あらすじ
時空を超えたあらゆる時と場所に波動現象として存在する、ウィンストン・ナイルズ・ラムファードは、神のような力を使って、さまざまな計画を実行し、人類を導いていた。その計画で操られる最大の受難者が、全米一の大富豪マラカイ・コンスタントだった。富も記憶も奪われ、地球から火星、水星へと太陽系を流浪させられるコンスタントの行く末と、人類の究極の運命とは? 巨匠がシニカルかつユーモラスに描いた感動作。
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Posted by ブクログ
いままで出会った中でいちばん、なんというか判断に困る物語だった。
ユーモラスなのか哀しいのか、感動的なのか単なるドタバタ劇なのか。教訓めいた説話のようでもあり、そのじつ何の意味も読み取れないほど難解だった気もする。
運命と自由意思、そういったものは確かにテーマの一つではあるのだろうが、それだけでこの物語全てを片付けることは到底できない。
ただ確実なのは、他のどんな物語よりも奇想天外で荒唐無稽だったこと。陳腐な表現だがオンリーワン、そうとしか言い表せそうにない。
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これまで読んできた本の中でもトップクラスで難解だった。
『この世界は全て何者かに決定づけられているのか?それらの運命から自由な意思は存在しないのか?』というのが本作のテーマ。本作には、その絶対的な力を持つ男ラムファードが登場するが、彼は主人公コンスタントの行く末を最後まで言い当てることはできなかった。
この事から、作者自身も、本作のテーマに明確な答えは持っていなかったんじゃないかな。コンスタントには救いもなく不遇だったけど、最期に報われてよかったと思う。
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太田光が人生でいちばん大事な本として紹介しており興味を持った。
はじめに主人公がこれからたどる道筋を提示されるが、どのようにそれが達成されるのか全く予想がつかず、とても面白かった。
自由意志に関するニヒリズム的な解答から、人類の歴史の隠された真実まで描く大きな規模のSFだが、等身大の人間のおかしみを通して語られるため、とても読みやすかった。
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はじめてのSF小説でしたが、楽しく読めたと思います。わからないことがあってもそのまま読み続けたら、どんどん繋がっていってさらに読みたい気持ちがあふれていきました!
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私では理解できないところが多かったので、YouTubeやWebサイトで不明点を補完しつつ理解を進めました
他者からの解説を見て、継ぎ接ぎですが、理解を進めた上で、思ったことを書き留めたいと思います
このお話は作者であるカート・ヴォネガットについて知る必要があると感じました
作者の伝えたかった事は、要約すると
「地球人の行動は全て決められており、トラルファマドール人の大したことのない出来事のために利用されていた
だが、自分自身の身近で起こった出来事や身近な人の存在は、自分の人生において大切であり、大きな意味があるという事」
ではないかと想像されます
マラカイの人間関係から考慮すると、そんな気がします
私の感想のここだけを見ると「なぁーんだ、大したことじゃないんだ」と感じる方も多いと思います
しかしこの作品を理解するためには、上記の通りカート・ヴォネガットについて知る必要があると思います
この方と私たちの大きな違いは生きてきた時代にあると思います
現代を生きる私たちだからこそ、身近な物ほど有り難みが薄く、当たり前の事のように思ってしまっているのであって、カート・ヴォネガットの時代に身近な存在というのはとても貴重な物だったのではないでしょうか
「国のため」
このような大きくて、身近に感じるにはなかなか難しい存在のために生きねばいけない時代だったのではないでしょうか
「何のために生きているのか」
このようなことを考えた結果、生み出された作品ではないかと想像します
第二次世界大戦を経験し、数々の悲惨な経験があったからこそ、身近な存在への大切さに気づけた人の作品だと、私は感じております
私なりの感想なので「正解」ではなく、誤読もあると思いますが、私自身が感じた事を書き留めました
より深い理解のために、同作者の「スローターハウス5」やドレスデン爆撃についての歴史書を読んでこの方が体験してきた悲惨な歴史の出来事を知った上でもう一度読みたいと思った本でした
Posted by ブクログ
とても良かった!
SF吸いてえ〜〜!!欲が満遍なく満たされた…
読んでいる間はどうしてそんな酷い事するの!?みたいな気持ちだったのだけれども、
読み終えた後は爽快感がすごい。
次から次へと起こる予想だにしない出来事と、ハードSFな世界観にぐんぐん引き込まれた。
正直とても疲れたけども、もう一度読みたい。
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Audibleにて。
「私を利用してくれてありがとう。たとえ、わたしが利用されたがらなかったとしても」
「僕に命の贈り物をありがとう」
登場人物たちの別れに際しての言葉。感謝により締め括られた別れの時。いかんともしがたい運命に翻弄されつつも、人生の価値を見つけられたという何よりの証左だろう。美しい物語だったな。
トラルファマドール星人が辿った歴史は、哲学を失った生命体の末路だと思える。目的のための争いではなく、争うことが目的となっていく。暇を弄ぶようになった人間に、ろくなことは起こらない。
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この世の原理はカルヴァンの予定説的摂動()であり、然もその予定は神ならざる力に拠りもたらされる!みたいな。
予定説のヨの字も出てこないんですけど、これは予定説です。
唯一、作中のハーメルンの笛吹き男的登場人物のモデルがF・ルーズヴェルトてのが気に入らなかったけど、面白かった!
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ストーリーとして、私には感動はあまりないけど、
この世界観を作ったのが1959年だということが驚きです。SF好きな方には、是非読んで欲しい作品
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3年越しでようやく読み終えた。中盤まで読んで放置してたので最初から読み返したよ。
とてもスケールの大きな話ではあるのだけど、読み終わって身の回りの人を大切にしなきゃなあ、というとても平凡な感想を持つ平凡な私。
キリスト教的な神を理解していないので、神に対する考え方というか皮肉が肌感覚で感じられない面がある。
グッドラックという挨拶に、神が関わってくるのだなあと勉強になった。確かに才能に恵まれた人を、ギフテッドって言ったりするのは神の存在が根底にあるのですね。
Posted by ブクログ
カートヴォネガットの独特の世界観が存分に堪能できる。
冒頭から難解な用語が飛び出してくるのでとっつきにくさはあったが、人の実体化を見物するという特異な物語の書き出しから引き込まれる。
荒唐無稽なストーリーかと思いきや、伏線が張られており、綺麗に回収されていく。
作者の死生観、宗教観などがユーモア溢れる文章で表現される。
Posted by ブクログ
最初は「これは本当に名作なのか…?」と思ってしまうほど、登場人物には共感しづらく、物語の展開にも乗れなかった。でも、終盤で一気に印象が変わった。まさか最後の2割で泣かされるとは!
皮肉で満ちた世界のなかに、じわっと人間の強さや優しさが浮かび上がってくる。最後まで読んで初めてわかる“仕掛け”があって、そこに心を揺さぶられた。読み終えてから物語の構造を思い返すと、いろんなことがじわじわ効いてくるタイプの作品。
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この世には運のいい人間と運のわるい人間とがいる。それは偶然性であり、たまたまだ。
人生に目的などない。あるとしたら、自分の中にある真実に気づくことだ。
人生の意味を自分の中に見つけ出す方法を知っている。これは運がいいことだ。
これまでの人生でやった善いことを、たったひとつでいいから話せること。幸運といってもいいだろう。
今ある幸せに気づけること。まずはそこからだ。
運が悪いってのは、"ひとつながりのアクシデントの犠牲になった"ってだけのことだ。
そんなときは、"徹底的に無関心な神"の教会で祈ることだ。
自分の中にある真実に気づけないと、果てしない無意味さの悪夢にうなされることになる。
一つ運が悪くなる行いをあげるとしたら、流れに逆らうことだ。
あらゆる推進力、世界を無から創りあげたもの、それが"そうなろうとする万有意志"だとしても、"Don’t resist “ けっして逆らうな。
人生を終える前に、「誰にとってもいちばん不幸なことがあるとしたら、それは誰にも何事にも利用されないことであり、人生の目的は、手近にいて愛されるのを待っているだれかを愛することだ」と思えたなら、幸運な人生だったってことだ。
Posted by ブクログ
とある大富豪のお話から宇宙を駆け巡るところまでゆくドタバタのストーリー。人間の自由意志の存在をモチーフの一つにしながらも、どこかフワフワとした読み味を残す独特な味わいの作品だった。本編の面白さもさることながら太田光さんの解説も素晴らしかった。
Posted by ブクログ
かなり面白かった。
まず本の中に本が登場する入れ子構造が凄く印象に残った。
また情景描写も美しいし、頻出するラテン語や英語も文学的で翻訳小説読んでるなーって感じで楽しかった。
火星の記憶除去手術とアンテナは恐ろしかったし、「レンテッド・アテント・アテント・アテント」のリズムで行進操縦されるのが印象的で面白い。
水星ではハーモニウムという美しい生き物の描写も良くて、アンクの生き方とボァズの生き方について考えさせられた。
全体を通して、ラムフォードの苦しさとか上位存在に捨て駒にされる虚しさとか凄く感じられた。
また、作者はキリスト教が大嫌いなんだなと思ったが、私もその気持ちに共感できる部分があり、徹底的に無関心な神は割と好きだった。
ただ、ハンディキャップ主義の宗教観は異常過ぎて面白かった。
全体を通して文学的でもあり哲学的な深さもあって、すごく面白い小説だった。
引いた視点で人間とは何か、神とは何か、運命とは何かについて考えられた気がする。
Posted by ブクログ
「愛されるのを待ってる人を愛することだ」
私は奇妙も奇妙な宇宙旅行をしてきた。
水星で見るハーモニウムの透き通る藍玉色や、火星での無機質な軍隊と火星人の正体、タイタンの美しさ。
滑稽だけど時に優しい本。
頭の中で映像化する時、度々宮崎夏次系の絵になる滑稽さ。
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友人のおすすめで読みはじめましたが、丁寧に考えながら読んでいたんですが、言葉が自然と入ってこない為大変でした。
物語の中で沢山、やりきれない悲しさやどうにもならない虚しさを感じていましたが、最後は良かったと思える終わり方だったのかなと、。
また数年後にこの本を読んだ自分は全く違う読後感を得られるのかなぁ、。
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超SF!うーん、やっぱり、翻訳されたものだと、しっくりこないんだなあ。なんか、作者と文化が違うから、「?」ってなりやすかった。ま、それは置いといて、設定・内容はバリ面白かった!すごいなぁ。人間を客観的に最初、書いていたのも、印象的だったなあ。ふむ。
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没落貴族がキャトルミューティレーションされ、仮面ライダーの如く宇宙戦争に巻き込まれるSF小説です
火星、水星、土星と拉致される様は、どの惑星も美しく宇宙旅行気分になれました
ロボトミー手術を受けた没落貴族の、少年時代から老衰するまでを描かれています
ヴォネガット作品を初めて読むのですが、宇宙人のモノローグが上手でした
謎の固有名詞がほぼ出てこず特有の倫理観が伝わりやすかったです
洗脳前後の没落貴族のモノローグも、本当に別人の様子が伝わってきてすごかったです
一番好きなパートは、火星に拉致された人々が指紋鑑定によってどのような地球人だったか答え合わせをする場面です
軍曹がふつうの警備員だったり、教師がカルト宗教の末端信者だったり、友達のいないナードだったり、指名手配犯だったり、正体が明るみにでるのは読んでて楽しかったです
地球人のまま人生を終えるより、火星人として矯正されていた自分のほうが、はるかに優れていた人生を過ごしていたのではないかと総括していたのは、残酷かつ美しいなと思いました
地球の歴史が、宇宙人たちのチャットに利用されてきたログだった解釈されていて面白かったです
地球がSNSアプリみたく使われていて、人々の運命は1つモジュールでしかなかったのは豊かな陰謀論でした
惑星を行き来していますが話が散らからず、読みやすいSF小説でした
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81冊目『タイタンの妖女』(カート・ヴォネガット・ジュニア 著、浅倉久志 著、2009年2月、早川書房)
初出は1959年。1972年に単行本、1977年に文庫本として翻訳され、本書はその文庫本の新装版である。爆笑問題の太田光は予てからファンを公言しており、本書に後書きを寄せている。
荒唐無稽なSFだが、その中で人間の自由意志や運命についてがシニカルな語り口で展開される。翻訳が古いこともあり要点が掴みにくいのだが、エピローグは非常に感動的。
〈「だがな、天にいるだれかさんはおまえが気に入ってるんだよ」〉
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1959年に書かれた古典的SF小説です。
ストーリーがあちこちに飛ぶので難解なところがありますが、最後につながるので気にせず読むと良いと思います。
でも、思っていたものとは違っていて、全体的には難解でした。
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何十年ぶりの再読。
一種独特の世界観で唯一無二の小説だと思う。
個人的にはスローターハウスが好きだが、この本もいいね。
25/09/02 35冊目
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なんかあちこち場面が飛ぶので楽しいが、これだけ長い割に、あったことはそんなになかったように感じた。かといって無駄にダラダラ書かれてるわけじゃないし不思議な感じ。
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難解なSFと言ってしまえばそれまでだが、ザ・SFという読み応えがあった。
決定づけられた運命を旅する主人公を通じて、自由意志は存在するのかという問題を考えさせられた。
この自由意志という命題にはテッド・チャンの作品にも通ずるところがある。
Posted by ブクログ
本作は解説にあるように時系列が散らばっていたり、話の途中で場面が急に変わったりと、全体としてまとまりのない印象を持つかもしれない。また、ある場面に出くわし、謎の展開に面食らい、困惑するかもしれない。しかし、本作はそのような不可解な描写とそのときの受け取り方が大事だという。
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ワイドスクリーン・バロックとな。
こないだ読んだSFもこんな感じだったからその分類かな。
マラカイコンスタントと言うイケイケ金持ちプレイボーイのスペースワイドな一生。面白いとか思える余裕がないくらい全く筋が読めない。なんだけど、散りばめられたキーワードはきっちりと回収して終わる。
何を読まされたんだ?
と呆然とする読み心地。
Posted by ブクログ
SF界を代表する作家の一人、カート・ヴォネガット(・ジュニア)の代表作の一つ。ずっと積まれていたのをようやく崩すことに。
ヴォネガット作品は『スローターハウス5』しか読んでいなかったが、読んで分かるヴォネガット流SF。過去、現在、未来を同時に観測する力、それによって頻繁に転換するシーン、トラルファマドール星人...etc。
波動存在となったウィンストン・ナイルス・ラムフォード、地球・火星・水星・土星の衛星(タイタン)を巡るマラカイ・コンスタント(=アンク)、ラムフォードの元妻ビアトリス、彼女とマラカイとの間に生まれた子クロノ、トラルファマドール星人サロらの立ち位置、関係性、目的等を整理出来ていないと、物語を理解するのにかなり苦しくなる。自分はこれらをうまく整理することが出来ず、この作品が持つ魅力を存分に味わうことが出来なかったように思う。なんとも悲しい不完全燃焼感・・・。