浅倉久志のレビュー一覧
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ネタバレ現代版の異邦人。
新自由主義社会において、人類愛を語ることは異端なのか。
カートボネガットのシニカルな問いかけがそこにはある。
異常という日常。
ボネガットの皮肉に満ちた文章の中で、
彼の純粋で無垢な人間愛が浮かび上がってくる作品。
「あんたがローズウォーター群でやったことは、断じて狂気ではない。あれはおそらく現代の最も重要な社会的実験であったかも知れんのです。なぜかというと、規模は小さいものだけれども、それが扱った問題の不気味な恐怖というものは、いまに機械の進歩によって全世界に広がってゆくだろうからです。その問題とは、つまりこういうことですよーいかにして役立たずの人間を愛するか?」 -
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お金持ちは富を分配しろ!って庶民は思うけど、
本当に人のために尽くしたらどんなことになっちゃうのか・・・
中流階級以上にはキチガイと思われ、
貧しい人々には神と崇められ、
それでも本人は首尾一貫しているのが滑稽であり、切なくもある。
しかし最後の妻に会いに行くところからの超展開はすごかった。
え、火事?え、テレポート?記憶喪失?え、ケンカ?いつの間に???
ぜんぜんついていけなかった(笑)
主人公もなかなかついて行けてませんでしたが。
・・・ということは、狙い通りの効果だったのかもしれません。
彼のやったことは最後に他者の言葉によって説明され、そうしてようやく周りが理解できる意味を持つ。
だけどそれって本当の意味なんだろうか。
結局、芯の部分は誰にも理解されないまま、主人公は自分を貫き通したのだと思う。
他人なんて気にせずに自分の道を歩めという意味ではなくて、
他人を気にせず自分の道を歩めばどう見られるのか、どう見えるのか、
という皮肉なのかなあ。
全体的にシニカルな印象でしたー。
いちおSFになるのかな?
文章はフィリップ・K・ディックより素朴で読みやすいようだけど、
実は結構深くてイジワルでした。
いやーSFって本当にいいものですね! -
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さすがはカート ボネガット、すごく面白かった。
ガラパゴスを舞台に起こる人間の進化(あるいは衰退)。
ガラパゴスの自然環境にしろ、動物の生態にしろ、サイエンスに忠実で、科学的な裏付けがあったり、かなり練り込まれて作られたようだ。かなり読み応えあり、皮肉たっぷり、笑いあり、涙?あり。
要約すると、
箱舟に乗ってやってきた人類は、ガラパゴス諸島で、独自の進化を遂げます。巨大脳は必要なくなり、云々、、、。
物語自体はそんなにハッピーではないけれど、悲惨さの中にもどこかユーモラスな雰囲気もして、それがやっぱり読み手を飽きさせないところなのかもしれない。
登場人物はいたってまじめに悲惨な状況に陥っているのに、なぜか笑えてくる光景だったりする。 -
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「第二次世界大戦ののち、わたしはしばらくシカゴ大学に通った。人類学科の学生であった。当時そこでは、人間個々人のあいだに(優劣の)差異というものは存在しないと教えていた。いまでもそう教えているかもしれない。もうひとつ人類学科で学んだのは、この世に、奇矯とか、性悪とか、低劣といわれる人間はひとりもいないということである。わたしの父が亡くなる少し前に私にこういった。「お前は小説のなかで一度も悪人を書いたことがなかったな」それも戦後、大学で教わったことのひとつだ」
(本書あとがきより、引用されていたヴォネガットの言葉)
ここにヴォネガットという作家の「素」とでも言うべきものが凝縮されている。悪人のいない世界。個々の優劣など存在しない社会。その中で巻き起こる、愚かしく滑稽で、愛おしい出来事の数々。私は確かに、そういったものに惹かれてこの人の本を読み続けて来たのだった。そんなことを思い出させてくれる読書でした。是非一度。出来れば「タイタンの妖女」とか「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」を読んだ後に。 -
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老年の画家ラボー・カラベキアンのもとにサーシ・バーマンという女性作家が転がり込む。カラベキアンは彼女のすすめで自伝を書き始める。自伝そのものの部分と、自伝を書いている過程でのバーマンとのやりとりなどが交互に記されている。
ヴォネガットのいつもの人をばかにしたような文章は影を潜め、比較的淡々と綴られている。物語に抑揚がなく、どこに行き着くのか分からない自伝を読み進めるのは意外ときつい。しかし、最後のシーン。ジャガイモ貯蔵庫に隠しておいたものをバーマンに公開するところに至って、話は感動的な方向に大きく舵を切る。最後まで読んで、読んでよかったと思える。 -
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SFもあり、ちょっといい話風な短編もあり、の短編集。
序文などにもある通り、テレビが普及する前の時代、雑誌の読み物が一般的な娯楽として広く楽しまれていた頃に雑誌に掲載されていたもの。
古きよきアメリカ、的な香りもし、同時に、皮肉のきいた社会批判も織り込まれていて、まだ作家として駆け出しの頃のものでありながら、独特の個性が感じられます。
いちばん印象に残ったのは、「パッケージ The Package」かな。
ちょっと先の未来(書かれた当時はだいぶ先の未来、だったはず)の話、という設定。
苦労して事業を成功させ、念願の新型住居を購入したアールとモードのフェントン夫妻。
世界一周旅行を終えて新居に帰ってきた二人のもとに、チャーリーという男が訪ねてくる。
彼はアールの学生時代の級友で、裕福な家庭に育ち医者になった男。
苦学生だったアールは裕福だったチャーリーに対し、コンプレックスのようなものを抱いていた。
今や成功者となったアールのもとにやってきたチャーリーは、擦り切れた服、ほこりまみれの靴、といういでたち。
きっと金を借りに来たのでは、と思ったフェントン夫妻は――という話。
短めの短編が23編も入っていて、あまり読書慣れしていない人でも読みやすいし、内容も楽しめると思います。
娯楽小説的に書かれているけれど、垣間見える姿勢、のようなものが個人的にはとても好き。
2007年の4月に亡くなってしまったんですね、この人。
新作を楽しみに待つ、ということがないのは残念です。
そういう楽しみ方をしたかった作家です。 -
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ヴォネガットの作品中でもこれが一番好きっていう人は、多いのか少ないのか。どうなんだろう。
わたしが思うのは、ヴォネガットの愛情深くセンチメンタルな一面がもっとも強く(あるいはもっともストレートに)出ている作品なんじゃないかなということです。
ストレートって言っても、まあ本当の意味でストレートじゃ当然ないのですが、自分の心には直球で届いた言葉がいくつもあった。
読んでいて、線を引きたい!って思う気持ちに何度かなった。これまでほとんどそういうことはなかったのだけど・・・
手元に本がないので、はっきりと引用できないけど、
勉強にしろスポーツにしろ、才能を周囲から認められている地方在住の少年少女は故郷から出るな、そうしている限り幸せでいられる
…というような趣旨の一文があって、なんかもう深くうなずいたものです。
才能ということについて、あれこれ考えていた時期だったので。
買わなきゃいけない、何度も読み返さなきゃいけない本です。