浅倉久志のレビュー一覧

  • ユービック

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    SFの長編小説をがっつり読んだのはたぶん初めてだったけれど、おもしろくてするする読めた。今までちょっと避けがちだったのがもったいないと思ったくらい。

    ディックはブレードランナーの原作者として有名だけど(『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』)、このユービックの方がディック初心者向きらしい。
    SFってパキっと明るいものだとちょっと思ってたけど(思い込みだらけ。。。)、ディック特有なのかは分からないけれど退廃的な印象も強かった。特に中盤あたりのゆるーい絶望感。それがSFと絡み合うと絶妙なんだということを初めて知った。

    物語としては、SFだしきちんと読み進めないと途中で分からなくなる系統だと思う

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    2020年11月24日
  • デッドアイ・ディック

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    何度目かの再読。自分の人生が物語としては不十分で、エピローグばかり長すぎることに気づいてもなお、人はエピローグを生き続けることの皮肉と哀しみ。でも、その哀しみをヴォネガットは優しいまなざしで描く。だから好きなんだと思う。

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    2010年10月27日
  • ガラパゴスの箱舟

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    独自の進化をしたガラパゴス諸島の歴史をなぞるように、生き残った人間たちの苦悩やおかしな進化を描いた作品。
    「巨大脳」を人間の進化で悪と捉えた感覚が面白い。

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    2010年08月23日
  • プレイヤー・ピアノ

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    あらゆる仕事が機械化された時代が背景の小説。(もはやそんなに遠い未来のことでもなさそうだ。)バーもすべてが機械化されて回転寿し屋のように酒が回ってたりする。オープンしたての頃はその目新しさで話題を呼び、大盛況となったのだが、すぐにつぶれてしまう。その数ブロック先に、生身の人間がカウンター内に立ち、ジュークボックスが置かれているバーがあったのだ。結局はみんなそこへ帰っていった。
    そしてここから革命が生まれることになる。この酒場の描写箇所だけはこれがいつの時代だといっても通じる。外へ出れば、未来世紀ブラジルなんですけれど。人間が集まる場は人間を求める。酒場は永遠なんじゃないかと希望を持てた。ただ嬉

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    2010年07月02日
  • スキャナー・ダークリー

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    薬物依存症を実際に体験したF・K・ディックの著書。
    本書は彼が薬を使わずにして書き上げた初めての作品です。
    自分の体験から物質Dという架空の薬物に呑まれた
    囮捜査官のロバートとその周りを取り巻く人々の物語を描きました。
    SFに分類されるのでしょうが、現代的でもあります。
    薬物を責める内容ではありませんが、薬物を使用した者たちの
    生涯を見て恐怖と哀愁を感じずにはいられません。
    どんな薬物防止ポスターよりも効きます。
    映画にもなっていますので、
    厚い本が苦手な方はそちらから入るのもオススメです。

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    2010年04月29日
  • デッドアイ・ディック

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    ヴォネガットの作品は皮肉と温情の闇鍋である。ある部分だけをつまみ出せば、それはあまりに口汚い世間への罵りであり、またある部分を切り取れば、まるで宗教の説話のような訓辞になっている。しかし全体として作品を見れば、どうしようもなくひどい世界でも愛してやまない作者の理想主義である。
    この『デッドアイ・ディック』でも、ライフル銃で妊婦を撃ち殺してしまった少年の人生を、かばい立てすることなくえがいいている。兵器、銃器というものは、使用者の善意・悪意・無為を問わず、使用すれば人を傷つける他はない。中性子爆弾にしてもそうである。見かけがきれいに残っていれば、それは破壊ではないのか。居抜きで占領者が殺戮後の都

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    2009年10月04日
  • スラップスティック

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    笑いと涙。

    そこにあるのは単純な感情ではないはずだ。

    壮大な舞台で見る、
    一人劇のような爽快さと寂しさを
    同時に感じ取れる秀作です。

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    2009年10月04日
  • タイムクエイク

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    トラウトとヴォネガットのグランドフィナーレを飾る、ヴォネガットの最後の長編小説。
    タイムクエイクとは、過去十年をリプレイする現象だ。
    これまで過ごしてきた十年間を、自分の意思とは無関係にやり直さなければならない。
    あのときの事故を防ぐことも、あのときの失敗を防ぐことも、あのときの失言を取り消すこともできない。
    皆一様に、自らのたどってきた、愚かしくも誇り高き十年をなぞる羽目に陥る。
    ところが、リプレイ終了と同時に、自分の意思で行動をしなければならない。
    何にも考えずに行動してきたのに、ある瞬間を境に、「自由意志」のスイッチが入る。

    そうすると、人はどうなるか。たとえば、動く歩道に乗って移動を

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    2009年10月04日
  • スラップスティック

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    副題は「または、もう孤独じゃない!」。ヴォネガット1976年の作品。
    ここでのテーマは拡大家族。そう、ヴォネガットが生涯テーマにした「拡大家族計画」だ。

    「スラップスティック」は、設定も展開も登場人物も、なにもかもがハチャメチャで奇想天外。
    特に、主役のスウェイン医師と姉のイライザとの「お祭り騒ぎ」のくだりは爽快そのものだ。
    この爽快感がヴォネガットらしさなんだなぁ。

    テーマ的としては、「猫のゆりかご」でヴォネガットが提唱したボコノン教をうんと推し進め、
    現実的にしたもののように感じた。
    人びとをカラースで分類した代わりに、「スラップスティック」ではミドルネームを政府が発行し、
    無数のいと

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    2009年10月04日
  • ジェイルバード

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    後期ヴォネガットの代表作のひとつといっていい。
    ヴォネガットらしさに満ちて、構成もうまい。
    「ローズウォーターさん」同様に、ここでのテーマは「金」。
    ヴォネガットは、金や富をファンタジーとして扱う。
    金持ちは、金を用いて富を分配することで世の中をよくしたり、
    人々を救うことができると真剣に考えている。
    違うのは、エリオット・ローズウォーターは幸せだったが、
    「ジェイルバード」のメアリー・キャスリーンはそうとは言い切れなかった、
    といった差だけ。彼らは資本主義社会のファンタジーであり、魔法使いなんだな。

    「ジェイルバード」では、本人の意向や思惑を大きくそれて、誤解の上に待ち受ける、
    思いがけな

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    2009年10月04日
  • プレイヤー・ピアノ

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    ヴォネガット初の長編小説。1952年。
    500ページ近くあり、かなり長いが、やはりヴォネガットは長編がいい。
    最初の長編ということもあり、いつものノリとはちょっと違う。
    まず、なんと言っても時系列順に物語が進んでいる。これはヴォネガット的に珍しい。
    それから、トラルファマドール星人もキルゴア・トラウトもいない。
    あんまりイカレた人は出てこない。しかしながら、「イリアム」という地名が登場する。
    この先何度も出てくるこの地名、わたしは実在の都市だとばかり思っていたら、
    架空なんだそうな。うーん、やられた。

    そんなオーソドックスな手法で書かれたこの作品だが、
    中盤くらいからだんだん箍が外れてくるの

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    2009年10月04日
  • デッドアイ・ディック

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    「デッドアイ・ディック」の主役は銃であり、ドラッグであり、中性子爆弾であり、人々の偏見だ。
    これらがたくみに物語の中で影響を及ぼしてくる。その主役たちの周りで、
    へんてこなダンスを踊らされているのがルディ・ウォールツであり、
    ルディの父であり、母であり、兄であり、ドウェイン・フーヴァーとその妻だ。
    途中途中にさし挟まれるレシピ、これがまたいい。
    そして、人生は演劇だ、ときどき台本までもが登場する。

    「デッドアイ・ディック」は「ジェイルバード」のあと、1982年に書かれた小説で、
    名前から「ジュニア」が取れた『近年の作品』の範疇に入るのではないかと思うが、
    「デッドアイ・ディック」のヴォネガッ

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    2009年10月04日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    昨年4月に逝去したカート・ヴォネガット(本書はカート・ヴォネガット・ジュニア名義)の初期作品。純粋で優しく、暖かい人間を描く事で、その慈愛によってもなお救われない貧民の傲慢と成金の臆病を描き出す。ヴォネガット氏の御冥福を祈りつつ、謹んで星五つ。面白かった・・・・

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    2009年10月07日
  • デッドアイ・ディック

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    なんかいろいろあって気持ちがあっちこっち行くけど最終的には心があったかくなる。
    結局しみじみといい話だなあと思う。

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    2009年10月04日
  • ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを

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    エリオットの生き方は愚かだったかもしれないけれど、他の登場人物もみな愚かで救いようがないんだけど、バカバカしいと笑うよりも泣けてくる。しみじみと。好きな本。
    でもタイトルの日本語訳、クリスチャンは普通、お恵みじゃなくて「み恵み」って言うのでは。

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    2009年10月04日
  • タイムクエイク

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    エッセイ?小説?よく分からない作品。
    本の中心になるストーリーは、時間が突然10年前に逆戻りし、人々はまったく同じ10年間をデジャブの中でリプレイする。それが突然終わった時の混乱で、おなじみのキルゴア・トラウトが活躍する、というものなのだが……。

    冒頭で作者は、「老人と海」を引き合いに出してこう説明する。「老人と海」で釣り上げたカジキはヘミングウェイが書いた長編小説のことで、それが鮫に喰われてしまうのは、批評家たちにボロクソにけなされたことの象徴なのだと。
    釣り上げた魚は食われる前にバラしてしまえばよかったのだ。
    今回、作者は自分の作品が気に入らないので、自分でバラバラにして、いろい

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    2009年10月04日
  • チャンピオンたちの朝食

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    まったく評価されない孤独なSF作家キルゴア・トラウト。
    精神がイカレかけている中古車ディーラーのドゥエイン・フーヴァー。
    彼らは出会い、そして事件が起こる。
    その他いろいろ。

    様々なエピソードと作者直筆のイラストによって、アメリカの、世界の不条理さ、馬鹿馬鹿しさを描き出していく。
    その他いろいろ。

    「その他いろいろ」なんて言葉で世界を括ってしまうとはズルイ。
    時折紹介されるトラウトの作品もかなり笑える。
    その他いろいろ。

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    2009年10月04日
  • ガラパゴスの箱舟

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    SF。しかし哲学的で、むしろそれが主軸なのだ。文体はスタイリッシュ。シニカルでユーモアに満ちた表現が多い。世界を憂いながらも、著者は希望を捨てていないと思う。

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    2009年10月04日
  • スキャナー・ダークリー

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    創元SF文庫から山形浩生さんの訳、「暗闇のスキャナー」の邦題で出ていた"The Scanner Darkly"を、浅倉久志さんが新訳したのがこのスキャナー・ダークリー。

    内容に関しては、ディック後期の傑作ということもあり、色々なところに書かれているので、僕は翻訳の違いに関して感じた事を。

    ハヤカワやサンリオの浅倉久志訳でディックの作品に親しんでいた僕は、山形訳の暗闇のスキャナーの翻訳は言葉が少しシャープ過ぎる感じもしていたけれど、今回浅倉訳が出て、改めて読み比べてみると、登場人物のボブ・アークターが壊れてしまった後なんかは、山形さんの訳の方がしっくり来て、アークターが人

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    2009年10月04日
  • タイムクエイク

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    村上春樹の初期の文体は、ヴォネガットから70%、ブローティガンから30%の影響を受け、そこにチャンドラーの性格設定が加わり完成されたのでは?この3人の中でも、特に僕のオススメはヴォネガット。初めて読んだ時はショックを受けた程、そのスタイルは似ている。しかもヴォネガットは春樹に負けないくらい、いい言葉満載!

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    2009年10月04日