浅倉久志のレビュー一覧

  • アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

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    ネタバレ

    人間とアンドロイドの境界はなにか?を非常に考えさせられる面白い作品だった。
    これに対して本作では、他の生き物に対する共感性と定義している。
    しかし主人公リックは動物を買うために、賞金のかかった人間そっくりのアンドロイドを冷酷に感じながらも殺していく。
    この矛盾に対して自分がアンドロイドじゃないのかと自身に疑いをかける場面が印象的だった。
    人間とアンドロイド、双方が人間性、アンドロイド性が混在しており、何が人間を人間と決定づけるのかを考えさせられた。
    タイトルもこの作品にピッタリだと思った。

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    2025年06月26日
  • アンドロメダ病原体〔新装版〕

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    ジュラシックパークの原作者の代表作。限りなくリアリティのある設定で進むので思いっきり没入できた。高校生物の知識で専門的な部分もほぼ理解できた。宇宙探索における地球外生命体と人類の接触について、生物の定義そのものを揺るがす未知の生命体の解明への様々な調査が進む。その中で、ヒトという存在や地球上で共存する生物について、新たな視点が生まれたのが嬉しい。地球上の極限環境にも生物がいるのだから、宇宙に広義の生物が存在する可能性を否定できない。地球ではないところで進化を遂げた生物は、遺伝情報としてDNAを用いなかったり、タンパク質は存在せず未知の物質を持っているかもしれない。そのような生態を見てみたいと強

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    2025年05月16日
  • あなたの人生の物語

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    哲学空想系の脳汁でまくり短編集。
    読み切ってしまうのがもったいないと思いつつ、何度も心を落ち着かせながら拝読。

    少々クセありなので読み手を選ぶかもしれない。

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    2025年05月08日
  • タイタンの妖女

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    太田光が人生でいちばん大事な本として紹介しており興味を持った。
    はじめに主人公がこれからたどる道筋を提示されるが、どのようにそれが達成されるのか全く予想がつかず、とても面白かった。
    自由意志に関するニヒリズム的な解答から、人類の歴史の隠された真実まで描く大きな規模のSFだが、等身大の人間のおかしみを通して語られるため、とても読みやすかった。

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    2025年04月02日
  • タイタンの妖女

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    はじめてのSF小説でしたが、楽しく読めたと思います。わからないことがあってもそのまま読み続けたら、どんどん繋がっていってさらに読みたい気持ちがあふれていきました!

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    2025年03月12日
  • あなたの人生の物語

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    ネタバレ

    短編集。「あなたの人生の物語」、「地獄とは神の不在なり」、「顔の美醜について」の3つが好き。
    「あなたの人生の物語」について
    突然現われたエイリアンとコミュニケーションをとろうとする言語学者の話だった。
    このエイリアンはヘプタポッドと呼ばれることになるのだけど、そのヘプタポッドがとにかく変。頭の下に足みたいな手が生えているので、僕の頭のなかではずっとタコさんウインナーがヘプタポッドだった。歩きかたも変わっている。目が頭の周りについているので前に進むときも後ろへ戻るときも方針転換する必要がないのだ。なので後ろに下るときは、こちらへ来たときの逆再生のように見えてちょっと気持ちわるい。
    時間の捉え方

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    2025年03月11日
  • ユービック

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    文庫本の奥付は1992年の11刷だから、ディックを読み漁っていたのはもう30年以上前。そして、この作品が書かれたのは55年前。見えている世界が、現実なのか虚構なのか、自分は何かに操られてるだけなんじゃないか、なんて見方は、現実の世間では役には立たないけど、確実に自分の人生に影響を及ぼしているなあと思う。

    そういえば、飲み会なんかで、同じ趣味や映画や音楽は話題になるけど、「いやあ、あなたもディック好きなんですか!」とか「バラード、いいですよね」なんて会話にはまずならない。SFってマイナーなんかな…

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    2025年02月23日
  • ガラパゴスの箱舟

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     人間は自然界の頂点に君臨する。一応、そう考えられている。その根拠はいろいろあるが、ひとつには脳の大きさが挙げられるだろう。生物は進化するにつれて、しだいに脳が大きくなっていった。脳が大きければ大きいほど賢いことは、観察からある程度わかる。たとえば、犬はお手や伏せを覚えるので、ウサギよりも賢そうだ。チンパンジーは簡単な記号も扱えるので、犬よりももっと賢い。脳の大きさと知能に一定の関係があるとすると、脳の大きさが最大であるヒトは、生物の中でもっとも賢いことになる。
     だが、もっとよく観察してみると、小さな脳の持ち主たちもなかなか凄いことをやっている。ファーブル昆虫記で有名なスカラベは、ヒツジや馬

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    2025年02月12日
  • タイタンの妖女

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    ネタバレ

    私では理解できないところが多かったので、YouTubeやWebサイトで不明点を補完しつつ理解を進めました

    他者からの解説を見て、継ぎ接ぎですが、理解を進めた上で、思ったことを書き留めたいと思います

    このお話は作者であるカート・ヴォネガットについて知る必要があると感じました

    作者の伝えたかった事は、要約すると

    「地球人の行動は全て決められており、トラルファマドール人の大したことのない出来事のために利用されていた
    だが、自分自身の身近で起こった出来事や身近な人の存在は、自分の人生において大切であり、大きな意味があるという事」

    ではないかと想像されます
    マラカイの人間関係から考慮すると、そ

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    2025年01月06日
  • あなたの人生の物語

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    濃密な8篇の短編集。
    著者自身はアイデアが次々と湧いてくるタイプではないとしているそうだが、各作品で描かれる世界の構成力が半端ない。
    SF的なものの見方・考え方が図抜けているといってもいいかも。標題作もいいけど「地獄とは神の不在なり」の無常感は凄すぎる。

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    2024年11月30日
  • あなたの人生の物語

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    表題作が美しく切ない。ガイ・ドイッチャーの「言語が違えば、世界も違って見えるわけ」をSFにもってきた感じだけど、物語の構成がおしゃれ。

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    2024年11月20日
  • あなたの人生の物語

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    ネタバレ

    『ゼロで割る』
    本質的な理解などできない、意味がないということを、魂と同じように信じていたものから突きつけられてしまった孤独と、それが理解できず苦しむ孤独、分かり合えないものを数学的な視点と重ね合わせて描かれている。絶望と、伸ばした手の行き場がない苦しみがこの数学的問題に直面した数学者たちの痛みをわずかでも伝えてくれるような錯覚をいだいた。

    『あなたの人生の物語』
    どうやったらこんなお話が生まれるんだろう。ヘプタポッドたちの文字に関する化学的な部分の理解は私には難しくて理解しきれなかったけれど、結果としてそこにありながら過去、未来、現在が同時に同じように存在し、その全てを同じように知覚するこ

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    2024年11月07日
  • チャンピオンたちの朝食

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    先月読んだ、『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』のヴォネガット・ジュニアの小説。
    当時のアメリカに対する風刺がおもしろい。
    クェンティン・タランティーノや筒井康隆に通じる。

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    2024年10月23日
  • あなたの人生の物語

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    表題作、僕の読んだ中でいちばん美しい話だった
    自由意志が彼の中の大きなテーマなのだろうな
    僕はなくてもいいと、初めて思えた

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    2024年08月19日
  • あなたの人生の物語

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    ネタバレ

    映画「メッセージ」の原作が短編だったという理由と、映画で描かれたことを小説ではどのように表現されているのか、という好奇心で読み始めた次第だ。

    この作品は短編集で、8篇の物語で構成されている。当然ながら映画原作でもある表題作から読んでみたが、映画のような緊迫した争いごとは特に描かれていない。それよりも言語のデザインを逐次的から同時的に変えることで時間を超越するという発想にこそ重きを置いて、主人公のプライベートなエピソードはその補完として扱われているのだろうと初見では読み取ったのだが、いまひとつ自信のないまま最初の1ページ(「バビロンの塔」)から本作を改めて読み始める。

    「バビロンの塔」は円筒

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    2024年08月03日
  • タイタンの妖女

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    ネタバレ

    壮大な時間軸で語られる物語。
    どんな苦難に見舞われても何処か優しさを感じる文体。
    ヴォネガットの魅力に思わず引き寄せられてしまう。

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    2024年07月26日
  • パーマー・エルドリッチの三つの聖痕

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    中盤以降、継ぎ目なくスムーズに描写される、現実と虚構の絡み合う混沌とした世界に目眩がしそうでした。

    地球は温暖化が進み、ニューヨークでは摂氏82℃を記録するほどの過酷な環境。地球滅亡に備えるために、人々は国連によって火星などの外惑星に強制移住させられはじめていました。しかし、移住した人々を待っているのは、不毛な土地を開墾する退屈な日々。唯一の楽しみは、ドラック「キャンD」を使ってパーキー・パット人形を介在して体現する幻想世界に溺れることでした。

    そんなある日、プロキシマ星系から星間実業家のパーマー・エルドリッチが、新種のドラック「チューZ」を携えて太陽系に帰還します。パーキー・パット人形と

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    2024年07月25日
  • ファニーフィンガーズ ラファティ・ベスト・コレクション2

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    〈カワイイ〉をキーワードにラファティ作品20作を収録した短篇集。


    前半は『町かどの穴』のほうが好みの作品が多いかなと思っていたのだが、後半は「とどろき平」以降ぜんぶ好きだと言っても過言じゃない。「うちの町内」、荒俣宏の傑作アンソロジー『魔法のお店』に収録されてたのか!あのなかでは薄味なので覚えていなかったけど、もう随分前にラファティに出会っていたんだなぁ。以下、気に入った作品の感想。

    ◆「ファニーフィンガーズ」
    ヘパイストスをモチーフに、製鉄という魔術が使える長命者の父娘と、ただの人間な母、娘の恋人のトンチンカンだけど切ないすれ違いを描く。「町かどの穴」もそうだけど、お母さんキャラがある

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    2024年07月21日
  • ユービック

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    フィリップ・K・ディックで一番人気とも言われる本作。まだ全作品を読んでませんが、自分も読んだディック作品の中ではNo.1だと思いました。

    あらすじ
    1992年、企業が超能力者を雇う一方、その勢力に対抗する不活性者(超能力を無効化する者)を派遣する会社が存在する時代。主人公は、反エスパー派遣会社「ランシター合作会社」の主任測定技師のジョー(ジョーゼフ)・チップ。彼は、社長のグレン・ランシターから、ある企業の月面支社が大規模なエスパー潜入の疑いがあるとの依頼を聞き、社長と選りすぐりの不活性者11人と共に月面に向かいます…とこれ以上書くとネタバレになってしまいますね。

    『偶然世界』にも出てきた、

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    2024年08月15日
  • あなたの人生の物語

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    本当に本当に面白い本だった。僕にとってこの本を読む体験は自分にはすこしむずかしい学術書を読む体験に似ていて、ギリギリのところでなんとか食らいついて読みといた先に、驚くべき新しい世界(しかし、優秀な誰かにとっては当たり前な世界)が見えてくるような、そんな読後感が、短編それぞれに対して発生した。そのために読むのに非常に時間がかかってしまった。

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    2024年07月15日