伴名練のレビュー一覧
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ネタバレ――
SFはここまでできる。
楽しく読むためにはこんなにも注意深くならなくてはいけないのか、という恐ろしさもあるけれど、まぁそれはなんでもか…。
ほんとにひとことで云えば、情報過多作家である。短編から掌編まで、どんな細かな設定にもタグがぶら下がっていてそこからどこへでも飛べるような。そして飛んでいるうちにここが何処か解らなくなって、着地したら別の短編に居るような。まさにトラベラー。夏だしもう一回読むか。
本編もそうだけれど、伴名練による解説…解説と云うには膨大な新城カズマ論も情報過多。しかしこういうのがあると、不真面目な読み手である私のような人間は非常に助かります。
SFに出来ることを、これでもかと詰め込んだ短編集。というかこのひとの場合、思い付いたことを書こうとしたら今回はSFになっていました、ということなんだろう。SFならではの、現在を緩やかに掠める風刺的な部分もあり(それが10年前くらいに書かれているという、それもまたSFならではの驚きもあり)、歴史もの仕立てのSFも抜群に巧い。そのぶん一編一編を読むのに体力は要るけれど、ぎゅっとしたSFを沢山持ち歩きたい方にはおすすめです。
表題「月を買った御婦人」は再々再読くらいになるんだけれど、やっぱり好きねぇ。ハインラインへのリスペクトがあり、「竹取物語」や『月世界旅行』へのオマージュもあり、民族的で幻想的なストーリーテリングの中に荒唐無稽なふりをした多量のアイデアが散りばめられていてユーモアに溢れ、その上で〆があまりにも美しいなんて。
この一編だけでも一冊持っておく価値はあると思います。
これからいろんなSFを読みたいな、という方は同じく伴名練編の『日本SFの臨界点[恋愛編]』にも収録されているのでそちらをどうぞ。そちらもどうぞ。
新城さんに新作を書かせるとしたら伴名さんのような編集者なのかもという感じがしますね。
…伴名さんに新作を書かせる編集者さんは誰でしょうね?
☆3.8である。 -
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ネタバレ恋愛篇と言ってもコテコテのラブストーリーみたいなものはなく、基本はSF。ロマンス要素やほっこり要素があるSF、というものが集められてる。高野史緒と小田雅久仁が好きだった。(アンソロジーを読む時の一番の収穫は、好きな作家を発見すること)
「怪奇篇」より、だいぶ良かったです。
中井紀夫「死んだ恋人からの手紙」★★★★☆
- はるか遠く離れた星にいる主人公が地球にいる恋人に手紙を送る。亜空間通信は送信した順で到着するのは限らない、という設定が面白い。また高次元な観点で見れば、生死も一時の状態で、繰り返しているのではないかという考え方も良い。
藤田雅矢「奇跡の石」★★★★☆
- 超能力を持つ人が多く住むという東欧のロベリア(という架空の国)へ訪れた主人公が出会った姉妹の話。音や味など五感を結晶化させることができる能力。美しい雰囲気が漂うSF (恋愛物語ではない)
和田毅「生まれくる者、死にゆく者」★★☆☆☆
- ホッコリ系。産まれかけの子と死にゆく祖父。
大樹連司「劇画・セカイ系」★☆☆☆☆
- ラノベっぽいラブコメSF。
高野史緒「G線上のアリア」★★★★☆
- 高野史緒作品はいくつか呼んだ短篇はあまりハマらなかったものの『カラマーゾフの妹』で食らった。こちらも歴史改変テイストで、ある意味既存の題材(既存の小説や史実)にフィクションや創作を織り込むのが得意な作家のようだ。
- この物語の世界では12世紀ごろから電話が発明されている。古いタイプの電話機ではあるものの、それはインターネットのように世界をネットワークで繋げていて、更に電気工学なんかもあり、なんなら主人公の一人は元ハッカーだ。史実に登場する人物の名前も多数出て来て面白い。
扇智史「アトラクタの奏でる音楽」
- 百合テイストは得意じゃないためスキップ。
小田雅久仁「人生、信号待ち」★★★★★
- 面白い。小田雅久仁作品を読むのは短篇3本目くらいだけど全て面白い。他2本は怪奇ホラーだったけど、こんなロマンチック系も書けるとは。恋愛色は強すぎずで程よい。
- 2つの横断歩道に挟まれた高速道路の高架下で赤信号に挟まれた男女。ラブコメでも始まるのかという雰囲気の中、なぜか赤信号が異常に長いことに気づく。時間の流れが急激に加速し、赤信号のうちに数十年の人生が繰り広げられ、最後に 無事横断歩道を渡り、(恐らく)人生を閉じる。
円城塔「ムーンシャイン」★★★☆☆
- 数字に対する共感覚を持っている少女の話(だということも伴名練の解説があったからわかった)
- 円城塔の作品は理解できないことが多いので低評価にしがちだが、それは自分の読解力や想像力がついて行けてないからという自覚もある。それでも読み飛ばさず頑張ってみたくなる。
新城カズマ「月を買ったご婦人」★★★★☆
- 19世紀、令嬢に5人の男性が求婚する、という竹取物語の展開。「G線上のアリア」同様、時代に似つかわしくない技術 (ロケット開発) が登場するタイプ。
- ラノベ出身なだけあって、文章は読みやすい。 -
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科学と論理の、先にあるもの。
それを確かに捉えたとき、ひとはやっとそれらに追い付くのかもしれない。
つくづく、ミステリとSFは似ているなぁと思う。
よく考えてみると、ミステリを読み漁っていたらいつの間にかSFを手に取っていたり、その逆もまた何度もある。主に森博嗣と萩尾望都を軸足として。
〇〇モノ、って括りがあったりとか、いくつかの定型のなかで多様なバリエーションを見せようとしたりだとか、そういう部分が同じ方向を向いてるのかなと思うんだけれど、やっぱり何より物語そのものよりも作家がきちんと論理に支配されている、というのが大きいんだろうなぁ。
きちんと支配されている、ってなんだかマイナスイメージだけど。
そうそう、ミステリ作家とSF作家に共通して、作家自身がそのジャンルの熱心な読者である印象。
恋愛小説を読んだことのない人間が恋愛小説を書くことは出来ても、
SF、ミステリを読んだことのない人間がそれらを書くことは出来ない。
って、これ誰かの名言じゃなかった? 違う?(笑
作家もそうだし、編集者もそうなんだろうなぁ。だからこそ伝説の編集者、みたいな存在も出てくるわけだ。
あーさてさて!
臨界点、と銘打たれているだけあって、もちろん好みはあるけれど粒揃いのアンソロジーでした。
それぞれの短編に、詳細な著者紹介と他短編の紹介が付いてるのもほんとに、心尽くし。入門書としても良いし、玄人好みでもあります。中間くらいのわたしは勿論楽しんで読みました。
『アトラクタ』とか好み。百合SFにベテランが居るとは…
短編の成り立ち的には『ムーンシャイン』がカッコ良すぎる…いや内容も良いけど(笑 こういうエピソード付いてるとより深みに嵌りやすくて良いですよね。
ちょっと敬遠してたけど円城塔読んでみます。
科学と論理の、先にあるもの。
それを確かに捉えたとき、ひとはやっとそれらに追い付くのかもしれない。
その頃には科学はもっと先へ上へ、翼を拡げているのだろうけど。
ぁあ、そうね。
このひとたちは、科学に恋をしてるんだな。
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ネタバレ目次
・公正的戦闘規範 藤井太洋
・仮想(おもかげ)の在処 伏見完
・南十字星 柴田勝家
・未明の晩餐 吉上亮
・にんげんのくに Le Milieu Humain 仁木稔
・ノット・ワンダフル・ワールズ 王城夕紀
・フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪 伴名練
・怠惰の大罪 長谷敏司
どの作品も伊藤計劃の気配を漂わせているけれど、特に濃厚なのは王城夕紀の作品(ハーモニーの世界観)と、伴名練の作品(屍者の帝国の世界観)。
この2作品は好きだなあ。
特に伴名練作品のナイチンゲールは夢に出てきそうなくらい恐ろしい。
単純な幸福はない。
幸福に正解はない。
けれどどの作品も屈託がありすぎて、胸が苦しくなる。
本の分厚さもあって、心身ともに体力を必要とする読書でした。 -
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SFって踏み込んでしまうとエラいことになりそうで、星新一→筒井康隆→清水義範、小林恭二以外には手を出さないようにしてました、伊藤計劃まで。まぁ伊藤計劃も「ハーモニー」「虐殺器官」「屍者の帝国」しか読んでないけど。
というSFあまり読まない人間の感想。一番伊藤計劃っぽいなと思って気に入ったのが藤井太洋、次が柴田勝家かな。機械による戦争というか殺戮への反発、中国辺境のムスリムテロリストとか伊藤計劃好きそう、と思いました。どうもファンタジー系は苦手みたいで伏見完と仁木稔はちょっと苦手。王城夕紀と長谷敏司は単独でおもしろいけど、前2人も含め伊藤計劃あまり関係ない印象。
伴名練は屍者の帝国のスピンアウトなので一番伊藤計劃直結の内容やけど、個人的な好みでもう少し手前で描写止めてほしかったかな。伊藤計劃ならそこまで書かなかったんちゃうか、という。いや、トリビュートであって、みんなが伊藤計劃になろうってことやないんやけども。 -
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ネタバレ伊藤計劃をテーマに、影響を受けた作家たちが集まったアンソロジー作品。
伊藤計劃の作品、虐殺器官、ハーモニー、メタルギアソリッド、屍者の帝国とどこかで繋がるようなとても面白い素晴らしい作品が集まった。
テクノロジーが人間をどう変えていくかを追求しているらしいが、あまりそこにこだわることなく、伊藤計劃が内包しようとした世界観にワクワクしつつ集まった新しい作家たちの物語を楽しむだけで良い作品だと思う。
個人的に「未明の晩餐」が秀逸で、テクノロジーと人間との関わりはもちろん、退廃した未来の東京を描くSFらしさ、その世界観における人間模様、食の話を中心にし、その全てが綺麗にまとめられている。
でもハッキリ言えば全てが面白い絶対読むべき作品だ。