浅倉久志のレビュー一覧
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ヴォネガットの作品は皮肉と温情の闇鍋である。ある部分だけをつまみ出せば、それはあまりに口汚い世間への罵りであり、またある部分を切り取れば、まるで宗教の説話のような訓辞になっている。しかし全体として作品を見れば、どうしようもなくひどい世界でも愛してやまない作者の理想主義である。
この『デッドアイ・ディ...続きを読むPosted by ブクログ -
笑いと涙。
そこにあるのは単純な感情ではないはずだ。
壮大な舞台で見る、
一人劇のような爽快さと寂しさを
同時に感じ取れる秀作です。Posted by ブクログ -
トラウトとヴォネガットのグランドフィナーレを飾る、ヴォネガットの最後の長編小説。
タイムクエイクとは、過去十年をリプレイする現象だ。
これまで過ごしてきた十年間を、自分の意思とは無関係にやり直さなければならない。
あのときの事故を防ぐことも、あのときの失敗を防ぐことも、あのときの失言を取り消すことも...続きを読むPosted by ブクログ -
「デッドアイ・ディック」の主役は銃であり、ドラッグであり、中性子爆弾であり、人々の偏見だ。
これらがたくみに物語の中で影響を及ぼしてくる。その主役たちの周りで、
へんてこなダンスを踊らされているのがルディ・ウォールツであり、
ルディの父であり、母であり、兄であり、ドウェイン・フーヴァーとその妻だ。
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ヴォネガット初の長編小説。1952年。
500ページ近くあり、かなり長いが、やはりヴォネガットは長編がいい。
最初の長編ということもあり、いつものノリとはちょっと違う。
まず、なんと言っても時系列順に物語が進んでいる。これはヴォネガット的に珍しい。
それから、トラルファマドール星人もキルゴア・トラウ...続きを読むPosted by ブクログ -
副題は「または、もう孤独じゃない!」。ヴォネガット1976年の作品。
ここでのテーマは拡大家族。そう、ヴォネガットが生涯テーマにした「拡大家族計画」だ。
「スラップスティック」は、設定も展開も登場人物も、なにもかもがハチャメチャで奇想天外。
特に、主役のスウェイン医師と姉のイライザとの「お祭り騒ぎ...続きを読むPosted by ブクログ -
後期ヴォネガットの代表作のひとつといっていい。
ヴォネガットらしさに満ちて、構成もうまい。
「ローズウォーターさん」同様に、ここでのテーマは「金」。
ヴォネガットは、金や富をファンタジーとして扱う。
金持ちは、金を用いて富を分配することで世の中をよくしたり、
人々を救うことができると真剣に考えている...続きを読むPosted by ブクログ -
昨年4月に逝去したカート・ヴォネガット(本書はカート・ヴォネガット・ジュニア名義)の初期作品。純粋で優しく、暖かい人間を描く事で、その慈愛によってもなお救われない貧民の傲慢と成金の臆病を描き出す。ヴォネガット氏の御冥福を祈りつつ、謹んで星五つ。面白かった・・・・Posted by ブクログ
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なんかいろいろあって気持ちがあっちこっち行くけど最終的には心があったかくなる。
結局しみじみといい話だなあと思う。Posted by ブクログ -
エリオットの生き方は愚かだったかもしれないけれど、他の登場人物もみな愚かで救いようがないんだけど、バカバカしいと笑うよりも泣けてくる。しみじみと。好きな本。
でもタイトルの日本語訳、クリスチャンは普通、お恵みじゃなくて「み恵み」って言うのでは。Posted by ブクログ -
エッセイ?小説?よく分からない作品。
本の中心になるストーリーは、時間が突然10年前に逆戻りし、人々はまったく同じ10年間をデジャブの中でリプレイする。それが突然終わった時の混乱で、おなじみのキルゴア・トラウトが活躍する、というものなのだが……。
冒頭で作者は、「老人と海」を引き合いに出してこ...続きを読むPosted by ブクログ -
まったく評価されない孤独なSF作家キルゴア・トラウト。
精神がイカレかけている中古車ディーラーのドゥエイン・フーヴァー。
彼らは出会い、そして事件が起こる。
その他いろいろ。
様々なエピソードと作者直筆のイラストによって、アメリカの、世界の不条理さ、馬鹿馬鹿しさを描き出していく。
その他...続きを読むPosted by ブクログ -
SF。しかし哲学的で、むしろそれが主軸なのだ。文体はスタイリッシュ。シニカルでユーモアに満ちた表現が多い。世界を憂いながらも、著者は希望を捨てていないと思う。Posted by ブクログ
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創元SF文庫から山形浩生さんの訳、「暗闇のスキャナー」の邦題で出ていた"The Scanner Darkly"を、浅倉久志さんが新訳したのがこのスキャナー・ダークリー。
内容に関しては、ディック後期の傑作ということもあり、色々なところに書かれているので、僕は翻訳の違いに関して感じた事を。
ハヤカ...続きを読むPosted by ブクログ -
村上春樹の初期の文体は、ヴォネガットから70%、ブローティガンから30%の影響を受け、そこにチャンドラーの性格設定が加わり完成されたのでは?この3人の中でも、特に僕のオススメはヴォネガット。初めて読んだ時はショックを受けた程、そのスタイルは似ている。しかもヴォネガットは春樹に負けないくらい、いい言葉...続きを読むPosted by ブクログ
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ヴォネガットの世界観は「タイタンの妖女」でほぼ全て示され、それを補完拡充することがその後の作品。で、その作業の行き着く果て及び結局それを止めた作品。作品というには丸裸すぎるほど生々しい哀しみ。Posted by ブクログ
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破滅的な世界が訪れれば、人間とアンドロイドの区別はできなくなるかもしれない。現実世界だとまだまだ人間との区別がつくと思う。しかし、10年後になるとどうなのだろう。人とのつながりが徐々に消えていくことによって人間としての優しさは失われていくんじゃないだろうか。そうなってくると不特定多数と共感できる融合...続きを読むPosted by ブクログ
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●死圏
○あらすじ
成層圏の外側に霊界があって死者がたむろしているとしたら、の世界。
アメリカが核をソ連に命中させるため、命中したことを確認するために成層圏の外側にUFOを飛ばしたことで、その霊界は発見される。
○キャラは何を欲しているか。
UFOに載った人は、死んだ妻を欲している。打ち上げ...続きを読むPosted by ブクログ -
「人間」とは何か。
「アンドロイド」とは何か。
何が判断基準なのかではなく、どちらも私の中に存在するということか。Posted by ブクログ -
この哀れな生物たちは、ある種の目的はほかの目的よりもっと高尚だという観念に取り憑かれていた。
こんな現代人を別の視点から見て皮肉ったセリフがあるのがSFの魅力だと思うPosted by ブクログ