浅倉久志のレビュー一覧
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夏のハインライン祭。
米ソの戦争のさなか、ヒューの家族は空襲警報を受け、シェルターに逃げ込んだ。2階の衝撃のあと外に出てみると、爆撃前とは似つかわぬ、自然が広がっていた。自然の中でサバイバルをしていると、見たことのない乗り物に乗った未来人が現れる。未来では、人口をコントロールするため、不思議な風習に従って国家が運営されていた…。
ハインライン版の『家畜人ヤプー』とでもいえる作品。中程を過ぎてからの未来の生活の特殊性が非常に魅惑的(蠱惑的?)である。
ストーリーはかなり複雑であるものの、主人公をヒューに限定し、何を行わなければならないと考えているのかを、読者に説明があるわけでもないが、しっかり芯として残しているため、理解しやすい作品であろう。
最終的に、平行宇宙のような微妙にくすぐられる設定にも掠りつつ、時間跳躍と前世代的な未来の社会を描いくことにまとまっているため、SF初心者にも受け入れられるのではないか。ちょっと内容がエログロ的な部分も有るけれども。
訳が浅倉久志ってのも良かったね。矢野徹だと読みづらかったと思う。 -
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SF。連作短編集。はじめての作家。
20世紀から130世紀にわたる未来史。時間的なスケール、世界観的なスケール、どちらも驚異的。
内容は、背表紙にあるように、「奇妙で美しく、グロテスクで可憐」。一言では表現出来ない、あらゆる魅力がある。
好きな作品は「マークエルフ」「昼下がりの女王」「ガスダブルの惑星より」「スズダル中佐の犯罪と栄光」。
以下、印象的な作品のメモ。
「第81Q戦争」
見世物としての戦争。森博嗣『スカイ・クロラ』に酷似。
「マーク・エルフ」
主人公カーロッタの生い立ちが素敵。マンショニャッガーがよいキャラ。
「昼下がりの女王」
前話から続く物語。後半はジュヌヴィーブ夫人代筆らしい。ロマンチック!
「スキャナーに生きがいはない」
デビュー作らしい。65年前の読者は、この異様な物語をどう感じたのか?
「星の海に魂の帆をかけた女」
夫人との合作。ラブロマンス。夫人が絡むとロマンチックな作品になる傾向が。
「人びとが降った日」
8200万人が空から降ってくる、この設定だけでも刺激的。
「青をこころに、一、二と数えよ」
タイトルのセンスはベストか。
「鼠と竜のゲーム」
ネコSF。ネコ可愛い。
「ガスダブルの惑星より」
夫人との合作。ショート・ショート。グロテスクなファーストコンタクトもの。ブラックさが良い。
「スズダル中佐の犯罪と栄光」
短編としては濃密すぎる世界観。 -
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火星や金星に殖民するため、国連によって地球を追われ、過酷な環境下に強制移住させられた人々にとって、ドラッグ・キャンDは必需品であった。キャンDは目の前の模型セットに精神を投影させ、あたかも地球に居るかのごとくトリップすることができるのだ。P・P・レイアウト社の社長レオ・ビュレロは、流行予測コンサルタントとして働く優秀な予知能力者(プレコグ)バーニイ・メイヤスンらとともに順調にキャンDを売りさばいていたが、懸念すべきニュースが舞い込む。遥かプロキシマ星系から、謎の星間実業家パーマー・エルドリッチが新種のドラッグ・チューZを携えて太陽系に帰還したのだ!レオはパーマー・エルドリッチに対抗すべくバーニイの力を借りるが…
うーん、傑作。今回もディックお得意の現実崩壊。
「『さあ、これで現実の世界へもどれたぞ』と思った瞬間に、とつぜん幻覚世界からきた怪物が目の前を横切り、自分がまだもとの世界に帰っていないのに気づく、その恐怖だ」とは、訳者あとがきで引用されるディックの言葉ですが、本書では、この恐怖が迫真の筆致で描かれます。しかし、そんな恐怖で満たされた作品であるものの、決して救いのない物語ではなく、絶望にとらわれた主人公が、それでも暗闇の中で希望を捨てずに生きのびようと悪戦苦闘する物語です。なんといっても、冒頭で紹介される一文がそれを如実に表しています(というより、この一文を物語にしたのが、本書のようですね)。
「つまりこうなんだ結局。人間が塵から作られたことを、諸君はよく考えてみなくちゃいかん。たしかに、元がこれではたかが知れとるし、それを忘れるべきじゃない。しかしだな、そんなみじめな出だしのわりに、人間はまずまずうまくやってきたじゃないか。だから、われわれがいま直面しているこのひどい状況も、きっと切りぬけられるというのが、わたしの個人的信念だ。わかるか?」
うーん、よくよく考えると、ディックの長篇作品はそんな作品が多いかも。現実を疑い続けるディックの楽観とは少し異なる大雑把さに、なんだか励まされた気がします。 -
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ネタバレ1952年に書かれた近未来小説。
現代を言い当てているようなところだとか、
現代からつながっていく近未来を感じさせるところもあります。
全体としてはレトロな未来ですけどね。
たとえば、個人のもつIDカードがパンチカードだったりする古さがあるし、
半導体はでてこなくて、真空管がでてきます。
駒を動かす盤ゲーム(チェスみたいなものかな?)
で人間を負かすための機械がつくられたり、
機械に仕事をとってかわられてリストラされたり、
格差のある階級社会になっていたり、
21世紀を予見している(洞察している)ところがでてくる。
内容そのものもとてもおもしろいです。
また、
AとBという対立があって、
たとえば作者はAの意見に同調しているとすれば
Aの意見をいうひとの描写やセリフはかきやすいのだろうけど、
ヴォネガットくらいになるとBの描写やセリフも卓越している。
敏腕弁護士以上に、
いろいろな立場や主張を理解してくみあげて表現する力があるよなあ、
と思いました。
この時代であっても、
機械に仕事を取って代わられないことが大事なんだよ、
という見抜きがあります。
社会に参加して役に立つ喜びややりがいは、
これからAIや機械が発達しても、
人間からむしりとられるべきではないのでしょうね。
作中にありましたが、ひとは、
二流の機械になるか、
機械の被保護者になるかの二者択一におちいるべきではないのです。
今後どういう形で機械が発達していくかわかりませんが、
そういうところは押さえないとおけませんね。
MITなんかじゃ、デジタルの次はバイオだ、と
もっと遠くを展望して未来を見透かしていたりするようですが、
いやはや、どうなることやら。
非常におもしろく読めました。 -
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全部よかった。テクノロジーの進化に対し適応していく人間の意識や社会の変容を、感傷的にロマンチックに綴る、ハズレなしのSF短編集。翻訳もよいのでしょうが文章が柔らかく軽やかで読みやすい。生々しさと熱を感じさせながらも、冷徹な視点が貫かれています。
「逆行の夏」水星で暮らすぼくの元に、月からクローンの姉がやってくる。新しい家族の形と性のありかた。鮮やかな舞台描写がイメージを刺激する、さわやかな短編。
「さようなら、ロビンソン・クルーソー」今回一番好きです。二度目の子供時代を、冥王星の地下にあるリゾート海浜で送る少年。謎の女性の訪れを契機に、子供でいられる時間の終わりが見えてくる。少しずつ見えてくる社会状況にわくわくする。もう少しだけ子供でいさせてよ。
「バービーはなぜ殺される」個性を排し、同じ姿に身体を改造して共同生活を送る宗教団体の内部で起こる殺人事件、犯人を追う捜査官。個人を捨てた平和なはずの閉鎖社会で起こる犯罪の動機が面白い。
「残像」視聴覚を失った人々のつくるコミューンの特殊な発展と、触覚によるコミュニケーションを掘り下げた傑作。切ない。
「ブルー・シャンペン」リゾート地の〈バブル〉は月の周りを周回する大量の水の球体。その〈バブル〉の職員と、〈バブル〉を訪れたスター女優の苦い苦い恋物語。手足を動かせない彼女を補佐する機械の身体や、人の体験を感覚ごと記憶する装置といった道具立ての面白さが物語と密接に絡み、なにより舞台の美しさに圧倒される。
「PRESS ENTER ■」隣人の死を調べるうちにコンピュータネットワークの闇に潜む何か恐ろしいものの存在に触れてしまう話。不安感とわくわく感の煽りが絶妙な良質のホラーサスペンス。 -
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ジョン・ヴァーリイはどうしているんだろう、と思っていた矢先の日本オリジナル短編集の登場。1970年代から80年代に独特な未来世界でSFファンの魂をつかんだ作家だ。代表作の〈八世界〉シリーズは地球が異星人に侵略され、月や火星など八つの世界で人類が生き延びているという設定。身体改変技術が発展し、衣服を替えるように性別を替え、身体を環境に適合させ、身体を脱ぎ替える世界。
1990年代以降、ヴァーリイはハリウッドの脚本執筆で成果が上がらず(映画化されたのは『ミレニアム/1000年紀』くらい)、翻訳も先細りして現在に至っているようだ。
本書も既訳作品とその新訳で、1975〜84年のものであり、新しさはないがヴァーリイを思い出してくれ、といったものである。6編収録で2編が〈八世界〉シリーズ、アンナ=ルイーゼ・バッハ・シリーズ2編、シリーズ外2編。ほとんどがSF賞受賞作。
〈八世界〉シリーズは上記のようにクローン技術が当たり前の世界なので、「逆行の夏」と「さようなら、ロビンソン・クルーソー」はそれぞれ次のように書き出される。「クローンの姉が月から来るというその日、」「時は夏。そしてピリは二度目の幼年期を迎えていた。」
「逆行の夏」は金星に住む「ぼく」のもとに3地球年年上のクローンの姉がルナ(月)からやってきて初めて会う話。「ぼく」は男性に生まれ、ママによって2〜3カ月で女性に変えられて15年間過ごしたのち2年前から男性だ。そのうちまた女性にチェンジしようと思っている。クローンの姉がいるというのは珍しい話で、その姉をおいて母とぼくが金星に渡ったのには何かいえない理由があるらしい。
太陽が逆行して訪れる逆行の夏、力場の〈服〉に身を包まれ、沸騰しかかった水銀の池で「泳ぐ」金星人の生活、あまりに異質な世界がまったく現代のわれわれの生活の延長線上のように生き生きと軽やかに語られるのがヴァーリイの特徴だ。お話は結局、家族問題なのだ、〈八世界〉風の。そしてそのエッセンスにおいて現代風の。
ピリは、クローンで子どもの体をつくって、二度目の幼年期を過ごしていたのだ。大人としての記憶は抑圧して。
ところはディズニーランド。〈八世界〉でのディズニーランドとは惑星地下などに地球環境を模して作ったところをいう。ピリのいるのは冥王星地下の建設中のディスニーランド〈パシフィカ〉。海岸の環境で、彼は鰓呼吸と肺呼吸と両方できるように身体改造している。ロビンソン・クルーソー気取りで過ごしているピリが二度目の幼年期と別れを告げねばならないのは……
少年の成長も美しい自然もどちらもシミュラクラなのだが、そこに冥王星という場所と〈八世界〉の経済問題を絡めた佳品「さようなら、ロビンソン・クルーソー」。
バービーといったらみんな同じ顔をした人形だ。日本ならリカちゃん。おっぱいの膨らみはあっても乳首はなく、股間はつるつる。統一教は個人の差異を嫌い、個性も性差もなくしてみな同じ姿に身体改造した信者が共同生活を送っているという宗教。弾圧されて今はツナの一角に居住地を持っている。そこでバービーによるバービーの連続殺人事件が起こる。刑事アンナ=ルイーゼ・バッハが捜査に当たるが、一人称単数を使うことを恥と考えるバービーたちの中にはいって捜査は行き詰まる、「バービーはなぜ殺される」。
風疹の流行で視聴覚障害者が多数生まれる。長じて彼らがコミューンを作り出すと、そこでは新たな社会、新たなコミュニケーションが生まれる。という思考実験を詩的な物語にまとめた「残像」。
ルナの周回軌道に作られたシャンペン・グラス型の建造物。そこに浮かぶ無重力の水のかたまり〈バブル〉というリゾートを舞台に、感情体験そのものを記録する体験テープの女優で、頸椎損傷のため外骨格的補助装置を装着したギャロウェイとプールの救助員クーパーの恋、「ブルーシャンペン」。警察官になるまえのアンナ=ルイーゼが重要な脇役として登場。
「PRESS ENTER ■」、俺の隣人が死んでいるが、コンピュータに仕掛けがあって、遺書がプリントされる。隣人はハッカーで様々な不正をしていたらしく、その死は不審だ。調査のためカリフォルニア工科大からベトナム生まれの女性技師が呼ばれる。彼女と親しくなる俺。やがて迫る危険。パーソナル・コンピュータが普及しだした1980年代にインターネットの得体の知れなさを予言したような話。俺の苗字はアプフェルで、これはドイツ語でアップルだ。
ハインラインからの影響が大きい作家で、性別すら自由に着替えることができる世界を描くが、ハインラインほどの脳天気な自由主義ではない。常に愛(あるいはセックス)があるが、苦い諦念もともにある。それでもなお軽みのある明るさを感じさせるのがヴァーリイの味わい。 -
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ディレイニーと並んで60年代アメリカSF界を代表する作家ロジャー・ゼラズニイの初期中短篇集である。全15篇の中には、ひとつのアイデアのみで成立する超短篇も含まれているが、その持ち味を堪能しようと思えば表題作を含む中篇に読み応えのある作品が多い。きびきびした語り口、当意即妙な会話はハードボイルド探偵小説を思わせる。格闘技好きらしくアクションを描くのが上手い。当今ではどこかの団体からクレームがつきそうなくらい男も女もやたらスパスパやるので作品の書かれた時代が分かる。しかし、ポケットから取り出して口にくわえればその場の雰囲気や人物の気持がさっと切り替わる絶妙の小道具である。持ち運びに面倒な酒類ではこうはいかない。
煙草や酒が気になるのは、飛びぬけた能力を持つ男が誰にも達成不可能思われる難局に挑む話が多いからだろうか。人はとんでもない状況を前にしたとき、何はさておき、まずは一服したくなるものだ。「その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯」は、十スクエア(一スクエアは百平方フィート)のフットボール競技場大の釣り用筏の上を縦横に移動できるスライダーを操作し、巨大な獲物イクティザウルス・エラスモグナトス(板顎魚竜)を釣り上げる話。どう考えてみてもクレーンゲームから思いついたに決まっていると思うのだが、1970年代のアメリカにはクレーンゲームは存在したのだろうか?舞台は金星の漆黒の海、太古の生物と眼を合わせたときに感じる一口には言い表せない感情に気圧され、一度は失敗した男が再起を賭けて挑む。ちゃちなアーケードゲームに巨大なスケール感をまとわせ痛快なアクションに仕立て直す才能に脱帽。
「この死すべき山」では、知りうる限りの世界で最高の標高を持つ山の初登頂を目指す男たちが出会う不可思議な体験が主題となる。麓から頂上を見ることができない“灰色の乙女”は大気圏より高く突き出たとてつもなく高い山だ。これまで世にある名高い高峰を征服してきたホワイティーにとって唯一登頂していないのが“グレイ・シスター”だった。いつもの仲間とチームを組んで登りはじめたが、頂上が近づくにつれ「帰レ」という声が聞こえ出し、天使のようなものが見え出す。これは高山がもたらす幻覚なのか?高峰を登山する体験をリアルに描いた山岳小説と思って読んでいたものが、最後にとんでもない種明かしが待っている。クライマックスまでの緊張感と謎解き後の緩さのコントラストが絶妙で口あんぐりとなること請け合いの一篇。
「このあらしの瞬間」は、凄まじい嵐のなか凶暴な獣が都市を襲う一大パニックに独り立ち向かう警官の活躍を描くハードボイルド感が強い一篇。冷凍睡眠による星間飛行が可能となった時代。見かけは若くとも実年齢はかなりの高齢者が現役で実力が発揮できる羨ましいような世界だ。監視カメラで空から街をパトロールする「わたし」には、若い女性市長の恋人がいる。長雨が洪水を呼び、水中から恐ろしい怪獣が現れるとパニックに襲われた街は無法地帯と化す。「わたし」の働きもあって災厄は去るが、嵐の後に残されたのは泥濘だけではなかった。人間とは何か、という問いに「わたし」は、かつてこう答えた。「人間は、彼がこれまでにしたこと、したいと思い、あるいはしたくないと思うこと、すればよかったと思い、あるいはしなければよかったと思うこと、それらすべての総体である」と。冒頭に置かれたこの定義が胸にしみる結末が待っている。
表題作は、火星のある一族に残る寺院の記録を解読する仕事を引き受けた詩人と踊り子の恋の顛末を描く。「伝道の書」によく似た色調を漂わせたその聖なる書物とは別に、一族には予言が伝えられていた。予言の成就と詩人の恋が二律背反になっている。リルケの『ドゥイノの悲歌』とサン・テグジュペリの『星の王子様』を風味づけに使ったところが洒落ている。ラブ・ストーリーなのだが、主人公の詩人はなんと東京大学東洋語学科の学生で講道館一級の腕前。当て身を使った格闘シーンもちゃんと用意されている。サービス満点の逸品。
冷凍睡眠によって想像を絶する時間を生きることが可能となった人間はイモータルな存在となり、ある意味神に近づくことになる。不死性を主題にし、神話、伝説を再構成したような作品も多い。どれをとっても神的存在や超人的なヒーローばかりのちょっと気恥ずかしくなりそうな英雄冒険譚が無理なく読めるのはヒーローが活躍する舞台となる世界の、SFならではのスケールの大きさにある。嘘くさい話をいかにも本当らしく読ませるのではなく、その愁いを喩えるのに白髪三千丈の比喩をもってした李白の美学にも似て、途方もなく大きなスケールを前にした時、ちっぽけな疑念などすっ飛んでしまい、人はある種の悲壮美にただ酔うのかもしれない。 -
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情緒と哀愁漂い、そしてかっこいい名作SF短編集。60年代作品ですが古臭さを全く感じさせません。面白いです。イマジネーションが刺激されます。
【各作品メモ】
「その顔はあまたの扉、その顔はあまたの灯」
巨大生物イッキーを釣る話。
「12月の鍵」
壮大なテラフォーミングの話。面白い。冷凍睡眠を繰り返しながら、3千年かけて惑星の変化を待つうちに、原住生物の知性化が進む。彼らの絶滅を放っておくのか、彼らを守る神となるのか。一番お気に入りです。
「悪魔の車」
意思を持つ未来の車。なかなかシンプルでスリリングな話。人工知能の哀愁がいい感じ。
「伝道の書に捧げる薔薇」
これも面白いね。言語学者かつ詩人が地球人代表として異星人の言語と歴史を学ぶ傍ら、異星人の娘に恋に落ちる。主人公がかわいそうで。
「怪物と処女」
短い。寓話?
「収集熱」
意思を持つ鉱物と地球人の会話劇。けっこう好き。
「この死すべき山」
山登りに命をかける男たち。ちゃんとSFでした。
「このあらしの瞬間」
冷凍睡眠で星を旅し孤独になった男のある都市での生活
「超緩慢な国王たち」
ゆっくりな王様二人。ちょっと考えてる間に文明一つ滅びたりとか。これ好きだなぁ。
「重要美術品」
ギャグ
「聖なる狂気」
時間の繰り返しの牢獄の話かと思ったら救いが。
「コリーダ」
よくわからない。闘牛の牛役にさせられた男。理不尽。
「愛は虚数」
プロメテウスの話だったらしい。
「ファイオリを愛した男」
生者しか見えない死の女神と、機械により生と死の狭間に身を置いた男のラブストーリー。幻想的で寂寥感が半端ない。
「ルシファー」
死んだ都市を一瞬だけでも生き返らせようとする男 -
購入済み
壮大な悪夢
こんな未来には住みたくない!と思わされるような陰鬱な惑星植民地にもたらされる違法ドラッグ!という感じの、とても40年以上前の作品とは思えない面白さ!とはいえディック濃度200%なので、『ブレードランナー』くらいのつもりで読むと面食らうかも。