浅倉久志のレビュー一覧
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ヴォネガット のユーモアとウイット、引用文についつい笑いを誘われるが、テーマは人類の進化である。 そこに着くまでに設定した百万年という時の流れは、大きな不安を孕んでいる。巨大化した脳は残酷さに寛容であり、心の痛みを転嫁し、過ちを進化と勘違いした。
西暦1986年、ヴォネガットの描く巨大脳を持つようになった人類の性が、本能に導かれて到達した環境といえば、反抗する隙もない、人間性という言葉の影もない、独自に進化を遂げた世界だった。どこか今に通じる現代世界の姿がかいま見える。煉りに煉られた物語で、その緻密さ巧みさは面白い、登場人物の狂気までも気の利いたジョーク交じりで進行していく。人々の狂ってい -
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夏のハインライン祭。
米ソの戦争のさなか、ヒューの家族は空襲警報を受け、シェルターに逃げ込んだ。2階の衝撃のあと外に出てみると、爆撃前とは似つかわぬ、自然が広がっていた。自然の中でサバイバルをしていると、見たことのない乗り物に乗った未来人が現れる。未来では、人口をコントロールするため、不思議な風習に従って国家が運営されていた…。
ハインライン版の『家畜人ヤプー』とでもいえる作品。中程を過ぎてからの未来の生活の特殊性が非常に魅惑的(蠱惑的?)である。
ストーリーはかなり複雑であるものの、主人公をヒューに限定し、何を行わなければならないと考えているのかを、読者に説明があるわけでもないが、しっ -
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ネタバレ※ネタバレあり! ここ以外でも決して裏表紙のあらすじは読まないように!
と、最初に断っておかないといけないぐらい、この裏表紙のあらすじはひどすぎる。要約にもなっておらず、作品を正確に捉えていないばかりか、核心部分(しかも残り100頁を切った部分)にまで踏み込んでネタバレをしている。まさか表紙が変わっても直っていないとは思わなかったが、このネタバレを避けて読むのはもはや様式美だろう。自分の場合は無理だった。と、いうのも自分がこの小説のあらすじを知ったのは巻末の作者の別作品紹介で、そこに堂々とユービックのあらすじ、もといネタバレが書いてあったのだ。田舎だと回避不可でしたねw
それはともかくとし -
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SF。連作短編集。はじめての作家。
20世紀から130世紀にわたる未来史。時間的なスケール、世界観的なスケール、どちらも驚異的。
内容は、背表紙にあるように、「奇妙で美しく、グロテスクで可憐」。一言では表現出来ない、あらゆる魅力がある。
好きな作品は「マークエルフ」「昼下がりの女王」「ガスダブルの惑星より」「スズダル中佐の犯罪と栄光」。
以下、印象的な作品のメモ。
「第81Q戦争」
見世物としての戦争。森博嗣『スカイ・クロラ』に酷似。
「マーク・エルフ」
主人公カーロッタの生い立ちが素敵。マンショニャッガーがよいキャラ。
「昼下がりの女王」
前話から続く物語。後半はジュヌヴィーブ夫人代筆らし -
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火星や金星に殖民するため、国連によって地球を追われ、過酷な環境下に強制移住させられた人々にとって、ドラッグ・キャンDは必需品であった。キャンDは目の前の模型セットに精神を投影させ、あたかも地球に居るかのごとくトリップすることができるのだ。P・P・レイアウト社の社長レオ・ビュレロは、流行予測コンサルタントとして働く優秀な予知能力者(プレコグ)バーニイ・メイヤスンらとともに順調にキャンDを売りさばいていたが、懸念すべきニュースが舞い込む。遥かプロキシマ星系から、謎の星間実業家パーマー・エルドリッチが新種のドラッグ・チューZを携えて太陽系に帰還したのだ!レオはパーマー・エルドリッチに対抗すべくバーニ
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ネタバレ1952年に書かれた近未来小説。
現代を言い当てているようなところだとか、
現代からつながっていく近未来を感じさせるところもあります。
全体としてはレトロな未来ですけどね。
たとえば、個人のもつIDカードがパンチカードだったりする古さがあるし、
半導体はでてこなくて、真空管がでてきます。
駒を動かす盤ゲーム(チェスみたいなものかな?)
で人間を負かすための機械がつくられたり、
機械に仕事をとってかわられてリストラされたり、
格差のある階級社会になっていたり、
21世紀を予見している(洞察している)ところがでてくる。
内容そのものもとてもおもしろいです。
また、
AとBという対立があって、
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全部よかった。テクノロジーの進化に対し適応していく人間の意識や社会の変容を、感傷的にロマンチックに綴る、ハズレなしのSF短編集。翻訳もよいのでしょうが文章が柔らかく軽やかで読みやすい。生々しさと熱を感じさせながらも、冷徹な視点が貫かれています。
「逆行の夏」水星で暮らすぼくの元に、月からクローンの姉がやってくる。新しい家族の形と性のありかた。鮮やかな舞台描写がイメージを刺激する、さわやかな短編。
「さようなら、ロビンソン・クルーソー」今回一番好きです。二度目の子供時代を、冥王星の地下にあるリゾート海浜で送る少年。謎の女性の訪れを契機に、子供でいられる時間の終わりが見えてくる。少しずつ見えてくる -
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ジョン・ヴァーリイはどうしているんだろう、と思っていた矢先の日本オリジナル短編集の登場。1970年代から80年代に独特な未来世界でSFファンの魂をつかんだ作家だ。代表作の〈八世界〉シリーズは地球が異星人に侵略され、月や火星など八つの世界で人類が生き延びているという設定。身体改変技術が発展し、衣服を替えるように性別を替え、身体を環境に適合させ、身体を脱ぎ替える世界。
1990年代以降、ヴァーリイはハリウッドの脚本執筆で成果が上がらず(映画化されたのは『ミレニアム/1000年紀』くらい)、翻訳も先細りして現在に至っているようだ。
本書も既訳作品とその新訳で、1975〜84年のものであり、新し -
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ディレイニーと並んで60年代アメリカSF界を代表する作家ロジャー・ゼラズニイの初期中短篇集である。全15篇の中には、ひとつのアイデアのみで成立する超短篇も含まれているが、その持ち味を堪能しようと思えば表題作を含む中篇に読み応えのある作品が多い。きびきびした語り口、当意即妙な会話はハードボイルド探偵小説を思わせる。格闘技好きらしくアクションを描くのが上手い。当今ではどこかの団体からクレームがつきそうなくらい男も女もやたらスパスパやるので作品の書かれた時代が分かる。しかし、ポケットから取り出して口にくわえればその場の雰囲気や人物の気持がさっと切り替わる絶妙の小道具である。持ち運びに面倒な酒類ではこ
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情緒と哀愁漂い、そしてかっこいい名作SF短編集。60年代作品ですが古臭さを全く感じさせません。面白いです。イマジネーションが刺激されます。
【各作品メモ】
「その顔はあまたの扉、その顔はあまたの灯」
巨大生物イッキーを釣る話。
「12月の鍵」
壮大なテラフォーミングの話。面白い。冷凍睡眠を繰り返しながら、3千年かけて惑星の変化を待つうちに、原住生物の知性化が進む。彼らの絶滅を放っておくのか、彼らを守る神となるのか。一番お気に入りです。
「悪魔の車」
意思を持つ未来の車。なかなかシンプルでスリリングな話。人工知能の哀愁がいい感じ。
「伝道の書に捧げる薔薇」
これも面白いね。言語学者かつ