浅倉久志のレビュー一覧

  • パーマー・エルドリッチの三つの聖痕

    購入済み

    壮大な悪夢

    こんな未来には住みたくない!と思わされるような陰鬱な惑星植民地にもたらされる違法ドラッグ!という感じの、とても40年以上前の作品とは思えない面白さ!とはいえディック濃度200%なので、『ブレードランナー』くらいのつもりで読むと面食らうかも。

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    2013年03月25日
  • スラップスティック

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    SFというより昔話、民話の趣がある一冊。素晴らしかったです。色々なものが抽象化されて詰め込まれている気がする。特にお姉さんのくだり。
    それにしても本の数十年前にはアメリカにもこんなに自由な思想があったのだ。アイロニックに見えて、今の視点から見ると逆にポジティブで牧歌的。
    「(略)あなた方がもし諍いを起こしたときは、おたがいにこういってほしい。「どうか--愛をちょっぴり少なめに、ありふれた親切をちょっぴり多めに」」

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    2013年03月15日
  • スラップスティック

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    スローターハウス5以前の作品の方が好きなんですが、これは良かった!
    優しい雰囲気に包まれた小説です
    色んな場面が本当に秀逸
    卒業記念パーティでの姉との再会シーンが素敵すぎる

    前作のチャンピオン達の朝食は陰鬱とした雰囲気でしたが、こちらはほのぼのとしてます

    ま、世界がほぼ終わる話なんですがね

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    2013年01月16日
  • ガラパゴスの箱舟

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    あぁ、大好きだなあ。愛すべき作風。

    しかしこの語りは真似できないレベル。100万年後から振り返って100万年前の登場人物を描きながら、いきなり今場面に登場している彼らの最期の様子を語り、今度はまだ生まれてもない赤ん坊のそのまた子どもを描いたり。自由自在に思えて、情報量をなんだかんだで配分してる気もする。一度分析してみたい。
    まあそんな上手さとかより、ヴォネガットの作品はこの中毒性に引っかかった時点で全作読みたくなっている。
    テキトーにくすくす笑いながら読んでるだけですべて良し。

    そしてヴォネガットがこの言葉をエピグラフに持ってくるのが、皮肉でいながら泣けそうになる何か。

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    2012年12月20日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    平安時代の美人は今ならちっとも美人じゃないだろう。
    人間は実は努力なんかじゃどうにもならないくらい、ちょっとした現実のランダム関数で恵まれて生まれたり、恵まれなかったりする。
    これは金持ちに生まれてしまったばかりに世の不条理に気づいてしまい思い悩む男の物語。
    誰かを愛することは同時にその人以外を視界から外すことでもある。
    自分たちだけ幸せになるのはおかしいと主人公は考える。
    万人の幸せを望む。
    じゃあ、万人を愛すればいいのか。
    そうかもしれない、でもそれは彼を幸せに導いてくれたのだろうか。

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    2012年10月14日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    大富豪でありながら慈善事業に大金を注ぎ込み財産をすり減らす男の物語。ヴォガネットらしい愛と皮肉とユーモアに満ちた独特の語り口が、読後に小さな引っ掛かりを残す

    これなんか、すごいいろいろ考えさせられた気がするんだけど…
    詳細に思い出せない(‐‐;
    もう一度読みたいと思います!

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    2012年09月17日
  • スキャナー・ダークリー

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    ディックの中で一番好きな話です。今回新装版になっていたので再購入。

    これはディックが友達への思いを込めて書いているのだと思います。
    悲劇的、アンハッピーエンドとされることが多いようですが
    あくまで私個人としては、ディック作品の中でも特に切なくも優しい話だと思います。

    しかし、スクランブルスーツが象徴するように世の中が、自分自身が、どんどん
    不確かで根拠のないものになる過程は自分の感じることと重なる部分があって
    全体には優しさを感じつつ、その部分がドットとして浮き上がってきます。

    訳は山形さんの方がヤレ感(すみません、うまく言えないです)があって好きです。

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    2012年07月15日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    たとえヴォネガットの作品が砂糖の錠剤ににがいコーティングを施しているだけのようなものだとしても、私は彼の作品が大好きだ。読み始めると
    どんなに抑えても感傷的なきもちになってしまう。ギャグっぽくコミカルに書かれているところもあるが私は全然笑えなくてむしろ悲しい気持ちになってしまう。SFを数行でまとめるというアイディアも素晴らしいし、聖書に対する解釈や現代社会の問題点にヴォネガット独自の視点があるし、なにより登場人物達のドストエフスキー的な胸中の吐露が胸に迫る。泣いた。

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    2012年07月14日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    読んでいて、どうすればいいのかわからなくなって、馬鹿みたいにぼろぼろぼろぼろ泣いてしまった。
    ヴォネガットの作品はこれが初読だが、読む前からからそうなる予感はしていた。きっと泣いてしまうし、きっと辛いだろうと。その通りだった。

    「カート・ヴォネガット・ジュニアの『ローズウォーターさん~』は、この作家が世界に宛てた、一番新しい、一冊の怒りのラブ・レターである」(ジュディス・メディル)

    怒りのラブ・レター。まさしく。
    これは愛についての物語である。そして金についての物語である。
    一人の男が限りない愛と、限りなく限りないくらいの金を、その身に背負って、生きる話である。

    誰を救えばいいのか、とい

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    2012年05月06日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    *えり*

    富と愛をひとびとに分け与えようとする、とある大富豪と、
    彼を取り巻く人々の物語。


    ローズウォーターさんに助けを求める人々は、
    多くが金銭を求める人々ですが、
    中にはほんのささやかな愛情だけを求めている人もいます。
    ローズウォーターさんはその全てに応えようとします。
    彼に何が起こってそのような行動をとるに至ったのか?
    また、彼の行動によって、周囲に何が起こったのか?
    「無償の愛」は、限りない困難に満ちています。
    果たしてそれは実現可能なのか?実現するには、一体何が必要なのか?


    「人間を人間だから大切にする」ということは、シンプルですが気付きにくい事です。
    笑いと悲しみと真実が

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    2012年04月16日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    僕の書評を読む人は、僕のことを心配せずにはいられないでしょうねローズウォーターさん。「こんなに五つ星を連発する人間はきっと酒に溺れている人間だ」そんな風に考えるんでしょうよ!‥なんて、思わずローズウォーターさんに電話したくなりました。自分のように感化され易い人間にとって、アメリカ人的でタフな会話や皮肉はすごく危険ですが、大好物でもありますw。

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    2012年03月26日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    ネタバレ


    「俺は神様に一度きいてみたいと思ってるんだ。この下界じゃとうとうわからずじまいだったことを」
    「というと、どんなこと?」
    そうたずねながら、ホステスは彼の体をベルトで固定する。
    「いったいぜんたい、人間はなんのためにいるんだろう?」

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    「() ちょっと耳の痛いことを言わせてもらいましょう。お気に入ろうが入るまいが、ずばりこうです―あなたの財産は、あなたの目から見たご自分と、他人の目から見たあなたに関する、最も重要でかつ唯一の決定的要素である、ということ。金を持っているか

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    2012年03月25日
  • タイムクエイク

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    ラスト感漂う筆致で最後の方は涙が出そうだった。出なかったけど。大統領選に5度立候補したユージン・デブスの引用はヴオネガットの好きな部分が詰まってる。優しくて、優しくて、不器用。でもとってもクレバー。

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    2012年02月02日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    生きることを全肯定する素晴らしい物語だった。

    最後の2,3行を読むまでまさか感動するなんて思わなかったんだけどね。

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    2012年01月30日
  • 伝道の書に捧げる薔薇

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    ロジャー・ゼラズニイの1960年代中盤までに発表した中短編15作を収録した短編集。
    すごく良かった。
    40年以上昔の作品なのに、古臭さを感じさせずなんとも言えないカッコよさと深い余韻に浸れるSF短編集でした。この本が今は絶版であるのは勿体無い。

    アイデアやプロットや登場人物、シチュエーション等は面白かったり驚かされたりするのに、文章が野暮ったいなあ、回りくどいなあと感じて中身にあまり引き込まれなかったり、その結果友人に勧め難かったりする小説があります。
    この短編集は、そのような小説とは異なり、アイデアやプロットは50年代のSF小説にもありそうな古い設定のものもありますが、兎に角カッコよく、

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    2011年12月07日
  • スキャナー・ダークリー

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    ネタバレ

    自身やその仲間がドラッグ中毒だったことの思いも込めてるだけあって、重い。
    あとがきを読むにつけて思うのは、一度内臓がボコボコになったらダメなのかなーという感想。
    最初のほうはちょっと読みすすめ辛かったかも。

    「死者はわれわれのカメラなんだ」

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    2011年10月16日
  • パーマー・エルドリッチの三つの聖痕

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    PKDの「ユービック」と並ぶ代表作の一つ。「ユービック」に時間の逆行というプロットの中の破綻があるというマイナスポイントを考えると、本作をPKDナンバー1に推す人も多いかも知れない。
    謎に包まれ、カリスマも感じさせるパーマー・エルドリッチという存在、そして惑星開拓に伴う移民たちとドラッグ「キャンD」&パーキー・パットの模型セット、更にはエルドリッチが持ち込む新ドラッグ「チューZ]・・・、まさにサイケデリックSF。何度も読み返したくなる異常なまでの名作。


    (ハヤカワ・オンライン 書籍紹介から)

    謎につつまれた人物パーマー・エルドリッチが宇宙から持ち帰ったドラッグは、苦悶に喘ぐ人々に不死と安

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    2011年09月25日
  • スキャナー・ダークリー

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    かりそめの、だが確かに存在したわずかばかりの幸福と、ひとりの人間が背負うには重すぎる不幸、その両方を懐かしんで、いとおしんで、書き残して、ぼろぼろになって、貧乏なまんま死んでしまったディックへ。おっさんが伝えたくって仕方なかった思いはたくさんの人に届いてる。クスリなんて肉眼で拝んだこともない私たちが読んでる。でも多分、あんたがこの本を読ませたかった人間はSFなんか読まない。あたしは何より、そのことが悲しい。

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    2011年06月29日
  • プレイヤー・ピアノ

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    再読候補。華氏451とほぼ同じ時期にほぼ似たようなテーマで書いていますがこちらの方が好きですな。ユートピアにおいても官僚制は決して冷酷で硬質なものではなくて、むしろ情緒を取りこんだ家父長的な粘着質で生暖かいものだからこそ余計に凄味があるというか。

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    2011年05月05日
  • デッドアイ・ディック

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     お宝を持ち帰った桃太郎は死ぬまでに何回人間不信に陥ったか。
     月に帰ったかぐや姫は朽ち果てるまで何度鼻の穴をほじったか。
     人生が映画のようにドラマチックでもメトロノームのように規則的でも、エピローグは上映時間の冒頭から既に始まっているという事をこの小説は喋っている。予想外にてきぱきと終わってしまった人生に面食らう事もなく、終わってしまった物語のパーツを一個一個拾い集めておもちゃ箱に仕舞い込む様子を楽し、めと言われても多分無理な話です。そうです、誰かを奮い立たせるようなお話でも、夢を増幅させるような紙芝居でもないです。ただ【そのあとどうなりました?】【はい、彼はお菓子を作るのが好きです】とい

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    2011年02月08日