あらすじ
1918年11月、休戦が近いと噂される西部戦線。上官プラデルの悪事に気づいたアルベールは、戦場に生き埋めにされてしまう! そのとき彼を救いにあらわれたのは、年下の青年エドゥアールだった。しかし、アルベールの命の代償はあまりにも大きかった。何もかも失った二人を戦後のパリで待つものとは――? 『その女アレックス』の著者が書き上げた、サスペンスあふれる傑作長篇。フランス最高の文学賞ゴンクール賞受賞作
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Posted by ブクログ
三部作の最初の物語ですって。
舞台は第一次大戦下のヨーロッパ。もう終戦間近で、戦況も大勢は決していて、とっとと終わりたいってな状況。それなのに、最後に一発、ダメ元で手柄を立てようとするプラデル中尉の命令で、絶望的な攻撃に駆り出されてしまうアルベールとエドゥアール。からくも生還したものの、エドゥアールはアルベールを助けるために、顔を激しく負傷してしまう。終戦後パリに戻っても、障害者となったエドゥアールを抱えて、アルベールの生活は貧困を極めます。なぜか、エドゥアールが傷痍軍人向けの年金を受けとろうとしないし、大富豪の子息なのに身分を隠そうとするからです。
どうも、エドゥアールは親と確執があるっぽいのですが、だからってアルベールに苦労をかけてよいものなのか、この辺がフランスの個人主義なのかもしれませんが、命の恩人ってことで、エドゥアールを見捨てられないアルベールが不憫でした。
上巻はこんなかんじで、2人の辛酸を極める貧乏暮らしと悪辣なプラデル中尉のサクセスストーリーですすみます。なんと、プラデルはその美貌を活かし、エドゥアールの姉を篭絡し、大富豪の娘婿におさまって、順風満帆。戦没者の墓地造営で大儲けしようとたくらむのですが、果たして。
プラデルがいいかんじに悪党です。無条件に呪えます。
Posted by ブクログ
読み終わったあーー!
いざ三部作を読み終え
感じるのは、
戦争の悲惨さと人々の
決裂が描かれてるのに、
読後感が意外に爽やか
なこと。
悲惨な状況の中でこそ
慈悲深い行いが輝くし、
決裂の先に和解もある
からかしら。
パリっ子ルメートルの
エスプリに富んだ表現
の数々はさすが。
ハッピーエンドという
わけじゃないけれど、
いずれの作品も読者に
希望を抱かせる物語の
畳みかたで、
その点もまた良かった
です♪
Posted by ブクログ
「その女アレックス」が有名なピエール・ルメートル。
他の作品も含めて、日本の出版界にも旋風を巻き起こしたといっていいでしょう。
「アレックス」の2年後のこれがまた、フランスで最高の文学賞である、ゴンクール賞を受賞した作品。
奔流のようにあふれ出る才能を堪能できます☆
第一次大戦中の1918年から話は始まります。
真面目で平凡なアルベールは、上官のプラデル大尉の非道なやり方をたまたま目撃してしまいます。
戦場の混乱に乗じてプラデルに生き埋めにされかかったところを仲間のエドゥアールに助けられますが、エドゥアールはこれで顔を半ば失う大怪我。
裕福な家の出のエドゥアールは変わり果てた姿を見せたくないと家族に連絡を取ることを拒否し、アルベールが面倒を見ることになります。
一方、かっての上官プラデル大尉は、貴族の末裔で、ハンサム。
エドゥアールの実家を訪ね、なんと姉と結婚してしまいます。
しかも、戦死者の鎮魂のための事業で、大儲けしようという。
それを知ったエドゥアールは、復讐を考え‥?
救いのないような状況ですが、話はテンポよくどんどん進み、人生の皮肉をユーモアで包んで、いかにもフランス的なエスプリが溢れんばかり。
天才肌で手に負えない子供だったエドゥアールを親はもてあましていたのですが、戦死したと知らされてから、父性愛に目覚めていくことに。
二人の下宿先の女の子がエドゥアールのために可愛いマスクを考案してくれるところなど、なんとも微笑ましい。
これだけの作品は~なかなか読めないですよね。
面白かったです!
Posted by ブクログ
1918年11月、休戦間近の西部戦線。最後のチャンスと仕掛けをした中尉とそれを目にしてしまった兵士、窮地に陥った兵士を助けようとした兵士もまた傷付いてしまう。戦後、上手く立ち回る元中尉の行動には、そこまでするのかと呆れてしまう。復員した二人の兵士の暮らしぶりには何も言えない。
Posted by ブクログ
第一次世界大戦後の悲壮感がひしひしと伝わってくる。ピエールルメートルの本には、登場人物にどんどん引き込まれて好きになってしまう不思議な魔力がある。ルイーズは癒し。
シリーズ全3部作読破しよう。
Posted by ブクログ
最後まで展開の読めない、いったいどうなってしまうのか気になってやめられない本でした。
自分の虚栄心を満たすためには他人の犠牲も厭わない人物、戦争中その犠牲になって戦後塗炭の苦しみを味わう2人。臆病な主人公が考えられない大それた犯罪の首謀者となり、彼に感情移入して、ハラハラドキドキ胃の痛くなるような思い。
悲惨ななかに美しさ、芸術性、多様な性格のからみ合い、不正と正義、愛と憎しみ、それらがぎっしり詰まった、読み応え満載の一冊です。
Posted by ブクログ
第一次世界大戦の終戦間際。一旗あげたいと思った将校がとった行動に翻弄される一兵卒の二人。不思議なつながりで絡み合う人々。つい先が読みたくなる物語。まだ全貌が見えない前半が終わった。
Posted by ブクログ
フランスの作家ですが、日本ではミステリー作家として有名なようです。私は初めて彼の小説を読みました。
あとがきで知ったのですが、題名は第一次世界大戦で敵前逃亡の汚名で、見せしめとして銃殺された兵士が妻に宛てた最期の手紙の中の言葉、とのことです。
著者自身が言うように、戦争で人生を踏みにじまれた若者たちへのオマージュがこの作品の基調にあります。一方で主人公のエドウアール、アルベールによる社会への反抗が結末で達成され、主要な登場人物それぞれの物語が決着を迎えるところ、活劇のクライマックスのような高揚感を感じました。
”どんな問題にも結末は必要だ。それが、人生の定めだろう。耐え難い悲劇だろうと、馬鹿馬鹿しい喜劇だろうと、いつかは決着をつけねばならない。” という一節がとても印象に残りました。
Posted by ブクログ
悲惨な戦争を潜り抜けた戦友たちが主人公となり物語を繰り広げ、そこに戦争を経て肥え太った元兵士も絡んでくる…といった図式から、オールスンの「アルファベット・ハウス」が髣髴された。
「その女アレックス」で一躍我が国では有名になったピエール・ルメートルの作で、ミステリー仕立てではないが、行く末が気になって焦れてくる巧みな筆運びはさすが。
生々しい負傷の描写などをぼかさず、直截的に書き切るあたりも、"らしい"。
作中世界がとにかく濃厚で、読者は知らないうちにそこにどっぷりと引き込まれてしまっているので、カウントしてみると僅か1年余りのスパンの物語なのだが、なんだか長大な大河作品を味わったような気にもなる。
優しさ、弱さ、狡猾、悲哀、怒り、誇り、孤独、家族、愛情、理不尽…、戦争とその後の世相という舞台をギミックにして、"人間"というものを巧く浮き彫りにしている小説だと思う。
Posted by ブクログ
売れっ子のピエール・ルメートルの版権を獲得した早川書房は、その快挙に欣喜雀躍したに違いない。ハードカバーと文庫との同時出版となったのもその表れだろう。
しかし、実のところルメートルの作品は、あの怪作『その女アレックス』の登場後、即座に、過去に翻訳出版されていたにも拘わらずその時点では全く注目を集めなかったルメートルのデビュー作『死のドレスを花婿に』、そして少し後にカミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズとしては第一作に当たる『悲しみのイレーヌ』も出版されるというルメートル旋風が、翻訳小説界に巻き起こることになる。
『その女アレックス』が世界に席巻するルメートルのブームの発端となったにせよ、今、読む機会を与えられた過去の作品はすべて圧倒されるストーリーテリングを感じさせられる筆力に満ちたものであることは間違いない。
そうした翻訳ブームの中で実は地味ながらも『その女アレックス』の二年後の作品として改めて瞠目されるべき作品が、実は本作なのである。早川書房としてはとても鮮度のよい作品に眼をつけたというところなのだ。しかもこの作品、フランス最高のゴングール賞受賞作。いわば日本でいえば直木賞ならぬ純文学系の頂点である芥川賞に比肩する大きな賞なのである。ピエール・ルメートルは、実は直木賞も芥川賞も行ける作家であったということである。
しかし本書に向かい合ってみて、過去作品の見せる大どんでん返しやトリック、ツイストなどのミステリー的要素はないものの、その表現手法に接してみると、いかにもルメートル世界ではあるのだ。全然違う作品なのかな、と思いきや、その語り口、題材としての目の付けどころ、登場人物が陥る異常心理、意外な宿命とその結末といった小説的面白さは、日本の芥川賞にはまず見られることのない大衆娯楽小説としての楽しさが満載なのである。
フランスのおおらかさというようなものを感じさせる受賞であり、それに応える壇上のルメートルの妙技はやはり相変わらず見ものである。ミステリーではなく、むしろ冒険小説のジャンルに切り込んだルメートルの作品は、どことなくジャプリゾの『長い日曜日』を思い起こさせる。
戦争の残酷と、戦争を食い物にする戦争犯罪者。そしてそれらをある時は真摯に、ある時はイロニック(皮肉)に料理する名シェフのような文章(包丁)と味付けの冴え。日本の純文学では考えられないフランス純文学大賞の面白さ、という切り口だけでも改めて楽しみたいエンターテインメント・クライム・スリラーであり、壮大な復讐劇としてのビルディングス・ロマンとも言える大作をご賞味あれ。
Posted by ブクログ
第一次大戦末期から戦後にかけてのドラマ。戦場で九死に一生を得た兵士、下顎を失う兵士、出世欲が強い没落貴族の下士官、が登場。この上巻はまだ本筋はあらわれてこず、下巻で一気に物語が回転する予感。
Posted by ブクログ
読者の浅はかな予想を翻弄するかのごとく展開した「その女アレックス」とは趣を変え、本書は第一次世界大戦の戦場における場面からじっくりとした語り口で惹きつける。上官の私欲による愚かな惨劇の被害者となった二人の若者が辿る運命が重い。
Posted by ブクログ
去年の読み始めはアレックスで楽しませていただいたからというわけでもないのだが今年もピエール作品でスタートすることになる。
顔を溶かした前作同様今回も顔半分を吹き飛ばしまさに畸型フェチ全開ミステリーかと思いきやどうやら趣きが異なるようで…ググればゴングール賞なるものはエスプリの効いた純文学に贈られる仏版芥川賞らしくそこは納得。
しかしながら我々日本人と西洋人の思想の乖離は如実(特に戦争というとてつもないものには)で前説然とした展開と併せて非常に読みにくい。
さて後半はどうなるのか?期待感だけは半端ない
Posted by ブクログ
やっぱりピエールルメートル、負傷の描写がハンパない。こういう風貌の方がいたら度肝抜かれます。これから何かが起こる期待感が募ります。こういうもっていきかた、巧みです。
Posted by ブクログ
殺人事件ミステリーとは異なるとはいいたいが
殺人は行われて、ただその舞台が戦争(W.W.Ⅰ)。
しかし、犯人探しではなく、戦争を生き抜いた
戦争の中、生き返った・死んでしまったも同然の、
まるで生来持っていた気質が正反対の若者たちが、
戦争と生死を通じて結びつき、
周りの世界は欲望のなか結びつき、
生きながら死んでしまったような若者が
なにやら引き起こしそうな感じで下巻へ。
アルベールは、なんでそこまで、と思うほど
しかし絶対に思うだろう不満も抱きながら
かわいそう、可愛らしくなるくらいに、
献身的で、しかし上手くいかない人生を、
想定の母親の言葉で、ひとりつっこみ。
ままならない、しかし自分の信念に流される、
おもしろくない人生の、やりきれなさに共感します。
Posted by ブクログ
久々のルメートル
あれ、でもこれミステリーじゃないんだねとちょっとがっかり、壮大な復讐劇といったところか
主人公のマイヤールはなんとなくぐずでのろまな印象、機転が利かないくせに、じっくり考えることもせずに自分からどんどん落とし穴にはまっていくタイプ、人はいいけど全くの善人でもないし
ヒーロー要素のかけらも無い主人公だがそれだけに自分と重なる部分もたくさんあるな
そんなマイヤールは戦場で上官のプラデルの悪事に偶然気付いてしまい、殺されそうになる
九死に一生を得てパリに戻った彼だが、何もかも失ってぐすぐずと思い悩んで躓きまくり貧乏生活が続く
一方でプラデルは悪事を重ねてのし上がって行くのだが・・・
それにしてもマイヤールは我が身のふこうを嘆くばかりで全く復讐に舵を切らない
復讐劇違うんかい!というね
だけど何かが起こりそうな気配だけはしてきた
どうなる下巻
Posted by ブクログ
「ピエール・ルメートル」の長篇作品『天国でまた会おう(原題:Au revoir la-haut)』を読みました。
『死のドレスを花婿に』に続き「ピエール・ルメートル」作品です。
-----story-------------
膨大な犠牲者を出して、大戦は終わった。
真面目な青年「アルベール」は、戦争で職も恋人も失ってしまう。
画才に恵まれた若き「エドゥアール」は顔に大怪我を負い、家族とのつながりを断つ。
戦死者は称揚するのに、生き延びた兵士たちには冷淡な世間。
支え合いながら生きる青年たちは、やがて国家を揺るがす前代未聞の詐欺を企てる!
第一次世界大戦後のフランスを舞台に、おそるべき犯罪の顛末を鮮やかに描き上げた一気読み必至の傑作長篇。
ゴンクール賞受賞作。
〈上〉
1918年11月、休戦が近いと噂される西部戦線。
上官プラデルの悪事に気づいた「アルベール」は、戦場に生き埋めにされてしまう!
そのとき彼を助けに現われたのは、年下の青年「エドゥアール」だった。
しかし、「アルベール」を救った代償はあまりに大きかった。
何もかも失った若者たちを戦後のパリで待つものとは―?
『その女アレックス』の著者が書き上げた、サスペンスあふれる傑作長篇。
フランス最高の文学賞ゴンクール賞受賞。
〈下〉
第一次世界大戦直後のパリでのしあがる実業家「プラデル」は、戦没者追悼墓地の建設で儲けをたくわえていく。
一方、「アルベール」は生活のため身を粉にして働いていた。
そんな彼に「エドゥアール」が提案したのは、ある途方もない詐欺の計画だった。
国をゆるがす前代未聞のたくらみは、はたしてどこにたどりつくのか?
日本のミステリ・ランキング一位を独占した人気作家が放つ、スリルと興奮に満ちた群像劇。
一気読み必至の話題作。
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これまでに読んだ「ピエール・ルメートル」作品の『その女アレックス』、『死のドレスを花婿に』のような、眼には眼を、歯には歯を… 的なミステリ作品とは異なり、第一次世界大戦後のフランスを舞台に、戦争で財産や身体の一部、職、恋人等の様々なモノを喪失した若者たちを、彼らが関わった前代未聞の犯罪を絡めて描いた文芸作品、、、
どんでん返しはなく、悪役がわかりやすい勧善懲悪のエンターテイメント作品でしたね… 映画化して欲しいような、そんな作品でした。
■一九一八年十一月
■一九一九年十一月
■一九二〇年三月
■終わりに……
■訳者あとがき 平岡敦
舞台は第一次大戦終結直前の1918年11月2日… 主な登場人物は、兵士の「アルベール・マイヤール」と「エドゥアール・ペリクール」、そして二人の上官の「アンリ・ドルネー=プラデル中尉」の三人、、、
主人公的な存在の「アルベール」は元銀行の経理係で、平凡を絵に描いたような若者… 優柔不断で意気地なしで、びくつくとすぐズボンのなかにちびってしまいそうになり、おまけに閉所恐怖症の気まであり、恋人とベッドにいるときでさえ、毛布にすっぽりくるまれるとパニックを起こしかける程の小心な人物、、、
そんな「アルベール」に一生立ち直れないほどの恐怖を味あわせる徹底した悪役として登場するのが「プラデル中尉(のちに大尉に昇進)」… 自分の利益のため、自らの欲望を満たすためならば他人を犠牲にし、どんな汚い手を使うこともいとわないという、あまりにも憎々しい存在。
そして、もう一人そこにもうひとり「アルベール」の運命に深く関わっていくのが「エドゥアール」… 裕福な実業家の家庭に生まれ、画才に恵まれた天才肌の男で、反俗精神に溢れるという「アルベール」とは正反対の性格、、、
この三人が、戦場で数奇な運命により、生死を含めた、己の未来を変えてしまうような因縁の出来事に遭遇… そして、三人の因縁の物語は、戦後においても戦没者追悼墓地を巡るスキャンダルや慰霊碑詐欺という事件により微妙に交錯していく。
「アルベール」の考えに共感しつつ、いつの間にか感情移入して読み進めていました… 自らの出世のために、兵士を鼓舞するために、斥候に出した部下をドイツ兵に撃たれたように見せかけて銃殺し、それを知った「アルベール」を生き埋めにして殺そうとした「プラデル」、生き埋めになった「アルベール」を助けた際に砲弾の破片により負傷し顔の下部(下顎)を失った「エドゥアール」、、、
戦傷兵となった「エドゥアール」は、確執のあった父「マルセル・ペリクール」の元に帰ることは望まず、「アルベール」の協力を得て、戦死した兵と入れ替わり、別な人物として生きることを選択… 戦後、「アルベール」は、自分の命を救ってくれた「エドゥアール」の世話をするため共同生活を始めるものの、貧しいながらも実直な生活を送ろうとする「アルベール」と、取返しのつかない負傷を負い、世の全てに反逆するかのような放埒さを見せる「エドゥアール」との間には、微妙な心のずれが生じて行く。
一方、「プラデル」は戦後の混乱に乗じ、持ち前の野心と才覚で財産を増やし、「エドゥアール」の姉「マルセル・ペリクール」と結婚することで、更なる飛躍を目論むが、、、
戦没者追悼墓地に関する受託業務での不正行為が暴かれ、仲間からも裏切られ、徐々に追い詰められて行く… 同じ頃、「アルベール」と「エドゥアール」は、「エドゥアール」の発案による世間をあっと言わせる前代未聞の慰霊碑詐欺で大金を入手することに成功、国外への逃亡を計画するが、欺かれた被害者の一人である「エドゥアール」の父「マルセル」の命により「プラデル」は犯人を捜すことになり、再び、三人は接近することになる。
大きなサプライズはないですが、善には救いがあり、悪は罰せられるという結果だったので、納得感のあるエンディングでしたね、、、
「アルベール」は、「ポリーヌ」と幸せな生活を送っているのかな… でも、ずっとずっと、死ぬまで、逃亡する汽車に現れなかった「エドゥアール」のことは気になっていたでしょうね。
それにしても、「エドゥアール」と「マルセル」の運命的な父子関係… 特に「エドゥアール」の最期は切なかったですねぇ。
意外性は少ないないけど… 主人公の「アルベール」に感情移入して、恐怖を感じたり、悩んだり、悲しんだり、喜んだりすることができて、愉しめた作品でした。
以下、主な登場人物です。
「アルベール・マイヤール」
兵士
「エドゥアール・ペリクール」
兵士
「アンリ・ドルネー=プラデル」
アルベールとエドゥアールの上官。後に実業家、プラデル社の社長
「マルセル・ペリクール」
エドゥアールの姉
「マルセル・ペリクール」
富裕な実業家。マドレーヌとエドゥアールの父親
「セシル」
アルベールの恋人
「モリウー将軍」
軍の大物
「フェルディナン・モリウー」
プラデル社の出資者。モリウー将軍の孫
「レオン・ジャルダン=ボーリュー」
プラデル社の出資者。代議士の息子
「ラブルダン」
区長
「リュシアン・デュプレ」
プラデルの部下
「アントナプロス」
密売人。通称「プロス」
「ベルモン夫人」
アルベールとエドゥアールの大家
「ルイーズ・ベルモン」
ベルモン夫人の娘
「ウジェーヌ・ラリヴィエール」
戦死した兵士
「ルイ・エヴァール」
戦死した兵士
「ジュール・デプルモン」
架空の彫刻家
Posted by ブクログ
1918年第一次世界大戦、銀行の会計係だったアルベール・マイヨールは今は前線でフランス軍兵士となっている。
ドイツが降伏し戦争終結というタイミングで事件が起きた。中尉ブラデルは終戦後の地位を求めて兵士達に更なる戦いへ奮い立たせる為に部下2人をドイツ兵の仕業に偽装して射殺し、兵士の怒りをドイツ兵に向けさせた。
前線で事実を知ったアルベールはプラデルに殺されかけ、更に救おうとし重症を負ったエドゥアールをも見殺しにしようとしている。
奇跡的に助かった2人だが、エドゥアールは亡くなった兵士の身分を偽装して家族には亡くなったと伝わっている。アルベールは命の恩人エドゥアールの面倒を見ているが悲惨な生活だ。エドゥアールはモルヒネ中毒、アルベールは定職がなくバイトを転々と、
戦争で2人の人生は大きく変わってしまったが、きっかけを作ったプラデルは資産家エドゥアール家の娘でエドゥアールの姉マドレーヌと結婚し着々と富豪の道を固めつつあった。
顔の下半分を無くし自暴自棄なエドゥアールと命の恩人を献身的に支えるアルベールの悲惨な生活と戦争をテコに野望を遂げようとするブラデルの悪と餌食にされた弱者の対比が生々しい。
本作は、''炎の色''、''われらが痛みの鏡''の歴史ミステリー三部作の初作です。
Posted by ブクログ
第一次世界大戦直後のパリを舞台とした長編小説。ミステリーのイメージが強い著者だが、今の所その要素は見受けられない。<ヴェルーベン警部シリーズ>で見せる丹念な積み上げとは異なり、悲愴的でありつつもテンポの良い展開だが、三人称視点な上、フォーカスされる人物が頻繁に切り替わるのでちょっと読み難い。上巻をフルに用い、ようやく舞台が整ったようだが、エドゥアールが持ちかける詐欺計画はかつての上官であるプラデルへの復讐劇ともなり得るのだろうか。そんな今作の悪役プラデル、聡明で狡獪な割にどうにも小悪党感が拭い切れないぞ。
Posted by ブクログ
*1918年11月、休戦が近いと噂される西部戦線。上官プラデルの悪事に気づいたアルベールは、戦場に生き埋めにされてしまう!そのとき彼を助けに現われたのは、年下の青年エドゥアールだった。しかし、アルベールを救った代償はあまりに大きかった。何もかも失った若者たちを戦後のパリで待つものとは―?『その女アレックス』の著者が書き上げた、サスペンスあふれる傑作長篇。フランス最高の文学賞ゴンクール賞受賞*
とても壮大でスリリングな展開。最初はややまったりとしたテンポなのですが、途中から一気に加速し、この後どうなるのか見当もつかないワクワク感でいっぱいです。早く下巻読みたいです。
Posted by ブクログ
身近でなかった話なので新鮮でした。戦争の悲惨さは衆知のごとくですが、この時代ですでに欧州にアフリカ人だけでなく中国人もいたという、うわべだけですが実感、歴史知識なさすぎを痛感。さらに花粉症もあったなんて。日本語訳なだけで違うかもしれませんが。
まだ序盤。ジェットコースターストーリーを期待して下巻をめくります。
Posted by ブクログ
戦場でプラデルの悪事を見てしまったアルベールは、そのプラデルに生き埋めにされてしまう。エドゥアールがアルベールを助けたがそのせいで爆弾を浴びエドゥアールは顔に大怪我を負う。
戦後パリに戻った2人は貧しく暮らす。プラデルの出世を知った2人は落胆。国を相手に壮大な詐欺計画を企てるものの、エドゥアールはその成功を見ることなく、自分の父親が運転する車に飛び込み命を絶ってしまう。
エドゥアールの父の描写が印象的でした。息子が生きている時は父親らしいことを全くしなかったのですが、息子の死を知って、失意と遺恨に悩む父親像が見てとれ、とても悲しい気持ちになりました。
悪事を働いたプラデルが結婚し幸せに暮らす様を見て、貧乏暮らしのアルベールが、「僕のこの不幸な人生は一体何なんだ?」と嘆く場面。人生の不条理さを感じ悲しさを感じました。
貧乏のアルベールがどうにか着飾ろうと靴だけピカピカの安物を履き、そんな自分を滑稽に思う場面。取り繕おうとする人間の性とその虚しさに気づいた瞬間が印象的でした。
「プラデルさえいなければ僕の人生は変わっていた」と個人を恨むアルベールに対し、「戦争が悪い、戦争がなければプラデルののような奴も生まれない」とエドゥアールが言う場面。怒りの表われが違く、広い視点で捉えるエドゥアールに共感しました。
「どんなことでもいつかは慣れる。でも悲しみだけは昔のままだ」とエドゥアールが嘆く場面。感情の中でも深い悲しみは心の中に残ってしまうんだと思いました。その失意が、投身自殺に繋がったのかなと思います。
全体的に悲しさの残る物語でした。
Posted by ブクログ
あの、「悲しみのイレーヌ」で有名な著者の作品。
うーん。「悲しみのイレーヌ」は、非常に衝撃的な作品だったけど、こちらはどうか。紙面ぎっしりと文字が配置されているページもあったりするので、読み進むのには、少し力がいる。また、内容的にも、すこし入り組んでいるので、そういう意味でも力がいる。
上巻では、テンポが良いとは言い難い。下巻で、どう巻き返すか。
Posted by ブクログ
アルベールとかエドゥアールとかラブラダンとか登場人物の名前が覚えられない。ゆっくりした展開の割に先に先にと読みやすいが、盛り上がりが結局分からないまま上巻が終わってしまった。。
Posted by ブクログ
第一次世界大戦末に運命が分かれた者たちを描くフランス小説。
この時代の小説は初めて読むし、その上フランスが舞台という事で背景感がつかめず苦闘しました。
また、視点が章の中でも変わるので読みにくかったです。
ようやく慣れてきたところで、物語が動き出して面白くなってきました。
Posted by ブクログ
休戦間近の戦線において、主人公アルベールは上官が敵の攻撃に見せかけ部下を撃ち殺し、戦意向上させようとしていることを目撃する。
そして上官に生き埋めにされそうなところをエドゥアールに救出されるが、エドゥアールは大怪我を負ってしまい、戦後のアルベールはエドゥアールの世話に追われてしまう。
上巻はほんとに舞台設定の説明のみという感じ。
出てくる人々が大抵駄目で、いわゆるきれいなヒーローやヒロインは存在しな
い。特にエドゥアールの姉のマドレーヌがすごい。なんだこの迫力は。
エドゥアールのうつろな穴というか、なんだろう、モンスター化しているとこ
ろが怖い。あと運命の皮肉さ。
下巻が楽しみ。