瀧羽麻子のレビュー一覧
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長く時間をかけてしまいましたが、左京区シリーズを読み終えることができました。
今回は、オシャレな雰囲気の呉服店でバイトをする花と、普段から数学にのめり込む研究生活を送っている龍彦(作中ではたっちゃんと呼ばれることが多い)の京都、左京区を舞台にした恋物語です。
出会いのきっかけはお互いに数合わせの合コンに参加したところから始まりますが、花がたっちゃんのことをもっと知ってみたいと思う感じで惹きつけられているものの中々そこにピンと来ていないたっちゃんの振る舞いが中々面白いなと思います。
恋物語が題材の小説ではライバルの存在も必要不可欠ですが、この小説において花の恋のライバルとなっているのは「数学」。
何とも不思議なライバルを相手に、たっくんにどうアプローチしていくのかというところや、どんなところにやきもきするかというところも読んでていて面白いポイントだと思います。 -
Posted by ブクログ
2025/06/09
以前に読んだ恋月橋のシリーズの3作品目(?)。
恋月橋では主人公は火薬好きの山根でしたが、この作品では山根と同じ大学の安藤が主人公となっています。
幼い頃に桃栗坂の近くの公園で遊んでいた安藤の妹の果菜と、転勤族でいろいろな地方を転々とすることが多かった璃子が出会い、兄の安藤も交えて家族ごっこをすることが多くあった。
それがきっかけか、璃子も安藤のことをお兄ちゃんと呼ぶようになり、厳密にいうと親戚ではないのだがその関係性がずっと続いて2人は同じ大学に通うことになる。
大学でのいろいろな人との出会いも描かれつつ二人の仲が京都を舞台に進展していく過程がとても良い感じになっていると思います。
終始、ふんわりしたストーリーでとても読みやすい作品です。
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大学で気象学の研究をする藤巻博士と彼をとりまく人たちを描いた連作短編。
藤巻先生が彼の妻となるスミと出会った1958年から2022年までの藤巻家四世代の歩みを、6編に分けて時代を追いながら、とても静かに語られる物語たち。
主人公である藤巻博士自身の多くは語られていないけれど、時おり先生の口にした言葉によって、その温かいお人柄がうかがえる。
博士は少し変わった気質だけれど、その傍らでそれぞれ力強く生きる家族の姿がほほえましく、ままならないからこそ、なおいっそう家族が愛おしいと思える、何だか不思議な魅力をもった家族の物語だと思います。
二十四節気に合わせて、藤巻家が行う行事に、とても心が和みます。 -
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頻繁に書評サイトをチェックして、気になった本をリストの下に加え上から順番に借りたりしているので、手元に本が巡って来た時にはその本の何処に興味を持ったのかなどということはすっかり忘れていることも多い。確認して見たらリストには入っていない。はて? あぁ、これは高校の同級生に紹介された本だった。なるほどこの本の何に興味を惹かれたのかわからない筈だ。
「構成がうまい」と元同級生(同級生って、クラスメートという意味合いと、卒業後に、同じ年度に所属していた、という意味合いで使う二つの表現が混在すると常々もやもやしているのだけれど、「元」と付け加えると前者の意味にシュッと収縮するね)が言う通り、話は滑らかに流れてゆく。そう書くと自分の書く感想文的なものを何度か読んでいる人は気付いてしまうかも知れないけれど、そういう風に決められた軌道から逸脱する余裕の無い小説は余り得意ではない。ただ、この小説は大きな仕掛けで読者を振り回そうというタイプの小説ではないので割と抵抗なく読める。
読みながら勝手に連想してしまっていたのだけど(だから、軌道からの逸脱が許されていないという訳ではないとも言えるのだけれども)十代の頃に何故か嵌っていた「少女小説」あるいはジュブナイル小説という方がポリティカリ・コレクトネス的にはよいかも知れないタイプの本を思い出していた。今は亡き氷室冴子とか、もう少しSF的な要素が強かった新井素子とか。それはきっとこの小説がどこかしら人の成長譚に満ちているからなのだろうと思うけれど、そんな風に分析したところで何か自分の中に湧き上がるものが上手く説明できる訳でもない。
他人から見れば、転職、と呼ばれる行為を何度か経験してきたことにはなるけれど、転職エージェントのお世話になったことは実はない。どの場合も現状に満足できない時にふと誘われて職場を変えているけれど、職種を大きく変えたこともない。手掛ける分野の範囲は少しずつ大きくなったけれど、それは大方の人々とて同じことだろう。ただ、この小説が描くように、決断するのはいつも自分でその決断の良し悪しはやり直す機会が与えられない以上(あるいは少し理系的に言うなら不可逆的な行為である以上)振り返って悔やんでみても仕方ない。そのことが割とポジティブに(ポジティブの腑に落ちる訳語って何だろう? 肯定的? 前向き? 明るく?)語られているところは共感するし、好感が持てる。世の中兎角「なんとかガチャ」みたいな言い方をしてあたかもその状況が「交換可能なこと」のように(意識していないとしても)表現されるけど、状況を変えようとすることの根源はやはり自分の中にしかない。それを柔らかい言葉で描いているのがこの小説だ。
何となく、立原あゆみの「麦ちゃんのヰタ・セクスアリス」を久しぶりに読みたくなった。 -
Posted by ブクログ
2025/02/27
天気にとても詳しい藤巻昭彦という大学教授の息子だったり、その家族だったり、親戚だったりといった人たちの半生がこの人を中心に、主人公が移り変わる短編となっている。
物語の中心となる藤巻さんは最初に生い立ち等が語られているが、その後の話ではちょっとしか出てこない。けれども、藤巻家と関わりのある人たちが年月の経過とともに色々な人生を送っている様子が丁寧に描かれていて、時代の移り変わりと家族の関わりや関係性の変化の機微が読んでいて次の展開や中心人物に興味を惹かせるようになっていると思う。
全体的にほんわかする小説だと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『誰かが収穫し、袋に詰め箱に入れて出荷し、さらに幾人もの手を介して消費者のもとに届く。』p18
『梨奈のことも、百合香のことも、つぐみのことも、葉月はほんの一部しかわかっていなかったのだ。目立つ果実だけに目がいって、根も葉も枝も見えていなかった。彼女たちのほがらかな笑顔の裏に隠された苦労や覚悟を、知らなかった。知ろうともしていなかった。』p157
『うずくまっているわが子の体を、母牛がくまなくなめはじめた。胎膜や粘液が舌で拭いとられて毛並みが乾き、血行が良くなるのだ。経験もなく、誰かに教えられたわけでもないのに、子どものためになにをすべきか、なぜわかるのだろう。』p238
スーパーに並べられた鮮やかで新鮮な野菜や果実といった生鮮食品。
自然という予想できない環境で、手間ひまかけて一から育て、出荷されたもの。
この作品を読んだあとに見ると、さらに光っているように見え、ありがたいなあと思う。
お米が高い、野菜が高い、果物が高い。
そんな声が最近特に増えた。私も実際そう思っていた。
けれど、愛情こもった食品に適正なお金を払うのはごく当たり前のこと。高いのであれば、大事に大事にいただけばいい。
農家さんや畜産業の方に感謝。
支えるためにできることを少しずつしていきたい。 -
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タイトルと装丁で衝動買いした本。
買ってから間が空いたが、もっと早く読めばよかった。
砕けすぎず、文学的すぎず、平易すぎず、小難しくなく、ちょうどいい語り口。穏やかなストーリー進行が読んでいて心地よかった。好きなのは「よりみち」「おさきに」、感心したのは「おそろい」。極論、どれも好き。
近年多いカフェもの、ちょっと変わったお店ものってだいたい展開が決まりきっていて、小説によっては退屈にも感じられるが、これは全く飽きない。何度でも読み返したいし、この作家さんを他にも読みたくて、さっそく本屋でお買い上げした。久しぶりに素敵な作家さんに出会えた! -
Posted by ブクログ
2024/12/08
瀧羽麻子さんの作品は本当に好きで色々と読み漁ってます。
この本は、着物を染める職人さんの光山という人物と出会った、こじんまりとした食器販売店を営む紫さん(ゆかりさん)の紆余曲折ある人間関係の模様を描いたお話です。
それぞれの人の雰囲気があるように、着物にもそれぞれの人の良さを際立たせる色があって、それを考えながら着物の染色をする職人さんの人を見る目というのがこの本の描写の中に出てきます。
人の性格や人間性を見抜いてどんな色が合うかを考える、またその色はどんな植物から得られるのかと言った、普段は考えたこともないような世界が描かれていてとても面白かったです。
また、舞台が京都のいろいろな街に準えてあるのも表現がすごく素敵だなと思いました。
知っている町が多い分、イメージがしやすくてこちらも読んでいて楽しかったです。