平岡敦のレビュー一覧

  • 水晶の栓

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    アニメの「怪盗ルパン」のイメージが強い分、小説のルパンは数度の窮地をどのように乗り越えるのか興味津々となり、一気に読み終えたくなる。それは変装し現場に赴くと相手は既にルパンの正体を知って逆手に取りルパンを窮地に追い込む。最後の最後まで騙す、騙されるを繰り返すが危機一髪で事件を解決する。ルパンの難題を乗り切る知恵は現代でも参考になる。
    現代、世の中を金を使い権力を手にしている輩がいる。が、金で得たものはやはり金でしか解決しないのだ。人は常に「情」を持って従うのを忘れている。

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    2021年08月17日
  • 黄色い部屋の謎【平岡敦訳】

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    1907年の作品で密室ミステリの名作と評判の一冊。
    緻密に練り込まれたトリック、物語の構成力、そしてキャラクターの色の濃さ、
    どれをとっても時代を超えてワクワクとさせてくれる一冊でした。
    その頃の推理小説がどのようなものだったのかを知らないが、あっと驚かせたのは間違いないだろう。
    情報自体は全てが揃っている訳ではないものの、犯人を理論的に導き出す為の事柄は出揃っていたので、
    謎解きを楽しめるようになっている作り。
    古典ミステリといえど、素晴らしい作品はいつまでも素晴らしい。
    ミステリの歴史をどんどん散策したい。

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    2021年08月15日
  • われらが痛みの鏡 下

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    ピエール・ルメートル『われらが痛みの鏡 下』ハヤカワ文庫。

    3部作の完結編の下巻。戦火の中で運命に翻弄されながら、歴史の1ページを刻んだ登場人物たち。ミステリーの要素は希薄で、歴史大河小説のような趣の作品だった。はっきりとしたテーマや結末は見当たらず、読み終えても満足感は得られなかった。

    密林では評価が高いようだが、レビューは無いという不可思議。ステルス・マーケティングなのだろう。

    レストラン店主のジュールと共に戦火を逃れ、兄のラウールを捜すためにルイーズはパリを後にする。ラウールはガブリエルと共に捕らえられていた軍から脱走する。そして、終盤にルイーズはラウールと会うのだが……

    本体価

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    2021年08月11日
  • われらが痛みの鏡 上

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    ピエール・ルメートル『われらが痛みの鏡 上』ハヤカワ文庫。

    『天国でまた会おう』『炎の色』に続く3部作の完結編。前2作とは間接的には関連するが、全く独立した物語である。

    ミステリーなのか、歴史小説なのか、どういう展開になるのか全く読めない展開の作品。一応、乗り掛かった船ということで完結編も読むことにしたが、期待はしていない。

    ドイツが進行し、戦火が迫る1940年のパリが舞台。『天国でまた会おう』に登場した戦争で顔を半分失ったエドゥアール・ペリクールが身を寄せた下宿先の娘、ルイーズ・ベルモンの数奇な運命とフランス軍の兵士、ガブリエル、ラウール・ランドラードの物語、天才的な詐欺師デジレの物語

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    2021年08月11日
  • われらが痛みの鏡 下

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    上巻までは全く関係なく描かれていた4人(組)が集結する下巻は俄然面白くなりました。前2作は実際の出来事をモデルにしていたとのことですが、本作はどれくらい事実が元になっているんでしょうか。それにしても戦争は悲惨ですね。

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    2021年08月08日
  • 天国でまた会おう 下

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     惨めな生活を送るアルベールとエドゥアールは、戦死者記念墓碑詐欺を実行する。一方でプラデルは、戦死者埋葬事業で数々の契約違反を行い運に見放されつつあった。

     戦争で大きく運命を変えさせられた若者二人と私利私欲のプラデル、息子の死に後悔で苛まれるマルセルがそれぞれが戦死者追悼事業に関わり、人生奪還・金儲け・息子への愛慕の気持ちが向かう結末は悲しいものだ。

     本作は、2013年にフランスの文学賞''ゴンクール賞''を受賞し2017年には映画化もされました。

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    2021年07月23日
  • 天国でまた会おう 上

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     1918年第一次世界大戦、銀行の会計係だったアルベール・マイヨールは今は前線でフランス軍兵士となっている。
    ドイツが降伏し戦争終結というタイミングで事件が起きた。中尉ブラデルは終戦後の地位を求めて兵士達に更なる戦いへ奮い立たせる為に部下2人をドイツ兵の仕業に偽装して射殺し、兵士の怒りをドイツ兵に向けさせた。
     前線で事実を知ったアルベールはプラデルに殺されかけ、更に救おうとし重症を負ったエドゥアールをも見殺しにしようとしている。

     奇跡的に助かった2人だが、エドゥアールは亡くなった兵士の身分を偽装して家族には亡くなったと伝わっている。アルベールは命の恩人エドゥアールの面倒を見ているが悲惨な

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    2021年07月22日
  • あやかしの裏通り

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    ネタバレ

    オーウェンの友人、ラルフが脱獄囚と間違えられ、ロンドンの霧の裏町を逃げ回り、迷い込んだクラーケン・ストリート。
    その通りの家の窓から女にナイフで斬りつけられる男性を目撃して立ち去るが、ライターを落としたことに気づいて引き返すと、クラーケン・ストリートは忽然と消えていた。
    ラルフから話を聞いたオーウェンはクラーケン・ストリートに興味を持ち、調べ始めると奇妙な体験をした人々が他にも存在することが。
    クラーケン・ストリートとは本当に幻の通りなのか?オーウェンと友人のアキレスは捜査に乗り出す。

    霧の裏通り、声をかける赤いショールの女、ぶどう売り。
    部屋の窓からぼんやりと見える一場面。
    わずかな時間の

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    2021年05月29日
  • ブラック・ハンター

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     ドイツの大富豪で会社経営者が狩猟休暇中に惨殺された。広大な領地の黒い森で狩猟者が獲物に儀式をする様に内臓を取り去り頭部を切り離し性器も切り取った。
     犯人は、動物と同じ様に人間を狩ったのだった。

     フランス警察のニエマンスと相棒のイヴァーナはドイツへ捜査に向かう。

     殺害されたユルゲンの妹で共同経営者のラオラも巨大な犬に咬み殺されそうになった。
    その犬は殺人鬼ならぬ殺人犬でナチス時代に訓練された犬だった。資産100億ドルのを巡っての一族の骨肉の争いが動機なのか?

     また、一方でユルゲンとラオラの叔父フランツは兄妹の父親である兄に狩場で謝って撃たれ車椅子人生となった事に対する恨みを息子ユ

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    2021年05月29日
  • 天国でまた会おう 下

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    はぐれ者二人の詐欺計画が着々と進行する最中、杜撰な仕事ぶりが露呈したブラデル社は一気に窮地へ。更には一枚岩のペリクール父娘、偏屈な監査人メルランも介入し、物語は一気に佳境を迎える。<ヴェルーベン警部シリーズ>最終作「傷だらけのカミーユ」の結末を鑑みる限り、晴れやかな幕引きは想像し難かったが、最終的に思いの外妥当な着地点に収まった印象。しかし、アルベールとエドゥアールの別離は実に切ない。主人公と敵役、復員兵の両者が戦没者を冒涜する悪事に身を染めていくのは実に皮肉的。原作に忠実と言われている映画版が気になる。

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    2021年05月17日
  • 天国でまた会おう 上

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    第一次世界大戦直後のパリを舞台とした長編小説。ミステリーのイメージが強い著者だが、今の所その要素は見受けられない。<ヴェルーベン警部シリーズ>で見せる丹念な積み上げとは異なり、悲愴的でありつつもテンポの良い展開だが、三人称視点な上、フォーカスされる人物が頻繁に切り替わるのでちょっと読み難い。上巻をフルに用い、ようやく舞台が整ったようだが、エドゥアールが持ちかける詐欺計画はかつての上官であるプラデルへの復讐劇ともなり得るのだろうか。そんな今作の悪役プラデル、聡明で狡獪な割にどうにも小悪党感が拭い切れないぞ。

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    2021年05月17日
  • 天国でまた会おう 下

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    主人公はパッとしない元兵士アルベール。上司プラデルの陰謀に巻き込まれ戦場で死にかけるも、エドゥアールによって助けられる。しかしそれと引き換えにエドゥアールは顔が潰れる大怪我を負ってしまう。戦争ビジネスで汚なくのし上がるプラデルと、モルヒネ中毒となるも画才で前代未聞の詐欺を働くエドゥアール。終盤の息をつかせぬ展開はさすが。シリーズものとのことで、続きが楽しみです。

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    2021年03月12日
  • 黄色い部屋の謎【平岡敦訳】

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    内側から施錠された完全な密室(黄色い部屋)で令嬢が襲われた。
    あたりは血の海と化しているがその襲撃者は見当たらない。
    この謎に挑むのは新聞記者ルルタビーユとパリ警察ラルサンの二人。
    終盤で披露される「理性の正しい側面」による推理には感嘆するしかない。
    読みやすい文章も○。

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    2021年01月09日
  • 天国でまた会おう 下

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    ネタバレ

    「その女アレックス」を中心としたヴェルーヴェン警部シリーズとは全く趣向の違った作品でした。

    後書きでは冒険小説とのワードもありましたが、それもしっくりこない。

    舞台はまさに第一次世界大戦が終わろうとしているフランス。

    そこで戦った兵士(アルベール)が戦場で見た光景と自身の体験。

    命を救ってくれた戦友(エドゥアール)と、その際におってしまった人生を狂わせる大怪我。

    その後、始まった共同生活の中で彼等が取り戻す日常は、国中を巻き込む一大詐欺事件へ...

    後半に入り、少し世界観には入り込めたが、暗いイメージは今までの著者の作品と同じとは言え、期待していただけに全体を読み終えても残念な気が

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    2021年01月06日
  • 天国でまた会おう 下

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    同作者の作品としては意外性が弱く、陰鬱なのは変らないという感じ。
    爽快感を求めたわけではないけど、あまり高い評価はできかねると思う。

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    2020年12月20日
  • ブラック・ハンター

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    クリムゾン・リバーの続編。ドイツを舞台にしている。ニエマンス警視の再登場。スピード感と、心の闇を探る捜査が深みをもたらしているが終始、ジャン・レノの顔がチラついた。私は「死者の国」の方が好き。

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    2020年10月15日
  • 金時計

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    1991年の現代パートと1911年の過去パートから構成される。それぞれ独立した事件が起こる。過去パートの方でオーウェン・バーンズが謎解きをする。雪上の足跡をトリックにした殺人事件。既視感があるトリックであり、なんとなく途中で分かってしまう。それよりも現代と過去の輪廻転生の幻想的な要素が大きく、過去パートの素直な謎解きに対し、サスペンス的な現代パートとの対比が面白い。現代パートの展開は「えー、こうなっちゃうの!」という感想。さくっと一気読みでした。

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    2020年09月11日
  • 地底旅行

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    1863年5月24日ハンブルグ。鉱物学の高名な教授リーデンブロックと、彼の甥で研究助手のアクセルは、教授が持ち帰った稀覯本に挟まれたボロボロの羊皮紙を見つけた。そこに書かれたルーン文字は暗号で、解読は難航したものの、アクセルが偶然解いてしまった結果、それは、地球の中心へ行く方法を示したものだった。好奇心旺盛で行動的な叔父は、その暗号のメッセージに従い、アクセルを連れて冒険旅行に出ることを宣言する。大急ぎで準備が進む中、恋人への未練と危険な旅への恐れからアクセルは躊躇するが、ついに出発の時は来た。冒険の荷を積んだふたりは、アイスランドのスネッフェルス山を目指す。

    地球の中心を目指す旅を、アクセ

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    2020年05月16日
  • 天国でまた会おう 下

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    結末悪人のブラデルが罰せられた結末は納得したが
    エドゥアールが父親の運転する車に轢かれてしまったのは 何故なのか?作者は何を伝えたかったんだろう?

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    2020年04月29日
  • あやかしの裏通り

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    20世紀初頭のロンドンを舞台にした、というよりあのシャーロック・ホームズが活躍していた頃のロンドン言えば、よりイメージがつきやすい。クラシカルな本格ミステリーでこちらは名探偵オーウェン・バーンズが頑張って活躍していく。何よりクラーケンストリートと呼ばれるあやかしの裏通り近辺が、読み込むほどに頭の中で3D化され不思議な感覚になった。
    古き趣きのある喫茶店で美味しいコーヒーでも飲みながら読むと、いい時間が過ごせると思う1冊。

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    2020年03月17日