浅倉久志のレビュー一覧
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本書は、60年代に登場したニューウェーブSFを代表するロジャー・ゼラズニイの中・短篇集です。
スランギーで若々しい文体に目を向けがちですが、全編を通じて詩的な表現がみられ、粗くも繊細な二面性を感じられる文章でした。
なかでも「聖なる狂気」は、物語自体は時間の逆行をモチーフにした平凡な内容なのですが、その時間が逆行する様を見事なまでに表現しており、その巧みな表現だけで楽しめる一作です。
その他面白かったのは、「伝道の書に捧げる薔薇」と「この死すべき山」。
特に前者は、やはり最後がねぇ…この作品に限らず「十二月の鍵」や「このあらしの瞬間」も終盤のどんでん返しが印象に残ってます。 -
Posted by ブクログ
マイクルクライトンの1980年代に書かれた医療ミステリー。暴力的なまでのてんかん患者を、コンピューターによっててんかんを制御する手術を行い、患者が暴走してしまうというストーリー。
本の主題は、ホラーというよりは、精神をコンピューターで制御することの有無という部分に置かれている気がする。話的にはごくごく単純な特に伏線もないため、さくっと読めるのではないかと。
1980年代のIBMのホストコンピューターの描写などは、見た事無い世代なので(旧型の使われなくなったブツは見た事ありますが)、当時の描写も時代を感じて面白い。
ただ、今現在にも通じるものがあると思う。
今なら、もちろんコンピューターを小型化 -
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ネタバレ今度は画家の話
楽しみにしている作家の(けっこう)最新作。1987年である。戦争体験を持つ画家が自らの人生を振り返るというスタイルで書かれる。細切れに小さなセンテンスが区切られていて、あっちこっちへと時間がいったり来たりするものの、絶妙のタッチで読者が混乱することがない。多少冗長とも思える350ページの長編もスムーズに読むことができた。
本来自分の死後にのみ公開する予定だったジャガイモ小屋に残した最後の作品とはどんなものなのか? このテーマを最後まで引っ張りながら、ラストで一気にその作品を見せる。主人公である画家がそれを公開する気になる部分といい、公開したときにとかれる自らに課した呪縛 -
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挿絵入り奇作
ヴォネガット作品の定番キャラクターSF作家キルゴア・トラウトを軸に、富豪(?)の主人公が発狂するまでを描く。
いたるところで発狂している文面、作者自身の挿絵、時間軸が交錯するストーリーといかにもヴォネガット・タッチ。初めて読むととまどうだろうな。
メインストーリーよりも、むしろ作中の挿話として扱われるトラウトの(もちろんヴォネガットの)SF小話が圧倒的に楽しい。
何度かヴォネガット作品を読んでいるので、この辺で主な作品の順番を整理しておきたい。斜字は既読、太字は今後の予定、赤字はお勧めである。
プレイヤー・ピアノ(1952)
タイタンの妖女(1959)
猫のゆ -
Posted by ブクログ
シンプル&スピード
原題は BINARY。「おたがいに作用しあう二つの異なった要素からなるシステム」のこと。作中では二重化の意味にとらえればいいだろう。つまり、どんでん返しがあるということ。
さすがにコーマの映画監督までしたクライトン。本作はジョン・ラングの名前で発表された初期作品だが、SF色はないもののシンプルさとスピード感は天下一品。
素材が現代の話だからか、尻切れトンボの感じはほとんどない。毒ガステロの犯人とそれを追うGメンの心理戦が筋のメインになる。犯人は先に死んでしまうが、相手のとの戦いを趣味とするGメンが事件を解決する。いやぁ、楽しい作品だった。 -
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ネタバレ大人のいる「十五少年漂流記」。ソ連からの核攻撃をシェルターでやり過ごした合衆国の一家族のサバイバル。中盤からは、未来社会で生きるタイムスリップSFにがらりと変わった。
冷戦や核戦争、人種についての話題が登場するのも、1960年代に書かれた小説ならでは。前者については、そういう時代だったでスルーすることができても、後者については非常に鼻に付いた。数千年後の未来社会でまで、人種という下らない差別で生き方に差が出るもんか。豊田有恒「モンゴルの残光」でも読んでろ。
ハインラインは合衆国が大好きだね~。主人公のおじさまが「アメリカは歴史のなかで最良の国だ」とか言っちゃうし。ねーよw黒人のハウスボーイを雇 -
Posted by ブクログ
温暖化が進み、命に危険が及ぶほど住みづらくなってしまった地球。人類は生き残り策として火星への強制移住計画を進めていたが、開拓地の火星は何の楽しみもない荒涼たる砂漠が広がるだけだった。強制的に移住させられた貧民が心の支えとするのは、地球での暮らしを再現できるドラッグ「キャンD」。このドラッグを非合法に、且つ独占的に販売していたP・P・レイアウト社の社長レオ・ビュレロに最大の危機が訪れる。謎に包まれた実業家パーマー・エルドリッチが、新種のドラッグ「チューZ」を携えて外宇宙から帰還したのだ。エルドリッチの販路拡大を阻止すべく、レオの意を汲む予知能力者バーニー・メイヤスンが火星に乗り込むが・・・。
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Posted by ブクログ
鬼才リチャード・リンクレイターがアニメ映画化した2006年に買ったはいいが、3分の1も読めずにほっぽらかしてあった。(映画も観たかったが、機会を失った)
通読して思ったのは、一字一句理解しようなどと思わずに、酔っぱらいのたわごとを受け流す感覚で読めばよかったのだということ。しょっぱなからして、ドラッグ中毒者の悲惨な幻覚描写。主人公のボブ・アークターだって、おとり捜査官とはいえ、ヤク中だ。同じくヤク中のダチ公どもとの会話ときたら、とことんナンセンス。信用できない語り手という言葉があるけど、ヤク中の語り手ほど信用できないものがあるだろうか?
共感も同情もできないまま、読み進めるのだが、しばらく -
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