伴名練のレビュー一覧
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改変歴史SFに特化した短編集。テーマが一貫しているので、SFアンソロジーの中でも読みやすい部類かと思います。
中でも印象的なのは、伴名練さんの「20001周目のジャンヌ」。様々な思惑のもとジャンヌダルクの火炙りをシュミレート上で繰り返すという酷い話なのですが、結果としてシュミレーション上の歴史改変に止まらず、実際の歴史にも影響を及ぼすという流れがとても興味深かったです。ラストの展開も綺麗で、印象的な作品でした。
異常論文に掲載された「解説──最後のレナディアン語通訳」もそうでしたが、こういった作風も描けるところが伴名練さんの大きな魅力ですね。他作品も素晴らしかったですが、この作品を読めただけで十分満足できる作品集でした。 -
Posted by ブクログ
・・・うーん、なんと言ったらいいんでしょう。
SFとしての完成度がとても高く、間違いなく面白いのですが、「閉じている」。そんな印象です。
並行世界を駆け抜ける少女たちの青春。改変歴史における日本SF第一”女流”世代の生き様。伊藤計劃へのオマージュを込めた精神改造恋物語。特殊能力を持つ姉と平凡な妹の相克。AIが幻視する人智を超えたソヴィエト連邦。超低速現象に見舞われた新幹線の乗客を救うべく奔走する者の悔恨。
今風に言うと、「エモい」です。求めても得られないモノを、得られないと分かっていても手を伸ばさずにいられない心の痛みを、熱量の高い筆運びでドラマティックに描き出します。熱量が高い、と言っても、日本SF第一世代のような暑苦しいまでの熱気ではなく、スマートな語り口の行間から熱量を感じさせるところが、これまた今風、ではあります。
が、鴨の率直な感想を述べさせていただきますと・・・
SF好きで、SFの歴史やファンダムやマーケット等もよくわかっている人が、同じSF好きに向かって「みんな、こういうSF読みたいんでしょ?ほーらほらほら」とアテ書きで書いた作品、という印象が強烈過ぎて、それを拭えないのです。
とても地頭の良い人なのだと思います。あとがきを読むと、SFへの果てしない愛情と該博な知識を強く見せつけられます。そんな「SF大好きでSFをわかっている人」が書いたSFを「そうそう、こんなSFが読みたかったんだよ!!」と熱狂的に受け入れる読者層も、間違いなくいます。
ただ、その読者層は、かなり、かーなーりー、狭い。一SF者としての、鴨の率直な感想です。
これからSFを読んでみようと思っている人には、オススメしやすいと思います。エモさをトリガーにして、作品世界に没入することができます。
ただ、このエモさにあざとさを感じずに読み進められるのは、20代止まりかなぁ・・・とも思います。
SFとしての完成度の高さは間違いありませんので、これからも読みたい作家さんではあります。なお、鴨的には、女性キャラのリアリティの無さがとても印象的で(SFとして欠点ではありません、念のため)、女性SF者の感想をぜひうかがってみたいです。 -
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文庫本の800ページ…。久しぶりに一冊で3日目突入してしまいました。SF好きな人や、これから読んだり書いたりしたい人には、同じ系統の過去作品のこれでもか!っていう量の解説ついてるので、超おすすめなんだけど、ちょっと読みにくい作品の方が多かったように感じます。
◆作品として好きだったのは、
・斜線堂有紀「回樹」
百合とファンタジーの融合。人体吸収する樹。
これは、SFっていうより、拗れ愛小説。
・芹沢央「九月某日の誓い」
超能力のある世界で、科学者である父の自殺により奉公することになり、その家のお嬢様の能力、そして意外な結末。
・琴柱遥「夜警」
夜に空から降る星の話。子どもが願うと叶うのだが、それには秘密があり…。少し宮沢賢治っぽい雰囲気が良かった。
◆作品ネタとしては面白かったけど、イマイチ入り込めなかったのは
・八島游舷「Final Anchors」
自家用車に搭載されたAI同士の一秒に満たない時間での会話や思考
・宮西建礼「もしもぼくらが生まれていたら」
小惑星が日本に落ちることが分かったことと、高校生の衛星構想コンテストと核のない未来
・夜来風音「大江戸しんぐらりてい」
実在の数学や天文の天才達を登場させ(安井算哲、関孝和など)柿本人麻呂の歌が実は数式だったというロジックで大演算機構が作られる江戸時代。
・佐伯真洋「青い瞳がきこえるうちは」
VR技術で仮想スポーツ大会が出来るような未来。卓球に才能のある兄弟の感情。一人は盲目、一人は寝てしまう病。
・坂永雄一「無脊椎動物の想像力と創造性について」
科学者飼育による蜘蛛生態改変で、蜘蛛に京都を乗っ取られる世界を描いている。この話は凄く面白くなりそうなのに、とても入り辛くてもったいない!と思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ“怪奇篇”というほどにガチなSFホラーではなく、むしろ幻想、ファンタジー色の濃いSF作品が多いような印象。
・雑誌編集者が取材中に偶然目撃した異形のバンドとパフォーマンスに魂を奪われる「DECO-CHIN」は、中島らもの遺作にして文字通りの怪作。
・身体のフラクタル現象に襲われた男の運命「怪奇フラクタル男」(山本弘)、
・人口過密状態の大阪で人同士の衝突を避ける為用いられた妙案が、意外な計画に「大阪ヌル計画」(田中哲弥)、
・密集状態で座ることすらままならない世界「ぎゅうぎゅう」(岡崎弘明)、
・亡父の友人が遺した時間跳躍機構。作動させた行先は過去でも未来でもなく……。時間テーマSFと思わせて別テーマだった「地球に磔にされた男」(中田永一)、
・高校の理科実験室に出現した金色の珊瑚が徐々に人間を支配していく「黄金珊瑚」(光波燿子)はどストレートな侵略SF。
・やたら流血しまくる特異体質を持った家族の血まみれの特異な“日常”「ちまみれ家族」(津原泰水)、
・宇宙船内と思しき閉鎖環境で疑似家族が繰り広げるディスカッション。狂っているのは誰で何が真実なのか……「笑う宇宙」(中原涼)。
・生涯の伴侶を求め恒星間飛行する宇宙生命体の“少年”と、惑星に棲む“少女”の邂逅「A Boy Meets A Girl」(森岡浩之)はファンタジーのように見せて未来テーマ?の正調SF。
・知能を持った獣人が支配し、人間が奴隷の身分に堕した世界「貂の女伯爵、万年城を攻略す」、
・昭和初期、体質的低体温症の女性の治療に従事した医師の記録……という体で、民話や怪談の存在である“雪女”を医学的に解析を試みた文字通りのSF「雪女」(石黒達昌)など全11篇。
さらに日本SF史をざっと通覧するような、編者による力の籠った「編集後記」も読み応え有り。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ八島游舷「Final Anchors」★★★
斜線堂有紀「回樹」★★★
murashit「点対」★★★★
宮西建礼「もしもぼくらが生まれていたら」★★★
高橋文樹「あなたの空が見たくて」★★★
蜂本みさ「冬眠世代」★★★
芦沢央「九月某日の誓い」★★★★
夜来風音「大江戸しんぐらりてい」★★★
黒石迩守「くすんだ言語」★★★
天沢時生「ショッピング・エクスプロージョン」★★
佐伯真洋「青い瞳がきこえるうちは」★★★
麦原遼「それはいきなり繋がった」★★★★
坂永雄一「無脊椎動物の想像力と創造性について」★★★
琴柱遥「夜警」★★★★