浅倉久志のレビュー一覧
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歴史改変系SF小説。
日本とドイツが戦争に勝ってアメリカを統治している世界、そんな世界で流行っている小説は『イナゴ身重く横たわる』という、連合国側が勝利したらと言う歴史改変小説だったりする。
登場人物が、歴史上の人物だったりオリジナルだったり、国籍人種も多様で何回も読み返さないといけなくて時間がかかってしまった。
真偽
これがテーマなのだと思う。本物と見分けがつかない贋作。歴史という付加価値の曖昧さ。小説と現実。偽名の政治家と暗殺者。
歴史を失った国で生まれた新たな芸術と、歴史ある占い易が、本来あるはずだった歴史を垣間見せるというのが面白い。
一方、読み終わった時に「え、これで終わっちゃう -
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ネタバレアベンゼンは『易経』を使って小説『イナゴ身重く横たわる』を書いていた。ジュリアナが「なぜその本を書いたか、我々はその本から何を学ぶべきか」という問いを立てて易を行うと、「真実」という回答を得る。ジュリアナは、本に書かれていることが真実であるというメッセージとして受け取る。これが、本作の幕切れ直前、結論のような位置に置かれているシーンだ。
ここから読者は何を読み取ればいいのだろうか?
(a)彼らの世界で起こった出来事は真実ではないということか? それとも、(b)これからドイツ帝国の崩壊や、日本への水爆投下が起こり、プロセスこそ違えど、最終的には本に書かれた世界と同じような結果にたどり着くという -
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ネタバレ第二次世界大戦が枢軸国側の勝利で終わったという世界。
日本やドイツに統治されている米国。
ドイツが統治する地域では禁書となっているという小説が、それ以外の地域では話題になってヒットしている。内容は、第二次大戦が連合国側の勝利で終わった世界を描いたもの。
登場人物の多くが自らの進むべき道を「易経」で占っている。
本作は1962年に執筆されているが、この時代には易経が流行っていたのだろうか…。1978年に出版された『宇宙船とカヌー』でも、ジョージ・ダイソンが旅の出立をいつにするか易経で占うべきかなぁ、なんて言うくだりがあった。
この世界で売れているという小説の作者も、ストーリーの展開を易経で -
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第二次世界大戦で枢軸国側が勝利した世界を舞台にした小説。そしてその小説世界には、もしも連合国側が勝利していたらという世界を描いた「イナゴ身重く横たわる」という珍妙なタイトルの小説がある。そしてどうやらその「イナゴ・・・」の世界は、連合国が勝利しているものの、いまこの「高い城の男」を読んでいる私の住む世界とも少々様子が違うようだ。
もしかしたらこの「イナゴ・・・」の世界には枢軸国勝利の別の小説があり、その世界には連合国勝利の別の小説があり、そんな小説世界が果てしなく続いているのかもしれない。だとすると私が生きているこの世界も小説の一部で、その小説は枢軸国が勝利した世界で読まれており、さらにその世 -
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特異な世界観と、どことなくセンチな余情が残るSF短編集。物語の雰囲気をつかむまでに苦戦した短編もあるにはあったのですが、その世界観や人間関係であったり、あるいは「ここでない世界」に対しての、切ない思いが印象的です。
収録作品は6編。
表題作『逆行の夏』はストーリーはもちろん、SFならではの描写が印象的。水銀の湖と洞窟が、太陽の光を照らし返す情景なんかは、美しさを感じるとともに、SFの想像力の豊かさも感じます。
ストーリーとしては、クローンの姉との再会であったり、身体の改造や性別の転換ですら、簡単に行える、という技術背景が描かれ、なかなかのハードSFらしい雰囲気。
そのため、ややとっつきに -
Posted by ブクログ
一息に読み切ってしまうくらいには面白かった。これまで読んできたディックの作品とは違って、結構オチもしっかりついていたし。ホバーカーを筆頭として、ディックらしいガジェットも多く登場する。そういういかにもなアイテムや制度に彩られて、個人的にはやや古臭さを感じるが、昨今のSFでは中々お目にかかれない、「これぞ空想科学小説」と言えるような世界が作り上げられている。着想元が新聞やカセットであるために、現在から想像できる未来と照らせば、ちょっと想像力の限界を感じざるを得ないけど。
作品の根幹となる2つの要素が、物語を追う内に段々と融合していって、最終的にはきっちりと収まったような印象を受ける。大ハマリ -
Posted by ブクログ
坦々と読み進める。
感想はとくになし。
ヴォガットがなくなったのは2007年で、それから6年たって、自分のブログにこんなことを書いたことがある。
「カート・ヴォネガットが亡くなってもう六年経つ。
かれの作品は好きだが、困るのは、読んだ後、元気がなくなるという点だ。
ヴォネガットといえば、「心優しきニヒリスト」という肩書が有名で、かなり早い時期からそう言われていた。作品はたしかにそんなふうだ。
かれの主人公は、巨大な歯車の中でモルモットのように扱われ、無慈悲な運命に翻弄される。誰が悪いというわけでもない。巨大な歯車、巨大なシステム、宇宙的な構造そのものの結果としてそうなるのであって、仕組