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お嬢様学校育ちの優子は、高校生になって同級生の富田君と大好きなパン屋巡りを始める。継母と暮らす優子と両親が離婚した富田君。二人はお互いへの淡い思い、家族への気持ちを深めていく。そんなある日、優子の前に思いがけない女性が現れ……。書き下ろし短編「はちみつ」も加えた、ささやかだけれど眩い青春の日々の物語。
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Posted by ブクログ
あなたは、『好きなものはなんですか?』と、『突然』訊かれた場合、なんと答えるでしょうか? これは答えられるようでなかなか難しい質問だと思います。その答えは時と場合、そして相手にもよると思います。”好きなこと”でもなく、『好きなもの』という設問が答えを難しくしてもいます。また、『突然』という設定も微...続きを読む妙です。人は慌てると何を口走ってしまうか分かりません。 とは言え、一般的には、その『質問の意図としては趣味・特技あたりが聞きたかったのだ』とは思われますが、確定的なことはその場にいないとなかなか類推も難しいものだと思います。 さてここに、『好きなもの』を訊かれて、『パンです』と答えた一人の女子高生が主人公となる物語があります。『つっこみにくいコメントをしてしまった』ことで、『みんなちょっと困った顔をしているのがわかった』と焦る女子高生が描かれるこの 作品。そんな時、助け船の如く言葉を続ける存在が登場するこの作品。そしてそれは、『パン好き』なあなたに送るどこまでも優しく紡がれる物語です。 『優子ちゃん、そこに座ってちょうだい』、『これじゃわたし、聡子さんに申し訳がたたないわ』と『鎮痛な表情』を浮かべる『ミドリさんの向かいの席に』『おとなしく』『腰かけた』のは主人公の優子。『ミドリさんというのは、わたしの義理の母だ。いわゆる教育ママというわけではないけれど、極度に心配性で過保護』とミドリさんのことを思う優子は、一方で『わたしたちはとても仲がいい』と二人の関係を思います。しかし、今、『深刻そうな表情でわたしの持ち帰った成績表をながめている』ミドリさんを見て、『小さい頃からそうだった。わたしが何か困ったことをしでかすと、ミドリさんはわたしの死んだ母親の名前を持ち出』すとも思います。『正直に言ってしまうと、聡子という固有名詞そのものは、ちっともわたしの心を動かさない』、『生物学上の母親であり、わたしが三歳のときに病死してしまったそのひとのことを、わたしは何ひとつ覚えていないのだ』と思う優子。そんな優子は一方で『聡子はもういないのに、ミドリさんだけがいつまでもその影に縛られている』と、『子供心にも不当なことに思』います。そんな『苦労を』『ミドリさんに』『かける原因となった』優子の『父親は、大手の商社に勤めるサラリーマン』であり、『今年の春から、ロンドンに単身赴任してい』ます。『高校合格が決まった直後に転勤の話が出たので』『絶対に日本に残る、と言い張った』優子。 場面は変わり、『ミドリさんの心労をとりのぞくべく美和ちゃんが我が家に呼ばれたのは、その一週間後』でした。『もちろん』『家庭教師をつけるなんて面倒で気が進まなかった』ものの、『長い夏休みの間中、ミドリさんに聡子攻撃をかけられ続けるのも嫌だった』という優子は、『高校に入って早々にこの成績では、やはり少しまずいかもしれないとも思』います。そして、『こんにちは』と現れた『美和ちゃんは、大学院の二年生だと』自己紹介します。『来年からは博士課程に進むんです』と言う美和は、『物理学』を専攻していることを説明します。そして、スタートした新しい日々のなかで『思ったとおり、美和ちゃんとわたしは気が合った』、『大事なのは、相性』と考える優子は、『学校の授業の百倍くらい分かりやすい。しかも、どんな科目でも教えてくれる』と『美和ちゃんの家庭教師としての腕』を『かなりよかった』と思います。『どうしてこんなわけのわからない数式を解かなきゃいけないの?』、『ていうか、元素記号って意味あんの!?』と優子が『文句を言うたびに』、『頭は使わないとなまっちゃうのよ』、『まだ若いんだから、意義のあることだけに集中するには早すぎるよ』等『きちんと答えてくれる』美和ちゃん。そんな『美和ちゃんには、ミドリさんにはちょっと言えないようなこともすんなり言えた』という優子は、それが『たとえば、富田くんのこと』だと思います。『始まりは、パンだった』と、『第一回目のホームルーム』の『慣れない共学の雰囲気』の『自己紹介』を思い出す優子。順番が回ってきて『立ち上がり、名前と住んでいるところを言い』、入学した理由を説明し、『よろしくお願いします、と言って座ろうとしたそのとき、誰かが突然、「好きなものはなんですか?」』と質問します。『好きなもの?唐突に聞かれ』『頭の中がまっしろになった』優子は、『たぶん質問の意図としては趣味・特技あたりが聞きたかったのだと思』ったものの『とっさに、「パンです」と言ってしま』います。『パン?』と、『教室の空気が少しとどこおる』中、『みんなちょっと困った顔をしているのがわかった』優子は、『しまった、つっこみにくいコメントをしてしまった』と思います。そんな時、『はい!僕もパンが好きでーす』と、『ななめ前の席の男の子が立ち上がって、おおげさな身ぶりで握手を求めてき』ました。『みんな一瞬きょとんとして、そしてどっと笑う』という雰囲気の中、『文化祭は一緒にパン屋やりませんか?』と続ける男の子は『おまえとはやらねーよ、と野次られつつ』、『わたしの手を握ってぶんぶんとふ』ります。『手のひらが熱かった』と思う優子にとって、それが『ふらっときちゃった』瞬間であり、その男の子が富田くんでした。『実際、わたしは本当にパンが好きだ。三食パンでも全然困らない』という優子。そして、『一週間ほどして、帰り道にたまたま富田くんに会った』優子は『で、優子ちゃんはどんなパンが好きなの?』と訊かれます。『唐突に聞かれ』『またしても緊張』する優子ですが、『優子ちゃんって呼んだ、今?』と言葉を振り返ります。そして、『かたくて甘くないパン』と『動揺をなんとか隠しながら答えると、「おれも、おれも」』と、『うれしそうに言う』富田くんに、『パンが好きってほんとだったんだ』と呟く優子。それに『自己紹介で嘘ついたらだめでしょう』と『屈託なく笑う』富田くん。そんな二人はパンの話題でもりあがります。『今からパン買いに行く?』と訊く富田くんに『行く』と返す優子は『並んでみると、富田くんはわたしよりもだいぶ背が高いことに気がつ』きます。『さっき話していたときは、さりげなく身をかがめて、わたしの目線に合わせてくれていた』と気づく優子。そんな優子の高校生としての日々が描かれていきます…という一つ目の短編〈うさぎパン〉。やわらかい文体によって優しく綴られていくれ物語の中にまさかの真実が浮かび上がる好編でした。 “お嬢様学校育ちの優子は、高校生になって同級生の富田君と大好きなパン屋巡りを始める。継母と暮らす優子と両親が離婚した富田君。二人はお互いへの淡い思い、家族への気持ちを深めていく。そんなある日、優子の前に思いがけない女性が現れ…。書き下ろし短編「はちみつ」も加えた、ささやかだけれど眩い青春の日々の物語”と内容紹介にうたわれるこの作品。ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞した瀧羽麻子さんのデビュー作です。 そんなこの作品をご紹介するのに欠かせないもの、それが『パン』です。そもそも書名が「うさぎパン」というおおよそ小説の書名には思えない名前がつけられているということはありますが、物語本文にも、そんな『パン』の描写が登場します。幾つか見てみましょう。まずは、主人公・優子の『パンの好み』を説明するものです。 『わたしは基本的にシンプルなパンが好きだ。生地もかための素朴なのがいい。小麦粉だけでなく、全粒粉やライ麦粉などのバリエーションもおいしい。プレーンもいいけれど、トッピングとしては、レーズンやいちじくなどのドライフルーツ、チーズ、あとはハーブなども大歓迎』。 書名の「うさぎパン」のイメージとは少し異なり、どちらかと言うと大人びた雰囲気も感じます。いずれにしてもここまでハッキリと説明ができることからも優子が『パン好き』であることには間違いありません。では、そんな優子の前に現れた男の子・富田くんはどうでしょう? 『おれは変にこってる菓子パンってだめ、ごてごていろいろのせちゃってさ』、『やきそばパンとかもね、おかずは別にしてほしい』、『コンビニの袋入りのパンも!あれはパンをばかにしてる!』 こちらはこちらで主張が激しいです。私は『やきそばパン』が大好きなので、この富田くんの意見には同意しかねますが(笑)、いずれにしても二人の相性という点では、ぴったりのようです。『たかがパン、されどパン』という二人。そんな二人が一緒に初めて入ったパン屋さん『アトリエ』に並ぶ『パン』の描写も見てみましょう。『パンのいいにおいがたちこめている』という店内です。 『太さと長さの違うバゲットが何種類か、バスケットにささっている。棚には、ふっくらとしたクロワッサン。ぱりっとした表面の小さな丸いパン。雑穀入りと思われる、ごまのまぶされた細長いパン。りんごののった、つやつやしたデニッシュもある』。 大好きな『パン』に囲まれ『目移り』する優子の姿が描かれていきますが、兎にも角にも美味しそうです。この作品は”食”を前面に出す系の作品では全くありませんが、どこまでもやわらかく描き出されていく物語の中に、この『パン』の描写は極めて親和性が高いものだと思います。恐らくご飯系では全く違った雰囲気になると思われ、『パン』の持つ雰囲気感を上手く活かした作品だと思いました。 では、そんな物語に登場する人物を整理しておきましょう。基本的に以下の五人だけで完結する物語です。 ● 「うさぎパン」の登場人物たち ・優子: 主人公。十五歳。高校一年生。中学まで女子校、高校から共学校に通う。『パンが好き』。 ・ミドリ: 優子の『義理の母親』。三十八歳。『おだやかで優しいひと』、『ぱっと目立つタイプの美人ではないけれど、品のいい顔立ちと、つややかな黒い髪の持ち主』 ・聡子: 優子の『生物学上の母親』、『三歳のときに病死』。優子は『何ひとつ覚えていない』、『お母さんと呼ぶより聡子というほうが』『しっくりくる』 ・美和: 優子の『家庭教師』、二十八歳、大学院の二年生(物理学専攻)、『体のつくり全体がほっそりとしていて華奢』、『童顔だから、美人というよりはかわいいという感じかな。高校生と言ってもとおりそう』 ・富田くん: 優子のクラスメイト、『パンが好き』。『笑うと犬みたいな顔になる』。優子より『だいぶ背が高い』 物語は、小学校から高等学校までの一貫教育の女子校に通っていたものの『電車とバスを乗りついで二時間もかかる』という通学の負担から、『高校受験』で共学の高等学校に入学した主人公の優子の日常が描かれていきます。物語は終始、優子視点で描かれていきますが『一学期最期の日、大変なことが起こった』という物語の始まりに『義理の母親』であるミドリとの関係性が描かれ、そこに『家庭教師』として美和が現れ、『パンが好き』という共通点から関わり合いを持つようになっていく富田の存在が順に描かれていきます。そして、そんな物語にひとつ特別な位置付けをされているのが、優子の『生物学上の母親』である聡子の存在です。 『これじゃわたし、聡子さんに申し訳がたたないわ』 悪い成績をとった優子にそんな風に詰め寄るミドリ。しかし、当の優子にとってそんな聡子の存在は全く異なります。 『生物学上の母親であり、わたしが三歳のときに病死してしまったそのひとのことを、わたしは何ひとつ覚えていないのだ。お母さんと呼ぶより聡子というほうがわたしにはしっくりくる』 三歳という幼き日に死別するというのはこういう感覚なんだろうと思いますし、これはやむを得ないとも言えます。しかし、自分の母親を『お母さんと呼ぶより聡子というほうがわたしにはしっくりくる』という感覚は若干の違和感を感じます。聡子の存在はこの作品の中で一つのキーになってもいきます。とは言え、これ以上はネタバレになってしまいますので、このレビューではこのくらいにしておきたいと思います。 さて、この作品は兎にも角にも優しく柔らかな雰囲気が満ち溢れる中に展開していきます。瀧羽麻子さんの文体の柔らかさがまず挙げられると思いますが、登場人物の性格、そして優子との関係性も含め、すべてが穏やかに展開する物語は、読んでいて人の優しい心の内面に触れる思いです。 そんな中で”青春”のキュン♡とした思いをくすぐるのが、優子とクラスメイトの富田くんとの関係性でしょう。 『デートというよりも、同好会の課外活動と呼んだほうがしっくりくる。富田くんとわたしは、部活仲間、あるいは(美和ちゃんいわく)同好の士、ということになる』。 そんな風に始まった富田くんとのパン屋さん巡りの日々は、あまりの初々しさ、微笑ましさに、これぞ”キュン♡”な雰囲気感に満たされていきます。そういう意味でもこの雰囲気感はこの作品にはなくてはならないものだと思います。 そして、〈うさぎパン〉に続くこの作品の後半には〈はちみつ〉という短編が書き下ろされています。この〈はちみつ〉の主人公は〈うさぎパン〉で優子の『家庭教師』を務めている美和の幼馴染の桐子という女性視点で描かれるものですが、〈うさぎパン〉と全く同じ世界観の中に描かれ、かつ〈うさぎパン〉の登場人物がさりげなく登場する連作短編を構成しています。こちらも良い味を出してくれる好編であり、この作品は、〈うさぎパン〉と〈はちみつ〉、雰囲気感を共にするこの二編が紡ぎ出してくれる独特な雰囲気に浸る物語、これこそがこの作品の楽しみ方なのだと思いました。 『始まりは、パンだった』。 『パン好き』であることを共通項に関わり合いを深めていく主人公の優子とクラスメイトの富田くんの姿が微笑ましく描かれていくこの作品。そこには優しい雰囲気感の中に描かれる一人の女子高生の日常を描く物語がありました。優子という女の子にどんどん知り合いになっていくかのような感覚で読めるこの作品。美味しそうな『パン』が物語を演出するこの作品。 幅広い年代の読者に幸せな読書の時間を提供してくれる素晴らしい作品でした。
2024/08/31 瀧羽さんの本をさらに買ってみた。巻末の書評に「精神疲労時の栄養補給に」という表現が使われていて、まさにその通りの作品だなと思いました。 主人公の優子は単身赴任で父が不在の家に、再婚相手のミドリさんと一緒に暮らす高校生で、ある日、家庭教師で大学院生の美和さん(美和ちゃん?)が来る...続きを読むところから始まる物語です。 これだけだとタイトルのうさぎパンって何?かと思いますが、優子の気になる人である富田くんは、父親がパン屋をやっている人でそこと関係があります、 どう関係してくるかはぜひ読んでみてほしいなって思います。 人が当たり前にしていることが優しい表現とか優しい流れで進んでいくお話で、読んでて本当に心が癒やされていくような気がします。
ちょっと疲れている時、余裕がない時に読むと、心が落ち着く小説。 何気ない日常にちょっとしたスパイス(?)が加わって読みやすく面白い。 パン屋さんに行きたくなった。週末に行こうかなぁ。
古本屋さんで偶然手に取り読みました。 「うさぎパン」も「はちみつ」どちらも好きでしたが、「はちみつ」の登場人物に年齢が近いので感情移入することが多かったです。 最後のベンチで2人、食事をする場面からが特に好きでした。
読みやすいです。日常系なので気持ちが浮き沈みせず読むことができ、読みながら温かい気持ちになりました。そして、パンが無性に食べたくなりました。
「目は赤いゼリービーンズ、鼻はレーズンで口がチョコレート。」(p121)ツヤツヤもちもちでこんがり健康小麦肌。私の大好きなうさぎ形のパンを大好きな彼が焼いて手渡ししてくれるーーーああなんという事でしょう。想像するだにときめきが押し寄せすぎてわたしの心の内は鳥獣戯画よろしくうさぎの大群が湧き出てきてマ...続きを読むツリダワッショイタッタタラリラ状態になってしまった訳であります。 初読み・瀧羽麻子先生のデビュー作(厳密には初書籍化作?)の表題〈うさぎパン〉とそのスピンオフ作〈はちみつ〉の2話収録。パンの美味しさを引き立てるはちみつの付け合わせ。最高です。 〈うさぎパン〉…高校一年生同士の甘酸っぱい…もとい、芳醇で香しいパンがつなぐ青春恋愛物語。主人公である高校生カップルその1〈優子〉と〈富田くん〉と、カップルその2として優子の家庭教師である大学院生〈美和〉と美和が通う大学のゼミの先輩〈村上さん〉というふた組の恋人たちが織りなす成長劇を見守るはなし。 メインとしては優子と富田くんの瑞瑞しい恋模様をニヤニヤしつつ羨ましいなと思いながら眺めていく訳であり、歳上の同性である美和が優子に大きく影響を与えるという王道を踏まえつつ、なんと途中で幽霊まで登場するというちょっと不思議な展開を迎える。正直この辺のくだりに関してはさらっと流される感じなので「なぜ幽霊が?え?」と戸惑いを感じるのは確かだが、「細けえこたぁ良いんだよ!」と押し切れるくらいの絶対的な爽やかさと感動が心地良い短編。 徐々に親しくなってきたけどまだ恋人未満の関係時点、いつもよりちょっとだけ遠出した時に富田くんが優子の事を「隊長」(p52)と呼ぶ距離感とかたまんなく好き。 優子の年齢の割に落ち着いた性格を「ラムレーズン」(p26)を選ぶ女子高生と描写しているのも成る程と思うし(ついでに、優子の友達〈早紀〉の活発で社交的な性格を「マンゴーアイス」(p25)を選ぶ子、と対照しているのも上手いと思う)、「美和ちゃんはわたしのことをゆうこ(なぜか、優しいに子供の子の「優子」ではなくて、ひらがなの「ゆうこ」に聞こえる。そこにどういう違いがあるのか、説明はできないけれど)ちゃんと呼ぶ。」(p16)みたいな絶妙な感覚とか、なんかわかる気がするし、美和の声音とかイメージ出来てきてより物語に没入できる一因になっているのかなと感じた。 〈はちみつ〉…1話目と同じように恋にまつわる話でありながら雰囲気は随分と違う。若さや不思議さといった面に替わり、落ち着きやしっとりさをまとったはなし。もしやと思ったけど幽霊は出ません。優子と富田くんはニアミス出演しますが。 大失恋をしたばかりの美和の友人〈桐子〉が主人公。はじめは食事が喉を通らない状態だったが、美和の働きかけと時間がちょっとずつ桐子を前向きにさせ、やがて再びの恋の予感を醸し出しつつのラスト。 理系研究室の様子や人間像が妙に生々しくリアルに描かれているのもポイント。 元気と滋養を得られる、まさに栄養成分たっぷりの一冊。 しかと堪能を致しました。 22刷 2024.2.3
パン好きという共通点がある、富田くんとのパン巡りを通して恋に落ちてゆく2人の姿がなんとも微笑ましかった。少し特殊な家庭環境で家庭教師が実は前の母の顔も持っているというのが面白い設定だった。 また、短編の「はちみつ」もほのぼのして良かった。最後には大好きなパンを再び食べられるようになってほっとした。
実家で昔読んだことがあり、最近たまたま古本屋で見つけたので再読してみた。 が、内容を一切覚えておらず、ほぼ初見だった。 最近ふわふわした恋愛を身近に感じられていなかったので、高校生のかわいい、ほっこりする恋愛を読ませていただき温かい気持ちになった。温かい気持ちになると同時に、少しファンタジーが入...続きを読むり混じるところが最高に良かった。ふわふわした話ではあるんだけど、それめちゃくちゃ分かる、リアル、とも思える話。 特に好きだったのは、この文章。 「またいつでも買いに来よう」 買いに来て、ではなく、買いに来よう、と富田くんは言った。 むちゃくちゃ、もうむちゃくちゃわかる。たったの一言なんだけど、「買いに来て」でもまあいいんだよ、だって父親の店だから。でも、これからも2人で一緒にパンを食べたい、という富田くんの意志が「買いに来よう」っていう言葉からしっかり伝わってくる。これって多分英語にしたらわかりやすい。英語の正しさは知らん。 "Come to my bakery to buy breads!" "Let's go to my bakery together!" 今書いてて思ったんだけど、「買いに来よう」は(一緒に)が含まれてるわけ!!あと、単に「パンを買うこと」だけが目的じゃないんだなって気づいた。それが!!うれしい!!とは言いつつ妄想膨らみすぎかも。 しかも、「いつでも」って言ってくれるところがね。また良いんだよね。 書き下ろしの「はちみつ」もめちゃくちゃよかった。やっぱり、一緒にご飯を食べられる人って大切な人だと思う。食の好み然り、食べ方とか、ここって大事な部分だなって思った。 は〜こんな恋愛したいな〜。
パンはやっぱり、しあわせの味
パンにまつわるショートムービーのような作品でした。パンの焼きたての香りを思い出しながら読みました。登場人物は自然体で、どこにもいそうなひとたちですが、それぞれの人生があり、葛藤もあります。それを、見事にパンが結びつけてくれます。素敵な作品でした。
#ほのぼの #泣ける
出産を頑張って子育てをしても、物心がつく前に別れたら記憶には残らないのかもしれない。 記憶に残るために子育てをするわけではないけど、悲しい。 入りやすい器に入って、一日のほんの数分でも子どもと話せたらどんなにいいか。 生みの親、育ての親血のつながりはどれほど大切なのか。
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