浅倉久志のレビュー一覧
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あぁ、大好きだなあ。愛すべき作風。
しかしこの語りは真似できないレベル。100万年後から振り返って100万年前の登場人物を描きながら、いきなり今場面に登場している彼らの最期の様子を語り、今度はまだ生まれてもない赤ん坊のそのまた子どもを描いたり。自由自在に思えて、情報量をなんだかんだで配分してる気もする。一度分析してみたい。
まあそんな上手さとかより、ヴォネガットの作品はこの中毒性に引っかかった時点で全作読みたくなっている。
テキトーにくすくす笑いながら読んでるだけですべて良し。
そしてヴォネガットがこの言葉をエピグラフに持ってくるのが、皮肉でいながら泣けそうになる何か。 -
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ディックの中で一番好きな話です。今回新装版になっていたので再購入。
これはディックが友達への思いを込めて書いているのだと思います。
悲劇的、アンハッピーエンドとされることが多いようですが
あくまで私個人としては、ディック作品の中でも特に切なくも優しい話だと思います。
しかし、スクランブルスーツが象徴するように世の中が、自分自身が、どんどん
不確かで根拠のないものになる過程は自分の感じることと重なる部分があって
全体には優しさを感じつつ、その部分がドットとして浮き上がってきます。
訳は山形さんの方がヤレ感(すみません、うまく言えないです)があって好きです。 -
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読んでいて、どうすればいいのかわからなくなって、馬鹿みたいにぼろぼろぼろぼろ泣いてしまった。
ヴォネガットの作品はこれが初読だが、読む前からからそうなる予感はしていた。きっと泣いてしまうし、きっと辛いだろうと。その通りだった。
「カート・ヴォネガット・ジュニアの『ローズウォーターさん~』は、この作家が世界に宛てた、一番新しい、一冊の怒りのラブ・レターである」(ジュディス・メディル)
怒りのラブ・レター。まさしく。
これは愛についての物語である。そして金についての物語である。
一人の男が限りない愛と、限りなく限りないくらいの金を、その身に背負って、生きる話である。
誰を救えばいいのか、という話ではない。
何を変えればいいのか、という話でもない。
世界はあるがままに。そして人間もありのままに。
みじめな人生に電話での話し相手と、わずかなお金を。
何も変わらない世界に小さなユーモアを。
そして、新しい命へ「ようこそ」と。
そうそう、あとはこれ。
「なんてったって、親切でなきゃいけないよ」。 -
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*えり*
富と愛をひとびとに分け与えようとする、とある大富豪と、
彼を取り巻く人々の物語。
ローズウォーターさんに助けを求める人々は、
多くが金銭を求める人々ですが、
中にはほんのささやかな愛情だけを求めている人もいます。
ローズウォーターさんはその全てに応えようとします。
彼に何が起こってそのような行動をとるに至ったのか?
また、彼の行動によって、周囲に何が起こったのか?
「無償の愛」は、限りない困難に満ちています。
果たしてそれは実現可能なのか?実現するには、一体何が必要なのか?
「人間を人間だから大切にする」ということは、シンプルですが気付きにくい事です。
笑いと悲しみと真実が散りばめられたお話でした。
読んでいて色々な所で悲しくて泣きました。
また読み返したい本です。 -
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ネタバレ『
「俺は神様に一度きいてみたいと思ってるんだ。この下界じゃとうとうわからずじまいだったことを」
「というと、どんなこと?」
そうたずねながら、ホステスは彼の体をベルトで固定する。
「いったいぜんたい、人間はなんのためにいるんだろう?」
』
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『
「() ちょっと耳の痛いことを言わせてもらいましょう。お気に入ろうが入るまいが、ずばりこうです―あなたの財産は、あなたの目から見たご自分と、他人の目から見たあなたに関する、最も重要でかつ唯一の決定的要素である、ということ。金を持っているから、あなたは特別な人間なんです。金がなければ、一例をあげると、あなたはいまマッカリスター・ロブジェント・リード・アンド・マッギー法律事務所の古参経営者の貴重な時間を、こうしてとりあげることもできないのですぞ。
もし、あなたがお金を投げだせば、あなたはまるっきりただの人に成りさがってしまうのです。」
』
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『
「()-いかにして役立たずの人間を愛するか?
いずれそのうちに、ほとんどどすべての男女が、品物や食糧やサービスやもっと多くの機械の生産者としても、また、経済学や工学や医学の分野の実用的なアイデア源としても、価値を失うときがやってくる。だから―もしわれわれが、人間を人間だから大切にするという理由と方法を見つけられなければ、そこで、これまでにもたびたび提案されてきたように、彼らを抹殺したほうがいい、ということになるんです」
』
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まるでニコ動のアホでカオスな動画を見ているような爆笑を誘う作品。訳わかんないんだけどなぜか笑えて、なぜか心に刺さり、なぜか現代の何かを痛烈に批判しているようなショックを与えてくれる。
相続した財産によって金持ちだから働かないアル中のローズウォーターは自衛消防団の運営と巷の落伍者からの電話相談及び小切手による無償援助を営んでいる。親戚や一般人からはその“無駄な”行いがやはり理解できず、彼を精神異常者としてみなそうとして、てんやわんやする。
大雑把に括って利益を行動の指針とする人には、彼の“無駄な”行為が理解できない。だが、現代の、実利主義というか、金本位制というか、“それをやるといくらになるの?OR何がどう変わるの?”という錬金術的な価値観を取り払って彼を見れば結構まともなのかもしれない。例えばマザーテレサのような生き様はまさにローズウォーターの実在人物版(資本を金から自分の体におきかえただけ)だけど、結局のところはどうだろうか。
お金というカミさま。まさにカネさま。カネさまの前では万人が平等。この宗教は至ってシンプルだ。何の解釈も定義も必要としない。カネを多く持てばそれだけ富み、カネがかかればそれだけ価値があると誰もが認める。あれば便利。ないと不便。カネさまを篤く崇拝すれば、その恩寵(衣食住から社会的認知からアイデンティティの確立まで)を受けることが出来る。しかしカネさま法治下の人間はその恩寵と同じくらいの束縛に悩まされる。カネさまの御心を失うかもしれないという恐怖にも苛まれる。カネさまを信じない人・持たない人は衣食住含め社会から徹底的に排除される。カネさまは信者を使って彼らを非人間にする。信者としても、カネさまの力に影響されず幸せに生きる人間は、カネさまに東奔西走する自分の存在をちっぽけなものにする脅威にもなりうるから必死だ。
しかしお金の時代はそろそろ終わるんじゃないんだろうかと個人的に思う。んな馬鹿なと思うが、歴史を見れば今まで何度も“有り得ない、不可能だ”と思われてきたことが実現してきたわけで有り得なくも無い。過去は病に翻弄され、王さまに翻弄され、神さまに翻弄され、戦争に翻弄され、そして経済に翻弄され、、、。未解決の部分もあるが幾度も人間は乗り越えてきたんだし。(作品内での小説では人間は自殺する以外死ぬ方法がなくなったので自殺を奨励している。)
“地球が丸い?あんた馬鹿?”とその時代の100人中100人(つまり100%)が信じて疑わなかったことが今の世では“平面な地球世界を亀が支えて、その下を象が支えて、、ってあんた馬鹿?”になっているわけだ。特に閉塞感、が時代の言葉になっているような今は、案外世界を変えていけることが出来ると思う。ミクシィやスカイプなど金にならない行動が増えてきているのもカネさまの持つ求心力が分散しつつある傾向なんでは??
そんなこんな色々刺激を与えてくれるとんでもない作品です。 -
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ロジャー・ゼラズニイの1960年代中盤までに発表した中短編15作を収録した短編集。
すごく良かった。
40年以上昔の作品なのに、古臭さを感じさせずなんとも言えないカッコよさと深い余韻に浸れるSF短編集でした。この本が今は絶版であるのは勿体無い。
アイデアやプロットや登場人物、シチュエーション等は面白かったり驚かされたりするのに、文章が野暮ったいなあ、回りくどいなあと感じて中身にあまり引き込まれなかったり、その結果友人に勧め難かったりする小説があります。
この短編集は、そのような小説とは異なり、アイデアやプロットは50年代のSF小説にもありそうな古い設定のものもありますが、兎に角カッコよく、一気に引き込まれ、読み終わった後更に含みがあるのではとあれこれ想像しながら心地良い余韻に浸れ、友人にも自信を持って勧められると思いました。
ただカッコよさも、クールさや淡々としているだけというのでは無く、コミカルさや逆にシリアスな状況、深い情感も文章でちゃんと表現されているので、ただのスタイリッシュなだけの小説とは違う味わい深いカッコよさが伝わるのだろうと想像します。
私のこの感想が、野暮ったくて、回りくどいので伝わり難いのですが、私にとってゼラズニイは、クールすぎずホットすぎず”ちょうどいいカッコよさ”を伝えてくれる貴重な作家だなあということです。
この短編集の作品は、どれもカッコよさの中に深い情感とコミカルさまたは哀愁を味わえる、私にとっては傑作ばかりでした。
その中でも特に好きなのは、『その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯』『この死すべき山』、『十二月の鍵』、『伝道の書に捧げる薔薇』、『このあらしの瞬間』です。
<備忘録>
●この死すべき山
惑星ディースルにある誰も征服したことが無い山の登攀にまつわる話。
●十二月の鍵
極寒惑星に適応するため猫形態に改造された人間たちが、新生爆発の影響で目指すはずだった惑星が消滅したところから始まる話。
●その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯
金星の海に棲息する巨大魚竜(通称イッキー)捉えることに命を賭する人々の熱くしかしコミカルにも感じる話。
●伝道の書に捧げる薔薇
探検隊の一員として火星にやってきた詩人(言語学の専門家でもある)が、火星人の歴史的・宗教的文書を読み解いていくことろから始まる話。火星の美しい娘との恋愛も絡んでくる。
●このあらしの瞬間
「白鳥の国」と呼ばれる辺境の惑星で、害獣から市民を守る仕事につく男の話。 -
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PKDの「ユービック」と並ぶ代表作の一つ。「ユービック」に時間の逆行というプロットの中の破綻があるというマイナスポイントを考えると、本作をPKDナンバー1に推す人も多いかも知れない。
謎に包まれ、カリスマも感じさせるパーマー・エルドリッチという存在、そして惑星開拓に伴う移民たちとドラッグ「キャンD」&パーキー・パットの模型セット、更にはエルドリッチが持ち込む新ドラッグ「チューZ]・・・、まさにサイケデリックSF。何度も読み返したくなる異常なまでの名作。
(ハヤカワ・オンライン 書籍紹介から)
謎につつまれた人物パーマー・エルドリッチが宇宙から持ち帰ったドラッグは、苦悶に喘ぐ人々に不死と安寧をもたらした。
だが、幻影にのめりこんで、酔い痴れる彼らを待ちうけていたのは、死よりも恐るべき陥穽だった!
ディックが、現実と白昼夢が交錯する戦慄の魔界を卓抜な着想と斬新な手法で描く傑作長篇! -
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お宝を持ち帰った桃太郎は死ぬまでに何回人間不信に陥ったか。
月に帰ったかぐや姫は朽ち果てるまで何度鼻の穴をほじったか。
人生が映画のようにドラマチックでもメトロノームのように規則的でも、エピローグは上映時間の冒頭から既に始まっているという事をこの小説は喋っている。予想外にてきぱきと終わってしまった人生に面食らう事もなく、終わってしまった物語のパーツを一個一個拾い集めておもちゃ箱に仕舞い込む様子を楽し、めと言われても多分無理な話です。そうです、誰かを奮い立たせるようなお話でも、夢を増幅させるような紙芝居でもないです。ただ【そのあとどうなりました?】【はい、彼はお菓子を作るのが好きです】という、噛み合うようでそもそも始めからお互い噛んですらいない、語り手と世界との通話記録があるだけ。
でも人生の記述文法はそれが一番適切だと思うから、自分は死ぬまでこの本から目を離せない。
無人島に持って行くのも無人島なんて行きたくないと思わせてくれるのも、等しく、この一冊。
これが暖炉だ。なくなっちゃったら、生きていく気が風邪を引く。
【P292】
もう暖炉がないと知ったとき、母は意味深長なことをいった。
「あら、どうしましょう――暖炉がなくちゃ、これ以上生きていく気が起きるかしらん」 -
Posted by ブクログ
SFの長編小説をがっつり読んだのはたぶん初めてだったけれど、おもしろくてするする読めた。今までちょっと避けがちだったのがもったいないと思ったくらい。
ディックはブレードランナーの原作者として有名だけど(『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』)、このユービックの方がディック初心者向きらしい。
SFってパキっと明るいものだとちょっと思ってたけど(思い込みだらけ。。。)、ディック特有なのかは分からないけれど退廃的な印象も強かった。特に中盤あたりのゆるーい絶望感。それがSFと絡み合うと絶妙なんだということを初めて知った。
物語としては、SFだしきちんと読み進めないと途中で分からなくなる系統だと思うけど、それでも一気に読めてしまうのは、ミステリ系を読んでるときの感覚に似てる。
止まらない時間退行、仲間の死…それを食い止められるのは“ユービック”だけ。しかし“ユービック”の正体とは一体?
SFって文章で読んだ世界が映画みたいに映像として浮かんでくるものなんだ…と目から鱗でした。