浅倉久志のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ヴォネガット 1990年の作品。
90年代に入ったヴォネガットは、もうおとぎ話を書けないほど、
母国に対する怒りと悲しみが深くなってしまったようだ。
これまでのヴォネガットには、どんな内容のものであれファンタジーがあった。
偶然の産物があった。涙を誘うペーソスあふれる愛の対象があった。
ところが、「ホーカス・ポーカス」にはそれがあまりない。
登場人物はすべて架空だし、設定も奇想天外なのに、シリアスで、絵空事になっていない。
どちらかといえば、その翌年書かれたエッセイ「死よりも悪い運命」や「国のない男」のテイストに近い。
ヴォネガットのエッセイを読むと思い出すのがマイケル・ムーアの映画だ。
確 -
Posted by ブクログ
2000年に上製本として発売されていた、ヴォネガットの短編集がこのほどようやく文庫化された。
書かれたのは1950〜60年代で、半世紀も前のもの。
ヴォネガットが短編を生活の糧として量産していた時期があり、
その大半はスリック雑誌に掲載された。
かつて、短編集「モンキー・ハウスへようこそ」が編まれたが、
そこから漏れてしまった23篇がここに収録され、短編の大方が網羅されたことになる。めでたい。
ここに収録されているのは短編で、しかもアーリー・ヴォネガットと言うべき作品群。
彼一流の文明批判や、どうしようもない人への「諦めと愛情いっぱいのまなざし」はすでに健在、
さすがというべき。ただ、長編に -
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Posted by ブクログ
1980年代当時のヴォネガットが、いかに人類に
絶望していたかがわかります。
どうしたってなくならない大量殺戮兵器。
どうしたってなくならない戦争。
どうしたってなくならない貧困や格差。
それらすべては巨大脳のせいだ、これは自然淘汰なんだ。
そう結論付けて笑い飛ばすしかない。
だってそれ以外に思いつく理由がどう考えたって見つからないもの。
広島や長崎も、ベトナムも、すべては百万年後の
新人類への進化のための布石だったのだと思うしかない。
そうにちがいない。(ヒロシマは「にこ毛」のための布石なのだ!)
……痛烈です。
しかし、ユーモアもたっぷりあります。そこがいいところ。
ヴォネガットの読者 -
Posted by ブクログ
「こうした偶然の一致をいちいち真剣にとっていたら、
だれでも気が狂ってしまう。この宇宙には、
自分にかいもく理解のできないことがわんさと進行中らしい、
と疑いを抱くようになる」(本文より)
1987年のヴォネガットの長編です。
戦争体験をベースに、しっちゃかめっちゃかになった
人生の回顧録である点においては、いつものヴォネガット。
「青ひげ」にはラストにオチが用意されているので、
いつもよりもちょっとわかりやすいヴォネガットかなと思います。
わたしがヴォネガットを好きな理由は、
奇跡的な出来事が、それが幸運であれ、その真逆であれ
いつ起きても、「ひとつの事実」として受け止める姿勢が
貫か -
Posted by ブクログ
本を読むのなら、とりわけ「小説」を読むのなら、あなたは自分自身がひっくり返っても書けないと思える本を読むべきだ。結末の予想や著者の思想・背景を探るような余裕さえ無い程、自分を振り回してくれるような本を読むべきだ。
そういった本を見つけるために本屋に行くべきだ。その際は出版社別ではなく、著者別にあらゆる出版社の文庫が雑然と並ぶ本屋を選ぶのが好ましい。あ行からわ行までくまなく検分するうちに、きっと心に引っかかったまま忘れかけていた作家の名前が見つかるからそれを手に取ってみるのが良い。そんな名前が見つからないなら、題名の良い本を引っ張り出して背表紙のあらすじを読むと良い。そんな題名が見つからないなら -
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Posted by ブクログ
ネタバレただ超絶ラッキーなクソゲス野郎が散々な目にあいながら星々に飛ばされて最後の最後で本物の愛情を感じて死んでいく話。一面的にはこんな感じだが、もっと多面的に考えさせられる。生まれながらのアドバンテージをなくすためにわざわざ自らにマイナスを課して皆平等を実現するような宗教が果たして本当に良いものか?とか。水星に残ったボアズが印象的だった。彼からしたら地球に帰ったって何も良いことないしね。だったらハーモニア達と死ぬまで一緒に居た方が幸せを感じられる気がする。火星から戦争仕掛けられて地球人が人種やら何やらを超えて一致団結させるためにすべて仕込んだラムファード、エグいよなぁ。
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Posted by ブクログ
めっちゃくちゃ期待して読み始めたけど、正直思ったより楽しめなかった。結構SF慣れしているつもりだったけど、少し自分には難しかったかも。あまり乗れなかった。
読みながら、レムの『完全な真空』にも似た読み味だなと感じた。何か面白いことに取り組んでいるエッセンスは感じるが、ドラマは薄味。
語り方、或いはSFらしく世界の設定や仕組みそれ自体が主役で、物語は、キャラクターの遍歴・帰結を描くことを通じて、主役を載せる皿としての機能が強い。
一見ファンタジーらしい題材ではあるものの、科学的な思考様式を採用することでSFに昇華している作品も幾つかあって、その幅広さは面白かった。
語り方と題材、物語 -
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