平岡敦のレビュー一覧
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フランスの作家ですが、日本ではミステリー作家として有名なようです。私は初めて彼の小説を読みました。
あとがきで知ったのですが、題名は第一次世界大戦で敵前逃亡の汚名で、見せしめとして銃殺された兵士が妻に宛てた最期の手紙の中の言葉、とのことです。
著者自身が言うように、戦争で人生を踏みにじまれた若者たちへのオマージュがこの作品の基調にあります。一方で主人公のエドウアール、アルベールによる社会への反抗が結末で達成され、主要な登場人物それぞれの物語が決着を迎えるところ、活劇のクライマックスのような高揚感を感じました。
”どんな問題にも結末は必要だ。それが、人生の定めだろう。耐え難い悲劇だろうと、馬鹿馬鹿しい喜劇だろうと、いつかは決着をつけねばならない。” という一節がとても印象に残りました。 -
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フランスの作家ですが、日本ではミステリー作家として有名なようです。私は初めて彼の小説を読みました。
あとがきで知ったのですが、題名は第一次世界大戦で敵前逃亡の汚名で、見せしめとして銃殺された兵士が妻に宛てた最期の手紙の中の言葉、とのことです。
著者自身が言うように、戦争で人生を踏みにじまれた若者たちへのオマージュがこの作品の基調にあります。一方で主人公のエドウアール、アルベールによる社会への反抗が結末で達成され、主要な登場人物それぞれの物語が決着を迎えるところ、活劇のクライマックスのような高揚感を感じました。
”どんな問題にも結末は必要だ。それが、人生の定めだろう。耐え難い悲劇だろうと、馬鹿馬鹿しい喜劇だろうと、いつかは決着をつけねばならない。” という一節がとても印象に残りました。 -
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この頃はさっぱり手にしない推理小説。帰郷している週末、土曜日の新聞の紹介を見て日曜日に昔通っていた本屋さんで見つけ実家の自分の部屋で一気読みです。40年前ははそうやってカーとかクイーンとか読んでいたな…と読書気分タイムトリップになりました。実は本書もディクスン・カーとか本格推理小説への深いリスペクトを感じます。完全密室とか交霊会とか道具立ても万全。あまりの不可能性に「あれ?実は…」とも思ったりするのですが、そのタイミングで構成自体にサプライズが用意されていて、そしてその後は、本格派の嫡流というだけにとどまらないような展開に翻弄されました。動機の設定も全く衝撃的だし、ラストの着地も「マジ?」です。さすが世紀の奇術師フーディニを素材に取り上げているだけあって観客、いや読者の認知を操りまくる技術、すごいです。初めて読む作者でしたが、この作品は1987年にフランスで出版され、2002年にポケミスに入って、今回の文庫化になったとのこと。もしかしたら自分と同じ時代に本格推理小説にハマった人なのかもしれませんね。
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やっぱ殺人事件だけ起きてそれを名探偵が解決するだけじゃ味気ないよねぇ。だから裏にはラブストーリーは突然にあっても良い、ってこれじゃ火サスか。
でもコナンみたいに最初から最後までほとんど事件に関わってるのに何ら役に立たずに何人も死んでしまうような展開ではなく、その場に居合わせなかったからしょうがないぜよ、という探偵なら許せるよね。
そんなこんなで今回は好きなのに気持ちを伝えられずに紆余曲折を経て最後にはハッピーエンドというわりかしオーソドックスなストーリーにさりげなく殺人事件をまぶしてみたという、そしてその二人を結び付けるためになんか都合よく人が死ぬっぷりが、全体的に硬派な流れに反してちょっと適当じゃね?ってのがむしろ良かった。 -
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「奇岩城」モーリス・ルブラン。
とても有名な、アルセーヌ・ルパン物語の長編。
なンだけど、改めて読むとこれ、ルパンのほぼ一方的な敗北の物語でした。
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ルパン・シリーズは、どうやら、1907年の短編集「怪盗紳士ルパン」から始まります。
そのあと、中編集、とでも言うべき「ルパン対ホームズ」1908。
そして戯曲の小説化である「ルパンの冒険」1909。
そして同年1909に長編「奇岩城」。
なので、簡単に言うと、「初のルパン物の長編」として構想された、と想像できます。
想像なんですけど、短編中編ではなくて長編になると、「ルパンすごいぞ勝ちました」では、もたなくなった。むしろ、「ルパンという人の背景を描く」。そのためにはルパンの秘密が暴かれなくてはいけない。
というわけで、小説「奇岩城」は、初の長編にして同時に、はやばやとスピンオフの趣(笑)。
ぶっちゃけ、主人公はルパンぢゃなくて、名探偵役のイジドール・ボートルレ君。
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ルパン一味による謎の殺人事件。
イジドール君が解明、ルパンとの丁々発止。買勝った負けたの攻防戦。
全てイジドールくんサイドからの視点で描かれます。
ルパンは、やんごとなき女性を愛し、妻にして、まんまとハッピー…かと思いきや。
そうはさせじと、イジドール君。
「謎に包まれたルパンの、ルパン一味の本拠地。ルパンの巨万の富の秘密」に迫っていきます。
このあたりはいわば、読者としては。「ヒーロー・ルパンが追い詰められていくのを愉しむ」、というねじれ構造。
なんですが、小説「奇岩城」としては前半でユニークかつ冒険小説らしい夢のある「名探偵イジドールくん」に感情移入できているので、問題なし。イジドールくんと一緒に、「あのルパンの秘密が遂に分かるのか!」というわくわくですね。
つまりルパンは、中世以降、歴代権力者が富を隠してきた、海岸沿いの奇岩の城(中身が空洞になっている)を手に入れている。蓄積された富ごと。
その奇岩城をうまく使って、ここまでの一味の活動を展開してきた。
その奇岩城の入り口を、面倒くさく書き記した暗号がうまく使われて、ダレずに筋が運ばれます。このあたり、フランス史に詳しければよりより楽しめるんでしょうけれど。
日本に置き換えると、「天智天皇も源義経も織田信長も、みんなが奇岩城を手に入れたことで力を持ったのだ」みたいなロマンチックなお話です。胃もたれしなくて愉しい読書です。
イジドール君が、ホームズもガニマールも呼び寄せた。
御用御用!と奇岩城に打ち入ってみると。
ルパンは「ふっふっふ待っていたよ」と余裕なんです。
なんだけど、ともあれ奇岩城の機能はもう放棄せざるを得ない。
このあたりから急激に物語の主人公としてルパンが帰り咲く。というか初めて描かれる。
スリルを愉しむように間一髪で脱出。
ところがその後、ホームズに追い詰められて。
流れ弾?に愛しい奥さんが撃たれて死んでしまう。怒涛の展開。
悲嘆にくれて去っていく、愛の怪盗ルパン1世。
終わり。
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だからつまり、ルパンが本拠地を暴かれ、手放し、結婚したばかりの愛しい妻を失って、泣きの涙で去っていく。
つまりそういうお話なんです。ルパンが負けちゃう。
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よく考えたらスピンオフの構造だなあ、と思いながらも。
イジドール君のロマンチックな若さの謳歌、のびのびとした(瑣末なリアリズムとかブンガク性をふっとばすような)ロマンの味わいが、いかにもルパン・シリーズな食べ心地。
序盤、なかなかルパンが出てこない(というか、ほぼ奇岩城のラスト山場まで出てこない)ので、乗りにくいところがありましたが、イジドール君が活躍を始めると一気にエンターテイメントが走りだす。
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多分小学校とか以来の再読。
大人になっても、いや、大人になってからだからよりより、罪なく楽しめました。
この新訳シリーズで「813」を再読したいなあ、と。
(まだ出てないんですよね。このシリーズでは) -
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世紀の怪人物の末裔を称し、絶世の美貌で男たちを魅了するカリオストロ伯爵夫人ことジョジーヌ。彼女は権謀術数を駆使する怪人ボーマニャンを相手に、普仏戦争のどさくさで失われた秘宝をめぐる争奪戦にしのぎを削っていた。その闘争の最前線に一人の若者が割り込む。その名はラウール・ダンドレジー。彼こそは、のちの怪盗紳士アルセーヌ・ルパンその人だった。妖艶なる強敵を相手にした若きルパン、縦横無尽の大活躍。
2017年最初の一冊はルパンでした。文庫を買ってから大事に積みすぎた作品ですw青年ルパンの原点とも言えるカリオストロですが、やっぱりいいなあ。ダンドレジーが若くて有頂天になったり恋におぼれたりと隙は多いけど、それがまた彼の人間らしさとして共感につながっている気がします。自分の中に天才的な才能を見つけ、ジョジーヌにやられて教えられては自分もやり返すという流れが本当にわくわくする。結果的に二人の人生がパートナーとして交わることはなかったわけですが、それでも一部分で似た者同士であり宿敵であり続けるんだな。人を殺さないからこそルパンには魅力が詰まっているのであって、ジョジーヌとは大きな差がありますが。復讐編も本当に楽しみだけど、平岡先生が新訳を出して下さらないかな・・。 -
Posted by ブクログ
悲惨な戦争を潜り抜けた戦友たちが主人公となり物語を繰り広げ、そこに戦争を経て肥え太った元兵士も絡んでくる…といった図式から、オールスンの「アルファベット・ハウス」が髣髴された。
「その女アレックス」で一躍我が国では有名になったピエール・ルメートルの作で、ミステリー仕立てではないが、行く末が気になって焦れてくる巧みな筆運びはさすが。
生々しい負傷の描写などをぼかさず、直截的に書き切るあたりも、"らしい"。
作中世界がとにかく濃厚で、読者は知らないうちにそこにどっぷりと引き込まれてしまっているので、カウントしてみると僅か1年余りのスパンの物語なのだが、なんだか長大な大河作品を味わったような気にもなる。
優しさ、弱さ、狡猾、悲哀、怒り、誇り、孤独、家族、愛情、理不尽…、戦争とその後の世相という舞台をギミックにして、"人間"というものを巧く浮き彫りにしている小説だと思う。 -
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売れっ子のピエール・ルメートルの版権を獲得した早川書房は、その快挙に欣喜雀躍したに違いない。ハードカバーと文庫との同時出版となったのもその表れだろう。
しかし、実のところルメートルの作品は、あの怪作『その女アレックス』の登場後、即座に、過去に翻訳出版されていたにも拘わらずその時点では全く注目を集めなかったルメートルのデビュー作『死のドレスを花婿に』、そして少し後にカミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズとしては第一作に当たる『悲しみのイレーヌ』も出版されるというルメートル旋風が、翻訳小説界に巻き起こることになる。
『その女アレックス』が世界に席巻するルメートルのブームの発端となったにせよ、今、読む機会を与えられた過去の作品はすべて圧倒されるストーリーテリングを感じさせられる筆力に満ちたものであることは間違いない。
そうした翻訳ブームの中で実は地味ながらも『その女アレックス』の二年後の作品として改めて瞠目されるべき作品が、実は本作なのである。早川書房としてはとても鮮度のよい作品に眼をつけたというところなのだ。しかもこの作品、フランス最高のゴングール賞受賞作。いわば日本でいえば直木賞ならぬ純文学系の頂点である芥川賞に比肩する大きな賞なのである。ピエール・ルメートルは、実は直木賞も芥川賞も行ける作家であったということである。
しかし本書に向かい合ってみて、過去作品の見せる大どんでん返しやトリック、ツイストなどのミステリー的要素はないものの、その表現手法に接してみると、いかにもルメートル世界ではあるのだ。全然違う作品なのかな、と思いきや、その語り口、題材としての目の付けどころ、登場人物が陥る異常心理、意外な宿命とその結末といった小説的面白さは、日本の芥川賞にはまず見られることのない大衆娯楽小説としての楽しさが満載なのである。
フランスのおおらかさというようなものを感じさせる受賞であり、それに応える壇上のルメートルの妙技はやはり相変わらず見ものである。ミステリーではなく、むしろ冒険小説のジャンルに切り込んだルメートルの作品は、どことなくジャプリゾの『長い日曜日』を思い起こさせる。
戦争の残酷と、戦争を食い物にする戦争犯罪者。そしてそれらをある時は真摯に、ある時はイロニック(皮肉)に料理する名シェフのような文章(包丁)と味付けの冴え。日本の純文学では考えられないフランス純文学大賞の面白さ、という切り口だけでも改めて楽しみたいエンターテインメント・クライム・スリラーであり、壮大な復讐劇としてのビルディングス・ロマンとも言える大作をご賞味あれ。