瀧羽麻子のレビュー一覧
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『ありえないほどうるさいオルゴール店』の続編。舞台は北の運河の街から南の珊瑚礁の小さな島へ。「ガジュマルの店」と呼ばれるオルゴール店の店主はお客様の心に流れる音楽を聞くことが出来る。ここを訪れるお客は、言葉でうまく言い表せないもどかしい気持ちを、心の中の音楽を通して気づき、思いを解きほぐしていく。
店主とお客さんのやりとりが説教くさくなくて自然で優しい。優しく澄んだオルゴールの音色で、大切な思い出の曲が流れてきたら、人生の悲しみや痛みも和らいでいくかもしれない。
私も自分の中にある曲をオルゴールにしてもらいたくなりました。一体何が流れているのか、店主に聞いてもらいたい。ちょっとだけ、タロット占 -
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長く時間をかけてしまいましたが、左京区シリーズを読み終えることができました。
今回は、オシャレな雰囲気の呉服店でバイトをする花と、普段から数学にのめり込む研究生活を送っている龍彦(作中ではたっちゃんと呼ばれることが多い)の京都、左京区を舞台にした恋物語です。
出会いのきっかけはお互いに数合わせの合コンに参加したところから始まりますが、花がたっちゃんのことをもっと知ってみたいと思う感じで惹きつけられているものの中々そこにピンと来ていないたっちゃんの振る舞いが中々面白いなと思います。
恋物語が題材の小説ではライバルの存在も必要不可欠ですが、この小説において花の恋のライバルとなっているのは「数学」。 -
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2025/06/09
以前に読んだ恋月橋のシリーズの3作品目(?)。
恋月橋では主人公は火薬好きの山根でしたが、この作品では山根と同じ大学の安藤が主人公となっています。
幼い頃に桃栗坂の近くの公園で遊んでいた安藤の妹の果菜と、転勤族でいろいろな地方を転々とすることが多かった璃子が出会い、兄の安藤も交えて家族ごっこをすることが多くあった。
それがきっかけか、璃子も安藤のことをお兄ちゃんと呼ぶようになり、厳密にいうと親戚ではないのだがその関係性がずっと続いて2人は同じ大学に通うことになる。
大学でのいろいろな人との出会いも描かれつつ二人の仲が京都を舞台に進展していく過程がとても良い感じになっている -
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大学で気象学の研究をする藤巻博士と彼をとりまく人たちを描いた連作短編。
藤巻先生が彼の妻となるスミと出会った1958年から2022年までの藤巻家四世代の歩みを、6編に分けて時代を追いながら、とても静かに語られる物語たち。
主人公である藤巻博士自身の多くは語られていないけれど、時おり先生の口にした言葉によって、その温かいお人柄がうかがえる。
博士は少し変わった気質だけれど、その傍らでそれぞれ力強く生きる家族の姿がほほえましく、ままならないからこそ、なおいっそう家族が愛おしいと思える、何だか不思議な魅力をもった家族の物語だと思います。
二十四節気に合わせて、藤巻家が行う行事に、とても心が和み -
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頻繁に書評サイトをチェックして、気になった本をリストの下に加え上から順番に借りたりしているので、手元に本が巡って来た時にはその本の何処に興味を持ったのかなどということはすっかり忘れていることも多い。確認して見たらリストには入っていない。はて? あぁ、これは高校の同級生に紹介された本だった。なるほどこの本の何に興味を惹かれたのかわからない筈だ。
「構成がうまい」と元同級生(同級生って、クラスメートという意味合いと、卒業後に、同じ年度に所属していた、という意味合いで使う二つの表現が混在すると常々もやもやしているのだけれど、「元」と付け加えると前者の意味にシュッと収縮するね)が言う通り、話は滑らか -
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2025/02/27
天気にとても詳しい藤巻昭彦という大学教授の息子だったり、その家族だったり、親戚だったりといった人たちの半生がこの人を中心に、主人公が移り変わる短編となっている。
物語の中心となる藤巻さんは最初に生い立ち等が語られているが、その後の話ではちょっとしか出てこない。けれども、藤巻家と関わりのある人たちが年月の経過とともに色々な人生を送っている様子が丁寧に描かれていて、時代の移り変わりと家族の関わりや関係性の変化の機微が読んでいて次の展開や中心人物に興味を惹かせるようになっていると思う。
全体的にほんわかする小説だと思います。