貴志祐介のレビュー一覧
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秋雨の季節を舞台にした、四つの短編集。
特に「フーグ」と「白鳥の歌」が印象に残った。
一番ゾッとしたのが「フーグ」。全てを理解した時の恐怖と絶望感。そしてなによりも、自分も迷い込んでしまったのではないかと錯覚するくらい、悪夢の描写が恐ろしかった。
「作家」という職業の人間に対する評価があまりに辛辣(笑)
そして、レコードに残されたこの世のものとは思えない歌声を持つ、謎の歌姫の生涯を追う「白鳥の歌」。
探偵を雇い、歌姫と絶唱の秘密に迫る様は、まるでミステリー小説のようで、4編のなかで一番好み。そして真相はあまりに残酷。
オーディオ談義のシーンでは、全く知識が無いにもかかわらず、思わずオ -
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防犯探偵榎本シリーズ4冊目。
今回は何かあれらしいですね、文庫本になった時?に分冊されてて2冊になってるんだとか。
4冊目はこっちーみたいに書いてあったので「何でわざわざ分冊するんだよ、1冊に纏めてくれよ」なんて思いながら読み始めたんですが。
うん、これ分冊して正解だわ。
何かもうね、「ミステリークロック」の話が色んな意味で凄すぎて息切れしちゃうんですよね読みながら。一緒に収録されてる「ゆるやかな自殺」は寧ろちょっとトリックとかも簡単でサクサク読める感じだったので「おっ、私も榎本シリーズ読みながら少しは賢くなったか?」なんて思ったりしてたんですけど「ミステリークロック」の前に粉々に自信 -
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ダ、ダメだ……どんなに「今回の話面白いな!」と思っても最後に控えているあの劇団のめちゃくちゃ加減が全てを奪っていく……!
今回もまんまとアイツらのドタバタ劇と馬鹿馬鹿しすぎる真相にゲラゲラ笑ってしまった……!
という訳で防犯探偵榎本(というシリーズ名らしい)も早いもので3冊目ですね。
毎度毎度「よくもまぁこんだけ密室が思いつくなぁ」なんて思いながら読んでいるんですが、それを全て解決してしまう榎本の思考もどうなってるんですかね?
やっぱあれなの?どちらかと言うと榎本もあっち系だから思考回路が似てるとかそういうあれなの???
それにしてもこのシリーズに出てくる人物……というか犯人、揃いも揃 -
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凄い。
色んな話を読んだはずなのに最後の話に全部もって行かれて何も覚えてない。
それくらい最後の話のインパクトが強すぎる。
もはや何も勝てない。
強い、強すぎる。
馬鹿馬鹿しさもクセの強さも全てにおいて最強すぎる。
あんなにゲラゲラ笑いながら読んだ推理小説は初めてだった。
いや、他の話もそれぞれ特徴はあったんです。
狐火の家は和風ホラー感あって怖かったし、黒い牙はアイツが嫌いな人はこの上ない恐怖を味わえるだろうし、盤端の迷宮は犯人と榎本とのやり取りが面白かったし。
でも犬のみぞ知るにはもうね、何も勝てない。
もはや榎本が本職を隠そうとしなくなったことすらも霞んでしまうほどに何も勝てない。
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いや凄いなこの話。
さすがにこんなトリック見破れないって。無理だって。
全部の真相が解明した時唸ってしまってました。
ミステリー小説としてはかなりの有名作品になるであろう硝子のハンマーですが何故かここまで読む機会がなかったもので今回が初読みでした。ついでに貴志祐介さんの作品としても初読みですね。
黒い家とか新世界よりとか悪の教典とか……とにかく有名な作品を沢山書いてる方っていうのは知ってるんですけど、なかなか手が伸びなかった作家さんでもあります。純粋にめちゃくちゃホラー小説が怖そうだったからなんですけど。悪の教典とか絶対怖いだろうし。えぇ、ホラー苦手なもので。
なのでミステリー要素強め -
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ネタバレSF要素の強い作品のため物語の世界観をイメージするのに一苦労でしたが、登場するキャラクターにはどこか他人事とは思えない人間味を感じました。
その人間味とは、何か見えないものにすがることで負の感情を一時的に忘れるという脳の錯覚です。それに「依存」することで現実から目を逸らしている無様なところには身に覚えがありすぎました。
何かに「依存」しているときは、それを盲目的に「信じる」ことで意図的に思考を止めている状態ですので、この行為がまさに宗教的な何かの発端になるのだと思いました。
それから本書の末巻にある解説のラスト、「圧倒的な困難を前にしても思考を止めないこと。そして恐怖に耐え、未来の可能性への想 -
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ネタバレデビュー作以前の作品『夜の記憶』、SF作品『呪文』と『赤い雨』、そして本作のタイトルで唯一のミステリー『罪人の選択』、以上4つの短編が本作に収録されている。なかでも本作の目玉である『罪人の選択』は1940年代と1960年代ふたつの時間軸で話が交互に進んでいく構成となっている。各年代ともに、これまでの罪の償うという名目で、酒か缶詰のどちらか一つを直接食さなければならない状況であった。それぞれの主人公は二者択一を迫られて、結局一方を選ぶこととなるが、どちらも助からなかった。たしかにどちらもその当時は毒入りではなかった。しかし十八年前の恨みとあるように、時が経つにつれて毒そのものの性質は変化する。
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ネタバレ英語教師の蓮実聖司は、東京都町田市にある高校に赴任して、さまざまな難題に直面する。高校に限らず、学校は性善説を前提としたシステムであるが、人間とは過ちを犯すものなので、当然ながらシステム内で問題が生じる。クラス内でのいじめや、教師によるセクハラ、教師と生徒間の肉体関係など、本作の高校では学校ならでは問題が発生する。そんな高校に蓮実は英語を教えることになるが、彼の授業は生徒が飽きないように、テンポよく、記憶に残るように工夫を施す。それが功を奏したのか、生徒の間で評判が高い。また先ほどあげた学校内の問題を次々と解決したため、教師からも尊敬される立場となった。このように、蓮実は一見すると完璧超人の
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冷静な怒りの炎
この作品は男子高校生が完全犯罪を考えていくというなんともやり切れない物語だ。
世の中には本当にどうしようもない程のクズみたいな人間はいるであろう。
でも殺人はよくないよ、と言うことはただの第三者からの意見であると私は思う。
当事者にとってはそれが唯一の方法であって、他に助けを呼べない、呼んでも助けてくれない状況なのだから。
少年が冷静に殺人の計画を練る姿は、悪の教典を思い出す程の寒気を感じるものであった。
だが、冷静な反面、心は怖がっていた。
そんな葛藤を描くシーンもあり、色々な感情が揺さぶられた。
嘘は嘘を呼ぶしかなくなる。
犯罪は新たな犯罪へと繋げてしまう。
怒りは新たな怒りを生み出 -
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貴志さんの小説は、様々なテーマがあり毎回ワクワクさせられる。同時にあらゆる観点と切り口から「人間を人間たらしめるものとは何か」を問いかけられているような気がする。
今回は入口が【前世】で、貴志さんの新しいアプローチにやはりワクワクさせられた。
蓋を開けると前世に加えて、記憶・意識・個と全、そういった切り口で問いかけられている。
私はこの類のテーマが好きなのでなおさら惹き込まれたし、ラストは自然と涙が溢れた。まるで自分も記憶や意識を共に辿ったかのようなちょっとした追体験のような。
今回の着地はきっと賛否別れるんだろうと思う。
でもそれこそが私たちを私たちたらしめている証ともいえるのでは?