浅倉久志のレビュー一覧

  • あなたの人生の物語

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    テッド・チャン(1967年~)は、台湾からの移民2世として、ニューヨーク州に生まれ、ブラウン大学(コンピュータ・サイエンス専攻)卒。高校~大学時にも短編を投稿し続けたが採用されず、大学卒業後に創作講座のクラリオン・ワークショップに参加し、講師だったトマス・デニッシュに評価され、1990年のデビュー作『バビロンの塔』でネビュラ賞(米国の作家達が選ぶ、ファンタジー作品に与えられる賞)を受賞。これまでの作品は全て中短編で、1998年の『あなたの人生の物語』でネピュラ賞、2001年の『地獄とは神の不在なり』でヒューゴ―賞(米国の読者達が選ぶ、ファンタジー作品に与えられる賞)とネビュラ賞を受賞。本業はソ

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    2024年06月18日
  • タイタンの妖女

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    81冊目『タイタンの妖女』(カート・ヴォネガット・ジュニア 著、浅倉久志 著、2009年2月、早川書房)
    初出は1959年。1972年に単行本、1977年に文庫本として翻訳され、本書はその文庫本の新装版である。爆笑問題の太田光は予てからファンを公言しており、本書に後書きを寄せている。
    荒唐無稽なSFだが、その中で人間の自由意志や運命についてがシニカルな語り口で展開される。翻訳が古いこともあり要点が掴みにくいのだが、エピローグは非常に感動的。

    〈「だがな、天にいるだれかさんはおまえが気に入ってるんだよ」〉

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    2024年06月13日
  • バゴンボの嗅ぎタバコ入れ

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    ネタバレ


    ●死圏
    ○あらすじ
     成層圏の外側に霊界があって死者がたむろしているとしたら、の世界。
     アメリカが核をソ連に命中させるため、命中したことを確認するために成層圏の外側にUFOを飛ばしたことで、その霊界は発見される。
    ○キャラは何を欲しているか。
     UFOに載った人は、死んだ妻を欲している。打ち上げ計画の最高責任者は、核をソ連に打ち込むことを欲している。計画に参加した科学者は、計画に対して自分が完璧な技術力を発揮したという事実を欲していて(つまり計画の成功)、途中からは霊界の存在の解明を欲している。
    ○感想
     霊界の存在をどうやって博士たちに信じさせるか、のところが面白かった。傍にいる死者が誰

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    2024年04月20日
  • アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

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    抜群のスピード感と心理戦  世界が放射能で包まれ、虫や動物を含む人間以外のほとかの生物が死滅した未来。生きた動物は非常に高価であり、生き物を飼うことはステータスのひとつであった。

     警察組織のひとつで賞金稼ぎのリック・デッカードは本物の動物を手に入れる為、高額な懸賞金がかけられたアンドロイドを破壊する。映画「ブレードランナー」原作。

     サイバーパンクSFの元祖。濡れたアスファルトにネオンが反射する荒廃した街は妖しく、美しい。
     スピード感があり、心理戦がゾクゾクする。なぜアンドロイドを破壊しなければいけないのか、自分自身もアンドロイドではないのか。そんな想いが交錯する。

    「どこへ行こうと

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    2025年12月09日
  • アンドロメダ病原体〔新装版〕

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    科学的描写の細かなことに驚きながら読んだ。その点では比類なき名作と呼んで然るべきだろう。

    ただ、あとがきにある通り登場人物も科学的描写を裏付けるいちパーツでしかなく、ゆえに人間味が感じられない味気ない描写が多い。私は、正体不明のウイルスに不気味な怪人のような人間性を感じながら読んでいたのだが、それもオチであっさりと消失してしまう。
    そこだけ拍子抜けだった…

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    2023年10月12日
  • キヴォーキアン先生、あなたに神のお恵みを

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    「わたしはあなたと物の感じかたも考えかたもおなじだ。たとえおおぜいの人は知らん顔でも、あなたが大切に思っていることを、わたしは大切に思っている。あなたはひとりではない」これは、小説を、物語を読む動機の一つだと思う。自分みたいな考えや感じかたを持つ他人が、何を感じ、どう生きているのかに興味がある。

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    2023年09月03日
  • アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

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    ネタバレ

    今まで人間だった存在がアンドロイドと分かった途端に、「彼」から「それ」へと表現が変わるのが興味深いです‼︎原書で読んでみたくなりますね〜! アンドロイドと人間を識別する尺度として、物事への感情移入度が使われているのも面白いと思いました! この作品に登場するアンドロイド達はとても人間っぽく描かれているので、感情移入度検査で彼らがアンドロイドだと判明する度に驚き、同時に人間とは…?とどんどん疑心暗鬼な気持ちになっていきます笑 昔に書かれた小説ながら、現代でも十分通用すると思いました!

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    2025年12月21日
  • アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

    匿名

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    ディストピアの不思議な世界観と、生物に対する哲学的な命題を扱った作品。
    人間とアンドロイドの境界はどこにあるのか。
    読み終えてから他人の考察や書評が気になるテーマだった。
    読後も考えさせられる作品が好きな読者にオススメしたい!

    #ドキドキハラハラ #ダーク

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    2023年02月14日
  • 伝道の書に捧げる薔薇

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    村上春樹の文を読む感覚で読むなら、この本は噛めば噛むほど味の出るメタファーのスルメ。
    デニスルヘインの文を読む感覚で読むなら、この本は圧倒的文章美。カッコ良ければヨシ。
    後者の読み方をすすめる

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    2022年04月04日
  • アンドロメダ病原体〔新装版〕

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    ドキュメンタリー調というだけあって、人物の掘り下げは浅く出来事を刻々と描写していく。
    それでも名作の期待を裏切らず、飽きずにどんどん読ませるスリリングな展開がすごい。

    話の終盤へ読み進めて行く途中、この残りページ数でまとまるん???と心配になりましたが、きちんと終わりました。
    思ったよりあっさりとした結論でしたが、それはそれでドキュメンタリーテイストを貫いているのかも。

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    2022年03月03日
  • 高い城の男

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    ネタバレ

    初めてフィリップ・K・ディックの作品を読んだ。ストーリーははっきりしている。登場人物の関係性もわかる。緊張感をはらんだシーンも続いて飽きることなく読み進むことができる。度々現れる卦の部分も物語を進める装置としてうまく働いている。ではこの小説全体としてどういう意味なのか?と問われると、うまく答えられる自信はない。
    歴史の逆転する仮説そのものを細かく書き出すことには、例えそれが一つの重要な要素であるとしても、最も大きな意味があるということではないだろう。その小説の中で、その小説のなかの現実とは逆の世界を描いた小説、つまり本当の歴史に近いものが登場人物によって書かれて、読まれているというのはさらに大

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    2021年12月27日
  • 高い城の男

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    原題 The Man in the High Castle

    ”かかる人々は高き者を恐る畏しき者多く途にあり 巴旦杏は花咲くまた蝗もその身に重くその嗜欲は廢る”

    すべては虚しく、
    それでも生きる。

    グランド・ホテル形式で織りなす、
    枢軸国が連合国に勝利した世界の、
    意味の中に無意味な真実を見出す、
    救われないようで救われた人たち。
    …かな?

    それにしても易経とはね。
    決定された未来に一喜一憂し、希望をなんとか(都合よく)読み解こうとするのは、とても人間ぽい。

    「イナゴ身重く横たわる(The Grasshopper Lies Heavy)」という作中作が虚偽の虚偽で、じゃ真実かというとそ

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    2021年12月20日
  • レヴィンソン&リンク劇場 皮肉な終幕

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    『刑事コロンボ』『ジェシカおばさんの事件簿』等の推理ドラマで世界を魅了した名コンビが、ミステリー黄金時代に発表した短編小説の数々!

    郵便配達人が知った大事件の秘密を描くデビュー作「口笛吹いて働こう」を筆頭に、コロンボの原型となった殺人劇「愛しの死体」など、田舎町からショウビズ界まで、さまざまな舞台で展開される、多彩な犯罪物語や怪談といった、謎と興趣に富んだバラエティあふれる作品を収録。

    愛しの死体が最高。ドラマ版の殺人処方箋よりも良いのではないか。

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    2021年09月11日
  • ユービック

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    現実が何か分からなくなる作品で、
    ディックらしさが出ている。

    ユービックというスプレーが出てくるのだが、
    ユービックの効果がなんなのか分からない、
    敵も味方もわからない。
    でも面白い。

    途中で出てくるCMの宣伝が、
    ユービックの謎を増やし、
    読んでいる者を混乱させる。

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    2021年06月07日
  • 伝道の書に捧げる薔薇

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    SF。短編集。
    初めての作家。
    以前からタイトルだけは知っていたが、本当にセンスの良いタイトル。
    作品としては、面白い作品も、よく分からない作品もあり、雰囲気も様々。裏表紙の説明通りバラエティ豊か。
    長めの作品の方が面白かった印象。
    表題作、「十二月の鍵」「この死すべき山」「超緩慢な国王たち」が好き。☆3.5。

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    2021年05月16日
  • 高い城の男

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    ネタバレ

    舞台は、第二次大戦が史実と異なる結果を迎え、ドイツと日本が戦勝国となった世界。敗戦国アメリカの国民は自尊心を失い、両国との狭間で翻弄されていく。
    舞台設定的には、ifモノの歴史が好きな層に受けそうだし、それだけでワクワクしてしまうが、本質としてこの物語が訴えたかったことは、「今、生きているこの世界こそが真実であり、懸命に、前を向いて生きていくしかない。」(つまりあの時ああだったら、本当はこんなはずじゃなんて考えたところで無駄。)ということだと思う。
    そのメッセージを表現するのに、劇中劇として登場人物たちが虜になる「身重くイナゴ横たわる」という本が大きな役割を果たしている。この本は「もし連合国側

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    2021年10月01日
  • アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

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    人間とは?

    初めは見たことの無い用語に面食らってなかなか読む気が起きなかったけれど、中盤から一気に面白くなり、夢中で読みました。
    人間とアンドロイドの境目とは?単に感情あるなし、だけになるのか?
    結局マーサー教とは何だったのだろうか。
    エンターテイメント性もありつつ考えさせられる小説で、素直に面白かったです!

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    2021年01月03日
  • ジェイルバード

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    たくさんの買い物袋を提げているホームレスを見かけることがあるが、女性の場合はshopping bag lady と呼ぶ。20年前字辞書を引き引き読んだこの作品で知った単語だが、なるほどと思ったのを思い出した。

    ショッピングバッグ・レディーとして登場するメアリー・キャスリーン・オルーニーの存在は、わたしにとっては「タイタンの妖女」の主人公マラカイ・コンスタントと同じぐらい衝撃的。よくこんなキャラクターを作り出せるもんだ。

    ヴォネガットらしい何とも言えないエンディングで、ある意味ハッピーエンドといっていいのだろう。読者はなぜか不思議な満足感を得られるのだが、これは最高度の離れ業ではないだろうか

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    2020年07月19日
  • スラップスティック

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    「チャンピオンたちの朝食」(1973)の次に発表された作品。

    この作品から、ジュニアが取れて、カート・ヴォネガット名義で発表される。

    「タイタンの妖女」(1959)、「母なる夜」(1961)、「猫のゆりかご」(1963)、そして代表作「スローターハウス5」(1969)に比べると、ややパワーダウンが感じられるが、それでもヴォネガットはヴォネガットだ。

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    2020年07月19日
  • ユービック

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    初版1969年の時代に1992年の未来を描いた作品。超能力者から一般人を護るための不活性者を擁する良識機関が存在し、そして冷凍処理された死者との対話が可能になった未来。超能力者を追って月に行ったランシターやジョー・チップ一行だが、相手の策略にはまってしまう。そこからの描写は、時間が逆行する中でジョーが中心となっての謎解きの様相を示す。題名となった「ユービック」が重要な小道具となっている。この世界観は映画『マトリックス』のような感じだ。

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    2020年06月27日