西尾維新のレビュー一覧
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本書は物語シリーズにおけるアララギ君の高校生活最後の一年間を大きく振り返ったものだ。その上で振り返りつつ、小さなエピソードを多数収録したのが本書である。短編集と言ったところだ。このひとつひとつのエピソードにちゃんとオチがあって、かつ物語シリーズらしさが存分に出ている。アニメも好きだがやはり原作もいい。この活字を巧みに使いこなすスタンスは、西尾さん並みのワードマスターでなければ難しいだろう。そしてまた、アララギくんの終始一貫した利他主義は、ここでもブレなかった。もっとも今さら彼にブレが生じるわけもない。殺されても曲がらない彼の信念には、やはり漢としての憧れを抱いてしまう。別に利他主義であることが
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「続・終物語」について語っていく。先日ついに読み終えた。時系列としては卒業式の次の日くらいだ。高校を卒業しちょっとしたノスタルジーと喪失感に教われる最中、アララギくんは鏡の中の違和感に気づく。反射的に手を鏡に伸ばした結果、あろうことかアララギくんは鏡の世界に引きずり込まれてしまうのだった。あらすじはこんなものである。当初、このあらすじに目を通したときは内容が緩く感じてしまったのだが、結果から言えばそうでもなかった。ちゃんと出るとこは出るメリハリのついた展開は一貫していて、全然面白かった。今回の物語は割りと衝撃的な部分が多かった気がする。まず驚いたのは鏡文字である。アララギくんが鏡の世界にやって
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本書では前作同様二話構成になっていて、おうぎライトとおうぎフライトがある。ライトの方ではアララギくんが友人の食飼ちゃんから彼氏とのいざこざについて相談を受けて、それと同時期にガハラさんから別れ話を持ちかけられる。この二つの出来事にはある共通点があって、平謝りされたという点だ。それも異常なまでの謝意で、誠意を押し付けてくる。アララギくんはそのあと老倉さんからも同じく謝り倒される。それらの件からアララギくんは怪異による事案であることを確信して、急遽帰郷する。そこで準レギュラーの日傘ちゃんや扇ちゃんと接触して、犯人探しを始める。それでまた新キャラがでてきてその人が犯人みたいな感じで終わるのだが、前作
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めちゃくちゃおもしろかった。物語シリーズモンスターシーズンの中でも、個人的には一番の出来だった。死物語は上下巻ともに本来の物語シリーズらしさが出ていて、最初から読んできた読者としては嬉しかった。しかし千石撫子のサバイバル能力というか、生存力が高すぎる。同い年とは思えない。しかし千石撫子ほど最初と最後の印象が異なる人物も珍しい。初めに登場した時のキャラクター性はもはやない。というか、千石は毎シーズンごとにキャラクターが変わっているな。神にもなればヤンデレにもなるし、最後の方はマジでカッコいい夢追い人だ。あと、専門家連中の秘密がいろいろ発覚したのは興味深かった。ネットで考察が載っていたが、それぞれ
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「どうせ無理だ」「できっこない」と諦め癖がある自分にとって本作の主人公であり脇役の零崎曲識に共感をおぼえます…
そして、曲識が一人の少女との出会いでそんな諦め思考を変えられてしまうのには嫉妬を感じました!
本作は4章で構成されており、とくに気に入っているのが「ロイヤルロイヤリティーホテルの音階」と「ラストフルラストの本懐」です。
殺人衝動を抱えた者たちが人間らしく笑って死ぬための集団『零崎一賊』。無差別殺人鬼のなかで唯一殺人に条件をつけている零崎曲識。
自分の抗いがたい欲求を抑える意志の強さには、禁煙を2度失敗している身として頭が上がらない思いでした…
そんな精神力がある一方で自分が人 -
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忘却探偵シリーズ1作目。災難に巻き込まれやすい体質の隠館厄介は、トラブルに遭う度に周囲の人に疑われてしまう。そんな厄介が疑いを晴らすために助けを乞う探偵の1人が掟上今日子。彼女は寝ると記憶がリセットされてしまうので、ほぼ1日で依頼された事件を解決していく。
事件の結末を自分で推理するには与えられた情報が少なく感じたが、ストーリーや登場人物の掛け合いはおもしろい。シリーズ1作目なので、厄介と今日子さんが過去に関わった事件や、今日子さん自身に関しての謎など、今後のシリーズ展開の布石が随所に散りばめられていてワクワクした。
ラストの今日子さんのお願いは厄介に助手として働いてもらうとかかなって思ってた -
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ネタバレ西尾維新における雑談は、やっぱり面白い。
例えば、長瀞とろみのこの台詞。
「…有名な映画の台本でも、努力は大切だとか、生まれた環境は関係ないとか、そういうメッセージを発するものじゃないですか。…あれって、建前上、あるいはマーケティング上、そう言ったほうがお客さんの受けがいいからそう言っているのかなって思ってましたけれども、最近は、ホンを書いている人は、ひょっとすると本気でそう信じているのかもしれないと、思うようになりました。…才能あるクリエーター達が、才能の大切さをよくわかってないだけなんじゃないかって。」(pp.298-299)
メタ的に考えると、この後言及されるように発言者の長瀞とろみはど