伴名練のレビュー一覧
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伴名練編のSFアンソロジー。「SF単著を刊行していない作家」という条件に当てはまる比較的若いSF作家の作品で、AI・歴史改変・バイオテクノロジーなど各SFサブジャンルからは被りなく選んで、しかもそれぞれのサブジャンルを彩ってきた日本SFの作品の歴史も解説付きという、どこから見てもSF愛に溢れたアンソロジー。まぁまず800ページという物量感から愛が伝わってくるよね。あとがきで述べられている通り入れられなかったサブジャンルはいくつもあるんだろうし、SFサブジャンルってきれいに分けられるものでもないから難しいけど、でもSFに興味のある方にSFという宇宙の広大さを知ってもらうには良い本かと思う。
作品はどれも面白いものばかりで日本SFの未来の明るさを感じたが、「ショッピング・エクスプロージョン」は小学生のときにたまたま手にして恐らく私が初めて読んだSFであろう椎名誠『アド・バード』を思い出して感慨深かった。 -
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『学校の怪談じゃ、ものたりない? 君に綴る5つの恐怖』。澤村伊智・内藤了・梨・伴名練・藤ダリオによる豪華書き下ろし短編集。高校生を主人公にした5つの物語は、怪談からデスゲーム、モキュメンタリーまで恐怖のバリエーション豊か。
私は澤村伊智さんを目当てに買ったのだが、期待以上だった。大人ではなく、高校生に向けて書くならこの書き味で読み味になるだろうと思う
ホラーは露悪や冷笑と距離が近いジャンルで、それ自体は悪いことではないのだけど、高校生へ向けるというのなら少し風通しのよさというか爽やかさがほしい。大人にあてて書いたものなら削がれてしまうような要素こそほしい
そういう期待に華麗に応えてくれていて、ただ怖いや恐怖による絶望とかで終わらないホラーを書いていて、本当にこの作家が好きだなと思った -
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SF小説は星新一くらいしか読んだことないSF初心者
1話目から、これがSFか!と必死に設定を理解しながら読んだ。でも苦はなくどんどん惹き込まれる。
特に印象に残ったのは、表題作の『なめらかな世界と、その敵』とラストの『ひかりより速く、ゆるやかに』の2つ。
1話目の『なめらかな世界と、その敵』は、冒頭から何が起こってるのかの理解に必死だったけど、すごく惹き込まれた。
どの話も元になったお話とかがあるのかもしれないけれど、まずこういう世界観を思いつくのがすごいし、そのうえでそこから弾き出された人間の心情を捉えすぎててすごい。
当たり前にみんなが出来ることを自分が出来なくなったことで、それまで見えなかったことが自分だけ見えるようになってしまった孤独。
話の展開もすごくよかったー!青春。
『ひかりより速く、ゆるやかに』は読み終えてからも、語られなかった部分とかその後のこととか妄想しちゃって余韻がすごい。
特に印象的だったのは、低速化が起こってからの世間の流れ。
中の人たちが消費されたりどこかで炎上が起こる様子、物流や人の流れの変化、時が経ち関心が薄れていく空気感、どれもとてもリアルだった。実際に起こったらこうなりそう。
こちらも、話の展開がすごく面白くて好きだったーー。
この本が読めてよかった。
斜線堂有紀さんの解説も、あとがきも、物語への理解や感情を深めてくれた。
そして解説で知ったけど、「日本SFの臨界点」シリーズって伴名練さんが編者だったんだ。次のSF小説はその中からチャレンジしなくては! -
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文庫本で過去最厚かな。しかし、ジャンルが多様で全部違って、それぞれの作品が秀逸なんで、全然長いと思わずに読み終えた。特に好きだなと思ったのは以下。
Final Anchors:意志を持ったAIが持つ葛藤っていう設定が好きなんだと思う
回樹:身近な人の死ってテーマは重いよね…
九月某日の誓い:どんでんがえしが秀逸
くすんだ言語:すでにこういう侵食は始まってると思う
ショッピング・エクスプロージョン:『ニューロマンサー』のオマージュもの、いいよ
無脊椎動物の想像力と創造性について:神の御業って言葉を感じる
夜警:ファンタジーと思いきや、ヘビーな世界に生きる村人の物語 -
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伴野練編集のSF11作品収録の「日本SFの臨界点[怪奇編]」。
「怪奇フラクタル男」
短編でテンポよく進むのが、作中のフラクタル構造が進行している様とシンクロしているようで楽しい。人面瘡が発現し続けるという気色悪い症状なのですが、なんというかコミカルな感じを覚えます。映像化されたら怖くてダメでしょうけどね。オチのメンジャー・スポンジも同じく映像で捉えていなかったので、気色悪さは控えめでした。メンジャー・スポンジとは?と検査して読んだので、無意識のうちに気色悪さを抑えるために、文章の映像化を避けたのかもしれない。
『世にも奇妙な物語』にピッタシの作品だと思いましたね。
「ぎゅうぎゅう」
[恋愛編]に収録されていてもいいのかなぁ、という途中の感想は最後にひっくり返される。そういうことか。無知であることの幸福、ということか。
いずれ訪れるであろう結末だったとしても、その瞬間まで愛する人と共に過ごすことができるのは、紛れもなく幸福なのでしょう。主人公が捨ててきたところにも幸福はあったと思うけど、望んだものではなかっただろうし。
物理的な距離感の密度のぎゅうぎゅうと、世界を封じ込めている圧迫感のぎゅうぎゅうか。
「地球に磔にされた男」
中田永一が乙一の別名義だということを知る。というか幾つもの名義をジャンルによって使い分けるのは、自分が情弱であることはひとまず置いておいて、勘弁してもらいたい。直樹三十五だって、三十五で観念したのではなかったっけ?
乙一という作家自体は、ファンです。「夏と花火と私の死体」から。掲載されたjump novelは『るろうに剣心』のノベライズが目的で購入したのですが、小川一水や村山由佳、『銃夢』に『ジハード』と多くの出会いがあった1冊でした。
人の悪意を描きながらも、最後は善意を見捨てないという作風だと思っていて、それが現れている短編だと思います。自分が読んできたのは乙一名義のものばかりなので、他の作品を読むと違う印象が生まれるのかもしれない。そのために、名義を変えているのかもしれない。
新しい世界への扉が、また見つかってしまいました。
「黄金珊瑚」
[怪奇編]で一番を挙げるのであれば、これです。
正気と狂気を行き来している様、それを自覚していながらも抗えない恐怖と魅力。彼の存在から逃げおおせたかと思いきや、絶望を伴って再臨する確信。
ケミカルガーデンの異様な存在感。ビーカーの中に美しさと怪異が同居する現象。あれをまざまざと想像しながら読んでしまいました。検査したのが悪い。
恐怖と魅力に捕らわれ、振り回されたのは自分もでした。
日本SF史の黎明期、古典と言われるような時代の作品ですが、面白さは色褪せない。
読書の楽しみの一つで、沼にハマる要素の一つ。どのジャンルにも言えることですが、古典も現行も新規、どの作品も面白いものはたくさんあるので、時間がいくらあっても足りません。でも、圧縮学習みたいなのはつまらないと思うんだよね。
1日の時間が3倍になればいいのに。
「ちまみれ家族」
タイトルにもなっている作品ですが、なにこれ?
とりあえず、ひたすら血飛沫。『めだかBOX』の致死武器って、ここから着想得てたりするのかしら。
なんというか、迫力押しな気がする。嫌いじゃないけど、一度で充分。
[恋愛編]よりも印象に残った作品が多いのは、自分の趣味嗜好がこちらを向いているからです。
編集後記で紹介されている作品群も読みたいものばかり。積読になっているものありますし。気長に読みたいと思って、見かけたら買うのだけど、そちらの方が読むペースより早くて、追いつかない。気兼ねなく趣味にお金を使えるのはいいのですが、積読の攻略を持続させないと。敵の回復力は想像以上なので。
楽しみは尽きず、まだまだ知らない世界は溢れています。さてさて、何から読もうか。 -
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伴野練編集のSF9作品収録の「日本SFの臨界点[恋愛編]」。
各短編の前の著者紹介が濃いので、どれだけの熱量でこの本を認めたのかが知れるというものです。好きが高じて、の「高じて」を何度も何度も重ねないと届かないと思います。
「死んだ恋人からの手紙」
シンプルに希望と絶望が混交しているのがつらい。恋愛というテーマで集められた短編集なので、悲恋になるのでしょう。手紙を待つ女性が、あくび金魚姫という呼び方で提示されていますが、恋人の印象でそう呼ばれているので、どんな女性かの最終判断は読者にゆだねられている部分があるのが、余計に残酷さを増していると思います。手紙だけで構成されているので、受け取った感情は自分と金魚姫が同一になってしまうのがよろしくない。いや、いいんだけど感情としてはつらいです。すんなりとこの小説の世界に入り込めてしまった、と気づいた時には金魚姫と同一化してしまっていましたね。
「アトラクタの奏でる音楽」
初出は2013年ですが、2025年の現在でも近未来SFで一番実現性が高いのかな、と思える作品でした。理解不能なものを理解可能に紐解こうとする試みの中で予想外のムーブが巻き起こっていく、というのは何が起こるのかという高揚感とそこに待っているであろう不穏と不安、そして一連の出来事の終着点に落ち着いた時の安堵と脱力感。疾走感でないけど、読ませるスピード感が強かったです。
友情か恋愛かと言われると、そのライン上を行ったりきたりしている雰囲気で、対人間でなく彼女たちが今現在、一番唆られているモノの関してが恋愛みたいなモノなのでしょうね。
心に残った2作品。「劇画・セカイ系」「G戦上のアリア」も好きです。
こういうアンソロジー作品や短編集には必ずといっていいほど名前が上がる円城塔作品。やはり馴染むことができない。
読むたびに「また出会ったな円城塔、今度こそ馴染んでやるページをめくる手が止まらない、という感覚を味わってやるぜ」と意気込んで読むのですが、立ち止まってしまう。相性というものがあるんでしょうな。 -
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伊藤計劃氏が亡くなってから16年
この“トリビュート”が出版されてから10年
その間、
大きな地震や災害が続き、パンデミックが現実となる。
理由のよくわからない戦争が続き、ドローンや無人兵器が実戦で用いられる。
SNSを用いた世論誘導、生成AIの実用化やマルウェアなど、目に見えない相手の脅威が現実となる。
現実がSFを超える日、それでも読まれる物語がある。
『虐殺器官』から続く天国と地獄の薄っぺらな境界線上での綱渡り……現代ジャパニーズSFの王道となった感がある。
多少の好き嫌いはあるもののどれも圧巻の出来栄えで、分厚い本の残ページが消えていく。
最終話、長谷敏司『怠惰の大罪』が特に響いた。
まるでドン・ウインズロウ『犬の力』を読んでるようで、SF集であることを忘れた。AIの及ぼす「天国と地獄の境界線」が、ノワールにまで入り込むとは……。
面白かった。 -
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濃い…!たいへん楽しく読みました。
サブジャンルも新しめのものが多かったように思いましたが、SF色が強いサブジャンルのお話のほうがなんだか叙情的でした。
特に好みだったのは、
○八島游舷「Final Anchors」
○夜来風音「大江戸しんぐらりてい」
○麦原遼「それはいきなり繋がった」
○琴柱遥「夜警」
でした。短編だけれど世界の広がりがすごい。
破茶滅茶になりそうな、大型ディスカウントストア“サンチョ・パンサ”による世界の終わりのお話は、意外と王道少年マンガみたいだったな〜と。ガチャガチャしてそうでしてない。
編者の伴名練さんが1話ごとの後ろにつけられてるコラムの情報量に圧倒され、こんなに載せて書いても「ページが足りない」と言わしめるSFの奥深さにクラクラしました。
物理的に収められなかったジャンルの新しいアンソロジーもぜひ編んでいただきたいです。他力本願 -
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ネタバレ短編集。
なめらかな世界と、その敵
ゼロ年代の臨界点
美亜羽へ贈る拳銃
ホーリーアイアンメイデン
シンギュラリティ・ソヴィエト
ひかりより速く、ゆるやかに
SFど真ん中の作品を初めて読んだ気がする。やはりSF……あまり得意ではないなぁ。と、ミステリー畑の人間は思うのであるが、その私をして悩んだ挙句、評価が星4である。面白かったんかい、というツッコミを自分で自分にしてしまうよな。
というのも、短編集で読みやすいのと、SFを読み慣れていないが故にSF独特の世界設定を把握するのが容易でないため入りにくいものの、物語として綺麗にまとまり何かしらの印象を受けること、それらの総合点から「慣れぬし好みかと問われると首を傾げるが面白いと思う」との結論に至ったのである。
元々、ライトノベルだろうが一般文芸だろうがなんだろうが、現実世界の荒唐無稽な設定は違和感が先に立ち受け入れづらい性質なので。現実世界ではないと明らかに明示されていたら比較的理解はしやすい。その点、本書は、馴染んだ日本という国の、歴史やら現実やらが舞台なので、いやSFだから当然そうなのだが、「ええ現実にあり得る?」が先に立ってしまう。諸外国からもとから日常に身近でないのでそこまで違和感もないのだが。
そんなこんないいつつ、個人的なお気に入りは「ひかりより速く、ゆるやかに」である。
ヒーローになり損ねた男の話、とか思ったりもしたのだが、ひとかけらの幸福とは名誉とは無関係なところに生まれるものよな、などと思ったりもしつつ、結局は、抗い難い脅威に抗い難い幸福を掴むちいさな生きものたちの物語が好きなのだ。