伴名練のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
斜線堂有紀の上智卒なるほど!と思わせる英語力も見せつけられました。斜線堂ファンなら、この短編だけのために読むべき一冊です。
・石川宗生「うたう蜘蛛」
死ぬまで踊り続ける奇病が蔓延したイタリア。総督の前に、「この流行り病を収束させてみせましょう」とホーエンハイムなる錬金術師が現れる。
性描写あり、中学生には微妙ライン。
好み的には合わず。
・宮内悠介「パニック――一九六五年のSNS」
一九六五年の日本。そこには「ピーガー」というSNSが存在した。
一番心が乗らなかった作品。発想は面白い。
・斜線堂有紀「一一六二年のlovin' life」
和歌を詠むと同時に“詠訳”する平安時代。“詠語”が苦手で人前では歌を詠まない式子内親王の前に現れた一人の女房、帥(ソチ)によって詠訳の力を得る。
いやー、面白かったです。シスターフッドっぽいところは斜線堂有紀らしいけど、それ以外はこれまでにあまり見なかったような(平安だし!)世界観。
・小川一水「大江戸石廓突破仕留(おおえどいしのくるわをつきやぶりしとめる)」
江戸には巨大な石壁「大廓」が横たわっていた。
一体、その石壁は“何”から江戸を守っているのか――? 明暦三年一月。燃え上がるあの日の真実が紐解かれる。
これはなかなか話の展開が楽しかったのと、江戸の治水や防火の史実との絡みなどはもっと知識あればより楽しめたかな。
・伴名 練 「二〇〇〇一周目のジャンヌ」
ジャンヌ・ダルクは今まさに火刑に処されたのに、処された朝にループするお話。しかも20001回。
短いループでどんな運命変化あるのか、というところに焦点当たっていればもっと楽しめたかも。何故ループするのか、の方が私にはあまり入って来なかったので。でも、印象に残る作品でした。
-
Posted by ブクログ
現代2020年代の新進作家のSFを集めている点が興味深い。「SF初心者にこそ読んでほしい」という意図は伝わるが、SF好きが読んでも難しいものが多い。とても一般的とは言い難い。
個人的に楽しく読めたのは、以下4編。
・八島游舷『Final Anchors』
王道SFど真ん中直球。AI同士の論理対決が熱い
・斜線堂有紀『回樹』
SFはシナリオと設定重視のものが多いがこれは人間の心理と心の機微が描けている恋愛もの
・高橋文樹『あなたの空が見たくて』
最初の数ページで特徴的な異星人が登場し、その世界観が想像される。物語には絡まないがワクワクする
・坂永雄一『無脊椎動物の想像力と創造性について』
クモの生態が、人間よりも環境に順応で進化に適しているという話。人類後の地球はクモ類の世界になるかも
800ページと分厚いが、編者はこれでも足りないそうだ。それを埋めるかのように、各短編のあとにコラムのように大量の同ジャンル小説を紹介している。主に日本のそして最近のものまで網羅しているからスゴイ。そのコラムを読むだけでも価値がある(★プラス1)。さらに、今SFを読むならここという雑誌とウェブも記載。頭が下がる。 -
Posted by ブクログ
圧倒的ボリュームにまずは驚く。なんなら、同じボリュームでもう一冊出しかねない、編者の情熱には拍手だが、SFを巡る出版状況がよほど良くなったようで、これも嬉しい。少し前まで、SFは売れない、と断定口調で語る「識者」がいたものだけれどね。肝心の収録作だが、玉石混交などとは言うまい。とはいえ、作品の傾向がバラバラなので、好みははっきりと出るようだ。息を呑むレベルの傑作もあれば、何が書いてあるか分からないなどと思わないが、物語としての勘所がさっぱり掴めない作も多かった。個人的には「九月某日の誓い」、「大江戸しんぐらりてい」、「くすんだ言語」あたりが好き。「もしもぼくらが生まれていたら」は完全に技巧で、この書き方をしたのならすごすぎる。ベストは「禁断の惑星」を連想してしまった「夜警」。
-
Posted by ブクログ
なんというか、とてもユニークな筆致と世界観を有する作家です。
作家自身の個性や情念や熱量、「この作品で何を表現したいのか」といった想い、そうした通常の小説なら当然表出されているものが、この作品群からは全く感じません。徹底的に冷静で冷徹で、まるで科学者のリポートを読むかのような硬質で冷たい作品ばかりです。その突き放したようなスタンスが逆に強烈な個性になっているという、余人を持って変えがたい作家だな、と思いました。
どの作品も、気持ち的に盛り上がる展開はほぼないです(^_^; 本当にレポートのような文体で、起こっている事象や事件について客観的に確認できることのみを淡々と描写し、だいたいは観察対象の消滅によって終了します。観察対象の消滅というイベントすらないまま、唐突に幕を閉じる作品もあります。
そんな掴みどころのない作風ではあるのですが、レポートのような素っ気無い文体の行間から立ち現れる、科学/社会/文化に対峙する個人の魂の相克、そして、そこから生まれる絶対零度のような冷たさを感じる凄み。書きたいことをガンガン書いて読者をグイグイリードして楽しませる作家もいますが(そしてそれは読者にとってもわかりやすいので、そうした作品の方が売れるのですが)、全く逆の、引いて引いて引きまくることで文章の背後に潜む世界観を表現する、本当に唯一無二の作風だと思います。読み進めるうちに背筋が寒くなるような感覚さえ覚えます。
一般的に想起する「SFを読むことで得られるカタルシス」は、一切ありませんヽ( ´ー`)ノ
そういう意味で、かなり読む人を選ぶ作品だと思います。でも、一度読んでおいて損はないと思います。