浅倉久志のレビュー一覧

  • 伝道の書に捧げる薔薇
    村上春樹の文を読む感覚で読むなら、この本は噛めば噛むほど味の出るメタファーのスルメ。
    デニスルヘインの文を読む感覚で読むなら、この本は圧倒的文章美。カッコ良ければヨシ。
    後者の読み方をすすめる
  • アンドロメダ病原体〔新装版〕
    ドキュメンタリー調というだけあって、人物の掘り下げは浅く出来事を刻々と描写していく。
    それでも名作の期待を裏切らず、飽きずにどんどん読ませるスリリングな展開がすごい。

    話の終盤へ読み進めて行く途中、この残りページ数でまとまるん???と心配になりましたが、きちんと終わりました。
    思ったよりあっさりと...続きを読む
  • あなたの人生の物語
    SFは苦手で、10年前に読んだ「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」が最後。そんな私ですが、読書会で推薦された本書は、とても楽しめました。

    本書は8編の短編小説集。表題作は「メッセージ」(2015年/監督 D・ヴィルヌーヴ)の原作。映画は地球外生命体と言語学者の交流を描きますが、時折、言語学者の娘...続きを読む
  • あなたの人生の物語
    8作のSF短編集。全てが本格的で、難しい用語も多く、読むのにめっちゃ時間がかかる。けどおもしろい。

    映画「メッセージ」がどんなふうに表現されているのか観てみたくなった。

    1番好きだったのは「顔の美醜について」かな。友人や恋人を顔で選んでいるつもりは無いけど、結局人は見た目が大部分と思っているので...続きを読む
  • 高い城の男
    初めてフィリップ・K・ディックの作品を読んだ。ストーリーははっきりしている。登場人物の関係性もわかる。緊張感をはらんだシーンも続いて飽きることなく読み進むことができる。度々現れる卦の部分も物語を進める装置としてうまく働いている。ではこの小説全体としてどういう意味なのか?と問われると、うまく答えられる...続きを読む
  • 高い城の男
    原題 The Man in the High Castle

    ”かかる人々は高き者を恐る畏しき者多く途にあり 巴旦杏は花咲くまた蝗もその身に重くその嗜欲は廢る”

    すべては虚しく、
    それでも生きる。

    グランド・ホテル形式で織りなす、
    枢軸国が連合国に勝利した世界の、
    意味の中に無意味な真実を見出す...続きを読む
  • レヴィンソン&リンク劇場 皮肉な終幕
    『刑事コロンボ』『ジェシカおばさんの事件簿』等の推理ドラマで世界を魅了した名コンビが、ミステリー黄金時代に発表した短編小説の数々!

    郵便配達人が知った大事件の秘密を描くデビュー作「口笛吹いて働こう」を筆頭に、コロンボの原型となった殺人劇「愛しの死体」など、田舎町からショウビズ界まで、さまざまな舞...続きを読む
  • あなたの人生の物語
    映画『メッセージ』で著者の存在を知りこの本を手に取ったので、映画よりこちらを先に読んでいたら感想が違ったのだろうかと考えてしまう。映画にはあった描写がなかったから肩透かしをくらったのかも。

    特に気に入った短編は『地獄とは神の不在なり』。天使を自然災害にみたてる作品なんて初めてでワクワクし、そして結...続きを読む
  • ユービック
    現実が何か分からなくなる作品で、
    ディックらしさが出ている。

    ユービックというスプレーが出てくるのだが、
    ユービックの効果がなんなのか分からない、
    敵も味方もわからない。
    でも面白い。

    途中で出てくるCMの宣伝が、
    ユービックの謎を増やし、
    読んでいる者を混乱させる。
  • 伝道の書に捧げる薔薇
    SF。短編集。
    初めての作家。
    以前からタイトルだけは知っていたが、本当にセンスの良いタイトル。
    作品としては、面白い作品も、よく分からない作品もあり、雰囲気も様々。裏表紙の説明通りバラエティ豊か。
    長めの作品の方が面白かった印象。
    表題作、「十二月の鍵」「この死すべき山」「超緩慢な国王たち」が好き...続きを読む
  • 高い城の男
    舞台は、第二次大戦が史実と異なる結果を迎え、ドイツと日本が戦勝国となった世界。敗戦国アメリカの国民は自尊心を失い、両国との狭間で翻弄されていく。
    舞台設定的には、ifモノの歴史が好きな層に受けそうだし、それだけでワクワクしてしまうが、本質としてこの物語が訴えたかったことは、「今、生きているこの世界こ...続きを読む
  • アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

    人間とは?

    初めは見たことの無い用語に面食らってなかなか読む気が起きなかったけれど、中盤から一気に面白くなり、夢中で読みました。
    人間とアンドロイドの境目とは?単に感情あるなし、だけになるのか?
    結局マーサー教とは何だったのだろうか。
    エンターテイメント性もありつつ考えさせられる小説で、素直に面白かったです!
  • 高い城の男
    第二次世界大戦でドイツ・日本が勝利し、日本がアメリカを、ドイツがヨーロッパ、アジアを支配している設定のSF。
    日本とドイツの冷戦的な関係も描かれる。
    物語の舞台は日本に支配されたアメリカ。
    「わかりやすいストーリー」はなく、映画「マグノリア」に似た、多数の登場人物による群像劇的な作品。
    それぞれに共...続きを読む
  • ジェイルバード
    たくさんの買い物袋を提げているホームレスを見かけることがあるが、女性の場合はshopping bag lady と呼ぶ。20年前字辞書を引き引き読んだこの作品で知った単語だが、なるほどと思ったのを思い出した。

    ショッピングバッグ・レディーとして登場するメアリー・キャスリーン・オルーニーの存在は、わ...続きを読む
  • スラップスティック
    「チャンピオンたちの朝食」(1973)の次に発表された作品。

    この作品から、ジュニアが取れて、カート・ヴォネガット名義で発表される。

    「タイタンの妖女」(1959)、「母なる夜」(1961)、「猫のゆりかご」(1963)、そして代表作「スローターハウス5」(1969)に比べると、ややパワーダウン...続きを読む
  • ユービック
    初版1969年の時代に1992年の未来を描いた作品。超能力者から一般人を護るための不活性者を擁する良識機関が存在し、そして冷凍処理された死者との対話が可能になった未来。超能力者を追って月に行ったランシターやジョー・チップ一行だが、相手の策略にはまってしまう。そこからの描写は、時間が逆行する中でジョー...続きを読む
  • タイタンの妖女
    「アンク」が「UNK」になった、
    「私」が「俺」のなるなど、ちょっと変化。
    太田光の解説が秀逸。
  • ユービック
    ディック特有の現実と虚構、生と死のような相反するものの境界を崩し、曖昧にされた世界観が展開される。ストーリーは時間退行現象が始まる中で、少しずつ手がかりを見つけていくミステリーのように読みやすい。前半と後半で全く印象が変わるが、それにしてもコイン投入式のドアはめちゃくちゃ不便そうだし、何より主人公の...続きを読む
  • 高い城の男
    ◯読み終えて素直に思ったことは、この小説に関して自分がどう考えて良いのかよく分からない、ということだった。
    ◯SF小説を読み慣れていないせいなのかもしれないが、解説まで読んでみても、表面的にしかこの小説を説明していない。訳者あとがきであるから当たり前ではあるが。ある種自由に読めると言えば読める。

    ...続きを読む
  • アンドロメダ病原体〔新装版〕
    #日本SF読者クラブ 「未知の病原体」もの。昔、TVで映画版を見た記憶がある。50年以上前に書かれたマイケル・クライトンの出世作でもある。描写に時代的な古さを感じさせるところがあるが、物語としては良くできている。小松左京の「復活の日」をヒントにしてるともいわれるが、架空の報告書の体裁で書かれているの...続きを読む