【感想・ネタバレ】タイタンの妖女のレビュー

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ネタバレ

 この作品が何を描きたかったのかを考えてみると、コンスタントに本当の愛を知ってもらうための物語なのではないかと思った。「天にいるだれかさん」は、コンスタントのことが好きだという記述が出てくるが、作品の最後がその言葉で締め括られていて、様々な困難は「天にいるだれかさん」がコンスタントに本当の愛を知ってもらうために与えたものではないかと思った。
 極端な思想や謎が多くある作品で考えさせられた。

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2023年08月08日

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ネタバレ

面白い。
人は生きる限り、使命やら目的やらを見つけねばならないが、それが全くアホみたいなものの力によって動かされていたとしても、耐えられるだろうか。
「それでも良い」と言えるような意義を、私は見つけたい。

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2022年12月26日

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ネタバレ

遅読な自分は半年くらいかけて、ちまちまとこの小説を読んだ。岡田斗司夫のオススメで、太田光の愛読書という触れ込みで興味を持った。
全体の構造を把握しながら一気に…という読み方よりは、毎日5ページずつくらいの方が、次から次へと展開していくこのストーリーを無理なく楽しめたかもしれない。まるで短編集を読んでいるみたいに次々と物語の筋が移っていく。そして最終的には1冊の本が総体として「人生とは何か」ということを仄かに伝えてくれるような感じがあった。
物語の細部は思い出せないけれど、得体の知れない異星人が宇宙の果てに「よろしく」と伝えるために、これまでの地球の歴史を操作してきたというとんでもない発想は、どこか皮肉めいているようで、深い愛があるような感じがしてよかった。我々の存在理由はそんな大それたものではない、けれどどこかの誰かの役に立っている、そんな感覚が心地よかった。
大金持ちのコンスタントの生涯が踏み躙られ、未来も何もかもを手にして新しい宗教を立ち上げようとしたラムファードの生涯も踏み躙られる。そんなキャラクターたちが最終的には「誰かに利用されることが最大の幸福」というところに辿り着く、その一連の流れが美しかった。
今までSFと言えば、「こんな世界だったら人類はどうなる?」といったことを思考実験するようなもののイメージが強かったので、本書のような宇宙冒険物は新鮮で面白かった。が、当初、予期していたような話の内容ではなかったので、ちょっとしっくりとは来ていない。しばらくはこの手の小説は読まなくてもいいかな。

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2023年11月01日

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ヴォネガットらしくケレン味に満ちた名作。
あらすじでは「シニカルかつユーモラス」と言われていたけど、素直に「趣味が悪い」とか書いてもいいんじゃないです?まぁ、それを面白く読ませるのがヴォネガットの持つ魅力なわけなのだけど。

内容については、解説で太田氏が殆ど語ってしまっているかも。
登場人物の全ては誰か(何か)に利用され、地球の文明すらメッセージを送ることに使われていた。ビーもコンスタントもラムファードに、ラムファードもサロの母星に、サロもたった一言のメッセージを伝えるためだけに。
そういった階段を上っていくと、最終的にあらゆるものは”そうなろうとする万有意志(UWTB)”のために存在することになる。けれどこのUWTBすら、サロの宇宙船のエネルギー源に使われてしまう。使われる/利用されるというのは連環構造なのだな(だからラムファードは神を否定しているわけだけど)。

だから「私を必要としてくれてありがとう」というのは、その繋がりに感謝することなわけだし、それは使われる/利用されるというより”愛する(必要とする)”とか言っちゃうほうがしっくりくるかもしれない。
ある意味ヴォネガットらしい、けれどまっすぐな愛の話だった…のかも。

『ガラパゴスの箱舟』で警戒してたけど、意外と「シニカル」で収められる範囲の作風だった。オススメです。

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2023年08月19日

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少しとっつきにくいところがあるがよちよちと読んでいくと読まずにはおれない気分にさせてくれる本だった。

人類の究極の目的がわかってしまった時の悲哀が感慨深い。それでも…と思わずにはいられない。

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2023年02月07日

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この世の原理はカルヴァンの予定説的摂動()であり、然もその予定は神ならざる力に拠りもたらされる!みたいな。

予定説のヨの字も出てこないんですけど、これは予定説です。

唯一、作中のハーメルンの笛吹き男的登場人物のモデルがF・ルーズヴェルトてのが気に入らなかったけど、面白かった!

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2023年01月06日

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皮肉とユーモアに満ちたSF珍道中
聖書の文章から頭文字を取って株券を買うという、信心深くも超適当な投資で莫大な財産を築いた父を持つ、大金持ちのダメダメドラ息子が、ある日自分の人生の行く末を聞かされ、抗うも結局は逆らえずに、予言通りの波瀾万丈な人生を歩む羽目になる…
めちゃくちゃなあらすじで、細かいディテールは悪ふざけの嵐(聖書株券とか、火星軍の行進の歌とか、そもそも火星軍とか…)なんだけど、そこがたまらなく癖になってグングン読み進めていってしまう本。
宗教や、戦争がいかに超小規模な個人のための利益に操られているか、という痛烈な風刺として読んでいたら、最終的に、人類が今まで歩んできた歴史すらも遥か遠くの宇宙人の個人的な通信のために使われていた、という衝撃的な結末に後ろ頭をハンマーで殴られたような気分になった。
オイディプスのような、逃れられない運命という神話的な大枠に、さらにそれを覆うようなオチが用意されていて、スケールの巨大さに呆然とする。
デカい話と細部のくだらない描写が同時に存在しているところが、たまらなくいい。
そして人間の、何万年の歴史を巻き込んだ巨大な物語が、徒労としかいえない結末を迎えるところも、虚しくてとてもいい。
人生には意味があると信じ、目に映る全てに意味を見出そうと躍起になり、それを解き明かそうと絶えず脳を動かし続けて気が狂いそうになっているとき、この小説を読むと、ふっと肩の力が抜けて、立ち止まれるきっかけになると思う。

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2022年09月28日

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カート・ヴォネガットの文体は、表紙の和田誠さんのイラストのイメージそのままだった。全体的にコミカルだけど、精読するほどはぐらかされてしまう。掴もうとするほどヌルッとウナギのようにすり抜ける感じ。この表現、どこまで意味があるのだろうか?コレ、必要?と感じる未回収な言葉を乱発しつつも、登場人物たちの意味深なセリフで主人公と読者を撹乱し、カート・ヴォネガットの意図する方向へ導いていく。そうだ、この構図(手法)は、村上春樹さんの初期作品と似ている。独特なリズム感がクセになる人は居るだろう。人間社会に低通するバカさ加減を風刺するシニカルさも村上春樹さん(ハルキストも?!)や爆笑問題の太田光さんのような人たちを魅了し続けるのかもしれない。

本作のテーマは多岐にわたるが「自由意志」と「存在意義」について言及したい。主人公マラカイ・コンスタントは自分の意志で宇宙の大冒険をしてきたが、実は神のような存在のラムファードに導かれていたことが終盤で明かされる。でもその万能の神ラムファードもトラファマドール星人に導かれていたことが判明する。それだけではない。人類も宇宙船の故障でタイタンに足止めを余儀なくされていたサロを助けるためのメッセンジャーの役割を担わされていたり(万里の長城やストーンヘンジも伝言メッセージだった!)、修理部品を作るために進化させた文明だったと言われて、読者もこの「マトリョーシカ」の入れ子構造に組み込まれる。さらにさらに今はトラルファマドール星人は滅亡して存在しないときた。物語の目的の出発点が不在なのだ。まるで玉ねぎの皮を一枚一枚向いたような話じゃないか。そしてトラルファマドール星が滅亡した理由もドキリとさせられる。高尚な目的を持って発明を重ねてきたトラルファマドールの人々がサロのような有能な機械を作り、機械にもっと高尚な目的を探索させたところ、「生物が高尚な目的を持ち得ない」と知らされ、幻滅し、滅亡するまで殺し合ったというのだ。「人類最後の発明」と言われる汎用性人工知能の誕生を前にこの風刺は痛烈過ぎる。

こうして「受動意識仮説」のような自由意志のフラクタルの先に自由意志どころか、存在意義さえも消えてしまった、という話だった。

これは喜劇であり、悲劇である。

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2023年09月24日

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