浅倉久志のレビュー一覧

  • 死よりも悪い運命

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    1991年に出版され、93年に邦訳・上製判として出版された幻の一冊がこのたび初の文庫化となった。カバーは原著の写真を和田誠氏の手でイラスト化されたもので、とても軽やかで好感度がアップしていると思う。また、上製版では割愛されていた「付録の扉のイラスト」が収録されているなど、細かな点でチューンナップが図られていて楽しい。

    肝心の本編はヴォネガット節全開で、ところどころにジョークや軽口も見られ、とても読みやすい。本文中では、15,16章あたりが特に力が入っていると感じた。しかし、全体の内容が重いので、読みはじめればページを繰る手は軽快でも、一度本を閉じると次に開くのに少々のためらいを感じる。

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    2009年10月04日
  • パーマー・エルドリッチの三つの聖痕

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    P.K.ディック 1965年作品。
    ドラッグによるトリップ具合といい、
    ぐだぐだな主人公の心象風景といい、まさにディック節炸裂! 
    ハリウッド映画のような展開にワクワクしつつ、
    ラスト間際の不可解でわけのわからない描写は独特。
    それでも一気に読める面白さはさすが!の一言。

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    2009年10月04日
  • ホーカス・ポーカス

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    ヴォネガット 1990年の作品。
    90年代に入ったヴォネガットは、もうおとぎ話を書けないほど、
    母国に対する怒りと悲しみが深くなってしまったようだ。
    これまでのヴォネガットには、どんな内容のものであれファンタジーがあった。
    偶然の産物があった。涙を誘うペーソスあふれる愛の対象があった。
    ところが、「ホーカス・ポーカス」にはそれがあまりない。
    登場人物はすべて架空だし、設定も奇想天外なのに、シリアスで、絵空事になっていない。
    どちらかといえば、その翌年書かれたエッセイ「死よりも悪い運命」や「国のない男」のテイストに近い。

    ヴォネガットのエッセイを読むと思い出すのがマイケル・ムーアの映画だ。

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    2009年10月04日
  • バゴンボの嗅ぎタバコ入れ

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    2000年に上製本として発売されていた、ヴォネガットの短編集がこのほどようやく文庫化された。
    書かれたのは1950〜60年代で、半世紀も前のもの。
    ヴォネガットが短編を生活の糧として量産していた時期があり、
    その大半はスリック雑誌に掲載された。
    かつて、短編集「モンキー・ハウスへようこそ」が編まれたが、
    そこから漏れてしまった23篇がここに収録され、短編の大方が網羅されたことになる。めでたい。

    ここに収録されているのは短編で、しかもアーリー・ヴォネガットと言うべき作品群。
    彼一流の文明批判や、どうしようもない人への「諦めと愛情いっぱいのまなざし」はすでに健在、
    さすがというべき。ただ、長編に

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    2009年10月04日
  • チャンピオンたちの朝食

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    →「スローターハウス5」の後に書かれた1973年の作品である。
    この作品には、魅力的なヴォネガットの自筆イラストが多数収められている。
    そして、段落の前には「→」がつけられている。

    →「人生は危険だよ、それは知ってる。それに、苦しみもいっぱいある。
    だからといって、まじめなもんだとは限らんよ」
    など等、キルゴア・トラウトの名言が多数収められている。
    トラウトの短編小説のあらすじも、たんと収められている。
    召し上がれ!

    →化学物質のせいで狂っているのは、ドウェイン・フーヴァーに限ったことではない。

    →その他いろいろ。

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    2009年10月04日
  • ガラパゴスの箱舟

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    1980年代当時のヴォネガットが、いかに人類に
    絶望していたかがわかります。
    どうしたってなくならない大量殺戮兵器。
    どうしたってなくならない戦争。
    どうしたってなくならない貧困や格差。
    それらすべては巨大脳のせいだ、これは自然淘汰なんだ。
    そう結論付けて笑い飛ばすしかない。
    だってそれ以外に思いつく理由がどう考えたって見つからないもの。
    広島や長崎も、ベトナムも、すべては百万年後の
    新人類への進化のための布石だったのだと思うしかない。
    そうにちがいない。(ヒロシマは「にこ毛」のための布石なのだ!)
    ……痛烈です。

    しかし、ユーモアもたっぷりあります。そこがいいところ。

    ヴォネガットの読者

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    2009年10月04日
  • 青ひげ

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    「こうした偶然の一致をいちいち真剣にとっていたら、
    だれでも気が狂ってしまう。この宇宙には、
    自分にかいもく理解のできないことがわんさと進行中らしい、
    と疑いを抱くようになる」(本文より)

    1987年のヴォネガットの長編です。

    戦争体験をベースに、しっちゃかめっちゃかになった
    人生の回顧録である点においては、いつものヴォネガット。
    「青ひげ」にはラストにオチが用意されているので、
    いつもよりもちょっとわかりやすいヴォネガットかなと思います。

    わたしがヴォネガットを好きな理由は、
    奇跡的な出来事が、それが幸運であれ、その真逆であれ
    いつ起きても、「ひとつの事実」として受け止める姿勢が
    貫か

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    2009年10月04日
  • 青ひげ

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    久しぶりに即2回目を読んだ本。
    面白かった。
    とくになにが、というわけでもないのだけど面白かったと思う。
    近代美術について知りたくなりました。

    2008,april

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    2009年10月04日
  • バゴンボの嗅ぎタバコ入れ

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    本を読むのなら、とりわけ「小説」を読むのなら、あなたは自分自身がひっくり返っても書けないと思える本を読むべきだ。結末の予想や著者の思想・背景を探るような余裕さえ無い程、自分を振り回してくれるような本を読むべきだ。
    そういった本を見つけるために本屋に行くべきだ。その際は出版社別ではなく、著者別にあらゆる出版社の文庫が雑然と並ぶ本屋を選ぶのが好ましい。あ行からわ行までくまなく検分するうちに、きっと心に引っかかったまま忘れかけていた作家の名前が見つかるからそれを手に取ってみるのが良い。そんな名前が見つからないなら、題名の良い本を引っ張り出して背表紙のあらすじを読むと良い。そんな題名が見つからないなら

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    2009年10月07日
  • 青ひげ

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    ラボー・カラベキアンというアルメニア移民の老人が、自伝を書きながら、執筆中の現在についても日記のような感じで語っていくのが、エピソードごとに過去と現在が入り組んで語られます。なんでタイトルが『青ひげ』なのかは、じゃがいも納屋に隠して決して誰にも見せないでいたモノ(最後にはなんだったかわかります)があるので、そのことをペローの書いた原典『青ひげ』に重ねたのでしょうか??この主人公は別にイイモノでもワルモノでもなかったです。

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    2009年10月07日
  • デッドアイ・ディック

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    2007/12 新刊本屋で買う。東京行きの新幹線で、半ば以上を読む。まだ、時系列がてんやわんやじゃない方。

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    2009年10月04日
  • ガラパゴスの箱舟

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    ヴォネガットによる、新しいノアの箱舟。
    軽妙な文体で、皮肉たっぷりに描かれた人間の愚かさが、もどかしくもアホ臭い。
    ただ、ちょっと落ちが弱い気がしてならないなぁ…。

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    2009年10月04日
  • プレイヤー・ピアノ

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    読みやすいヴォネガット入門編かな。酷評の対象にされがちな本作だけど、彼の気持ちが素直に表れてるんじゃないかと。
    失敗が見えていても壊さなければならない。
    そんな人間への優しさを感じる一冊。

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    2009年10月04日
  • タイムクエイク

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    2001年2月13日、時空連続体に発生した異常―タイムクエイクのために、あらゆる人間や事物が、1991年2月17日へ逆もどりしてしまった。ひとびとはみな、タイムクエイクの起きた瞬間にたどりつくまで、あらためて過去の行為をくりかえさざるをえなくなる。しかも、この異常事態が終わったとき、世界じゅうは大混乱に…!SF作家のキルゴア・トラウトやヴォネガット自身も登場する、シニカルでユーモラスな感動の長篇。

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    2009年10月04日
  • アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

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    ネタバレ

    ●難しかった点
    ・SFだけど説明が最小限で読むのに時間がかかった
    ・イジドア(とリック)の前に現れたマーサーは現実?

    ●生きた動物がステータスになる世界
    ・山羊をアンドロイドに殺されたことでリックがどれだけショックを受けたかの表現→自殺未遂
    ・リックを正気に戻した希望→絶滅したはずのヒキガエルを発見

    ●【テーマ】人間らしさとは何か?
    ・検査のくだりでリックがアンドロイドなのではとヒヤヒヤした
    ・共感する能力を求めて人を殺したロイ→手段を選ばず手に入れようとする欲が人間のよう
    ・リックにとって最も大切だと思う山羊を殺したレイチェル→人間らしい複雑な感情のあらわれ
    ・アンドロイドを殺したリック

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    2026年07月18日
  • あなたの人生の物語

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    実際これがTHE・SF(空想科学小説)って事なんだろうけど、理系のワードが非常に多すぎて学のない私にはだいぶ読みにくいと感じました。

    と言ってもすごく読みにくいのは短編「あなたの人生の物語」までで「七十二文字」からはそこまで難しいということもなく、物語について色々考えることができたり、ハラハラワクワクを素直に楽しめました。
    とくに「地獄とは神の不在なり」と「顔の美醜について」は科学よりも宗教や現代の問題意識に焦点がある話なので楽しめました。

    因みに私はカリーアグノシアは反対派です。

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    2026年07月17日
  • ヴァーチャル・ライト〔新版〕

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    1994年に書かれたギブスン橋三部作の第一部。大震災のあった近未来、廃墟からスラム街と化した金門橋が舞台の一部。スプロール三部作に比べて、サイバーサイバーしていない。もちろん電脳空間は存在しているが、スプロールのそれがプロフェッショナルの戦場だとすれば、こっちはより現実に近い身近な場所になっている。「俺の想像の翼についてこれるやつだけついてこいよ」的スプロールに比べて、もう少し読者に優しい気がする。

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    2026年07月17日
  • アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

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    ネタバレ

    本物の生命が希少・高価となったディストピアで、アンドロイドは管理から外れれば隠蔽される存在。共感はマーサー教として制度化されるが、やがてそれも捏造と暴露される。それでも人々は虚構の価値観の中で生き続ける。読後感は不思議と暖かい。Audibleで耳読。

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    2026年06月29日
  • タイタンの妖女

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    スローターハウス5よりストーリーがわかりやすかったです。たまたま過去も未来もわかる全能者になったラムファードによって人生が翻弄され続ける主人公マラカイの悲喜劇。あとがきで太田光さんが書かれているように、人間には人生の選択権があるのかを考えさせてくれました。好みは分かれると思いますが、個人的には少し退屈なストーリーでした。

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    2026年06月26日
  • あなたの人生の物語

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    端正で抑制的な筆致で綴られたSF短編集。物理学や言語学などの専門的知見が物語の骨格にあり、基礎知識がないと難解に感じる。

    表題作『あなたの人生の物語』では、サピア=ウォーフ仮説やフェルマーの最小時間の原理といった専門概念が使われている。それらを絡めながら、「あらかじめ定められた未来を受け入れ、自らの運命をいかに愛し、生きるか」という決定論と自由意志をめぐる問いが、余韻を残す。

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    2026年06月04日