいれるという考えが広がったらいいな。
    私も主人公のお母さんにとても同情しました。介護する人は、自由が奪われて当然なのか、当事者じゃない人達から見捨ててるなんて文句言われる筋合いはほんとにない。文句を言うなら1週間でいいから、在宅での介護を経験してみたらいいと思う。どれだけ大変かはやったことのある人にしか分からない。

    あとは救いたくない命も面白かったです。医療従事者であれば、色んな患者がくる。犯人であろうと、被害者であろうと、どんな人であろうと病院に来たら、全力で治療をしなければならない。そこに差別はあってはならないけれど、医療者も人間だから色んな考えが浮かぶよなと改めて考えさせられました。たくさんの人の命を奪った人を救うことは、正しいのか。でも真相解明のためには、犯人に生きててもらって動機を聞き、罪を償ってもらうのがいいような気もする。難しい問題だと思いました。

    こんなにたくさんの医師が書いた作品をたくさん読めて楽しかったです。

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    2025年02月02日
  • いのちの波止場

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    ネタバレ

    連作短篇5篇
    緩和ケア病棟のいろんなケースとその対応、家族の気持ちではなく患者自身の気持ちに寄り添う事など当たり前のことが難しいと気付かされた。最後、仙川先生自身の患者としての在り方、とてもお見事でした。

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    2025年01月28日
  • いのちの波止場

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    今作の舞台は能登の穴水町。
    穴水といえば牡蠣祭りが有名。何度か行ったが本当に美味しくて安い。
    緩和病棟だから全ての話は死で結ばれる。ちょっとしんどい。でも末期癌のイメージが痛くて辛くてというものから少しでも痛みをコントロールして最後まで人間らしく患者の希望に寄り添った看護計画がたてられることに希望が持てた。
    能登が一日でも早く復興することを祈ります。

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    2025年01月20日
  • サイレント・ブレス 看取りのカルテ

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    数日前に命の停車場を呼んだこともあり、既視感もあったが内容としては同じようにいい作品だった。
    延命治療を望むかどうか、死に何度も触れてきた作者だからこそ、本作のような内容が作られるんだろうと思う。
    解説も秀逸だった。

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    2025年01月17日
  • いのちの波止場

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    金沢のまほろば診療所から穴水の緩和ケア病棟に研修に来たのは看護師星野麻世。鎮痛剤を使いたくないと言う患者、機械を埋め込んだ患者、認知症の蕎麦屋店主、親の面会NGの患者。

    自分が死にかけたらこういう所に入院したい。読む側が患者側からも医療側からも死を真摯にリアルに考える機会をくれた。

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    2025年01月04日
  • いのちの波止場

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    ネタバレ

    慕っていた仙川先生の近くにいることになった看護師の麻世ちゃんの能登の緩和病棟での葛藤

    [人間、年を取ったり病気になったりすれば、できないことが次々に増えてくる。そんなできない自分を受け入れるには、心の中成長が必要かだからね」

    不完全な自分を受け入れて、さらにそれも人生の味わいとして楽しむ…

    一筋縄ではいかない緩和病棟の大変さ。患者とその家族、担当医師との間を取り持つ看護師の負担も伝わってくる

    仙川先生は最後にカンファレンスに参加して自分の死に方、死場所、見守ってくれる信頼のおける看護師まで近くにつけて見事な最期だ

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    2025年01月05日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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    明けのカルテ 医師作家アンソロジーを読みました。
    9人の医師作家の短編集です。
    どれも結構面白かったです。
    空中テントでは、テントを張るために実家に帰った主人公が父親の認知症と直面します。
    50年前に話題となった有吉佐和子『恍惚の人』を思い出します。
    私の祖父も私が子供の頃認知症で大変でした。
    昔は介護施設も無かったですから大変でした。
    峠を超えてきた命では天城峠を超えて早産しそうな患者を迎え入れるチームの話で、出てきた地名が河津七滝ループとか、天城峠、伊豆の踊子像とか、懐かしく思いながら読みました。
    ドラマになって欲しい短編集です。

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    2024年12月24日
  • ディア・ペイシェント 絆のカルテ

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     都市部の地域医療を支える市民病院の抱える問題や闇、医師の置かれた過酷な状況をリアルに感じさせる医療小説です。

     主人公は大学病院から地域の市民病院へ転院してきた女性内科医。病院の方針は金融畑から転身してきた事務長が取り仕切っており、サービス業と化した医療は患者を『患者様』として過剰なまでに患者にへりくだり、おもねっている。デパートのように綺麗で明るい空間を演出した待合室は、毎日大挙して押し寄せてくる患者で座る場所もない。待ち時間が長くなればクレームにつながり、かといって一人一人の患者を手早く済ませようとすればきちんと話を聞いてくれないとクレームになる。医師は相手が医療を求める限りどのような相手も断ることができないと決められている。それは医療を受ける側を守るための法律だが、逆に言えばその法律では医師は守られない。様々な不満をぶつけてくる患者と、現場を鑑みない経営側の要求にすり減っていく日々を送っていた主人公は、とある男が接触してきたところから段々と恐怖を感じるようになっていく。

     最終盤に至るまで、とても怖いお話でした。
     空虚な悪意がリアルで、様々なクレームをつけてくる患者の様子を含めて人物描写がしっかりしていて、現実の地域病院を裏側も含めて眺めているような感覚になりました。私も似たような職場に勤めている人間なので、感じるものがありました。
     どれだけ一生懸命に、全力で当たったとしても、病気だと診断されれば怒り出す人がいる。病気の診断がつかなければなんでわからないのだと怒鳴る人がいる。治療してくれないなら診察代は払わないと言い張る人がいる。そんな人ばかりではないと思っても、「ありがとう」の一言すら言ってもらえない中でひたすら人の負の感情にさらされがちな医師という職種の方たちは、本当に大変な状況で職務に向かっておられるのだと感じます。
     実際、現実問題として長時間勤務や過重労働の問題はあると思います。そんな中に医療訴訟や異常行動と思われるリピート患者に相対し続けるということが、どれほどのストレスとなることか。そういう意味で、主人公の感じる恐怖は人間として当然であると思うのに、医師としてはそれを拒むことができない。
     物語の最後、それでも医師をやめる方向ではなく、もっといい医者になろうと決意ができる主人公は、強くて優しい人なのだろうと思います。

     負の感情を抱いている人の話を、本当の意味で傾聴するのは難しいことだと思っています。けれど、その難しいことをしようとしてくれる人がいることを忘れずにいたいです。日々頑張って踏ん張ってくれている医療従事者の方々に、ささやかな一言だとしても「ありがとう」が言える人間でいたいと思います。

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    2024年12月08日
  • サイレント・ブレス 看取りのカルテ

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    Audibleで視聴。
    大学病院の総合診療科に勤める倫子は、教授から訪問診療への異動を命じられる。
    当初は急性期医療とかけ離れた「診療」に戸惑っていた倫子だったが、死にゆく患者に対して「医者」として己に何が出来るのかを自問自答していく。

    ・感想
    医者は病気を診るプロ。
    でも現代では医者はトータル的な視点を持って「人間」を診る、全人的医療が必要とされている。
    本来であればチーム医療でそれぞれ役割分担ができてればいいけど中々そうもいかない現状もあるのがもどかしい。

    でもなーー思想哲学している現場の医者なんかほとんどいないよ。
    業務の多忙、過大な責任、訴訟対策。
    諸々の問題もあるけど、ただ「勉強が得意だから」で選んだ人間が大半だろうし。
    そして「老い」と「病気」を区別できない、老いを認められない国民ばっかり。
    自然治癒も回復も不可能な「老化」に際限なくリソースを注ぎ込む現代日本社会。
    個人的には老化による脳の機能低下に対しても「認知症」という「病名」をつけて「治療」する現状に辟易してる。

    「死」は悪、忌避すべきものとして見ないふりしたって人間なんていつでもどこでも誰でも「必ず死ぬ」ということは絶対的事実なんだからそこを認めて「どうやって生きて死ぬか」という哲学を行うことが大事だと思っている。
    現代日本では医療関係者にこそ「哲学的思想」が求められているんじゃないだろうかとここ数年思うようになった。
    医療に携わる立場の人間として自戒を込めて。

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    2024年12月03日
  • サイレント・ブレス 看取りのカルテ

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    読みながら死ぬ時の事を考えた。自分の親の最期について。自分の、妻の最期について。
    ひとつ選択肢が増えた事が読んで良かったと思う。

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    2024年11月23日
  • 希望のステージ

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    作者の経験からの物語か
    短篇6話
    ステージという共通点、登場人物も重なる人も
    それぞれの物語に味わいがある
    医師としての温かみも感じる

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    2024年11月22日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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    医師でありながら作家でもある方々の医療小説9編。

    私の知っている作家さん以外にこんなに多くの医師作家さんがいることに驚きました。どれも医師であるだけに小説の内容は臨場感が溢れていて迫力がありました。

    中山祐次郎さんの『救いたくない命』は救急で運ばれてきた患者が犠牲者15人以上を出した通り魔事件の犯人と知り、葛藤をしながらも必死に命を救う姿に京アニ事件を思い出しました。

    南杏子さんの『空中テント』は家族の介護の経験がある人は共感出来るはず。

    どれも本当に良い作品ばかり。若手医師の過酷な労働時間、医療ミスの隠蔽、不都合な論文を闇に葬る等、医療小説が好きな人なら興味のある内容ばかり。でも朝比奈秋さんの『魚類譚』はちょっとホラーぽくて異色でした。

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    2024年10月31日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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     書くことで、解放される思いがある。

     新たなジャンルが始まることへの期待を込めた夜明けでもある一方で、書かないと解放できない思いが溜まってきているのも事実であると思う。

     

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    2024年10月26日
  • ブラックウェルに憧れて~四人の女性医師(仮)~

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    Elizabeth Blackwell
    世界で初めて医師として認められた女性。イギリス生まれ。
    『脳の性差は存在しない』

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    2024年09月21日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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    9人の作家(医師)による9篇の物語
    それぞれの作家自らの経験なのかはわからない
    ただ、それぞれの作家の医療への思いが短い作品の中に散りばめられていると感じた

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    2024年09月18日
  • サイレント・ブレス 看取りのカルテ

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    終末期医療を題材にした作品。
    とにかく殺人が起こる作品ばっかり読んでいたので、温度差がすごい。


    死は「負け」ではなく「ゴール」、という表現があった。

    昔から、寝たきりになって食事も自力で取れなくなったらその時はもういっそ延命せず安らかに死にたいと、そう思っている。
    でも仮に自分ではなく、自分の周りの人がそういった状況になったとして、まして仮に自分がそれに抵抗できるかもしれない技術・知識を持った医者だったら、考え方は変わるかもしれない。
    自分が頑張ったら、もしかしたら何とかできるかもしれないと、患者に「諦めるな!」と、そう思う気がする。

    でもたぶん大事なのは、患者自身がどう思っているか、なんだろう。

    滅多なことを言うもんじゃないが、
    まだ元気なうちに自分の両親にも、万が一の時はどうして欲しいのか聞いておこうかな。

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    2024年09月11日
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    9人の現役医師による医療小説アンソロジー。
    医師作家でしか表現できないと思われる臨場感あふれる詳細な描写、ヒューマンでミステリアスなストーリーが魅力の作品集だ。
    1〈研修医ヒナノの洞察〉
    上司からパワハラを受けている研修医が患者の膠原病を見つけ上司を見返す痛快な話
    2〈魚類譚〉
    封建的で理不尽な医大の内部構造、詳細な手術シーンにミステリーとホラーの要素を取り入れた作品
    3〈パイナップルのある光景〉
    同じような引きこもり系の精神疾患でも、一方は入院治療、一方は家族による対処という示唆をする精神科医。専門的な見解が押し付けなく、ふわっと伝わってくる秀作
    4〈救いたくない命〉
    救急外来に運び込まれてきた瀕死の男はとんでもない犯罪者。しかも、手術助手を務める医師には憎むべき理由があった。救急救
    命手術場面の描写がすごい
    5〈春に綻ぶ〉
    コロナ病棟で働く内科医の日常と苦悩をリアルに描く。苦闘の果てに主人公はかすかな希望を見出だす
    6〈闇の論文〉
    がんを見極める生検の際、傷ついた血管からがん細胞が侵入し、転移を招くことを証明した論文。これが世間に知れた場合の混乱を避けようと医療界の重鎮は論文を闇に葬る。現実世界ではどうなっているのか気になる
    7〈言葉が消えるまえに〉
    過去に同じ脳神経外科の医局員だった男の裏切りで医局を追放された主人公。そこへ、その男がグリオーマ患者としてやって来る。主人公のヒューマンな姿勢が光る
    8〈空中テント〉
    唯一、医師の視点ではなく、女性看護師を主人公にした作品。肉親が認知症になった時の介護を巡って、エゴむき出しの親族や主人公に訪れる修羅場、介護サービスを考えるまでの経緯がリアルに描かれる
    9〈峠を越えてきた命〉
    伊豆半島にある産科救急に特化した病院の若手医師が主人公。切迫早産の妊婦が救急車で揺られながら険しい天城峠を越えて病院に向う様子、待機して万全の体制を取る医療スタッフ、分娩室での対処の様子が実に生々しく描かれる。危険にさらされる新しい命を懸命に救おうとする産科スタッフの努力と救急隊との密接で的確な連携が読み手の心を打つ。秀逸で感動的な人間ドラマだ

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    2024年09月04日